あらすじ
抱かれたい男1位から陥落した高人と准太
人気俳優として第一線で活躍している西條高人は、女性誌の人気企画「抱かれたい男ランキング」で5年間首位を獲得していた。しかし、今年は新進気鋭の若手俳優である東谷准太にその座を奪われ、2位に終わってしまう。高人は周囲に悟られないよう、ひそかに落ち込んでいた。そんな中、高人は新作ドラマの撮影で准太と顔を合わせる。必死で口惜(くや)しさを押し隠す高人に対して、准太は人懐っこい笑顔で近づき、二人だけで食事に行かないかと誘う。周囲の目もあり、准太からの誘いをしぶしぶ応じた高人は、2位になったショックもあり、あっという間に悪酔いしてしまう。そして意識を取り戻した高人は、准太の自宅のベッドの上で半裸になっていた。准太は高人の醜態を動画撮影していたと告げ、高人は准太から何かの脅しを受けるのかと覚悟する。しかし、准太は高人に一度でいいから抱かせて欲しいと告げ、強引に関係をせまる。高人は准太と肉体関係を持ったことにショックを受けつつもそれを隠し続け、准太にアドバイスを送るなどして、新作ドラマの撮影は滞りなく進んでいく。一方の准太は一線を越えたことで、ますます高人への思いを募らせる。
学生時代の高人を知りたい准太
東谷准太の強引な求愛からスタートした西條高人と准太の恋は、高人がなかなか素直になれないながらも、順調に関係を育んでいた。そんなある日、仕事終わりの高人と准太の前に、成宮涼が現れる。明るく人懐っこい性格の成宮が高人にあいさつをしたことで、成宮が高人の通っていた高校の後輩だということが判明する。その話を聞いた准太は、高人の学生時代を知らないことが口惜しくなり、成宮を巻き込んでとある計画を立てる。
高人のスキャンダルと破局
西條高人と東谷准太は二人きりの時間を過ごす時は、周囲の目を気にしながら行動していた。しかし、一瞬のスキをつかれて凄腕(すごうで)カメラマンの長谷川次郎に、二人が熱烈なキスをしている現場を撮影されてしまう。長谷川は高人を呼び出し、准太との関係を世間に公表されたくなければ、言うことを聞くように脅迫する。高人は准太の才能が埋もれることだけは避けたいと考え、一方的に准太に別れを告げる。こうして高人は准太とのキス写真が人目に晒(さら)されることこそ免れたものの、正体不明の男性と抱き合う姿が芸能ゴシップ誌に掲載され、仕事に影響が出始める。自分が犠牲になっても、准太を守れたことに安堵(あんど)する高人だったが、その一方で彼のことを大切に思う気持ちが強くなっていることに気づく。さらに准太が黒川百合江と親しそうにしている場面を目撃したことで、高人は取り乱してしまう。そんな中、准太と百合江の交際は芸能ゴシップ誌に取り上げられてしまうが、これはすべて准太の策略どおりで、百合江との交際は新作ドラマのプロモーションだったのだ。
手錠でつながれた高人と准太
西條高人と東谷准太は、アシスタントディレクターの一本木杉太のミスにより、手錠でお互いの手をつながれてしまう。さらに一本木は手錠の鍵を紛失し、さらなるトラブルが起こる。こうして高人と准太は手錠の鍵が手配されるまでのあいだ、つながれた状態で生活することになる。一刻も早く外して自由になりたい高人と反対に、准太はこの状況を大いに楽しんでいた。
高人が俳優を志した理由
幼い頃の西條高人は、舞台女優として活躍していた祖母の西條鈴子にあこがれていた。高人が芝居に興味を抱いていることに気づいた鈴子は、彼の誕生日に鑑賞チケットを贈る。このことがきっかけで高人は、自分も舞台の上に立って演じてみたいと俳優を志すようになり、ミュージカルのオーディションに応募する。俳優としての才能に恵まれていた高人は、周囲のやっかみに遭いながらも順調にキャリアを積んでいく。こうして高校2年生になった高人は、初めて舞台の主演を任されるが、時を同じくして鈴子は病に倒れてしまう。
芸能界の黒いつながり
西條高人が主演を務める人気ドラマの新シリーズの撮影が始まり、重要な脇役として、東谷准太のファンを公言する新人俳優の牛頭原騎士が抜擢される。騎士が事務所の力によってドラマ出演の権利を得たことは明白であり、高人は複雑な心中ながらも、自分には関係ないと気にせず演技に集中していた。その裏で、羽柴二三夫やエミたち暴力団「牛頭原組」の組員たちは、騎士の気づかないところで、彼と准太が恋人同士になるように画策していた。そんな牛頭原組の動きを知らない高人は、仕事面では順調ながらも、プライベートでは准太とのセックスレスに悩んでいたが、高人と准太が出演する二人芝居の準備も滞りなく進んでいく。舞台のゼネラルマネージャーを務める卯坂和臣は大学時代の同級生であり、かつて強引に身体の関係を持ったことのある在須清崇に、舞台で使用する楽曲作成の依頼をする。久しぶりに在須と再会した卯坂は、表情には出さないものの、彼のことを再び意識し始める。
メディア化
テレビアニメ
2018年10月から、本作『抱かれたい男1位に脅されています。』のテレビアニメ版『抱かれたい男1位に脅されています。』が、TOKYO MXほかで放送された。制作はCloverWorks。キャストは、西條高人を高橋広樹、東谷准太を小野友樹が演じている。
劇場アニメ
2021年10月9日に、本作『抱かれたい男1位に脅されています。』の劇場アニメ版『抱かれたい男1位に脅されています。 ~スペイン編~』が公開された。制作はCloverWorksで、監督は龍輪直征が務めている。キャストは、西條高人を高橋広樹、東谷准太を小野友樹が演じている。
実写舞台
2019年6月から、本作『抱かれたい男1位に脅されています。』の劇中劇「紅葉鬼」の舞台版『紅葉鬼』が、2021年1月には続編『紅葉鬼 ~童子奇譚~』が上演されている。キャストは、劇中で西條高人が演じる「経若(つねわか)」役を陳内将、綾木千広が演じる「繁貞(しげさだ)」役を菊池修司が演じている。
登場人物・キャラクター
西條 高人 (さいじょう たかと)
芸歴20年の男性俳優。年齢は28歳。大手芸能事務所、日東(にっとう)芸能に所属している。ファンからは「トータカ」の愛称で呼ばれている。与えられた役柄を完璧にこなす天才で、業界関係者からの信頼も厚いが、本人は「器用貧乏タイプ」である事を自覚しており、教科書通りにしか演じる事ができない。自分の容姿にはある程度の自信は持っているが、色が白くスリムな体格にコンプレックスを抱いている。基本的に私生活もまじめだが酒癖が悪く、度々失態を繰り返している。甘いものが大好きで、ストレスが溜まるとホールケーキを一人で食べたり、チョコレートドリンクを大量に飲んだりしている。女性向け雑誌で年1回催されている企画「抱かれたい男ランキング」で5年連続で1位を獲得していたが、東谷准太にその座を奪われてショックを受ける。恋愛対象は女性だったため、准太からの猛アプローチに対して最初は拒否していたが、そのまっすぐな愛情に次第に心を奪われていく。准太の役者としての才能にも心底ほれ込んでいる。
東谷 准太 (あずまや じゅんた)
芸歴3年の男性タレント。現在は俳優業をメインに活動している。三ツ谷絽美雄が代表を務める芸能事務所、MITSUYAプロダクションに所属している。西條高人からは「チュン太」と呼ばれている。裕福な家庭に育ち、祖父はスペイン人のクォーター。190センチの長身で、非常に整った顔立ちをしている。笑顔がかわいらしく、ファンや芸能関係者からは「天使の笑み」だと崇められており、准太自身も無理目なお願いをする時によく利用している。恵まれた容姿と何でもこなせる器用さを持っているが、これまでの人生では何の目標も持てず、無気力に生きて来た。高人に出会ってからは彼から認められたい一心で、俳優業に邁進している。そして高人とのドラマ共演をきっかけに、猛アプローチを開始して恋人同士になる。高人に熱烈な好意を抱いているが、恋愛対象は必ずしも男性というわけではない。ストーカー気質で、高人の事は何でも知っている。ストレスが溜まるとミントタブレットをかみ砕く癖がある。
綾木 千広 (あやぎ ちひろ)
芸歴3年の男性俳優。東谷准太とほぼ同時期にデビューし、それ以前にも単発のモデル業をこなしていた。芸能界と太いパイプのある女性と身体関係を持つ事でのし上がっていく、いわゆる「枕営業」をして、これまでの地位を築いて来た。そのために仕事に対しての熱意に欠けており、軽んじているところがある。ただし、整ったルックスに高い演技力を持ち、まじめに仕事に取り組めば高いポテンシャルを発揮する。西條高人と舞台で共演し、自分を認めようとしない高人にいら立ちを覚えるが、次第に愛情へと変わっていく。准太は高人をめぐるライバル的な存在だが、枕営業の決定的な証拠を握られているため、自分からは強くアプローチできずにいる。准太からは雑に扱われているが、嫌われているわけではない。
成宮 涼 (なるみや りょう)
俳優業をメインに活動している男子高校生。アイドル的なかわいらしいルックスの持ち主。姉が勝手に芸能事務所に写真を送った事がきっかけで芸能界デビューした。天真爛漫な性格で基本的に自分中心に行動しているが、東谷准太のまるで天使のような笑みにうまく丸め込まれてしまう事が多い。准太とは以前ドラマで共演した事もあり、それからは慕うようになる。初めて西條高人と会った際は、まるで一般のファンのように喜んだ事もあり、高人からは非常にかわいがられている。また、高人の後輩にあたる。
中多 孝三郎 (なかた こうざぶろう)
芸能界ではベテランの域に達する男性俳優。これまでに数多くの権威ある賞を獲得しており、西條高人からは一方的にライバル視されている。中多孝三郎自身もその事を自覚しており、高人に対してわざと挑発的な言動でからかって楽しんでいる節がある。現在は黒川百合江と恋の駆け引きをして楽しんでいる。
黒川 百合江 (くろかわ ゆりえ)
ベテランの実力派女優。独身で、年下の男性芸能人との恋のうわさが絶えず、芸能ゴシップ誌の常連となっている。交際して気に入った男性には、ユリの模様が入った指輪をプレゼントしている。西條高人と東谷准太の交際が公になりそうになった際には准太に協力し、以降は密かに二人を応援している。現在は中多孝三郎と恋の駆け引きを楽しんでいる。
佐々木 拓 (ささき たく)
西條高人のマネージャーを務める男性。佐々木奈々の父親で、妻は元アイドルの佐々木里奈。漂々とした摑みどころのない性格をしており、一見大雑把に見えるが仕事においては有能で、高人の内に秘める悩みもすぐに察し、適切な行動を取った。東谷准太が高人に好意を抱いている事にも早くから気づいており、自宅までの送迎を准太に任せる事もある。
三ツ谷 絽美雄 (みつや ろみお)
芸能事務所、MITSUYAプロダクションの代表を務める男性。芸能事務所を設立する前は新宿2丁目でバーを経営しており、恋愛対象は男性。ファッションや容姿は男っぽいが、女性っぽい振る舞いと言葉遣いをする、いわゆる「オネェ」。過去のホスト通いから男性を見る目には定評がある。好みの男性ばかりを所属させているが、三ツ谷絽美雄自身のスキンシップが激しい事から、所属するタレントがすぐ辞めてしまう事に悩んでいる。ピザの宅配員として事務所にやって来た東谷准太に一目ぼれし、そのまま所属タレントとしてスカウトする事に成功。以降、准太を溺愛しているが相手にされていない。これまでMITSUYAプロダクションが輩出して来た役者のほとんどが西條高人に潰された事もあり、高人に対して強いライバル心を抱いているが、その実力は認めている。三ツ谷珠理雄は実の弟。
三ツ谷 珠理雄 (みつや じゅりお)
ファッションカメラマンを生業とする男性。ファッションや容姿は男っぽいが、女性っぽい振る舞いと言葉遣いをする、いわゆる「オネェ」。三ツ谷絽美雄の弟で、芸能事務所、MITSUYAプロダクションにも時々出入りしている。絽美雄とはいつも喧嘩をしながらも、何でも言い合える良好な関係を築いている。東谷准太とも顔見知り。
田口 守 (たぐち まもる)
芸能事務所、MITSUYAプロダクションのマネージャーを務める男性。現在の担当は東谷准太。もともとは知り合いから誘われて軽い気持ちで入社したものの、仕事ができるためにタレントを次々と任されている。そのあまりの忙しさに、ブラックな職場に就職したと後悔している。しかし同時にやりがいも感じており、准太に期待を寄せている。ふだんは三ツ谷絽美雄に対しては雑な扱いをしているが、仕事が絡むと絶妙なコンビネーションを発揮する。おとなしそうに見えて短気な性格をしており、毒舌家でもある。
三田村 一 (みたむら はじめ)
綾木千広のマネージャーを務める男性。年齢は28歳。大学時代から交際している彼女と同棲中。ぽっちゃりとした体型で、年々体重が増加傾向にある。仕事に対しての熱意に欠ける綾木に手を焼いている。
卯坂 和臣 (うさか かずおみ)
民放テレビ局に所属する敏腕ゼネラルマネージャーの男性。スタッフはもちろんの事、役者も逆らえない絶対的な存在。威圧感があり近寄りがたい雰囲気を漂わせているものの、長身かつ整った顔立ちで、女性社員からは隠れた人気がある。いつもは標準語で自分の感情を抑えたクールな話し方をするが、興奮したり取り乱したりすると京都弁が出てしまう。西條高人とはアシスタントディレクター時代からの付き合いで、腹を割って話のできる関係。高人と東谷准太が恋愛関係にある事にも気づいており、表立っては応援しないが、二人の行く末を静かに見守っている。過去に在須清崇と身体の関係を持った事がある。ヘビースモーカーで辛党。
在須 清崇 (ありす きよたか)
作曲家の男性。芸名は「アリス」。摑みどころのない漂々とした性格の持ち主で、どんな場面でも堂々とした振る舞いを見せる様子は、百獣の王「ライオン」に例えられている。日本国内だけでなく海外でも活動しており、さまざまな賞も獲得しているが、メディアには滅多に露出しない。過去に卯坂和臣と身体の関係を持った事がある。つねに棒つきのキャンディーを舐めている。
鳥待 トミオ (とりまち とみお)
映画監督を務める男性。西條高人とは古くからの知り合いで、性格や行動パターンを熟知している。いつもにこやかで周囲とは友好的に接するため、キャストや現場スタッフから慕われている。趣味はユニークな文字が書かれているTシャツと、柄の入った短パン集めで、現場でも頻繁に着用している。打ち上げの現場では俳優陣に酒を勧めて酔わせる事を楽しみにしており、高人が度々ターゲットにされている。高人と東屋准太の恋愛関係については薄々感づいている様子を見せるが、深くは追及していない。
五十森 隼人 (いそもり はやと)
鳥待トミオの助監督を務める男性。深い知識を持つ映画オタク。しかし現在はアイドルのかわいらしさに目覚め、映画よりもアイドルオタクとして積極的に活動している。撮影現場でも好きなアイドルについて熱く語る事が多い。ファッションには特に気を遣っていないが、スタイルは非常にいい。
門倉 務 (かどくら つとむ)
テレビ業界で演出家を務める男性。小柄で童顔な容姿ながら、2児の父親。西條高人とも何度もいっしょに仕事をしており、東谷准太の役者としてのデビュー作でも演出を行なった。ラブストーリーの演出家として高い評価を受けているが、本人はアクション作品に携わりたいと思っている。
一本木 杉太 (いっぽんぎ すぎた)
民放テレビ局でアシスタントディレクターを務める青年。つねにテンションが高く、周りの話をまったく聞かないうえ、思い込みだけで暴走する事もある、いわゆるトラブルメーカー。西條高人と東谷准太を本物の手錠でつないで鍵を紛失してしまい、ひと騒動を起こす。
坂巻 玲人 (さかまき れいじ)
テレビ業界でプロデューサーを務める男性。ピンク色が似合うのはいい男の証明だという持論があり、つねにピンク色の服を身につけている。強い者に弱く、弱い者に強い典型的なクズで、若い女性タレントにセクハラまがいの行為を行っている。その嫌みな性格で、西條高人から非常に嫌われている。
長谷川 次郎 (はせがわ じろう)
フリーランスの報道カメラマンを生業とする男性。カメラマンとしての腕はあるが、自分を信頼してくれていたアイドルタレントのスキャンダル写真を撮影して引退へと追い込んだ事があり、現在はその罪悪感から自暴自棄になっている。見た目から地味な印象を受けるが、水商売の派手な女性から非常にモテる。また、女癖が悪く、これまでに多数の女性を泣かせて来た。西條高人と東谷准太の熱烈なキスシーンを盗撮し、芸能ゴシップ誌に掲載すると高人に脅しをかけた。しかし、二人の心の底から幸せそうな表情を見て、芸能ゴシップ誌に提供するかどうかを迷っている。
ロドリゲス 時子 (ろどりげす ときこ)
フラメンコダンサーの中年女性。ぽっちゃりとした体型ながらも動きは素早く、ダンサーとしての実力は高い。西條高人にフラメンコを教えていたが、自らの情熱をぶつけるのではなく、教科書通りに踊ろうとする高人にいら立ちを覚える。夫はスペイン人で、スペインバルを経営している。
西條 鈴子 (さいじょう すずこ)
西條高人の父方の祖母で故人。生前は有名な舞台女優で、役者に興味を抱いた高人を芸能の世界へと導く。高人が初めての舞台に立った日に末期がんでこの世を去った。
佐々木 里奈 (ささき りな)
佐々木拓の妻。佐々木奈々の母親。元アイドルで芸能界は引退しているが、現役時代と変わらない愛らしいルックスを保っている。アイドルとして活動していく中で本来の自分を見失い、違和感を覚えていたところに拓と出会い、そのまま恋に落ちた。正式に交際をスタートさせたのはアイドルを卒業したあとから。時々自宅に遊びに来る西條高人に対しても好意的に接している。
佐々木 奈々 (ささき なな)
佐々木拓の娘。元アイドルの母親を持ち、3歳にして男性を虜にする「男殺し」のスキルを持つ。西條高人も佐々木奈々のかわいらしい言動にメロメロな状態で、お菓子やアクセサリーなどを言葉巧みに貢がせている。
セレスティーノ
東谷准太の祖父。スペイン在住。フラメンコの踊り手の男性(バイラオール)でもあるが、現在はバルを経営している。高齢ながらも長身でスラリとしたスタイルの持ち主で、独自の色気を漂わせている。西條高人とはルーカスのいたずらを通して知り合い、のちに准太の恋人だと知った。高人と准太の交際は暖かく見守っている。
アントニオ・グラシア・ベルナンデス
フラメンコの踊り手の男性(バイラオール)。スペイン国内で活躍している。20代の若さながらもフラメンコ界では将来を有望視されており、その野獣が踊っているような迫力ある姿から「アンダルシアの猛獣」と呼ばれている。実家はパン屋を経営しており、時々手伝いをしている。幼い頃にセレスティーノのもとに遊びに来ていた東屋准太に一目ぼれし、以降一途に恋心を抱いて来た。准太に対しては猛アプローチを続けているが、これまで叶う事はなかった。そのため、西條高人に対して激しいライバル心を抱きつつも、高人のフラメンコへの向上心や准太への愛情は認めている。若かりし頃のセレスティーノが初恋の相手。
ルーカス
スペイン在住のいたずら好きの少年。観光客から金品を奪い、慌てふためく姿を見る事を楽しんでいる。窃盗を目的としていないため、自分の気が済んだら持ち主に返却している。スペインを訪れた西條高人にもいたずらをした事で、セレスティーノにたしなめられた。学校では優等生で通っている。
牛頭原 騎士 (ごずばら ないと)
芸能事務所「トゥクリーン」に所属している男性タレント。裏の顔は、暴力団「牛頭原組」の組長から溺愛される孫でもある。西條高人が主演を務める人気ドラマシリーズの脇役に抜擢(ばってき)されたことで、高人と知り合う。東谷准太の大ファンであり、いっしょにドラマ出演したいとの思いから、俳優として芸能界入りした。本格的に芸能活動を始める前は、SNSでジェンダーレス男子として人気を集めていたが、すべての写真は組員総出でスリムに加工したもの。俳優デビューもマネージャーを務める羽柴二三夫をはじめ、牛頭原組が裏で手を回したことで叶(かな)えているが、牛頭原騎士本人はまったく気づいていない。父親が日本人、母親がロシア人のハーフ。中世的なかわいらしい顔立ちで、ぽっちゃりとした体型をしている。暴力団という本来なら劣悪な環境で生まれ育ったが、組員たちからは汚い世界から徹底的に遠ざけられていたため、ピュアで素直な性格の持ち主。SNSや芸能界では「イワノフ騎士」という芸名で活動しており、牛頭原組の組員たちからは「坊」と呼ばれている。
羽柴 二三夫 (はしば ふみお)
芸能事務所「トゥクリーン」のマネージャーを務める男性。牛頭原騎士を担当している。裏の顔は、暴力団「牛頭原組」の幹部の一人。西條高人が主演を務める人気ドラマシリーズの脇役として、騎士が出演したことをきっかけに、高人と知り合う。幼い頃から騎士の世話役を任されており、彼の純粋で素直な性格が反社会組織に染まらないで欲しいと願っている。尊敬する騎士の両親から彼を任されていることもあり、騎士のためならばどんな卑怯(ひきょう)な手を使っても望みを叶えようとする。騎士からは「フーミン」、ほかの牛頭原組の組員たちからは「フミ」と呼ばれている。
エミ
暴力団「牛頭原組」が経営しているガールズバーで働く若い女性。以前は売れない地下アイドルとして活動しており、騙(だま)されてアダルトビデオ出演を強要されていたところを、羽柴二三夫に助けられた過去を持つ。そのため牛頭原組はもちろん、羽柴にも忠誠を誓っている。また、羽柴に対しては異性として恋心を抱いている。牛頭原騎士の世話をすることも多く、彼から慕われている。明るく笑顔を絶やさない親しみやすい人物のように見えるが、自分の目的を達成するためには手段を選ばない冷酷な一面を持つ。
牛頭原 獄光 (ごずばら たけみつ)
暴力団「牛頭原組」の組長を務める高齢の男性。牛頭原騎士の祖父。両親が刑務所に服役中の騎士のことを不憫(ふびん)だとかわいがっており、騎士のしたいことを叶えるのであれば、いくら金をかけても構わないと考えている。騎士の前では孫を溺愛する優しいおじいちゃんだが、関東一帯の暴力団を束(たば)ねるほどの強大な権力を持っている。騎士の名づけの親でもある。
マシュー・ラトヴィッジ
作曲家として活動している在須清崇のマネージャーを務める男性。在須とは大学時代の知り合い。彼の才能に惚(ほ)れ込んでおり、行動を共にするようになる。在須と出会う前は将来を有望視されているロボット開発者だった。在須にとって卯坂和臣の存在は毒にしかならないと考えており、卯坂を遠ざけようとしている。仕事仲間からは「マット」と呼ばれている。
沼田 修 (ぬまた おさむ)
民放テレビ局の制作局局長を務める中年の男性。西條高人が主演を務める人気ドラマシリーズの脇役に、牛頭原騎士を抜擢した。テレビ局に入社してからは、さまざまな手を使って同期や先輩たちを蹴落とし、現在の地位を手に入れた曲者(くせもの)。企画力はないものの、人集めの術に長(た)けている。騎士の後ろ盾である暴力団「牛頭原組」から金銭を受け取っている。
書誌情報
抱かれたい男1位に脅されています。 9巻 リブレ〈ビーボーイコミックスデラックス〉
第1巻
(2014-02-10発行、 978-4799714430)
第9巻
(2023-11-09発行、 978-4799764787)