あらすじ
第1巻
放送部の部員である小林詩帆乃と遠藤碧人は、イベントの実況解説の練習を名目に詩帆乃のお気に入りのゲーム「マジカルに恋して」の実況解説プレイをすることとなる。碧人が実況、詩帆乃が解説を担当しながらゲームをしていたところ、突然、ゲームの登場人物のジークヴァルトが二人の声に反応して返事を投げかけてくる。不思議な出来事にとまどいつつも、実況解説をする二人の言葉を「神のお告げ」と思ったジークヴァルトは、二人を「実況の遠藤くん」と「解説の小林さん」という神と認識し、その言葉どおり行動する。折しもジークヴァルトはフィーネに高圧的な態度を取るリーゼロッテ・リーフェンシュタールに困っていたが、彼女の本心を実況解説されて印象が一変。実況解説どおりに動くことで、リーゼロッテの本心に近づくのだった。しかしそこでジークヴァルトは、リーゼロッテの行く末が破滅の運命につながっていることを二人から知らされる。一方、碧人と詩帆乃も突然の出来事に混乱するが、ゲームの枠を超えて行動するジークヴァルトを見て、ゲームの悲惨なエンディングを変えられるのではないかと考える。そして二人は誰も不幸にならない「最高を超えた最高のハッピーエンド」を目指し、ゲームの実況解説を続けることを決心するのだった。
関連作品
本作『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』は、恵ノ島すずの小説『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』を原作としている。こちらはもともと「小説家になろう」に投稿されていたが現在は削除され、新たに「カクヨク」に投稿されている。内容は本作と同じく、実況役の小林詩帆乃と解説役の遠藤碧人がリーゼロッテ・リーフェンシュタールの心境を実況解説し、物語をハッピーエンドに導くというものになっている。書籍化もされており、書籍版ではWEB版から大幅改稿され、新たなシーンなどが追加されている。
登場人物・キャラクター
遠藤 碧人 (えんどう あおと)
黒い髪を短く整えた高校2年生の男子。同じ放送部に所属する小林詩帆乃に恋心を抱いている。ある日、詩帆乃の勧めてきたゲーム「マジカルに恋して」をいっしょにプレイ中、ゲームの登場人物であるジークヴァルトと交信する。一応、ゲームのプレイは部活動の一環であるため、ゲームの実況を担当している。ジークヴァルトには「実況の遠藤くん」と名乗り、そう呼ばれるようになる。ジークヴァルトをはじめ、ゲームのキャラクターたちを現実の人間と同じように考えており、誰一人死んでほしくないと考えて実況をしている。また、「寵愛」はゲームでは死にやすいという理由からバルドゥール・リーフェンシュタールに与え、彼が死なないようにサポートするつもりでいる。元野球少年で、子供の頃からのあこがれの甲子園に出場するため、野球の強豪校に進学する。しかし、そこで遠藤碧人自身の才能の限界を痛感。厳しいトレーニングを己に課し、それが原因で肩を壊して夢をあきらめることとなった。その後、失意の中にいたところ、詩帆乃にさり気なくフォローされたため、彼女に好意を抱くようになる。また、その際の出来事がきっかけで放送部に入部した。
小林 詩帆乃 (こばやし しほの)
茶色の髪をポニーテールにした高校2年生の女子で、放送部に所属している。ゲームが大好きなヲタクで、放送部には機材にまぎれてゲーム機器もそろえられているため、部活動を名目にしてよく部室でゲームをしている。最近は「マジカルに恋して」という乙女ゲームにハマっており、仲がよい遠藤碧人にゲームを勧めていっしょにプレイしていたが、その最中、碧人と共にゲームの登場人物であるジークヴァルトと交信する。一応、ゲームのプレイは部活動の一環であるため、ゲームの解説を担当している。ジークヴァルトには「解説の小林さん」と名乗り、そう呼ばれるようになる。碧人の誰も死んでほしくないという希望に共感し、「最高を超えた最高のハッピーエンド」を目指すことを提案する。「寵愛」は最もお気に入りのキャラクターのリーゼロッテ・リーフェンシュタールに与えている。快活な性格をしており、いつも楽しげな様子で周囲を元気づけているほか、面倒見がよくて落ち込んだ人をさり気なくフォローする気遣い上手な一面を持つ。
リーゼロッテ・リーフェンシュタール
リーフェンシュタール侯爵家の令嬢で、金髪碧眼な美女。文武両道で、家柄を含めて容姿と能力に恵まれた、非の打ちどころのない完璧な人物。しかし性格は高圧的で、他者を寄せつけない威圧感をつねに漂わせている。「マジカルに恋して」の登場人物の一人で、ゲームでは婚約者であるジークヴァルトに近づく主人公、フィーネのことを快く思っておらず、彼女と敵対する悪役令嬢という役回りを担っている。ただし、リーゼロッテ・リーフェンシュタールの心境が語られているゲームのファンディスク「リーゼロッテの手記」では、リーゼロッテは不器用で、ただ単に人との接し方が下手だったことが明かされており、ゲーム本編の出来事は不幸な気持ちのすれ違いだったとされている。小林詩帆乃の一番思い入れのあるキャラクターで、ジークヴァルトとの交信後、詩帆乃はリーゼロッテに「寵愛」を与えている。ゲームでは誤解されていたが、その実「ツンデレ」で、ジークヴァルトともフィーネともなかよくしたいと考えているが、いざとなると羞恥心から心ない言葉を掛けてしまうという悪循環を繰り返している。遠藤碧人と詩帆乃に実況解説されることで、本音がジークヴァルトに暴露され、次第に「かわいい人」と周囲に思われていく。ゲームでは最終的に負の感情を募らせ「古の魔女」に乗っ取られてラスボスになるため、そのことを碧人と詩帆乃に警戒されている。
ジークヴァルト
フィッツェンハーゲン王国の王太子。金色の髪に、優しげで理知的な風貌をした美青年。リーゼロッテ・リーフェンシュタールとは婚約者の関係。「マジカルに恋して」の登場人物で、攻略対象キャラクターの一人。ゲームではリーゼロッテの言動を理解できず、気持ちをすれ違わせるという展開を迎えていたが、小林詩帆乃と遠藤碧人と交信し、彼らからリーゼロッテの本心を実況解説してもらう。最初は「ツンデレ」の概念を理解できずにいたが、碧人と詩帆乃の言葉を聞くうちに理解するようになり、リーゼロッテを「かわいい」と思うようになる。またそれに伴って、不器用なリーゼロッテのフォローを兼ねるようになり、彼女を中心とした交友関係を築いていく。ジークヴァルト自身は無自覚ながら心境に変化が訪れており、リーゼロッテへ特別な感情を向けるようになる。
フィーネ
平民の娘で、桃色の髪をセミロングにした少女。年齢は15歳。ある日、貴族にしか使えない光の魔力に目覚め、王立魔法学園に入学する。貴族ばかりの学園の常識がわからず、学園ではとまどうことが多い。「マジカルに恋して」の主人公で、ゲームでは五人の攻略対象と恋をしたり、冒険をしたりしている。小林詩帆乃と遠藤碧人は彼女の目線でゲームをしていたが、ジークヴァルトと交信後は少しずつ彼らにも把握できない謎の存在へと変貌している。ステータスは、碧人たちが手を加えていないのにもかかわらず限界まで上がっており、学園でも屈指の猛者として周囲から認知されている。本来、光の魔力は回復に特化し、攻撃適正が低い魔法だが、フィーネの場合は鍛え上げた肉体を補助魔法「肉体強化」で底上げすることで、圧倒的な戦闘能力を誇る。またケガを負っても痛みに怯まず、回復魔法で即座に癒やして戦うため、見た目からは想像がつかないタフネスさを見せる。ふだんは感情豊かだが、戦闘の際には無表情となり、的確に敵を叩きのめすために学園では一対一では相手にならず、多対一で対戦を組まされることも多い。
バルドゥール・リーフェンシュタール
騎士見習いの青年。たくましく凛々しい雰囲気を漂わせた男性で、実直な性格をしている。リーゼロッテ・リーフェンシュタールとはいとこの関係。「マジカルに恋して」の登場人物で、攻略対象キャラクターの一人。特徴的なキャラクターで、主人公のフィーネに最初から好意的で攻略は最も容易。また「死にたがりやさん」と揶揄されるくらいゲームでは死亡する場面が多い。小林詩帆乃と遠藤碧人がジークヴァルトと交信後、死に瀕することが多い彼を心配した碧人から「寵愛」が与えられる。碧人たちの言葉からフィーネに危機がせまっていることを知り、彼女の護衛のためにいっしょに行動をすることとなる。フィーネの実力を認めており、模擬戦の際にはアルトゥル・リヒターと二人がかりで彼女に挑むが、手も足も出ずに負けた。
アルトゥル・リヒター
神官を多く輩出するリヒター伯爵家の子息。爽やかな雰囲気を漂わせたイケメンで、人当たりのよい性格をしている。「マジカルに恋して」の登場人物で、攻略対象キャラクターの一人。ジークヴァルトとは友人の関係で、王太子である彼にも気安く接する。ジークヴァルトの交信後は、フィーネを神殿に勧誘しようと接触する。流されるままにバルドゥール・リーフェンシュタールと二人がかりでフィーネに模擬戦を挑むが、開幕直後に彼女にアッパーを食らい、一撃で撃沈する。その後、何がなんだかわからぬうちに打ち倒されたものの、それが逆に見た目にそぐわない剛腕を持つフィーネへの興味をあおり、彼女となかよくなる。
その他キーワード
マジカルに恋して (まじかるにこいして)
女性向けの恋愛シミュレーションゲーム。いわゆる「乙女ゲーム」で、世界観は魔法の存在する中世ファンタジー風の世界。主人公は15歳の少女フィーネで、プレイヤーは彼女を操作して学園生活を楽しむことができる。恋愛ができる攻略対象の男の子は全部で五人存在し、彼らと恋愛を育むとそれぞれの個別ルートに進むことができる。また、いっさい恋愛をせずに、ただひたすらに鍛えてクリアする「ソロクリアルート」や、登場人物すべてに愛される「逆ハーレムルート」なども存在する。リーゼロッテ・リーフェンシュタールはゲームでは敵役として登場し、ほとんどのルートで最終的に破滅する運命にある。ゲームにはファンディスクも存在し、そちらではリーゼロッテの内面が語られる「リーゼロッテの手記」が展開されている。小林詩帆乃が現在ハマっているゲームで、彼女に誘われるかたちで遠藤碧人もゲームを始め、二人で実況解説することとなる。しかし、ジークヴァルトに二人の実況解説が届いたことで、単なるゲームではなくなり始める。二人の実況解説は主人公のフィーネを通して行われていたが、ゲームの「神の寵愛」の設定を利用し、寵愛を与えた者に視点変更ができるようになった。また、二人の声はジークヴァルトにしか届かず、ほかの人たちには声は聞こえない。
クレジット
- 原作
-
恵ノ島 すず
- キャラクター原案
-
えいひ
書誌情報
ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん 7巻 KADOKAWA〈B's-LOG COMICS〉
第1巻
(2019-12-28発行、 978-4047358737)
第2巻
(2020-07-31発行、 978-4047361911)
第3巻
(2021-05-01発行、 978-4047365681)
第4巻
(2021-12-27発行、 978-4047368842)
第5巻
(2022-08-01発行、 978-4047371217)
第6巻
(2023-02-01発行、 978-4047373549)
第7巻
(2024-08-30発行、 978-4047381261)