概要・あらすじ
20世紀初頭、マヤ文明の遺跡を発掘調査していた日本の調査隊が巨大な石碑に刻まれた文字を解読した所、それは世界を征服する数々の独裁者の名を記した預言書で、その最後にはまだ知らないジャパッシュという名が刻まれていた。預言に書かれた1956年12月8日、日本に天使のような顔に邪悪な相を持った一人の赤ん坊が生まれる。
恐怖を感じた産婆が死産に見せかけて殺そうとしたが、赤ん坊は生まれ持っての悪魔のような生存本能で逆に産婆を事故に見せかけて殺してしまう。やがて成長し小学生となった日向光が友人の石狩五郎の家に遊びに行くと、その祖父が日向光こそ預言にあったジャパッシュの事だと確信。殺害しようとするが返り討ちに遭い、家に火を付けられてしまう。
中学生となった日向光は自分の才能に気付き、その美貌と巧みな話術で自分の奴隷となる女生徒たちを育て上げていた。そんな中でクラスに転校してきた男は、かつて火事の中で祖父を助けようとして顔に大きな傷を負った、石狩五郎だった。ただ一人日向光の本性を知る石狩五郎は何度も日向光の手に掛かりながらも復讐の機会を狙い、ジャパッシュという組織を使って日本を我が物にしようとする日向光に挑んでいく。
登場人物・キャラクター
日向 光 (ひゅうが ひかる)
マヤ文明の預言書に書かれていた1956年12月8日生まれで、後に私設軍隊ジャパッシュを立ち上げ、日本を自分の思い通りに支配しようと企む。貧乏な八百屋の息子として生まれ、学生時代から勉強やスポーツの成績は最低だが、自他ともに認める美貌の持ち主で女生徒たちを虜にし、また教師さえも太刀打ちできない冴えた理屈で不良たちも心酔させていき、自分の親衛隊として駒のように扱える人間を数多く集めていった。 やがてアイドルやタレントのような美形青年による集団ジャパッシュを組織。人々の人気を集めながら、同時に「影」となる武力組織も育てる。過激派の暴動を殲滅させる事で民衆にジャパッシュを自警団として認めさせ、さらに警察官として逮捕、武装する権限も得て巨大化させていく。 自分は何百年に1人の選ばれた本当の権力者だと確信して、緻密な計画を立て行動している。目的の為には自分を愛してくれた女友達でさえ殺害して利用できる非情さを持つ。大衆を酔わせるほど演説が上手く、また優れた情報力で企業や政府、警察、自衛隊の弱点を察知し、大胆な戦術と巧みな交渉術で権力を手にしていく。
石狩 五郎 (いしかり ごろう)
マヤ文明の遺跡から独裁者達の名前を預言した石碑を発掘した学者の孫。幼い頃日向光に祖父を殺された際に、助け出そうと火事の中に飛び込んだために、同級生からフランケンシュタインが腰を抜かすと揶揄されるほど顔に大きな手術の痕が残ってしまう。その凶悪な顔のせいで何度も周りの人間から根も葉もない罪を着せられてきた。 祖父が亡くなる直前に日向光の正体について聞かされたが、警察も信じてくれなかったため日向光を憎み、再会を果たしてからは常に復讐の機会を狙っている。中学の時に日向光の策略で、学校に忍び込んだ窃盗犯に仕立て上げられてしまい少年院送りになりそうになった所を、担当の刑事に救われ、以降も何かと世話になっている。 ジャパッシュが成長してくるとより危険視するようになり、日向光殺害の為には死もいとわず、また犠牲も止む無しと考えて乗客の乗る旅客機に爆弾を仕掛けた事さえある。自衛隊に入隊すると、ジャパッシュが不当に自衛隊幹部を逮捕したとして、上官、警察庁長官、大臣の制止を無視して仲間を扇動し、留置場に強行突入する。 入院している恋人のマリがいる。
預言者 (よげんしゃ)
作中で狂言回しの役割を担い、日向光が悪事を働く度に傍らに登場しては、預言通りに物事が進んでいると、千年に一人と見込んだ男の独裁者への成長を見守っている。マヤ文明での預言者はアレクサンダー、アッチラ、ジンギスカン、ナポレオン、ヒットラー、ジャパッシュの誕生を預言し、石碑にそれぞれの名と生誕時期を記した。
五郎の祖父 (ごろうのそふ)
20世紀初頭に学術調査で訪れたマヤ文明の遺跡から預言者が残した世界の征服者達の名が刻まれた石碑を発掘する。解読した時点ではヒットラーとジャパッシュはまだ登場していなかったが、第2次大戦でドイツがポーランドに侵入した時の指揮官がヒットラーだと知ると、ジャパッシュの誕生を恐れるようになる。 小学生の孫石狩五郎が家に連れて来たクラスメイトの日向光を見るなり、即座にジャパッシュと確信し、殺害を試みるが逆襲されてしまう。その後家を焼かれ、助けに来た石狩五郎に日向光の正体を告げ息絶えた。
刑事 (けいじ)
日向光が中学の時に学校の金庫が破られた窃盗事件を担当した刑事。事件を調べていく内に証拠は石狩五郎が犯人である事を裏付けていたが、周りの警察官も含めた凶悪な人相への偏見によるものだと無罪を信じて、少年院送りになる所を救った。後に公安警察に移り、日向光を警戒する石狩五郎の話を聞きながら最初の内は信じず、むしろ石狩五郎の暴走を止める立場だった。 やがて武力不足に悩む警察の実情を見ていく内に、それを利用してジャパッシュを武装させようと企てる日向光の目論見に気付き始める。自衛隊幹部による暗殺未遂事件の留置場で証拠となる爆薬を入手した事で、石狩五郎と協力して日向光の悪事を国民の前で暴くために逮捕に踏み切る。
巻田 (まきた)
日向光の中学時代の同級生で後のジャパッシュ幹部。元々は針田と共に転校してきた石狩五郎の子分をしていた。女生徒に出したラブレターの筆跡を日向光に真似られ石狩五郎に罪を着せる証拠として使われてしまったため報復をした時に、大切な顔を守り大怪我をするまで身体を殴られ続けた度胸と、自分を信じて事件の真相を打ち明けてくれた態度に男として心酔し、全てが計算とも知らずに命を懸けて日向光に付いていく事を決める。 ジャパッシュの東京本部の指揮をしている。
氷村 (ひむら)
日向光の高校時代の同級生で後のジャパッシュ参謀。元々は別の中学出身の番長に付いていたが、高校の番長争いで日向光の子分を従える指導者としての才能を見込み、付いていく事を決める。日向光からは情勢を読む力が抜群だと幹部として招かれる。頭が切れ、ジャパッシュを大きくするための様々な奇抜な行動の裏にある真の目的を理解して日向光の右腕としてサポートしている。 同時に、作中で解説をする役割もしている。
榊原 義輝 (さかきばら よしてる)
海運業者浮沈海運社長で、後の北海道無分別郡知事。重労働で人手不足だった会社を、日向光にトレーニングと称して子分たちを無償で提供してもらった事で、北海道を基盤とした日本全国に路線を持つフェリー会社にまで成長させた。日向光の指示により赤字覚悟で北海道の不便な土地まで交通を発展させ、地元の人たちによる支援と、応援に駆け付けたジャパッシュ人気が追い風となり、現職の有力候補山田一を破り知事に当選する。 知事の権限を利用して日向光に自衛隊の極秘資料を横流しにする。
丸目 正 (まるめ ただし)
美少年を集めた表のジャパッシュの隊長として制服姿のパレードの先頭に立ち指揮をする。本職は週刊連載25本という連載数を誇る漫画家で、2世部隊などを扱った戦記物が得意なモデルガン、プラモデル好きの男で指導力は無い。紙の上では満足できず自分の想像した軍隊を作りたくて借金をしてまで日向光に協力した。 隊員達の制服や身に着けている特注のモデルガンも全て丸目正が資金を出している。
安川 (やすかわ)
裁判官。市民たちのジャパッシュ人気が高まる中、猛暑の中で行われたジャパッシュの存続を掛けた過剰防衛を審理する裁判を受け持つ。冷静だけあってか寒さには強いが暑さには異常に弱い。日向光は、事件で娘を殺された男の友人である友田が裁判官となり、感情的にジャパッシュ有利な判決になるものと考えていたが、手違いで被害者とは全く赤の他人の安川が受け持つ事となった。
黒川 (くろかわ)
新聞記事やコマーシャルに影響される大衆心理に目を付けた日向光が勧誘したマネジメントの専門家。元々は売れっ子歌手のマネージャーだったが、ジャパッシュを大きくさせるという舞台を用意して10分の1のギャラで雇う。口コミ戦略や、若者たちの徴兵逃れを利用した戦術で、10万人だったジャパッシュの規模を500万人まで拡大させる。
情報部長 (じょうほうぶちょう)
元新聞記者。早耳を活かし、首相が目論むジャパッシュを自衛隊配下とした日本の軍国化計画など、政府内部でも極僅かな人間しか知り得ない極秘事項をいち早く入手する。ジャパッシュにとって不都合な法案を通そうとする議員達の暗殺も提案する。
マリ
石狩五郎の恋人。入院中で何度も手術を受けているため、石狩五郎は熱心に花を持って見舞いに来ては退屈させないように話しかけていた。3度目の手術の後も、追われる身ながら経過を心配してマリの元を訪れた。
菅谷 (すがや)
北海道で自衛隊クーデーターに巻き込まれ孤立した日向光が集めた、地元一流企業でジャパッシュ協力会社社長の1人。町工場で人形に着せる服を作っていたがジャパッシュ隊員たちの服の注文を受けるようになり成長を遂げたため、他の社長達同様に日向光に多大な恩を感じている。誰よりも早く逃走資金として5千万円を用意し、事業を活かした計画で社員と共に脱出の手助けをする。
集団・組織
ジャパッシュ
『ジャパッシュ』に登場する組織。マヤ文明の遺跡の中から発掘した石碑にアレクサンダー、アッチラ、ジンギスカン、ナポレオン、ヒットラーら世界の独裁者と共にその名が刻まれていた。後に日向光が漫画家の丸目正を指揮官兼出資者として、美青年を競わせ入隊させると揃いの軍服を着せてパレードを行う、美しさと正義を掲げた自警団として設立する。 その裏では不良やプロレスラーを鍛え上げたジャパッシュ「影」と呼ぶ暴力集団を育て上げ、実戦では密かに入れ替えて過剰防衛で暴動を鎮圧していった。民衆の期待が高まり入隊希望者が増えてくると、人手不足の警察を支援する代わりとして同等の警察権を手に入れ、武器の所持と逮捕が行えるようになっていく。