女装ベビーシッターが大活躍
英国淑女の装いに身を包み、ベビーシッター業に勤しむ下落合ギン。財閥の子息でありながら、相続を放棄して「下落合ポピンズ倶楽部」を立ち上げたギンは、女装して依頼者たちのもとに向かう。そして、あふれる愛情でさまざまなトラブルや子育ての悩みを解決し、その家庭に幸福をもたらす。ギンが子供たちと接するときは、自らを映画『メリー・ポピンズ』の主役であるメリー・ポピンズになぞらえているが、これは子供たちを喜ばせるためのユーモアと、彼女のように子供たちを幸せにしたいという願いが込められている。
愛にあふれるスーパーベビーシッター
英国王立ナニー協会認定のギンのもとには、さまざまな事情や問題を抱えている家庭から依頼が舞い込む。特に母親が育児に疲弊しており、子供との向き合い方に悩んでいるケースが多い。ギンは家庭の幸福を重視し、さまざまな家庭の子育て問題に対して彼ならではの解決方法を模索して、奔走している。そして、ギンは大人たちの心を解きほぐし、子供たちに幸せを届ける。また、母親から強引に親権を奪おうとする悪辣な父親を子供の幸せを奪う敵とみなし、かつての人脈や法的知識を生かして制裁を加えることもある。依頼者の多くは、ギンの突拍子のない行動に最初は戸惑うものの、子供たちが彼に懐く姿を見て自分たちに足りなかったものに気づき、幸せな家庭を築くきっかけとなる。
ギンを導いた女装ベビーシッター
ギンがベビーシッターを志すようになったのは、彼が幼い頃に出会った人物が大きく影響している。彼は6歳の頃、父親から「男はいかなる時も泣いてはいけない」と教育され、母親が亡くなった時も表面上は気丈に振る舞っていたが、やがて母親の幻影を見るようになってしまう。そんなある日、「メアリー」と名乗るイギリス人が、ギンの家庭教師として着任する。ギンが母親に依存していることを見抜いたメアリーは、母親の存在を消すようにうながす。ギンはこの言葉に反発するが、やがてメアリーが本気で自分を思いやってくれていることを悟り、母親の死を受け入れるとともに、メアリーに感謝の念を抱くようになる。それから12年後。18歳になったギンは、メアリーと再会するためにイギリスの家を訪れる。しかし、メアリーは既に亡くなっており、ギンがずっと女性だと思っていたメアリーは、メリル・アーサー・マーリンという男性だった。ギンはメアリーの死にショックを受けるが、彼にとってもギンの存在が大きかったことを知り、より思慕の念を強める。そして、ギンはベビーシッターの道を志し、やがて彼と同じように女装するようになる。
登場人物・キャラクター
下落合 ギン (しもおちあい ぎん)
英国王立ナニー協会認定のプロのベビーシッターの男性。「下落合ポピンズ倶楽部」を経営している。通称「ギンさん」。メリー・ポピンズのような英国淑女風の黒づくめの衣装をまとい、フリルのエプロンと帽子、サングラスを身につけている。少々強引ながらベビーシッターとしての知識は豊富で能力も高く、依頼を受けた家庭に「こんにちは赤ちゃん」を大声で歌いながら現れる。妹の下落合美々子の心配をものともせず、ベビーシッター業に邁進しており、育児問題を抱えるさまざまな家庭を幸せに導いている。女装しているが、男性とは気づかれていない。
下落合 美々子 (しもおちあい みみこ)
下落合ギンの妹。黒髪おかっぱ頭と太めの眉毛で、ぽっちゃり体型をしている。いつもフリルの付いた柄物のワンピースを着用し、頭に大きなリボンをつけている。ギンが男性であることを知る数少ない人物。ギンが経営する「下落合ポピンズ倶楽部」では、電話の受け付けやスケジュール管理を担当している。かなり食い意地が張っており、いつもお菓子などの食べ物を口にしている。ギンが仕事で依頼者に感情移入し過ぎることを心配しており、諌めることもある。
書誌情報
ベビーシッター・ギン! 4巻 講談社〈講談社漫画文庫〉
第1巻
(2013-04-12発行、 978-4063709100)
第2巻
(2013-05-10発行、 978-4063709254)
第3巻
(2013-06-12発行、 978-4063709278)
第4巻
(2013-07-12発行、 978-4063709292)