築80年の古民家が紡ぐ、ラブコメディ
海沿いの地方都市にある築80年の古民家で暮らす、恋愛初心者のアラサー女性の萌と、都心のタワーマンションに住む、恋愛に対して受け身な有名建築士の慶。二人の出会いは、萌が「終(つい)の棲家(すみか)」として購入したその古民家だった。萌が「ボロ家」と感じていた家を、慶は「最高に雰囲気のある素晴らしい物件」と評したことがきっかけで、老後の不安を解消するために軽い気持ちで交際を始める。東京から約800キロ離れた古民家が、二人の距離をゆっくりと縮め、やがて本物の愛へと育んでいく。
二人の同居生活が萌にもたらした成長
慶が萌の地元で大きな仕事を受注したことをきっかけに、慶は萌の家で暮らし始める。当初、結婚前の男女同居に強く抵抗していた萌だったが、階段から落ちて腰を痛めたことで、慶の助けを借りながら渋々同居を受け入れることになる。この同居生活を通じて、「ネガティブな自分を変えたい」と願うようになった萌は、何事も素直に楽しむ慶のポジティブな考え方や飾らない振る舞いに触れるうちに、少しずつ良い影響を受けていくのだった。
慶の後輩二人との四角関係に発展
慶の後輩、佐村は、何事にもまじめすぎる性格が災いし、周囲から少し浮いた存在となっていた。慶はそんな不器用な佐村に、萌との共通点を見出して親近感を抱き、よかれと思って萌を交えてかかわりを持つようになる。しかし、この交流をきっかけに、佐村は萌に特別な感情を抱き始める。一方、慶の大学時代の後輩である瑠衣は慶への恋心を公言し、萌に対して堂々と宣戦布告する。佐村と瑠衣という二人の存在が、穏やかだった萌と慶の関係を複雑な四角関係へと発展させ、物語は大きく動き出す。
登場人物・キャラクター
赤石 萌 (あかいし もえ)
イラストレーターのアラサー女性。明るい茶髪をミディアムボブヘアにしている。長寿の家系に生まれたことから老後への不安を抱き、東京での仕事を辞めて地元に戻ってきた。終の棲家として、築80年の格安古民家を700万円の35年ローンで購入した。質素倹約をモットーとする生粋の倹約家であり、一級建築士の慶が善意で提示した1200万円の見積もりには思わず悲鳴を上げたほど。男女交際の経験がまったくないが、社長である叔母の華子の強い勧めで慶と付き合い始め、彼の言動に振り回される日々を送っている。仕事で契約を反故(ほご)にされることが多かったためか、極度のネガティブ思考で、ピンチに陥ると自分だけの脳内の神様に祈りを捧げる癖がある。
池内 慶 (いけうち けい)
一級建築士の男性。東京のタワーマンションに暮らしている。祖父の代から続く建築士の家系に生まれ、幼少期を海外で過ごしながら世界各地の名建築に触れてきた。特に日本の古民家を偏愛しており、萌の家を一目見て心を奪われ、勝手に「民子(たみこ)」と名付けた。善意から格安でリフォームを提案したが、萌を「おしゃれな暮らしを楽しむ裕福なクリエイター」と誤解し、高額な見積もりを提示して彼女を激怒させてしまう。根っからの楽天家で、女性は結婚して夫に養ってもらうのが当然という古い価値観を持っているため、萌が抱える老後への深刻な不安を理解できずにいる。孤独死を心配した萌と交際し、同居することになったが、これまで付き合った女性とはまったく異なるタイプの萌の言動に、日々翻弄されている。







