柴犬の地縛霊との奇妙な同居生活
柚子菊学園高等学校への転入を機に、一人暮らしを決意した百瀬氷は、家賃4800円という非常に安い物件を見つける。家賃がこれほど安いのは、幽霊が出る事故物件であるからだと聞かされるが、氷は心霊現象の類いにまったく恐怖心を抱いていなかったため、むしろ好条件だと考えて契約を決意する。部屋に住み着いている地縛霊の正体が、苦手な犬であることを知って一度は躊躇するものの、事務的にかわいがって成仏させれば問題ないと判断し、メゾンシーバに入居する。101号室で地縛霊の柴犬・むうちゃんと対面した氷は、突然手を嚙まれてしまい、その後も頭におもちゃをぶつけられたり、胸元に飛び掛かられたりと災難が続く。だが、これらの行為は、氷が入居する前に彼女に取り憑いていた悪霊「五頭蛇」を祓うためのものであることが判明する。霊媒師のムーンハイ・真夜に五頭蛇を完全に祓ってもらった氷は、むうちゃんと共に不思議で温かな日常を送ることになる。
メゾンシーバに住み着くジバ犬たち
メゾンシーバには、むうちゃんをはじめとする多くの柴犬が地縛霊として住み着いており、大家の大家和子をはじめとした住人たちから「ジバ犬」と呼ばれて親しまれている。ジバ犬は霊でありながら、その姿を見ることができ、触れることも可能。さらに、人間の言葉を話すこともできるが、基本的には部屋の外に出ることはできない。住み着いているジバ犬の数は部屋によって異なり、真多一徹が住む201号室にはなんと27匹ものジバ犬が住んでおり、それぞれに名前が付けられている。メゾンシーバにこれほど多くのジバ犬が取り憑いているのは、メゾンシーバが建つ前の土地の所有者であった悪徳ブリーダーが、大量の柴犬を劣悪な環境で飼育していたことに加え、記録的な猛暑と停電が重なった結果、多くの犬が亡くなったためだといわれている。
個性的な住人と魅力あふれるジバ犬
メゾンシーバには全6部屋があり、大家をはじめ、五人の住人と彼らが世話をするジバ犬たちが共に暮らしている。住人の中には、101号室に住むむうちゃんと氷、201号室で27匹のジバ犬と生活する一徹、外ではしっかり者だが家ではだらしないキャリアウーマンの酒森宵子、極度の対人恐怖症でつねに犬のお面をかぶっている絵本作家の花園夢など、個性豊かなメンバーが揃っている。一方で、全員が犬好きという共通点を持ち、部屋に取り憑いているジバ犬たちを心からかわいがっている。氷は入居直後は犬が苦手だったが、むうちゃんとの触れ合いやアパートの住人たちとの交流を通じて、徐々にその苦手意識を克服していく。また、住人たちはSNSを利用して頻繁に連絡を取り合い、時には多くの住人とジバ犬が集まる「ジバ会」を開催することもある。
登場人物・キャラクター
むうちゃん
メゾンシーバ101号室に住み着くオスのジバ犬。体格が大きく、人間の言葉を流暢に話すことができる。鋭い眼光と強い警戒心を持ち、初対面の人にはつねに怒っているように見える。しかし、一度心を開いた相手には、情深く素直で友好的な態度を示す。元々は好奇心旺盛な性格で、101号室に引っ越してきた百瀬氷と親しくなると、彼女の行動に強い興味を抱くようになる。氷との交流を重ねるうちに、ほかの人間に対する警戒心も徐々に薄れ、氷の父親である百瀬悠やメゾンシーバの住人、さらにはほかの部屋のジバ犬たちからも頼りにされる存在となる。持ち前の明るさと社交性は、多くの人々やジバ犬たちを惹きつける魅力となっている。当初はほかのジバ犬と同様に101号室から出られなかったものの、のちに感情が高ぶると霊体化し、一時的にメゾンシーバの外に出ることができるようになる。
百瀬 氷 (ももせ こおり)
メゾンシーバの101号室に住む女子高校生。年齢は17歳。心霊現象の類いに極端に鈍感で、何が怖いのかまったく理解できないため、周囲からは奇人扱いされ、避けられている。百瀬氷自身も他人に心を開くことができずにいた。さらに、以前通っていた高校での事件が原因で、周囲との関係が決定的に断絶し、その事件の発端となった犬に対して苦手意識を抱えたまま、柚子菊学園高校への転校を余儀なくされる。その後、自責の念を増幅させる悪霊「五頭蛇」に取り憑かれ、子供の頃以上に周囲との壁をつくるようになってしまう。だが、メゾンシーバに入居後、むうちゃんが氷の手や頭、胸に取り憑いていた五頭蛇を退治し、残りの部位もムーンハイ・真夜によって祓われたことで、精神の均衡を取り戻し、犬への苦手意識も和らいだ。それ以降、メゾンシーバの住人やジバ犬たちとの交流を深める中で、冷静さを保ちながらも明るい一面を見せるようになる。柚子菊学園高校に通うようになってからは、むうちゃんや知り合いの京極狼冴をはじめ、多くの友人に恵まれる。
書誌情報
シバつき物件 5巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2024-09-04発行、978-4088842479)
第2巻
(2024-12-04発行、978-4088843216)
第3巻
(2025-03-04発行、978-4088844800)
第4巻
(2025-07-04発行、978-4088846880)
第5巻
(2025-10-03発行、978-4088847122)







