概要・あらすじ
ごく普通のサラリーマン、黒川貢は、会社の同僚である磯貝太一郎の失恋話に付き合わされていた。その後、黒川が泥酔した磯貝を担いで駅に向かう途中、磯貝は巽巴のコートに嘔吐してしまう。黒川はコートを洗濯するため、2人を連れてコインランドリーへ向かう。そこで巴が大学入試の下見のために名古屋から東京に出て来ており、ちょうど道に迷っていたことを知る。そこで黒川は、翌日大学まで巴を案内することを約束。少し天然で穏やかな笑顔を浮かべ続ける巴を見ているうちに、黒川は恋に落ち、別れ際にキスをしてしまうのだった。
後日、大学に合格した巴は東京へ上京するが、予算があまりないので下宿先をなかなか決められずにいた。そこで磯貝は、黒川の分譲マンションに下宿してはどうかと提案。巴はそれも検討に入れながら、宿探しを続けるのだった。それから数日、名古屋から巴の兄の巽宗一がやって来る。宗一は過去に、男に強姦まがいの被害にあったことがあり、大の同性愛者嫌いであった。さらに宗一は、東京から帰って来た巴の様子がおかしかったことを気にかけていた。そして黒川と対面し、2人が同居する案を提示した途端に、黒川が巴を狙っていると確信して激怒するが、巴はこれを否定して兄弟喧嘩に発展してしまう。結果、巴は宗一に反抗するように黒川との同居を断行し、大学生活と黒川との同居生活が、同時にスタートするのだった。黒川は巴への想いを隠し続けていたものの、巴の大学の同期で、男にしか興味がないアメリカ人のリチャード・コルドマンの登場により、巴を中心とした三角関係が明確化。黒川は巴への想いを打ち明け、巴が嫌がることは何もしないという協定のもと、交際を始めることとなる。
登場人物・キャラクター
黒川 貢 (くろかわ みつぐ)
東京在住のサラリーマンの男性。背が高く、黒いショートカットの髪型をしている。本来ノンケであったが、巽巴と出会ったことにより同性愛に目覚める。母親の緋野麗子とともにローンを組んで購入したマンションに住んでいるが、現在は麗子が新しい男と結婚して出ていったため、1人でローンを抱えている。
巽 巴 (たつみ ともえ)
東京の大学に通う青年。茶髪で大きめの眼鏡をかけており、華奢な体格に中性的な顔立ちをしている。名古屋から出て来たところで迷子になっていた際に、黒川貢と出会う。最初は他意のない親切な人だと思っていたが、黒川からの告白を受けて次第に意識し、心惹かれていくようになる。大学では工学部に在籍し、非常に優秀で成績が良い。
磯貝 太一郎 (いそがい たいちろう)
東京在住のサラリーマンで、黒川貢の同僚。ブラウンのショートカットの髪型で、背の高い男性。巽巴に恋をし、同性愛者になった黒川の恋の相談を聞いたりと頼れる存在。ちなみに磯貝太一郎自身は同性愛者ではないが、たまに同性愛者と勘違いをされることがある。黒川を見ると暴力を振るおうとする巽宗一を、固め技で抑え込める唯一の人物。
巽 宗一 (たつみ そういち)
巽巴の兄で、名古屋の大学に在籍している。髪は茶色で長く、いつも1本にまとめている。眼鏡をかけた、細身で愛煙家の男性。不愛想で、感情的になると暴力を振るってしまう。過去に大学教授に強姦まがいの被害にあった経験があり、同性愛者が大嫌い。東京の大学に進学した危機管理能力ゼロの巴が心配で仕方なく、頻繁に東京にやって来る。 巴をたぶらかす同性愛者の黒川貢やリチャード・コルドマンを敵視しており、特に黒川に対しては、見かけるや否や殺す気で暴力を振るおうとする。のちに、大学の後輩で信頼を寄せている森永哲博に、同性愛者であり、また巽宗一に想いを寄せていることをカミングアウトされてからは、同性愛者嫌いは変わらないものの、東京に来る頻度が減るようになる。
リチャード・コルドマン (りちゃーどこるどまん)
東京の大学に通うアメリカ人青年。通称「リック」。褐色の肌で、少し長めの金髪の持ち主。二枚目ながら女性にはまったく興味がない同性愛者。巽巴に熱烈なアプローチを仕掛け、黒川貢のライバルとなる。一方で浮気性なところがあり、相手を短期間で乗り換えていく傾向が強い。黒川と巴が結ばれた後は、積極的なアプローチこそ控えるようになるものの、黒川に隙があれば巴を横取りしようと狙っている。 また元恋人のフィル・ロイドが日本に来てからは表だった行動はせず、仕方がなくフィルと同居を始める。
緋野 麗子 (ひの れいこ)
黒川貢の母親。ウェーブのかかった黒髪で、左目の下に泣きぼくろがある、スタイルのいい女性。これまで死別を一度、離婚を三度繰り返し、息子の黒川を困らせてきた。現在は五度目の結婚中で、「緋野麗子」を名乗っている。黒川が同居人の巽巴と恋人同士であることを知った時には深いショックを受けたが、自分自身も自由に恋をしていたことに思い至ってからは、2人の関係を許すようになる。
フィル・ロイド (ふぃるろいど)
アメリカからやって来た青年。髪は黒くて長く、大柄な体格をしている。芸術家で、あまり多くを語らない。リチャード・コルドマンの元恋人で、彼と別れてからも引きずり、金を貯めて日本まで追いかけて来た。日本に来て金が尽き、リチャードの家に居候することになる。リチャードの破天荒な性格に、ついていくことができるのは自分だけと自負しており、リチャードが巽巴にアプローチをしている現場を見ても、嫉妬心を露わにすることもなく、冷静に接している。
森永 哲博 (もりなが てつひろ)
名古屋の大学に在籍する青年。黒い短髪で、背が高く、がっしりとした体格をしている。大学に入学した日に、巽宗一の細身のプロポーションや寡黙で学者肌な部分に惹かれ、片想いをするようになった。積極的に声をかけても名前は覚えてもらえなかった。しかし、宗一が教授に強姦されそうになったところを助けて以来、信頼できる後輩として親しくなった。 ちなみに、この事件をきっかけに宗一が同性愛者嫌いになったこともあり、森永哲博は自分の想いを秘めるようになった。実らない恋を追いかけることが苦痛になって、退学を検討していたところ、宗一に引き留められ、これをきっかけに自分の想いを宗一に告白。哲博自身は、これで宗一に完全に嫌われたと思っていたが、宗一は一度だけキスを許し、先輩後輩の仲を続けることとなった。 宗一のことでヒロトに相談に乗ってもらっており、彼からは「エンゼル君」と呼ばれている。
ヒロト
森永哲博が通うバーの従業員の男性。細身の体格で、左耳にピアスをしており、関西弁をしゃべる。森永と同じ同性愛者ということもあり、巽宗一との恋をよく相談されている。ちなみにヒロトの方では、何度も森永にアプローチをかけているが、森永が宗一に一途なせいで、軽くあしらわれている。
巽 かなこ (たつみ かなこ)
巽宗一、巽巴の妹。黒髪のショートカットの髪型で、年齢は13歳。宗一が森永哲博に担がれて帰宅し、そのまま一緒に眠っていたため、兄が同性愛者になって森永と付き合っている、と思い込んだ。このことを、名古屋にいる巴を呼び出して相談したものの信じてもらえず、真実を確かめようと、森永を尾行していた。その時、森永がヒロトと新宿のバーに入っていくところを目撃。 今度は宗一が森永に遊ばれている、と誤解するようになる。のちに巴まで黒川貢と交際し、同性愛者になったことを知ると、大きなショックを受けるが、翌日にはあっさりとすべてを受け入れた。
藤田 (ふじた)
商社で働く女性。黒川貢が磯貝太一郎に付き合って合コンに参加した際に出会った。ショートカットの髪型で、少し癖毛。愛想は良いが、計算高いところがある。黒川に惹かれたものの、恋人がいると知って一度は諦めた。しかし相手が男性であることを知ると、黒川を同性愛から更生させようと、積極的なアプローチを始める。