シルク・ロマンスI ~異国の青年と紡ぐ恋の糸~

シルク・ロマンスI ~異国の青年と紡ぐ恋の糸~

明治初期の製糸場を舞台に、誇り高き武士の娘である長谷川鈴と、フランス からやってきた指導者のジュール・ベルランのあいだに生まれるラブロマンス。製糸の仕事を通じて、心を通じ合わせていく二人の様子が繊細に描かれる。「プリンセスGOLD」2019年5月号から7月号にかけて連載された作品。

正式名称
シルク・ロマンスI ~異国の青年と紡ぐ恋の糸~
ふりがな
しるくろまんすわん いこくのせいねんとつむぐこいのいと
作者
ジャンル
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あらすじ

第1巻

富岡製糸場で製糸業の技術を学んだ長谷川鈴は、誠英製糸場に配属されることになった。操糸指導者としてやる気に満ちあふれる鈴だったが、誠英製糸場では伝習工女が疲れ果てており、出来上がった糸の質もよいとはいえないものばかりだった。誠英製糸場の社長で出資者でもある高殿英一郎に、鈴が問題点を指摘したところ、フランスから指導者として招いたジュール・ベルランの存在が大きな問題だと告げられる。さらに高殿は、鈴に対してジュールが仕事をするよう説得してほしいと依頼する。そして言葉巧みに鈴がジュールと一晩を共にしたという既成事実を無理矢理に作った高殿は、鈴から伝習工女としての仕事を奪う。一方の鈴は、表向きはジュールの洋妾(西洋人の妾になる日本人女性)の立場を取りながらも、誠英製糸場の生産能力と伝習工女の待遇を改善するために動き出す。そんな中、鈴はジュールがこれまで日本で抱えてきた孤独や、本来の優しく紳士的な性格に触れ、次第に心惹かれるようになっていく。

登場人物・キャラクター

長谷川 鈴 (はせがわ すず)

誠英製糸場に操糸指導を行うためにやってきた伝習工女の女性。以前は富岡製糸場で勤務していたこともあり、誠英製糸場の伝習工女の中でもリーダーとして迎え入れられた。伝習工女として勤務するつもりだったが、高殿英一郎の企みによりジュール・ベルランの洋妾(西洋人の妾になる日本人女性)とされてしまう。最初はあくまで高殿の指示を受けてジュールに接近したものの、ジュールの人柄に触れて次第に好意を抱くようになり、国籍を超えた恋に落ちていく。武家の一族に生まれ育ち、気が強く誇り高い性格の持ち主。高殿に対しても遠慮することなく自分の気持ちを伝えるため、あいだに入る山田善助を困らせている。兄が幕府の作った学校でフランス語を学んでいた縁もあり、フランス語で簡単な会話をすることができる。

ジュール・ベルラン

誠英製糸場の運営アドバイスと、伝習工女たちを指導するために招かれたフランス人の青年。しかし、日本での生活が肌に合わず、高殿英一郎が誠英製糸場の敷地内に建てた館に引きこもっている。高殿からの命を受けて自分に接近してきた長谷川鈴に最初は拒絶反応を示していたが、彼女の誇り高くまっすぐな性格に惹かれ、次第に打ち解けていく。ジュール・ベルランにとって鈴は洋妾(西洋人の妾になる日本人女性)に当たるが、鈴の気持ちを大切にしており、何をするにも紳士的に接する。金髪で青い目を持ち、その容姿で日本人から奇妙な生き物を見るかのような視線を向けられたことが多く、外に出ることを嫌がっている。繊細で引っ込み思案な性格だったが、鈴と接していくうちに明るい性格へと変わっていく。

高殿 英一郎 (たかどの えいいちろう)

誠英製糸場の社長を務める若い男性。高殿財閥の御曹司で、誠英製糸場は高殿財閥の出資によって運営されている。日本での生活が肌に合わず、仕事をまったくしようとしないジュール・ベルランにしびれを切らし、富岡製糸場からやってきた長谷川鈴に世話係を頼む。その後は、鈴を伝習工女ではなく、ジュールの洋妾(西洋人の妾になる日本人女性)として働かせている。物腰は柔らかく人当たりもいいが、実績を残さない者や自分に逆らう者は容赦なく切り捨てる冷酷な一面も持っている。ただし、鈴に対しては疎ましく感じつつも、主張する言葉には一理あると、大目に見ることが多い。

山田 善助 (やまだ ぜんすけ)

高殿財閥が出資する誠英製糸場の工場長を務める高齢の男性。工場の生産量のことしか考えておらず、激務から作業のペースが遅れている伝習工女たちを激しく叱責しているため、現場からの評判は最悪。しかし、絶対的な権力を持つ高殿英一郎に遠慮なく発言する長谷川鈴を心配したり、鈴に指摘を受けた際には伝習工女への接し方を改めたりと、実は冷たい人間ではない。

(たま)

和装や洋装の着付けを生業としている中年の女性。高殿英一郎ともつながりがあり、長谷川鈴がジュール・ベルランと初めて対面する際にはドレスの着付けを行った。以前は横浜の西洋人の屋敷で働いていたこともあり、西洋文化に詳しい。明るくポジティブな性格で、非常に肝っ玉が据わっている。

場所

富岡製糸場 (とみおかせいしじょう)

明治初期、輸出量No.1であった国内の製糸業をより活性化するため、政府が作った模範工場。フランス式の製糸技術を採用しており、富岡製糸場で技術を学んだ伝習工女たちが、各地にできた製糸場の指導者になっている。なお、長谷川鈴のように富岡製糸場で経験を積んだ女性は、伝習工女の中でもエリートの扱いを受けている。

誠英製糸場 (せいえいせいしじょう)

高殿財閥が出資する製糸場。工場長は山田善助が務めている。富岡製糸場と同じフランス式の製糸技術を採用している。富岡製糸場で経験を積んだ長谷川鈴がやってきたことをきっかけに、ギスギスとした工場の雰囲気が徐々に改善されていく。

その他キーワード

伝習工女 (でんしゅうこうじょ)

各地の製糸場で働く女性たち。生産性や技術力アップのために、主に地方の若い女性が伝習工女になる傾向がある。富岡製糸場で製糸技術を学んだ伝習工女はエリート扱いを受け、ほかの地方の製糸場に配属された際には、周囲から一目置かれることになる。

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