映画大好きポンポさん the Omnibus

映画大好きポンポさん the Omnibus

杉谷庄吾【人間プラモ】の『映画大好きポンポさん』の本編に収まらなかったエピソードを集めた短編集。だらだらダイナー編ではジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットを中心に、ダイナーで映画製作に関係する少女たちの日常を描き、ニャリウッドミドルスクール編ではマズルカ・クシジャノフスカを中心に、友人同士で映像作成を楽しむ一部始終を描いている。また、じいちゃんの思い出編では、ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼンが映画会社を立ち上げた顚末(てんまつ)が描かれている。

正式名称
映画大好きポンポさん the Omnibus
ふりがな
えいがだいすきぽんぽさん ざ おむにばす
作者
ジャンル
その他芸能・音楽
 
ヒューマンドラマ
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あらすじ

だらだらダイナー編

ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットは、ユーゲン・マイルスジャックがマスターを務めるダイナーに入り浸っていた。ポンポネットはユーゲンの代わりに店主を務めたり、ウェイトレスとして働くナタリー・ウッドワードに接待してもらいながら、毎日のように友人のキャロル・ロンシュタットマーリン・ユーチノフと共に映画談義に花を咲かせていた。

ニャリウッドミドルスクール編

動画撮影を趣味にしているマズルカ・クシジャノフスカは、友人のロザリンド・ソールズベリーのニャリウッド女優デビューの夢を叶(かな)えるため、プロモーションビデオを撮影することとなった。3日後の締切までに2分間の演技動画を完成させることとなったマズルカは、レベッカ・ロンシュタットの監督のもと、実物のロザリンドより10倍綺麗(きれい)な映像を仕上げるための編集作業に集中する。

じいちゃんの思い出編

会社の倉庫整理をしていたジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットは、かつてジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼンが一度だけ映画監督として使用したディレクターズチェアを発見する。レベッカ・ロンシュタットマーリン・ユーチノフから詳しい話を聞きたいとせがまれたポンポネットは、場所をダイナーに移してペーターゼンの過去について語り始める。それはペーターゼンが幼少期から映画撮影所の小間使いとして働いていた頃から始まり、ウィリヘルム・ハウラーマーティン・ブラドックとの出会いや、映画会社「ペーターゼンフィルム社」設立して引退するまでの物語だった。

登場人物・キャラクター

ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネット

だらだらダイナー編の主人公。ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼンの孫で、天才映画プロデューサーと知られる少女。波打つ金髪をツインテールにまとめている。映画会社「ペーターゼンフィルム社」の社長を務めており、周囲からは「ポンポさん」と呼ばれている。両親共に外交職員であるため、祖父のペーターゼンに育てられた。ふだんは好き好んでB級作品ばかり製作しているが、なにを作っても一級品の娯楽作品に仕上げるセンスの持ち主。実質事務所に住み込んでいるため、料理を得意としている。ユーゲン・マイルスジャックがダイナーを空ける時は代理店主を務めることもあるが、なにを注文されても中華料理ばかり作るという悪癖がある。

マズルカ・クシジャノフスカ

ニャリウッドミドルスクール編の主人公。ニャリウッドミドルスクールに通う少女。薄茶色の髪にウェーブをかけており、つねに眠そうな顔をしている。趣味は動画撮影で、つねになにかを撮影している。ロザリンド・ソールズベリーが映画のオーディションに提出するプロモーションビデオを制作した際は、撮影と編集を担当した。好きな映画は『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『恋愛睡眠のすすめ』『ロスト・イン・トランスレーション』など映像表現に特徴があり、かつ日本とかかわりの深い監督が撮影した作品となっている。

ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼン

じいちゃんの思い出編の主人公。ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットの祖父で、伝説の元映画プロデューサー。数多の大ヒット作品を製作しており、第52回ニャカデミー賞で8冠を受賞した映画「ハート・オブ・ゲヘナ」は最高傑作と称されている。東ベルリン出身だが、輸入雑貨商だった父親が秘密警察に目をつけられた末に、店を破壊されたためイタリアに逃げ延びた。幼少期はヨーロッパを代表する映画撮影所「チニャチッタ」で小間使いとして働いていた。撮影の様子をつねに注視しており、次に必要とされるものの準備を怠らないため、スタッフたちからかわいがられていた。多言語が行き交う職場だったことから、自然とドイツ語やイタリア語をはじめ、英語やフランス語、スペイン語もしゃべることができる。当時はスタッフたちから「ピエトロ」「ペドロ」「ピエール」と呼ばれていた。また器用になんでもこなすため、ウィリヘルム・ハウラーに通訳兼助手に抜擢(ばってき)されてニャリウッドに渡り、映画製作に関係するあらゆる技術を吸収していく。29歳で独立し、製作コーディネーターや映画学校の講師として活動する中でマーティン・ブラドックと知り合う。マーティンが希有(けう)な存在の俳優であることを理解したジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼンは、マーティンをデビューさせるためだけに映画会社「ペーターゼンフィルム社」を立ち上げた。マーティンのデビュー作で、過去に一度だけ映画を監督している。

キャロル・ロンシュタット

映画音楽の作曲家を生業とする少女。ストレートのロングヘアを左右で白と紫で染め分けている。劇伴に求められる音楽が紋切り型で個性のないものばかりであることに不満を持っており、音楽が主役の映画をやりたいと考えている。テンションが上がると意味がわからないことを口走るジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットやマーリン・ユーチノフのツッコミ役を担っている。

マーリン・ユーチノフ

脚本家を生業とする少女。金髪ロングヘアで、毛皮の帽子とコートを着用している。寒がり屋で、猫舌ながら暖かいものを好むが、冷ましてからしか飲食することができない。容姿端麗のお金持ちで、圧倒的な才能を持つ年上男性を好んでおり、マーティン・ブラドックのファン。ジーン・フィニが監督を務めた映画「MEISTER」でマーティンと共演したナタリー・ウッドワードを非常に羨ましがっている。キャロル・ロンシュタットからは「マー姉さん」と呼ばれている。

コルベット

映画監督を務める男性。ミディアムボブヘアにしている。ふくよかな体型で、レンズの分厚い眼鏡をかけている。ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットの右腕として知られており、才能あふれる職人監督として認識されている。

ナタリー・ウッドワード

映画女優を生業とする少女。茶髪をショートボブヘアにしている。ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットに見出され、ミスティアと共に暮らしている。ジーン・フィニが監督を務めた映画「MEISTER」で、マーティン・ブラドックと共演した。以前はユーゲン・マイルスジャックのダイナーでウェイトレスをしていたフランチェスカ・マッツェンティーニが、女優業で多忙になったことで、ポンポネットから代理ウェイトレスとして働くよう命じられた。ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼンのことも知らず、小難しい映画の設定や説明のない描写に対する理解度は低いが、映画の裏側に流れている本質的なテーマや登場人物の感情の機微を感じ取り、物語に入り込むセンスを持っている。アクションやホラー映画が苦手で、かわいらしくてユーモラスな作品を好む。

ユーゲン・マイルスジャック

売れない役者で、ふだんはダイナーの雇われ店長を務めている男性。数多くの映画のオーディションを受け続けているが採用されず、結果発表のたびに落ち込んでいる。オーディションの情報が入ると、ダイナーの仕事を放り出してでも駆けつけており、その際にはジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットに店を任せている。ポンポネットたち以外の客が来ないことに悩んでいるが、映画談義で白熱したポンポネットたちが店内で大騒ぎするために客が来ないことも認識している。

ミスティア

人気の若手女優で、ウェーブがかった金髪ロングヘアにしている。ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットに気に入られている。気取ることのないフレンドリーな人物で、いつも笑顔を絶やさない。ナタリー・ウッドワードと共に暮らしている。

ロザリンド・ソールズベリー

マズルカ・クシジャノフスカの友人で、ニャリウッドミドルスクールに通う少女。毛先だけウェーブがかった長いピンクの髪をツインテールにしている。女優を志望しているが、どうすれば女優になれるのかの情報収集をいっさいしておらず、いい加減なところがある。超自信家で容姿端麗ながら内弁慶で人見知りなため、人前で演技することには戸惑いがある。好きな映画は『カールじいさんの空飛ぶ家』『インサイド・ヘッド』『レミーのおいしいレストラン』など、アニメーションスタジオ「ピクサー」の作品となっている。

リーセル・パーカー

マズルカ・クシジャノフスカの友人で、ニャリウッドミドルスクールに通う少女。茶髪ロングヘアで、背が高い。ロザリンド・ソールズベリーが映画のオーディションに提出するプロモーションビデオを制作した際は、男装してロザリンドの恋人役を演じている。好きな映画は『ルディ/涙のウイニング・ラン』『ミルカ』『フリーソロ』など、スポーツにかける人々をテーマにした作品となっている。

レベッカ・ロンシュタット

マズルカ・クシジャノフスカの友人で、ニャリウッドミドルスクールに通う少女。巻き癖のある金髪を低い位置でツインテールにしており、つねに半目をしている。キャロル・ロンシュタットの妹で、ロザリンド・ソールズベリーが女優になるためにやるべきことや、レベッカ・ロンシュタット自身がロザリンドの友人として援助できることはないかと、キャロルに助言を求めている。好きな映画は『キック・アス』『キングスマン』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』など、アメリカンコミックスを原作としたヒーロー作品となっている。

ウィリヘルム・ハウラー

ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼンが青年の頃、超大物映画監督として知られていた男性。白髪をオールバックにしており、丸いサングラスをかけている。かつて戦闘機の映画を撮った際、右の聴覚を失っている。完璧主義者で映画監督としての圧倒的な才能を持つが、気に入らないと子供のように駄々をこねて癇癪(かんしゃく)を起こすが、紡ぎ出す物語はひたすら美しいと評されている。英語が話せなかったため、語学に堪能なペーターゼンを通訳兼助手に抜擢し、企画から撮影まであらゆる現場に同行させ、ニャリウッドに進出する際もペーターゼンを連れて行った。ニャリウッドで10年間活動し、4本の映画を完成させて引退した。好きな映画は『死刑台のエレベーター』『羅生門』『ライムライト』など、映画史に欠かせない名作ばかりで背景に独特なエピソードを持つ作品となっている。

マーティン・ブラドック

大御所映画俳優の男性。世界一の俳優と謳(うた)われる名優ながら10年ほどすべてのオファーを断っていた。ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットがプロデュースした映画「MEISTER」で久し振りに主演を務め、ナタリー・ウッドワードと共演した。青年時代は映画学校の俳優コースに通っており、ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼンの教え子だった。子供の頃から貧乏だったため、楽して大金持ちになる手段として俳優を志したと語っている。衣食住と学費のすべてを八人の彼女たちの世話になっていたが、マーティン・ブラドックなりの倫理観で、金持ちの女性には高額な学費、貧乏な女性には食費などを支払ってもらっていた。ペーターゼンはマーティンの特異な存在感を感じ取り、主役しかできない俳優だと評している。

ウェズ・G・マクティアナン (うぇず じー まくてぃあなん)

映画プロデューサーを務める男性。かつてはジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼンの映画会社「ペーターゼンフィルム社」で進行助手を担当していた。ペーターゼンとマーティン・ブラドックが製作した映画に感銘を受けて入社した。芸術系ばかりの中で希少な理系の人物で、数字に強いため経理を任されていた。

ヘディ・キースラー

ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼンの映画会社「ペーターゼンフィルム社」で、スクリプター(記録係)を務める黒人女性。文学や美術に造詣が深く、竹を割ったような性格で頭の回転も速いため、スタッフのまとめ役を担っている。好きな映画は『アパートの鍵貸します』『ティファニーで朝食を』『七年目の浮気』など、クラシックなロマンティックコメディ作品となっている。

ロッシオ・バルダッサーレ

放送作家を生業とする男性。黒髪ロングヘアをうなじでまとめている。ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼンが監督を務め、マーティン・ブラドックが主演した映画の出来映えのひどさに呆(あき)れ返り、自ら映画脚本を執筆して「ペーターゼンフィルム社」に持ち込み、ペーターゼンに「100万ドルで買い取るか、自分に監督をさせろ」と詰め寄り、この作品でニャカデミー賞を獲得している。天才を自称しており、創作に必要なセンスと目的のためなら努力を惜しまない根気強さを持ち合わせている。のちに「ハート・オブ・ゲヘナ」の脚本を執筆し、監督も務めた。好きな映画は『鉄道員』『山猫』『ベニスに死す』など、いずれもイタリア映画の名作となっている。

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