野球部狩りがリリーフとして復帰
横浜市では「野球部狩り」と呼ばれる謎の男が、さまざまな高校に出没しては、高い実力を持つ野手たちに3球勝負を挑んでいた。野球部狩りはその特異なやり方から巷では変質者呼ばわりされていたが、勝負の際はどこまでも紳士的に振る舞うことから、実際に勝負を挑まれた者からは悪印象を抱かれていなかった。そんな中、横浜霜葩高校野球部のキャプテン、小堀と、キャッチャーの広瀬洋二は、野球部狩りの正体が同じ学校に通っている桐山であることを突き止め、彼が自分たちに勝負を仕掛けるように仕向ける。そして放課後、広瀬は思惑通りにグラウンドに現れた桐山と勝負するが、彼は非凡な実力を持ちながらも、右ひじのケガが原因で1日に3球しか全力投球できないことが発覚する。この特徴に着目した小堀は、1試合で3球のみ投げるワンポイントリリーフにならないかと桐山に誘いかける。こうして横浜霜葩高校野球部に入部した桐山は、1打席を抑える絶対兵器として重宝されるようになる。
曲者揃いの横浜霜葩高校野球部
横浜霜葩高校野球部には、並外れた野球に対する情熱とコミュニケーション能力、人脈を併せ持つ小堀や、優秀だが気が弱く、自己の妄想と会話する悪癖を持つエースピッチャーの三馬翔磨、ピンチを利用してチームメイトの覚醒をうながそうとする野球部のブレーン、広瀬、野球経験の浅さを戦術性でカバーする技巧派の伊能商人など、桐山に劣らずユニークな選手がそろっている。彼らは無軌道な行動が目立つことから自由奔放に振る舞っていると思われがちだが、実際は向上心が強く、それぞれが異なる方向に思考を深く巡らせており、練習や試合を通して加速度的に成長を続けている。
個性的なライバル校
横浜霜葩高校野球部と対決するライバル校には、横浜霜葩高校野球部の部員に負けず劣らずの個性的なライバルが所属している。伊勢原聖テレーズ学園のエース選手、轟大愚は、ピッチングとバッティングの双方に長けている反面、傲慢で周囲を見下す態度が目立つほか、あらゆるものをロールプレイングゲームに例えようとする。轟とバッテリーを組む真澄賢吾は、自分の立場を向上させるためにあらゆる努力を惜しまないが、轟と同様に周囲を見下す悪癖があるほか、妹である純を溺愛しており、周囲から引かれることが多い。チームメイトたちも、二人に翻弄されつつも彼らの特徴を逆手にとって、広告塔として利用する。このように、主力となる選手のみならず補欠から監督に至るまでの全員が胸に野心を秘めており、彼らの心理や主張が暴走することで、毎回のように混沌とした試合が展開される。
登場人物・キャラクター
桐山 不折 (きりやま ふせつ)
横浜霜葩高校野球部に所属する3年生の男子。屈強な体格と卓越した野球センスを兼ね備えている。リトルシニア時代には、浮き上がるようなストレートと驚異的な変化球「ナイアガラフォーク」を武器に、「野球の神様に愛された天才投手」と称されていた。しかし、試合中に右肘を負傷し、現在では1日に3球しか全力投球ができない体となっている。そのため、公式戦への出場が叶わず、野球への渇望を満たすために素性を隠して夜な夜な強豪校の選手たちのもとへ現れ、3球勝負を挑む「野球部狩り」を行っている。そんな中、野球部の小堀に誘われ、「1試合3球限定」のワンポイントリリーフとして入部を果たす。律儀で礼儀正しく、真摯に野球に取り組む選手たちに対して深い敬意を抱いている。一方で、逆境に快感を覚えたり、「坊主頭はまじめな球児の証であり、自分にはその資格がない」と主張するなど、独自の哲学を持っている。
小堀 へいた (こぼり へいた)
横浜霜葩高校野球部のキャプテンを務める3年生の男子。ポジションはセカンド。野球に対する熱意とコミュニケーション能力が高く、ほかの高校の監督と食事をしたり、選手に関する情報を集めるために所構わず聞き込みを行うなど、自分のチームを強くするために積極的に関係者と交流している。また、野球のルールに非常に詳しく、その裏を突いた戦術を提唱して試合を優位に運ぶなど、司令塔としても優れている。ただし、選手としての実力は人並みで、轟からは「村人が少し武装したようなもの」と手厳しい評価を下されている。
書誌情報
サンキューピッチ 4巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2025-01-04発行、978-4088843056)
第2巻
(2025-05-02発行、978-4088844992)
第3巻
(2025-10-03発行、978-4088846682)
第4巻
(2025-12-04発行、978-4088847719)







