あらすじ
第1巻
65歳の江月朝一は、長年務め上げた会社を定年退職した。これからは5歳年上の妻・江月夕子を労い、旅行へ行ったりしてのんびり過ごそうと考えていた朝一だったが、家に帰ると夕子から信じられない事実を告げられる。それは妊娠の報告だった。70歳での妊娠など信じられるはずもなく、朝一は自分の子供なのかとつい妻を疑い、産むことの是非にさえ悩んでしまう。しかし、夕子の顔は真剣そのもので、彼女の表情に出産に対する強い意志を感じた朝一は、腹をくくり、全面的に協力することを決意。そして、毎日の二人の生活はガラッと変化する。食生活の見直しや、タバコやお酒などを節制する日々は、それまで悠々自適に暮らしてきた朝一には煩わしいものだった。だが、半月に一度の妊婦健診に付き添い、お腹の中にいる赤ちゃんの映像を見た朝一は大いに感動し、夫婦で参加したママパパ教室では、出産映像や妊婦体験を通して母親の壮絶さを知って、二人で沐浴の練習も行うようになる。そして赤ちゃんを迎える準備に奔走しつつ、朝一と夕子は次第に親になることを実感していく。帝王切開の予定日が近づく中、手術に絶対はないという事実と、年齢による心配も加わって、生まれて来る赤ちゃんのためにメッセージを残しておきたいと考えた夕子は、ビデオレターを撮影することを決める。夕子は、赤ちゃんの性別がどちらであっても、名前は「みらい」に決めていること、赤ちゃんに対する強い思い、そして朝一への感謝を語り、今自分は生まれてきて本当によかったと感じていることを言葉にする。そして、朝一と夕子は、とうとう帝王切開手術当日を迎えることになる。
第2巻
無事に生まれてきた女の赤ちゃんは、予定通り「江月みらい」と名づけられた。江月朝一は、出生届を提出するために市役所へと訪れると、その手続きの多さに苦労し、人一人がこの世に生まれる重大さを実感する。みらいは、体重の増加が思わしくなく、一時は退院が先延ばしになるかもしれないという状況に陥ったものの、産後7日で退院する運びとなり、老夫婦による自宅での育児が始まる。昼夜関係なく行われる授乳により、つねに睡眠不足の状態となっていた江月夕子を心配して買い物など、自分にできることは積極的に行うようにしていた。そんな夕子のカンフル剤となっていたのは、コンビニスイーツの存在だった。朝一は、夕子が心身共に元気になるようにと彼女の欲するスイーツを買いに行き、子育てを応援していた。しかし時間が経つにつれ、夕子はイライラを募らせ始める。ある時、外へ出て空気を吸うだけで気分が変わることを知った朝一は、夕子にプリンを買ってきて欲しいとおつかいを依頼する。突然のことに不満げな夕子だったが、外の新鮮な空気を吸い、ちょっとした挨拶を交わしただけで、疲れと不安で委縮していた心が少しずつ解放されていくことを実感。それと同時に、自分が求めていた幸せが、家で待つ朝一とみらいのもとにあるということに、改めて気づかされるのだった。
第3巻
高齢でありながら初めての子育てに奮闘していた江月朝一、江月夕子の二人は、生後100日目にはお食い初めを行い、リボンを着けておしゃれをした我が子・江月みらいのかわいらしさに悶絶。ベビーバスもいつしか卒業し、お風呂はどちらが入れるか毎日じゃんけんで決めていた。みらいはもうすぐ生後5か月を迎えるが、日に日に年老いていく自分たちの体に不安を抱えつつ、心筋梗塞や脳梗塞の原因になり得るものは極力排除して、みらいのためにと合言葉のように健康を意識する日々を送る。その後もみらいは順調な成長を続け、生後6か月の集団健診では医者から優秀とお墨付きをもらった。娘の健やかぶりに安心する二人だったが、みらいが生後6か月を迎えた翌日、怖れていたことは突然起きる。みらいが泣いているのに夕子が起きようとしないことに疑問を感じた朝一が声をかけると、夕子が高熱を発し意識朦朧となっていた。慌てた朝一は救急車を呼び、対応に追われるが、夕子に付き添って救急車に乗りこもうとした時、同じマンションに住む巻田と婿養子のタケシから声をかけられる。巻田家は、もともと顔見知りだったが、ひょんなことからベビーカーを借りることになり、最近なかよくなったご近所さん。緊急事態に狼狽する朝一に、みらいを我が家で預かると申し出てくれたのだ。そして、巻田家にみらいを預けた朝一は、救急車に乗りこみ早慶大学病院へと向かう。一方、慣れない子育てで体力の限界を超えていた夕子は、生死の境を彷徨うことになる。
第4巻
江月朝一と江月夕子のあいだに生まれた江月みらいは、すくすくと育ち、生後1歳6か月を迎えた。すっかり女の子らしくなったみらいは、ちょっぴり伸びた髪を二つに結び、フリルのついた洋服に身を包んでいた。今日は保育園の入園式。朝一と夕子はバタバタと準備に追われ、ようやく出発しようかと思っても、みらいがせっかく結んだ髪をほどいてしまったり、ハートの服がいいと駄々をこねたりと、出かける準備をするだけで悪戦苦闘。結局予定通りの時間には出発できず、三人はやっとの思いで保育園へと向かう。みらいを保育園に通わせることを決めるまでには、さまざまな葛藤があった。江月家の経済力を考えると、朝一が再び働きに出る必要があり、みらいの面倒を一人で担うには夕子の体力には不安があった。保育園への入園は、考えに考え抜いて出した結論だったが、みらいが保育園を嫌がらないかと、入園に対する心配を山ほど抱えていた。多くの幼児が集まって行われた入園式は、先生方の努力もあって、始終明るく、温かいものとなり、二人の不安を払拭することになる。朝一は新たに清掃会社に勤め始め、仕事帰りにみらいを迎えに行くようになり、夕子は朝の登園を担当する。だが、新しい生活を始めてみると、周りのママたちが会社勤めで時間に追われる中、自分は働いていないのに保育園にみらいを預けていることに対して、罪悪感を感じるようになってしまう。一方、みらいはといえば、新しい生活による刺激で、日々目覚ましい成長を見せていた。しかし同時に、どんどん我が強くなっていくイヤイヤ期到来のみらいの扱いに苦戦し、試行錯誤の日々が始まる。
第5巻
江月みらいは2歳になり、保育園での生活にもすっかり慣れて、楽しい毎日を送っていた。一時は生死の境を彷徨った江月夕子も、体調はすっかり回復し、主治医の鬼子母龍太郎からお墨付きをもらっていた。保育園のママ友・玉川今日子となかよくなったことで、機械音痴だった夕子もスマートフォンを購入。江月朝一にとっても懸念材料の一つだったママ同士の付き合いも、スムーズになっていた。一方のみらいは、言葉数が増えてなんに関しても「なんで?」を連発し、朝一と夕子はみらいからの質問攻めに手を焼いていた。そんな中、だんだんと対応に慣れ、うまい理由づけができるようになっていく夕子の姿に、朝一は感心しきりだった。しかし、みらいが3歳を迎えた年の秋、周囲はにわかに慌ただしくなる。今通っている保育園は2歳児クラスまでしかないため、次の春から新たに入園する場所を探さなくてはならなくなってしまったのだ。せっかく慣れたこの保育園での日常も、また変わってしまうのかと、落胆する朝一だったが、別の保育園にするか、もしくは幼稚園にするかを決めるのは簡単なことではなかった。毎日通うための距離感や降園時間の違い、お弁当の有無など、それぞれによさや問題点があり、検討材料は多岐にわたる。夕子の体力や、朝一の生活リズムにも照らし合わせ、みらいにとって最善の場所を探そうと奮闘する。そんな中、朝一は自分がただ心配をするだけで、何かと夕子に任せきりになっていることに気づき、まずは自分自身の行動を変えていこうと決意。そして、朝一と夕子は、みらいを連れて幼稚園の見学に訪れる。
メディアミックス
TVドラマ
2020年4月、本作『セブンティウイザン』のTVドラマ版『70才\、初めて産みますセブンティウイザン\。』が、NHK BS4K、NHK BSプレミアムで放送された。江月朝一を小日向文世が、江月夕子を竹下景子が演じている。なお、TVドラマ版第5話からは、タイトルが『70才\、初めて産みましたセブンティウイザン\。』に変更された。
登場人物・キャラクター
江月 朝一 (えづき あさいち)
マンション「ストーク鴨南」の四階に住む老齢な男性。年齢は65歳。胴長短足のなで肩で、頭は禿げ、ぽっちゃりした体型をしている。会社からは60歳での定年退職を強く勧められていたが、会社の制度を利用して、半ば意地だけで65歳まで勤務を続けた。そのため、陰ではいつまでも辞めない厄介者として扱われていた。退職後は、見合い結婚をした5歳年上の妻・江月夕子を労うため、旅行へ行こうと考えていたが、定年退職を迎えたその日、家に帰ったところで妻から妊娠を告げられた。当初は妊娠の事実すら受け入れられず、自分の子供なのかと妻を疑い、産むことの是非にさえ悩んでいた。しかし夕子の、出産に対する強い意志を感じ、全面的に協力することを決意する。妊娠が判明してからというもの、夫婦で長生きしなければと考えた夕子により、野菜中心の食事や禁煙など、何かと私生活に制限が設けられるようになった。そのため、妊娠中で酒が飲めない妻を気遣って公園で飲酒したり、夕子の見えないところで煙草を吸うようになる。ホームセンターが大好きで、売り場を見る以外にも、タバコを吸ったり、フードコートで好きなものを食べ、飲酒もできるため、妊娠発覚後は彼にとってのパラダイスと化した。歳が歳であるだけに、身体はあちこちにガタがきていたが、ある日、突然胸の苦しさや目眩などを覚え、体調不良を起こしたことがきっかけで、病院を受診すると、逆流性食道炎が判明。これを機に将来のことを真剣に考えるようになり、即座に禁煙を実行した。夕子が無事に江月みらいを出産したあとは、ぎこちないながらも子育てに参加し、夕子と協力し合いながら日々を送っていく。若い頃から苦労の多い人生を送っており、14歳の時、コークス炉の爆発事故に巻き込まれて父親が亡くなった。その後、家計が苦しくなったために中学卒業後は就職。20歳の時に母親も亡くなり、天涯孤独となった。みらいが保育園に入園してからは、同じマンションに住む巻田の紹介で、清掃会社に雇ってもらえることになり、マンションの共用部分の清掃や、工事現場の警備員などさまざまな仕事に従事する。飾らない優しさで、夕子とは結婚以来ずっと仲がいい。
江月 夕子 (えづき ゆうこ)
江月朝一の5歳年上の妻。マンション「ストーク鴨南」の四階に住んでいる。もうすぐ70歳を迎えるある日、パート先のスーパーで具合を悪くなり、早慶大学病院で精密検査を受けたところ、妊娠が発覚。70歳で江月みらいを出産するという、医学的にも例のない当事者となる。見合い結婚をして以来、40年間子供ができず、朝一には子供を持つことはとっくにあきらめているものだと思われていたが、実は母親になることに対する執念をいまだに持ち続けており、強い決意を持って出産に臨んだ。小柄な体型で優しい性格だが、意外にも気は強く、朝一に対しても思っていることははっきり言葉にして伝える。妊娠がわかってからは、夫婦で長生きしなければと意気込み、食生活を野菜中心に切り替えたり、夫のたばこを制限したり、何かと口うるさくなる。優柔不断なところもあり、取捨選択が苦手。妊娠中の自粛生活の影響もあってか、産後は特に甘いものを欲するようになり、朝一に買いに行ってもらっては、コンビニスイーツなどを食している。産後は昼夜関係なく授乳が続き、体力が必要となる中、朝一と助け合ってなんとか乗り切っていく。子育て真っ只中のある日、疲労が重なったことが原因で免疫力が低下し、敗血症を引き起こした。一時は生死の境を彷徨うが、懸命な治療の甲斐あって生還し、無事退院することができた。もともといい家柄の末娘で、夕子の祖父は非常に厳しい人柄だった。朝一と知り合う前、大学で知り合った男性と一度駆け落ちをしたことがあったが、連れ戻されたあと、相手の男性は逃げてしまったため、破局することになった。その後、それが原因で実家から勘当されるという経緯がある。30歳の時、勤め先の先輩からの勧めで見合いをすることになり、朝一と知り合ったが、朝一にはそのすべてを打ち明けたうえで、結婚することになった。アメリカとソ連の冷戦時代に朝一といっしょに見た映画が原因で、コンピューターには苦手意識を持っているため、かなりの機械音痴。しかし、みらいが保育園に入園し、玉川今日子と仲よくなったことがきっかけで、スマートフォンを購入した。
江月 みらい (えづき みらい)
江月朝一と江月夕子のあいだに生まれた女児。出生時の体重は2720グラム。超のつく高齢出産で生まれた子であるため、さまざまな懸念があり、周囲からは母子共に心配されていた。だが、周囲の心配をよそに、なんの問題もなく元気に生まれた。出生後、なかなか体重が増えず、このままでは退院が伸びることになるかもしれないという事態に陥るが、退院予定日当日になって無事に目標の30グラム増となり、退院することができた。その後は時間と共に、特に大きな問題もなく、すくすくと成長し、1歳半で保育園「かるがもランド」に入園。2歳頃にはなんでも自分でやりたがり、全力で駄々をこねるイヤイヤ期が到来し、両親を振り回しながらたくましく育つ。3歳で、「かもなん第一幼稚園」に入園することになる。名前は母親の夕子が出産予定日直前に決めた。
オードリー
江月朝一と江月夕子が、初めての飼い犬・ロッキーを亡くしてから10年後、ホームセンターのペットコーナーで夕子が一目惚れし、迎え入れることになった二代目の犬。4歳の時に発作を起こしたことで、てんかんであることが発覚し、以後ずっと薬を飲んでいた。それからも子宮蓄膿症や乳腺腫瘍など、数々の病気やケガになるものの、その都度乗り越えたくましく生きていた。晩年は、心臓などさまざまな部分が弱り、10種類を越える薬を飲んでいたため、薬代だけで月に3万円を越えるような状態が続いた。朝一と夕子による介護を受ける日々を送っていたが、20歳近くまで生き抜いて、夫婦に見送られる中、静かに息を引き取った。オードリーは、いつも江月夫妻のケンカを仲裁役や、険悪な空気を変える大切な役割を担っていたため、彼の存在が夫妻に毎日悔いなく生きること、生きるために生きることなど、非常に大切な価値観を植え付けた。
鬼子母 龍太郎 (きしも りゅうたろう)
早慶大学病院の院長で、大学教授も務める壮年の男性。もともとの担当医を押しのける形で、江月夕子の担当医となった。70歳での出産という医学的にも例のない事態に、職業的好奇心を隠し切れず、学生たちにも積極的に勉強させようとしている。一方で、江月夫妻に対しては朴訥な祝福の言葉を述べたりもする心ある人物。妊娠した夕子の体を心配する江月朝一に、「おめでたいこと」と言ったことで、朝一が妊娠を明るく受け入れる方向へ切り替えるきっかけを作った。のちに夕子が体調を崩し、救急車で搬送されてきた時には気落ちしていた朝一に対し、赤ちゃんの写真を見せて欲しいと要求。将来はきっと美人になると伝え、朝一を元気づけ、子育ては頼れるものはなんでも頼って、使えるものはなんでも使っていいんだと勇気づけた。
巻田 (まきた)
江月朝一、江月夕子夫妻と同じマンション「ストーク鴨南」の2階に住む女性。娘夫婦に二人目の子供が生まれるにあたり、娘に体を休めてもらおうと孫の流星の面倒を率先して見ている。ちょうどイヤイヤ期にあたる流星には理解を示しつつも、扱いには少々手こずっている。それと同時に、いつまでも反抗しっぱなしの娘、サチの様子にはあきれ顔を見せている。公園で流星を遊ばせていた時、散歩にやって来た江月夫妻と遭遇し、談笑。その際、夕子に抱かれていた江月みらいを、江月夫妻の孫と勘違いし、自分たちの子供なんだと話す江月夫妻の言葉をジョークだと思い込んだ。のちに、夕子が倒れて救急車で運ばれた際には、朝一からみらいを預かり、世話を買って出た。
夕子の父 (ゆうこのちち)
江月夕子の父親。いつも苛立っており、夕子にとっては怖い存在だった。終戦後、実家の貿易商の仕事を継いだが、自身の父親である夕子の祖父がすべてを取り仕切っていたため、不満を募らせていた。戦時中、憲兵だった夕子の父は、前線に行かずに無事終戦を迎えたが、「親父の差し金で憲兵に転科されなければ俺はもっと出世できたんだ」が口癖だった。いつもどこか遠くを見ているようで、妻である夕子の母の目をあまり見ようとしなかった。紆余曲折あって、妻が他界したが、その後すぐに再婚。再婚相手の女性はその時すでに身ごもっていた。
夕子の母 (ゆうこのはは)
江月夕子の母親。控えめで我慢強い性格をしており、抑圧され、苦労の多い人生を送っていたが、それを不幸とは感じていなかった。だが、子供たちをとても愛していたため、子供が巣立っていくにしたがって、寂しさを募らせていた。いつも夕子には、夕子の父が無事だったから夕子が生まれてこられたことを繰り返し言い聞かせており、戦争でたくさんの人が亡くなったため、夕子にはたくさんの人の命が込められていることを忘れないで欲しいと語っていた。まだ幼かった夕子に対しても、つねに誠実に接していたため、夕子にとっては誇らしい存在であり、理想の母親像となっている。のちに、大人になった夕子が夕子の祖父から勘当されて家を出たあとは、夫に内緒で金銭をやりくりし、こっそり夕子に仕送りを続けていた。夕子が出て行ってから5年ほど経過した頃、他界した。
夕子の祖父 (ゆうこのそふ)
江月夕子の祖父。厳格を絵に描いたようなタイプで、夕子にとっては夕子の父よりも恐ろしい存在だった。恋愛結婚を許さず、夕子の姉には見合いを設定し、有無を言わさず嫁がせた。また、夕子が大学に進学することに反対し、入学後に付き合い始めた相手との交際を知り激怒。駆け落ちした夕子を無理矢理連れ戻し、相手の男性と別れさせるように仕向けた。その後、夕子の結婚相手を勝手に決めて嫁がせようとしたが、夕子が破談にしたため、彼女のことを勘当した。
サチ
巻田の娘。江月朝一、江月夕子夫妻と同じマンション「ストーク鴨南」の2階に住んでいて、現在妊娠中。うたた寝をしているあいだに、巻田と共に長男の流星がいなくなってしまったことを心配し、血相を変えて公園まで探しに来た。公園でようやく二人の姿を見つけたものの、巻田は江月夫妻とおしゃべりしていて、まったく流星を見ていない状況を確認し、さらに遊具から流星が落下してしまったため、巻田と顔を合わせたとたん怒りをあらわにする。そもそも、携帯電話も持たず、自分になんの承諾も得ないで息子を連れ出した巻田に腹を立て、イライラを募らせていたため、怒りが一気に頂点に達し、貧血を起こしてしまう。巻田が、流星や自分のためを思って世話を焼いてくれていることに関して、内心は理解し、感謝しなければと思っているが、一方でイライラし、母親にきつくあたってしまっている。そんな自分がイヤで思いつめていたが、江月夫妻と話したことで、少し心の重しを取り除く。なおその際、夕子に抱かれていた江月みらいを江月夫妻の孫と勘違いし、自分たちの子供だと話す江月夫妻の言葉をジョークだと思い込んで、まったく取り合わなかった。のちに、無事長女の琉奈を出産する。
玉川 今日子 (たまがわ きょうこ)
出産前の「もうすぐママパパ教室」と、赤ちゃんの3~4か月健診で江月朝一、江月夕子夫妻といっしょになった女性。ある日、娘の飛鳥を連れて夫婦で散歩中、江月みらいを連れてベビーカーで散歩中だった江月夫妻とばったり遭遇し、話しかけた。夫婦共働きのため、自分の仕事復帰に向け、子供を保育園に入れるための準備を行っている最中。しかしなかなか決まらず、結局はみらいと同じ保育園に飛鳥を入園させることになった。娘の入園と共に仕事が再開したため、お迎えの時間を気にしつつ、職場から猛ダッシュで帰宅し、保育園に直行する日々を送っている。保育園では、ママたちのSNSグループを作成。週末に子供たちと共に公園で遊ぶなど、中心となって集まりを企画した。そんな中、公園で遊んでいた朝一とみらいに遭遇。ママたちの集団に参加しないかと江月夫妻を誘い、朝一と連絡先を交換した。もともと、結婚後なかなか子供ができずに悩み、ようやく授かった赤ちゃんだった。どちらかというと消極的な性格だったが、飛鳥のためにと奮起し、積極的に動くようになった。だが、まだ何においてもうまく立ち回れない自分に自信を持てないところもあり、夕子と親しくなったことで、救われていく。
タケシ
サチの夫。江月朝一、江月夕子夫妻と同じマンション「ストーク鴨南」の2階に住んでいる。江月夫妻が、ベビーカーがなくて困っているという話を聞き、今自分たちが使っていないベビーカーを貸すため、江月家を訪れた。その際、家に寄っていくように勧められ、江月家に上がってお茶をごちそうになり、江月みらいに会った。赤ちゃんの世話は大変なのに、また欲しくなってしまうと、子供好きな一面をのぞかせた。江月夫妻からは、その時に孫ではなく実子であるという事実を聞き、自分が婿養子であることを引き合いに出して、色々ありますよねとその事実を受け止めた。現在23歳で、とび職をしているが、子供が増えるにあたり、中卒で入社した今の会社を辞めて、独立したいと考えている。いっしょに暮らしている義父母にも、老後は楽をさせてあげたいと考える、家族思いなしっかり者。
秀雄 (ひでお)
江月夕子の兄。秀才で、一家の自慢の息子だった。夕子とは年が離れていて、厳しい父親によく似た顔立ちだったため、夕子からはなんとなく敬遠される存在だった。1953年のある日、当時7歳だった夕子に、綺麗な箱に入ったチョコレートを両親に内緒でこっそり食べさせ、世の中にはもっとおいしい物やもっと楽しいことがあるから、お前はもっと自由に生き、自分の目で大切なものを見つけなさいと進言した。その言葉により、夕子が高校から大学へと進学することを決意。特に夕子の祖父から大反対を受けながらも、自らの目標を見失わずに済んだのは彼の言葉があったからだった。
黄桜 豊子 (きざくら とよこ)
保健師を務める女性。厚生労働省の定めにより、赤ちゃんが生まれたすべての家庭に訪問する「新生児訪問」を行うため、江月朝一、江月夕子、江月みらいの自宅を訪れた。両親の子育てに関する不安を解消したり、予防接種のスケジュールについて、アドバイスを行うほか、児童虐待を防止する目的で、各家庭の育児環境や母親の悩み、精神状態の聞き取りも行っており、ほかにも赤ちゃんの身長、体重を測るなど1回の訪問による仕事内容は多岐にわたる。黄桜豊子自身も2児の母親であり、高校2年生の息子と中学1年生の娘を持っているため、自分の育児経験から、具体的なアドバイスなども行っている。実は、若い頃実家の果樹園を継ぐかどうかで両親とケンカになり、実家を飛び出して以来両親とは疎遠の状態。結婚して子供ができ、生活に追われているうちにそのまま時間が経ってしまった。それを夕子に話すと、逆に心配されることになり、今すぐにでも実家に連絡した方がいいと強くアドバイスされ、帰り道にさっそく母親に電話をする。
場所
早慶大学病院 (そうけいだいがくびょういん)
妊娠した江月夕子がかかりつけとなった産婦人科のある病院で、帝王切開による出産を行った。夕子の主治医でもある鬼子母龍太郎が院長を務めている。江月みらいが生まれたあと、発育不良の影響で体重の増えが悪かったものの、無事に退院の日を迎えることとなった。その後も、体調不良で夕子が倒れた際には、江月朝一が救急隊に事情を話して、かかりつけという理由で名指しで指定し、早慶大学病院に運んでもらった。
続編
セブンティドリームズ
タイム涼介の『セブンティウイザン』の続編。定年を過ぎてから父親になった江月朝一と、5歳年上の妻の江月夕子が子育てに奮闘する姿や、二人の終活の様子を描く。「月刊コミックバンチ」2018年11月号から連載... 関連ページ:セブンティドリームズ