あらすじ
エンタリング・アルカイト
咲森鑑は、VRMMO「アーク・アース オンライン」で、ダンブルフ・ガンダドアを名乗り、渋い老魔術士のロールプレイをして遊んでいた。ある日、アバターを自由にいじれる課金アイテム「化粧箱」で自分好みの絶世の美少女アバターを作って遊んでいた鑑は、そのまま眠ってしまい、起きた時にはその美少女の姿になっていた。しかも気づけばゲームそっくりな異世界に転移しており、現実と化したゲームのキャラクターたちに、その素性を問われることとなる。自分のいる異世界がゲームの世界観をそのまま受け継いでいることに気が付いたダンブルフは、とっさに自分がゲームをプレイしていた際に、召喚術士として高名だったダンブルフの弟子である「ミラ」を名乗る。その後、自分の友人プレイヤー・ソロモンが同じ状況に巻き込まれていることに気づいたミラは、彼がアルカイト王国にいるだろうと推測し、王都を目指す。そして無事にソロモンと出会ったミラは、そこでソロモンがすでにこの世界で30年過ごしており、帰る方法がないという事実を突きつけられる。また、ソロモンたちがいるアルカイト王国は存亡の危機にあり、ミラはソロモンに王国守りの要となる「九賢者」を探してきてほしいと頼まれる。現在、王国にいる九賢者はミラとルミナリアのみで、残りの七人は行方不明。ミラは九賢者の一人、死霊術士・ソウルハウルの手がかりを求め、鎮魂都市・カラナックを目指すことを決める。またミラは、人にあだなす悪魔たちの行動が活発化したのもあり、ソロモンからカラナックにある暗丞の鏡で情報を集めてきてほしいと頼まれるのだった。
エカルラートカリヨン
暗丞の鏡はカラナックの近辺にあるC級ダンジョン・古代神殿「ネブラポリス」にあり、その場所はゲーム中で、ソウルハウルのお気に入りの場所だった。九賢者と悪魔の手がかりを求めたミラはカラナックに向かい、そこで冒険者に登録する。仕事をしつつも物見遊山を楽しんでいたミラであったが、そこで一人の少年・タクトと出会う。タクトは死者と話せる暗丞の鏡で死んだ両親と話したがっており、タクトの真摯な思いに打たれたミラはその願いを快諾する。たまたまそこに居合わせたエメラは危険だからと制止するものの、二人の決意が固いのを知り、自分たちが手助けすると申し出る。エメラが所属するギルド「エカルラートカリヨン」は街の住人からも慕われている人気ギルドで、エメラと仲間たちはミラの旅に同行する。ミラは異世界にきてから初めてのダンジョン探索に期待を抱くが、現実となったことの予想外の弊害に悶絶。早々にまともに攻略する気の失せたミラは、アルフィナを召喚し、その力でダンジョンからモンスターを一掃する。ミラの実力を疑問視していたエメラたちはそのさまに絶句し、ミステリアスなミラの姿に疑問を抱く。またミラも、朗らかな性格をした彼らとの交流を楽しむのだった。そして無事に暗丞の鏡を見つけた一行であったが、タクトは両親と話すことができずじまい。暗丞の鏡は死者と話す鏡であるため、タクトは両親が生きているのではないかとかすかな希望を抱く。ミラも暗丞の鏡を使うが結果は空振り。仕方がなく、ソウルハウルの手がかりを得るために先を目指すミラであったが、そこでミラは強力な悪魔と遭遇するのだった。
一難去ってまた一難
ミラはネブラポリスでソウルハウルの手がかりを見つけるものの、そこに強大な力を持つ悪魔が襲来。エメラたちを守るため、たった一人で戦うことを決める。ミラは装備が整っていないのもあって悪魔に苦戦したものの、からめ手で悪魔の動きを制限し、召喚術でトドメを刺す。高位の悪魔に襲われつつも、犠牲もなくダンジョンをあとにする一行であったが、カラナックに戻った一行を待ち受けていたのは、街中がゾンビに襲われて混乱に陥っている異常事態だった。ミラは異常事態に対し、アルフィナたち「ヴァルキリー・シスターズ」を全員召喚。八面六臂の活躍を見せるヴァルキリー・シスターズの力によって、街中のゾンビは倒され、その元凶である半魔族の男を発見する。アンデッドモンスターと化していた半魔族の男は、そのままヴァルキリー・シスターズによって完全消滅し、事態は終息に向かう。
精霊を害するもの
ミラはカラナックでの騒動を解決したあと、エメラが所属するギルド「エカルラートカリヨン」の団長・セロと歓談し、彼もゲームから転移したプレイヤーの一人であることを知る。お互いの内情を伝え合った二人は再会を約束して別れる。そしてソロモンのもとに戻ろうとしたミラだが、その道中、偶然ネコの式神を見つけ、それが九賢者の一人、カグラのものではないかと考える。式神は精霊を守っており、そのことを帰還してソロモンに伝えたミラは、ソロモンから精霊を襲う謎の武装集団「キメラクローゼン」の話を聞き、カグラがキメラクローゼンから精霊を守るために行動しているのではないかと推測する。また、ミラとソロモンはネブラポリスで見つけた手がかりから、ソウルハウルは「神命光輝の聖杯」を求めていることをつき止める。そしてソウルハウルの行き先を調べるため、ソロモンは部下に資料を改めさせるのだった。キメラクローゼンとソウルハウル、懸念を二つ抱えることとなったが、ソロモンが人手を使って調べさせているあいだ、ミラはヒマとなってしまったため、街へと見物に出かける。ミラはアルカイト学園近くを通り、興味深めに眺めていたところ、召喚術科の教師・ヒナタと出会う。操者の腕輪を持つミラが確かな実力を持つと察したヒナタは、不人気な召喚術の現状を話す。間もなく各魔術科の成果を見せる審査会が始まるものの、召喚術科はヒナタしかいない零細学科で、まともに出せるものがない状態だった。そんな召喚術科の現状を聞いたミラは、召喚術の未来のために代理として審査会に出ることを快諾する。
銀の連塔
ミラはアルカイト学園の審査会に参加するものの、審査会はスポンサー向けに派手な演習をするだけの見世物となっていた。そんな術士の現状を残念に思いつつ、ミラは審査会の流儀に合わせて派手で見栄えのいいレティシャを召喚。レティシャの歌で会場は感動の渦に包まれる。しかし魔術科の生徒であるカイロス・ベルランが、ミラが不正を行っているのではないかと申し立てる。カイロスの異議は受け入れられ、学園長の提案でミラとカイロスの一騎打ちが行われることとなる。実は学園長はミラの実力を見抜いており、ミラを巻き込んで申し訳ないと思いつつも、現代の魔術士の意識を改革させるためにも、ミラにその実力を示してほしいと頼み込む。ミラはその頼みを受諾して、決闘ではその実力を遺憾なく発揮。カイロスを降し、召喚術の有用性を会場で思う存分アピールする。そして、ヒナタに召喚術科の未来を託したミラはシルバーホーンに帰還し、自らの居城ともいえる「銀の連塔」に舞い戻る。そしてゲームをしていた時からの縁が深いマリアナとクレオスに、自らの正体を告げる。ゲーム中にマリアナから妖精の加護をもらっていたミラは、加護の力でその絆を証明し、マリアナは主の帰還に涙するのだった。
迷宮での光明
ミラはマリアナとのひとときを楽しんでいたが、ソロモンに頼まれ、情報収集の手伝いをすることとなる。ソロモンは部下たちにソウルハウルの資料を解読させたことで、彼が求める神命光輝の聖杯の材料の場所を手がかりをつかんだが、場所を正確に絞るためにはさらなる資料が必要だった。ミラはソロモンに頼まれ、資料を求めてアルカイト王国に存在する高難易度ダンジョン「愚者の脅威の部屋」を訪れることとなる。九賢者の一人・メイリンとニアミスするというトラブルに遭遇しつつ、ミラはたまたま居合わせたクレオス、ヒナタを供にしてダンジョン探索に乗り出す。自分以外の召喚術の使い手との探索を楽しみつつ、ミラは無事に目的の資料を手に入れる。そしてミラは神命光輝の聖杯の作成には、樹齢3000年を超えるご神木の根が必要であると知り、ソウルハウルは巨大なご神木がある天魔迷宮「プライマルフォレスト」に向かったと推測する。
五十鈴連盟
次なる目的地がプライマルフォレストに決まり、ソロモンはついでに素材の探索をミラにお願いする。そしてミラはプライマルフォレストにある「祈り子の森」に到着。そこでソウルハウルの手がかりをつかみ、また一歩彼に近づく。そしてプライマルフォレストで素材の探索も行い、無事に目的を果たしたミラであったが、その帰り道に怪しい黒衣の男と出会う。男はすぐさま姿を消すものの、男の言動を怪しんだミラはあとを追い、男がキメラクローゼンの一員であると確信する。ミラの手は間に合わず、男に精霊が襲われそうになるが、そこに謎の陰陽師・ブルーが乱入し、男が精霊を襲うのを阻む。ミラはとっさにブルーに協力し、男を無力化して捕えることに成功する。そしてブルーから事情を聞いたことで、ミラは彼らがキメラクローゼンと敵対する「五十鈴連盟」の関係者であることを知り、そこにカグラがいるのではないかと考える。ミラはブルーの仲間と交渉し、本部の場所を教えてもらい、いずれそこを訪れることを決める。そしてソロモンのもとに帰還したミラは、そこでキメラクローゼンの暗躍のせいで、予想以上の被害が各地で出ていることを話す。
空への途
ミラたちは持ち帰ったソウルハウルの手がかりを分析したところ、彼は天上廃都の結晶神殿を目指していると推測する。また五十鈴連盟の本拠地も、その天上廃都の先にあることを確かめるが、連続の遠出にさすがにミラも辟易する。そんなミラにソロモンは大陸鉄道の旅を提案。ミラはがんばっている自分へのご褒美に、鉄道旅行を楽しむこととする。今までと違い、鉄道によって発展した近代的な鉄道の旅を満喫しつつ、ミラは目的地を目指す。ミラはペガサスを召喚し、空の先にある天上廃都を目指すが、ゲーム中の知識しかなかったミラは高山病のことを失念しており、道中倒れてしまう。ミラが休憩していたところ、冒険者のハインリヒとギルベルトと遭遇する。彼らから高山病について聞かされたミラは、自分の不注意を反省し、無鉄砲なミラを見かねた彼らの提案でいっしょに天上廃都を目指すことを決める。変わり者だが確かな実力者である二人の冒険者との旅は順調に進み、三人は無事に天上廃都に到着。ミラは無事に目的を果たした二人を見送り、結晶神殿を目指す。そしてまたしてもソウルハウルが来た痕跡を発見。ミラは着実に彼にせまりつつある手ごたえをつかむ。
関連作品
小説
本作『賢者の弟子を名乗る賢者』はりゅうせんひろつぐ原作の小説『賢者の弟子を名乗る賢者』を原作とする。イラストは藤ちょこが担当し、GCノベルズより2014年6月から刊行されている。原作小説の内容は老練な魔術師でゲームを遊んでいたプレイヤーが、異世界に転移した瞬間、美少女姿となって異世界を旅する異世界冒険ファンタジーとなっている。
テレビアニメ
2022年1月、本作『賢者の弟子を名乗る賢者』の原作である『賢者の弟子を名乗る賢者』のTVアニメ版『賢者の弟子を名乗る賢者』が毎日放送、BS日テレ、AT-Xほかで放送された。アニメーション制作はstudio A-CATが担当した。キャストは、ミラを大森日雅、ソロモンを村瀬歩、マリアナを堀江由衣が演じている。
登場人物・キャラクター
ミラ
ダンブルフ・ガンダドアが美少女に変化した姿。年齢は10代前半。プラチナブロンドを長く伸ばした可憐で華奢な姿をしており、ダンブルフ時代の姿は見る影もなくなっている。ダンブルフがゲーム中で、化粧箱を使って自分の趣味全開のアバターを作って遊んでいたところ、そのまま異世界に転移する。異世界で兵士に保護された際に、とっさに「ミラ」を名乗り、マリアナに素性を問われた際に「ダンブルフの弟子」を自称する。異世界に転移したが、友人のソロモンたちが先に転移していたことでパニックに陥ることもなくすぐさま順応し、ソロモンからアルカイト王国の現状を聞き、九賢者不在の王国を立て直すために奔走することとなる。またその際に、誤魔化すために適当に言った「賢者の弟子」が公称となる。性格は好奇心旺盛で、ソロモンの頼みを聞きながら異世界の旅路を気ままに楽しんでいる。もとはナイスシルバーな老人にあこがれ、老爺の姿でゲームをプレイしていたため、その頃のロールプレイが抜けきれず、一人称は「わし」で言動がやたら年寄りじみている。化粧箱で自分好みの見た目を極限まで追求したため、ミラの見た目が大好きで、ナルシスト的言動が多い。口癖は「わしかわいい」。また中身が男であるために女性意識が皆無で、いちいち仕草が男っぽく、下着やファッションなど女性もののセンスが皆無で、そこらへんは適当に済ませている。しかし可憐な容姿をしているため、女性意識が皆無だと周囲から注意されることが多く、リリィたちから着せ替え人形のようにかわいい服を着せられたりしている。異世界でも「軍勢のダンブルフ」の異名は健在で、多彩な召喚術と攻防スキのない戦闘を得意とする。もともと自力で召喚術を改良していたため、異世界で自由度が広がった召喚術にもすぐ適用し、ダークナイトの部分召喚など新しい使い方を模索し、開発している。
ダンブルフ・ガンダドア
VRMMO「アーク・アース オンライン」の男性プレイヤー。現実世界での名前は「咲森鑑」。渋い雰囲気を漂わせた老魔術士にあこがれており、ゲームでも白いヒゲを生やし、威厳のある老人姿で遊んでいた。名前の綴りは「Dnblf Gamdadpr」で、有名なファンタジー作品に登場する老魔術師と魔法学校の校長が名前の由来。ゲーム中では友人のソロモンと協力し、アルカイト王国の建国にかかわった。「九賢者」の一人に数えられ、召喚術のエルダーとして君臨し、多彩な召喚術をあやつったことから「軍勢のダンブルフ」の異名で呼ばれていた。また仙術を使った近接戦闘も得意としており、召喚術と仙術を組み合わせた攻防スキのない戦闘スタイルを得意とする。アーク・アース オンラインは術を研究していくことで新たな術を編み出したり、効率化していったりすることができるため、召喚術に関しては行程を一つに縮め、高速召喚することも可能。戦闘技術以外でも精錬技術の第一人者で、さまざまなアイテムを作っていた。
マリアナ
ダンブルフ・ガンダドアの補佐官を務める妖精族の少女。群青の髪とサファイアのような瞳が特徴的な美少女で、背中から大きな蝶の羽が生えている。おっとりとした性格だが、忠誠心が高く、主であるダンブルフを敬愛している。ゲームではNPCで、銀の連塔の一つ、ダンブルフの管理する「召喚術の塔」で、主の代わりに塔の居住区の管理を任されていた。始まりの日以降、ダンブルフが不在となって30年間、変わらず塔を守り続けて主の帰りを待ちわびている。ミラが帰還するものの、彼女が自分がダンブルフの弟子だと誤魔化したため、主の帰還には気づかなかった。ミラを主と同じく慕っており、彼女にかいがいしく世話するが、ミラからは服までチェックされるのを苦手に思われている。ミラからは30年間、役目を守り続けていたのに騙したことを悪いと思われ、のちにミラから自分の正体を明かされる。妖精族であるため「妖精の加護」を与えることができ、これによってミラがダンブルフ本人だと確信する。ミラが主と気づいて以降の尽くしっぷりは、忠臣を通り越して新妻レベルで、あらゆる状況でミラの世話を焼こうとする。特に料理に関してはこだわりが半端なく、食材の品種改良までして和食を再現し、ミラに振る舞っている。
ソロモン
VRMMO「アーク・アース オンライン」の男性プレイヤー。ゲーム中ではライトグリーンの髪をした美少年の姿をしており、「九賢者」と共にアルカイト王国を建国し、国王となる。癖の強い九賢者のまとめ役で、彼らからも強く信頼されている。異世界に転移したプレイヤーの中でもミラが転移する30年前とかなり初期に転移した。九賢者が誰もいない状況で、激動の時代を孤軍奮闘して国を守り抜いた。20年前にルミナリアが合流し、彼女と協力して国を守ろうとするが、10年前に三神国防衛線が勃発。その復興に注力したため、国の防衛力に不安を覚えて残り九賢者の復活を心待ちにしている。そのため、つねにフレンドリストをチェックしており、ダンブルフが異世界にログインしたのと同時に現れたミラがすぐさま同一人物と気づき、彼と再会する。国を守るために九賢者の集結を望み、自由に動けない自分の代わりにミラに彼らを集めてくるように依頼する。またルミナリアと協力して、新たな力「魔導工学」の研究を重ね、その技術を使った武器を開発している。ミリタリー趣味らしく、アーマードジープなど現実に存在する兵器を参考にした武器を作っている。ミラたち友人の前では気安く接するが、30年間、王として振る舞ってきたため、公然の場では凛とした王の姿を見せる。一人称も王として振る舞っている際は「私」だが、プライベートでは「僕」となる。王としての立場があるために前線に出ることは少ないが、聖騎士の力を持ち、九賢者含む10人の中では最高の防御力を誇る。かつては九賢者の盾役として酷使されていたが、ある日を境に何を思ったか盾を捨て二刀流スタイルを確立し、盾役からアタッカーに転身する。属性剣を使った二刀流の攻撃力は絶大で、盾役だった経験から防御スタイルも得意とする。
ルミナリア
VRMMO「アーク・アース オンライン」の男性プレイヤー。ゲーム中では燃えるような紅い髪に、豊満なスタイルを持つ美女のアバターを使い、いわゆる「ネカマ」プレイをしていた。魔術士のエルダーで、アルカイト王国の建国にかかわった「九賢者」の一人「天災のルミナリア」として活動していた。ミラが転移する20年前に異世界に転移し、ソロモンと合流。アルカイト王国で重鎮の一人として、国力増強に努めている。魔術のエキスパートで、単純な火力は九賢者の中でも随一。アルカイト王国では魔術を発展させて機械技術と融合させた「魔導工学」を研究している。ダンブルフ・ガンダドアとはゲーム中での友人で、少女姿となったミラが一目でダンブルフ本人であると気づき、気安く接する。ふだんはネカマプレイに徹しているため、クールビューティー然とした言動ながら、プライベートでは一人称は「俺」で、男口調で話す。ミラとは同じ男から女となった境遇であるため、それをネタにからかったり、アドバイスをしたりしている。
ソウルハウル
VRMMO「アーク・アース オンライン」の男性プレイヤー。ゲーム中では死霊術士のエルダーで、いわゆる「中二病」スタイルの黒ずくめの魔術士の格好をしていた。アルカイト王国の建国にかかわった「九賢者」の一人「巨壁のソウルハウル」として活動していた。ゾンビ娘が大好きな重度のネクロフィリアで、仲間内からも「変態」「紳士の末路」といわれるほど倒錯的な嗜好を持つ。ミラよりも前に異世界に転移していたが、ソロモンには合流せず、行方をくらませていた。不死者がばっこする古代神殿「ネブラポリス」はソウルハウルにとって聖地ともいえる場所で、ソロモンとミラはそこにソウルハウルの拠点が存在すると踏んで訪れる。拠点にはメイド姿のゾンビ娘を大量に並べており、それを見たミラをドン引きさせた。現在はいずれ死に至る「悪魔の祝福」を受けた女性を救うため、神命光輝の聖杯を探し求めており、各地を放浪している。そのためミラもソウルハウルの行方を追って、神命光輝の聖杯を手に入れるための軌跡をたどっている。
カグラ
VRMMO「アーク・アース オンライン」の女性プレイヤー。ゲーム中では艶やかな黒髪を姫カットした美少女の姿をしていた。陰陽術士のエルダーで、アルカイト王国の建国にかかわった「九賢者」の一人「七星のカグラ」として活動していた。「式神」と呼ばれる動物の姿をした使い魔を使役するのを得意とするが、ネーミングセンスがかなり独特で、自らの式神に「亀吉」「ニョロ蔵」「ピー助」などヘンテコな名前を付けている。また大のネコ好きであるため、ネコ系のグッズを集めている。ミラは偶然見つけたネコの式神の名前が「ニャン丸」とヘンテコだったため、カグラのものではないかと推測している。
メイリン
VRMMO「アーク・アース オンライン」の女性プレイヤー。ゲーム中では薄紫色の髪をリング状のツインテールにセットした美少女の姿をしていた。仙術士のエルダーで、アルカイト王国の建国にかかわった「九賢者」の一人「掌握のメイリン」として活動していた。独特のなまりがあるしゃべり方をする。ミラと同じく仙術の使い手だが、ミラがからめ手や召喚術の補助に使っているのに対し、純粋に格闘能力に特化して仙術を使う。強者との戦いを楽しむバトルジャンキーで、趣味は武者修行。金銭に頓着はしておらず、倒した魔獣の素材を譲り渡したりしているため、懐事情は心もとない。ソロモンには悪いと思っているが、九賢者に復帰したら気軽に武者修行の旅に出られなくなるため、期限ギリギリまで修行を続けようと考えている。
クレオス
「召喚の塔」のエルダー代行を務める青年。輝くような金髪を肩まで伸ばし、整った顔立ちをしている。ゲーム中ではダンブルフ・ガンダドアがよく引き連れていたNPCで、光精霊とエルフのハーフなため、暗闇を照らす能力を持つ。その能力で危険なダンジョンを連れ回されたため、ダンブルフのことを慕いつつも、人使いが荒いと認識している。ダンブルフ不在のあいだ、アルカイト王国で召喚術士として活躍したため、国では英雄的存在として崇められている。一方でダンブルフがいなくなったことで召喚術のノウハウが失われ、召喚術士の地位が低下したことをふがいなく思っており、さまざまな改善案を試案している。ダンブルフには劣るものの、召喚術の技量は高く、30年のあいだに研鑽を積んだため、かつてのゲーム中よりも強くなっている。ミラがダンブルフとは気づかなかったが、のちにミラから打ち明けられ、その事実を知る。
アマラッテ
「死霊術の塔」のエルダー代行を務める金髪の少女。容姿は整っているが、テンションが異常に低く、ほとんど表情を変えない。おしゃれ好きでゴシック系の服を特に好み、ふだんは赤ずきんを模したような赤いフード付きドレスを身にまとっている。かわいいにもかかわらず、女性的なセンスが皆無で、おしゃれにまったく気を遣わないのをミラが不思議に思い、何かと彼女にファッションのアドバイスを送っている。一方で興味のあること以外には常識がなく、往来で下着の話をしたり、あまつさえそのまま下着をミラに見せたりするなど、天然気味な行動も多い。
リリィ
アルカイト王国の王城の侍女。長い髪をポニーテールにした若い女性で、メイド服を着ている。かわいいもの好きのまじめな性格で、ミラのような美少女をかわいい服でコーディネートするのを趣味としている。その手腕を無駄に発揮して、ミラをあの手この手で着せ替えしている。用意する服もデザインだけではなく、最新の魔導工学を取り入れた一品で性能もずば抜けている。
ガレット
アルカイト王国で戦車隊の副隊長を務める男性。一見するとまじめな好青年だが、その実かなりの問題児。魔導工学の産物であるアーマードジープの運転を担当するが、運転狂であまりに運転が荒いため、ミラからは毎度のごとく文句を言われている。馬車の運転もできるため、ミラが陸路を使う際には彼女の足を担当することも多い。また若干マイペースなところがあり、ミラの任務に便乗して旅行気分を満喫していたりする。なお城勤めのエリートで、仕事ぶりも有能。運転技術も確かで、その気になれば安全運転もできるが、ミラからはなぜふだんから安全運転しないか不思議に思われている。
スレイマン
アルカイト王国でソロモン直轄の補佐官を務めるエルフの男性で、金髪の優男。非常に博識で、特に古代と精霊に関する知識は王国で右に出る者がいないほどで、ソロモンからも信頼されている。一方で生真面目な苦労人気質で、目の前の仕事は片付けないと気が済まない。ミラがソウルハウルの資料を持ち帰ってからは、その解読で毎回徹夜している。
ヨアヒム
アルカイト王国でソロモンの側近を務めるエルフの男性。黒い髪にモノクルをした術士で、慎重で穏やかな性格をしている。無形術から派生した「無形秘術」の使い手で、遠くの物音を聞いたりする「遠耳の術」などを使える。悪魔との戦いではレイナードと息の合った連携を見せ、ミラを感心させた。
レイナード
アルカイト王国で近衛騎士団長を務める男性。実直な性格で、ソロモンへの忠誠心は高いが、それだけに彼に敵対するものには苛烈な態度で接する。ミラに対してもソロモンへの態度が気安かったため、お互いに第一印象が最悪でミラに対して辛らつに接する。剣の腕は確かで、戦闘ではヨアヒムと息の合った連携を見せた。
ヒナタ
アルカイト学園の召喚術科で教師を務める若い女性。メオウ族と呼ばれる種族で、垂れた犬耳のようなものを頭から生やしている。ダークナイト、ホーリーナイト、サラマンダーといった基本的な六つの召喚術を習得している。まっすぐな性格で生徒思いの先生ながら、召喚術の人気がほとんどないために学校では雑用をしたり、ヒマつぶしをしたりして過ごしている。ヒナタ自身がまじめでやる気があるだけにいたたまれない気持ちになり、審査会でも生徒がただ一人もおらず、自分の召喚術のレパートリーも披露しきったために居場所がない状態となっている。たまたま学校を覗きに来たミラを魔術士希望の初心者だと思い、声をかける。すぐに彼女が操者の腕輪を持つスゴ腕冒険者で、召喚術士であることを知り、彼女に審査会の代理を頼む。クレオスにあこがれており、召喚術が下火となった時代に苦労して召喚術を習得したほど、召喚術に思い入れがある。そのためミラの正体が、クレオスの主であるダンブルフ・ガンダドアの弟子であることを知った際にはショックのあまり気を失っている。審査会を乗り切ったあとは、ミラとクレオスの計らいで、召喚術士の新人向け装備を提供され、少しずつ召喚術科は活気を取り戻している。ミラが愚者の脅威の部屋に赴く際には、クレオスと共に彼女に同行を申し出ている。ヒマだった時間が長かったため、パズルが得意。愚者の脅威の部屋では、その特技で思わぬ活躍を見せてミラたちを助けるが、仕事がないあいだのヒマつぶしの産物だったため、複雑な思いを抱く。
セロ
ギルド「エカルラートカリヨン」に所属する上級冒険者の男性。赤い髪を長く伸ばした線の細い優男で、お人好しな性格をしており、物腰も柔らかい。実はVRMMO「アーク・アース オンライン」のプレイヤーで、仲間が世話になったミラに正体を明かす。30年前、始まりの日の10日後と、プレイヤーの中でもかなり初期に異世界に転移した。転移直後に村人のハンナと、彼女を襲うモンスター・レイニーゴブリンに遭遇。ハンナを助けるためにレイニーゴブリンと戦い、ケガを負ってしまう。回復魔術が使えないために数日間、痛みで苦しむこととなり、それで異世界に来たということを実感する。ハンナや村人との交流を経て、彼らと共に村の特産品の薬草で傷薬を作り、その傷薬を使ってケガを完治させる。また傷薬の販路の開拓などを手伝い、軌道に乗り始めたところで村を旅立つ。その後はかつての仲間と合流し、さまざまな人に助けられたり、恩返しをしたりする旅を続けるうちにギルド「エカルラートカリヨン」を結成し、現在に至る。その人柄はミラからも気に入られており、お互いに困ったときには助け合う約束をして別れた。
エメラ
ギルド「エカルラートカリヨン」に所属する上級冒険者の女性。黒い髪を長く伸ばしたエルフの剣士で、ギルドの副団長を務める。明るく面倒見のよい性格で、ギルドを脱退したメンバーのことも何かと気にかけ、その家族の安否を気にしている。文字が読めない子供たちに本の読み聞かせをしているため、市民からも慕われている。タクトの依頼も悪いとは思いつつも、タクトの身を案じて断っていたが、ミラが引き受けた際には、子供二人を危険なダンジョンに行かせるわけにはいかないと義憤に駆られ、仲間を引き連れて彼らの身を守ろうとした。しかしミラが予想外の実力者で、逆に自分たちが彼女の旅についていく形となり、さらに分け前まで大量にもらったために複雑な思いを抱くこととなる。強くてかっこいい剣士になることを夢見ており、名剣、魔剣の類に目がない刀剣マニア。ミラから悪魔を討伐した分け前をもらう際も、心苦しいと思いつつも素材で属性剣を作るのに目がくらみ、素材に強い執着を見せた。また、実は剣よりも素手で戦う方が強いらしく、セロからは「剣士」よりも「拳士」の方が適性ではないかと思われている。
フリッカ
ギルド「エカルラートカリヨン」に所属する上級冒険者の女性。眼鏡をかけており、ローブを身にまとった魔術師で、ギルドの知恵袋的な役割を担う。ふだんは冷静沈着で仲間にも信頼されているが、その正体はかわいいもの好きの変態。ミラのようなかわいい少女が好みで、少女を前にすると人様には見せられないような顔で興奮し、すり寄ったりボディタッチをしたりしている。その性癖さえなければ頼れる女性ながら、興奮した際はエメラが鉄拳制裁して黙らせるのがお決まりとなっている。
ゼファード
ギルド「エカルラートカリヨン」に所属する上級冒険者の男性。軽薄な態度が目立つ盗賊で、頭にバンダナを巻いている。仲間内での愛称は「ゼフ」。手先が器用で、身のこなしも素早い。ナイフを武器に戦うほか、ダンジョン内のワナを解除したり素材を探したりと、さまざまな場面で活躍する。また料理が得意で、アスバルと共に料理番も担当している。実はふだんの軽い態度に隠れているが、妹・リリカを守るため、危険な今の仕事に身を投じた過去がある。妹が病気になった際には薬を渡したが、実はその病気が薬の効かない流行り病だったため、それが原因で妹と死別してしまっている。心配をかけまいと自分を仕事に送り出したのが最後に見た妹の姿で、死に目にも会えなかったことをひどく後悔している。自分の知識不足で妹を死なせたとずっと深い後悔を抱えていたが、暗丞の鏡で妹から感謝の言葉をもらい、前を向く決意を固める。妹のことはギルドのメンバーにも秘密にしているが、アスバルのみは現場に居合わせたため、ゼファードが軽薄な態度の裏でそれをずっと引きずっていたのを気にかけられていた。
アスバル
ギルド「エカルラートカリヨン」に所属する上級冒険者の男性。恵まれた体格を持つ屈強な戦士で、厳つい顔つきをしているが、性格は優しく面倒見もいい。そのためアスバルを慕う人も多く、「兄貴」として慕われている。戦士としてはかなりベテランで、一目見てミラの召喚したホーリーナイトとアルフィナがただ者ではないと見抜き、戦慄した。実は意外と家庭的で料理を得意としている。また、冒険者でありながら堅実な視野をしており、料理の腕を磨いているのも、冒険者を引退した先を見据えたものとなっている。両親も冒険者で、父親は人を癒やす回復術を得意とするクレリック。母親は自分より大きな戦斧を振り回す怪力無双の戦士で、アスバルの家庭的な部分は父親譲り。また妹が六人おり、面倒見のよさは長男であることが起因している。妹たちは全員母親似で、「戦いの神に愛されている」ほどの猛者ぞろい。幼い頃の妹にすら敵わなかったため、劣等感から意気消沈するが、父親に諭されて自分にできることを探すことを決める。アルフィナたち「ヴァルキリー・シスターズ」勢ぞろいの場面を見た際には、母親と妹たちはヴァルキリーと同種の存在なんだと考えて、冷静に受け止めた。
タクト
カラナックに住む少年。両親は冒険者だが現在行方不明で、祖父と二人暮らしをしている。両親の帰りを待ち続けていたが、5年経っても行方不明なため、冒険者の規定で死亡と判断され、そのことを伝えられる。死んだ両親に会うため、死者と話せる暗丞の鏡があるネブラポリスに行きたいと思っており、冒険者にお願いして回っていた。その後も断られ続けるが、ミラと出会って彼女と共にネブラポリスに赴く。たまたま居合わせたエメラもミラとタクトを心配して、彼女たちと共にダンジョンを探索した。暗丞の鏡に対面するものの、鏡は反応せずに両親とは出会えなかった。しかしそれが逆に両親の生存を意味すると考え、両親との再会に希望を抱く。街に帰還後はミラの強さと優しさにあこがれを抱き、術師としての道を歩むために適性を調べている。
ハインリヒ
Aランク冒険者の男性。鎧武者のような姿で、無骨でまじめな性格をしている。「豪剣」の異名を持つヤマブキが剣の師匠で、基本に忠実ながら洗練された剣の腕を持つ。ギルベルトの護衛をしながら天上廃都を目指していた際にミラと遭遇し、彼女と行動を共にするようになる。ミラがダンブルフ・ガンダドアとヤマブキは旧知の仲と言ったため、出会いに縁を感じている。確かな実力者だが、実は女性に免疫がなく、女性の下着や裸を見るとすぐにうろたえる。ミラが中身が男で無防備過ぎることもあり、たびたびミラに説教している。
ギルベルト
Cランク冒険者の男性。黒髪を短く整え、フード付きのローブを身にまとっている。植物学を専攻する学者で、最近は大地喰いを研究している。天上廃都で大地喰いが起きたことを知り、その調査のためにハインリヒを護衛にして天上廃都を目指している。好奇心が旺盛な性格で、知らないことを知るのが大好き。ミラと出会った際に高山病の危険性を教え、無鉄砲な彼女を見かねて同行を申し出る。ミラが召喚したガルーダに荷物扱いされるという珍事に見舞われるが、これも新鮮な経験と前向きに受け入れている。女性の好みは豊満なスタイルをした人妻だが、流石に手を出すのはマズイのは理解しているため、独身街道まっしぐら。
セドリック・ディノワール
グリムダート帝国の商会に所属する男性。眼鏡をかけており、上品な身なりをした商人で、いつも朗らかな笑みを浮かべている。大陸鉄道でミラが上級冒険者であると見抜き、商品のPRのために最新の寝袋をプレゼントした。実はディノワール商会の御曹司で、ミラに提供した寝袋もかなりの高級品。しかし肝心のミラが商品名や商会名をうろ覚えだったため、寝袋をPRした際もロクに説明ができなかったが、聞いた者が勝手に情報を補足したおかげで結果的にはPRに成功する。
ブルー
五十鈴連盟に所属する男性。「ブルー」の名はコードネームで本名は不明。黒い髪を長く伸ばした偉丈夫で、白い法衣を身にまとった陰陽師のような格好をしている。生真面目な性格で、精霊を守るために日夜、キメラクローゼンと戦っている。黒衣の男と遭遇し、陰陽術と薙刀を武器に戦うが敗北。男を追ってきたミラに助けられたあと、基地に招いてシルバーと引き合わせた。
ホワイト
五十鈴連盟に所属する女性。「ホワイト」の名はコードネームで本名は不明。じゃっかん跳ねている癖毛を長く伸ばし、山伏の法衣を身にまとった格好をしている。身のこなしが機敏で、偵察を行っている。ミラと同じく食道楽の気があり、彼女と焼き肉をして意気投合した。食事のあとは、ミラの髪のセットを手伝うほどなかよくなった。
シルバー
五十鈴連盟に所属する男性。「シルバー」の名はコードネームで本名は不明。威厳のある人物で、ブルーやホワイトの所属する隊長を務めている。ブルーを助けてくれたミラに感謝を述べ、キメラクローゼンと五十鈴連盟の情報を伝えた。当初はミラを信用すべきか悩んだが、ミラの持つ勲章を見て、彼女がソロモンに近しい存在であると確信する。そして、五十鈴連盟の本拠地の場所をミラに教えた。
ハンナ
セロが異世界に転移した直後に出会った村人の女性。ハンナの住む村は雨の日に収穫時期を迎える薬草「天渡草」の特産地だが、同時に雨の日に現れるモンスター・レイニーゴブリンの生息地でもあるため、レイニーゴブリンに襲われて夫を失ってしまう。レイニーゴブリンのせいで天渡草は高騰しており、生まれたばかりの我が子を女手一つで育てるためにも、危険を冒して天渡草の採取を行っていた。レイニーゴブリンに襲われていた際に偶然、近くに転移したセロに救われる。自分のせいでケガを負ったセロの治療のため、彼をわが家に招いた。薬草の採取をしていたが、薬学の知識はないために採取した薬草の保存に失敗し、薬効が失われていたために安値で買い叩かれてしまう。セロに天渡草の薬効を教えられ、この薬草を使えれば夫を助けられたという思いから、セロの勧めで薬学を研究し始める。その後、遂に傷薬を完成させてセロの傷を完治させることに成功する。その後は薬学研究に情熱を燃やし、村の薬師の祖となった。セロはハンナとの交流によって異世界に来たことを受け入れ、それを前向きに考えられるようになり、その後セロが人助けの旅を始める大きなきっかけとなっている。
フォルトゥナ
非常に珍しいピュアラビットのメス。小さくて丸い青いウサギで、ミラがプライマルフォレストで休憩していた際に遭遇する。ゲーム「アーク・アース オンライン」ではマスコット的な人気を誇るウサギだが、非常に警戒心が強いため、遠目からでも相当な幸運が重ならないと見られない。ゲーム当初は、ミラですら直接見たことがなかったが、動物に安心感を与えるペガサスの光に誘われ、ミラの前に姿を現す。ミラをペガサスのボスと認識して懐いたため、その後は彼女に飼われることとなる。ピュアラビットの毛は幸運のお守りとして重宝されるため、ミラに幸運の女神を意味する「フォルトゥナ」の名前が付けられ、愛称は「ルナ」と決まる。ふだんはシルバーホーンの「召喚術の塔」に預けられ、マリアナに世話をされている。
アルフィナ
ミラと契約している「ヴァルキリー・シスターズ」の長女。光輝くようなオーラを身にまとった女戦士の姿をしている。七人姉妹の中で最強で、姉妹のまとめ役を担っている。アルフィナの「滅魔の剣」は邪悪な者に対しては無類の強さを発揮する剣であるため、低位のアンデッドモンスター程度であれば、多少切りつける程度で塵に帰すことができる。ゲーム中では簡単な受け答えしかできなかったが、異世界では一個の存在として自我を確立しており、会話もできるようになっている。実直な性格で忠誠心が高く、ミラがすぐに自分が契約した主と見抜き、彼女の命令に忠実に従う。一方で自他共に認めるストイックさで、ミラが不在の30年間、鍛錬を積み重ねて新しい能力を身につけた。しかし、その鍛錬に妹たちを無理やり巻き込んでいるため、妹たちからは恐れられている。鍛錬の内容は素振り「10万回」で、食事と睡眠以外はほとんど自由時間がないレベルの過酷さで、ミラは流石に妹たちを憐れみ、適度に休むように申し付けた。ヴァルキリー・シスターズはアルフィナ単体で召喚することも可能だが、さらに魔力を注ぎ込むことで、妹たちを含む七人姉妹全員を召喚することも可能。必殺技は「イミテーション・コードG」で、姉妹全員の力をアルフィナに結集し、対象を打ち滅ぼす光の槍を放つことができる。「イミテーション・コードG」はヴァルキリー・シスターズが30年のあいだに身につけた新技で、ミラもその存在を知らなかった。
レティシャ
ミラと契約している「ディーヴァ」と呼ばれる音の精霊。大きな結晶に乗った美女の姿で、歌と音楽で人を魅了するのを得意とする。背中に羽を生やしているが、これはマナでできた楽器のようなもので、羽をはばたかせることでさまざまな音色を奏でることができる。ぽわぽわした天然な性格で、つかみどころがない。久しぶりにミラに召喚され、見た目が大幅に変わっているのにあまり気にしなかったり、突然、鼻歌を歌い出したりと脈絡のない行動が多い。ゲーム中では後方支援に特化した能力を持っていたが、異世界になったことで大幅に能力が変わっており、歌で人を魅了し、癒やすことができるようになっている。レティシャの特技の一つ「森緑のメロディ」は、ゲームでは魔力の回復を助ける効果だったが、現実となったことで人の精神に安らぎを与える効果が付加されている。アルカイト学園の審査会で、森緑のメロディを披露した際には会場全体がその歌声で心洗われ、拍手喝采の場となった。一方で、サポート特化であるために攻撃は苦手で、攻撃手段は「激情のレクイエム」ただ一つ。激情のレクイエムは音による攻撃で、鉄の鎧程度なら粉々にする威力があるが、1日三回しか使えないなど制限が激しく、使い勝手は悪い。
アイゼンファルド
ミラと契約しているドラゴン。竜を統べる竜種「皇竜」の若い個体で、ゲームをプレイしていたダンブルフ・ガンダドアに卵から育てられた。そのためダンブルフを親のように慕っており、ダンブルフがミラとなったあとも、彼女を「母上」と呼んでいる。ドラゴンとしては若い個体だが、それでも30メートルを超す巨体で、そこにいるだけで周囲を威圧する圧倒的な強者。しかし、見た目に反して性格は素直な甘えん坊で、ミラに無邪気に甘えている。能力も高く、特に空への適性はミラの契約している召喚体の中では最高レベル。空戦するさまはさながらジェット機のようで、全力で飛行すればその速度は音速を超える。しかしそれだけに同乗しての移動には不向きで、全力飛行の際には落ちないようにしがみつくだけで必死となる。ミラが不在の30年のあいだに、人間の女性から「人化の法」を学んでおり、人間の青年姿に変身することができる。
ケット・シー
ミラと契約している猫妖精。二足歩行する猫のような姿をしている。シルクハットをかぶり、マントを羽織っている。言動がハイテンションで、ミラを「団長」と呼び、その「団員一号」を自称する。やかましい言動に反して、斥候や索敵、隠密活動を得意としており、探し物の探索や動物の通訳など幅広い特技を持つ。
ペガサス
ミラと契約している聖獣。純白の毛並みを持つ羽の生えた馬で、空を翔けることができる。ミラに移動手段として使われることが多いが、癒やしの力を持ち、体から光を放って聖なる加護を与えることができる。ミラに懐いているが、独占欲が強いために彼女がほかの動物をかわいがると不機嫌となる。
サラマンダー
ミラと契約している火の精霊。ミラと契約しているサラマンダーは、翼のないドラゴンのような姿をしている。サラマンダーは契約している召喚主と、その育成方法によって姿を変える。ヒナタが契約しているサラマンダーはでっぷりとした体型のサンショウウオのような姿で、クレオスの契約したサラマンダーは瘦身のトカゲのような姿をしている。能力も個々によって力に長けていたり、素早かったりと個性がある。ミラのサラマンダーは巨大な体軀にもかかわらず、全身からあふれる炎をジェットのように放出して戦場を縦横無尽に駆け回ることができるため、力と素早さを兼ね合わせた強力なサラマンダーとなっている。契約方法は稀に発見される「精霊結晶」と呼ばれる鉱石を、シンビオス火山の「龍脈の種火」に投じることで、生まれたばかりのサラマンダーを得ることができる。
ガルーダ
ミラと契約している巨鳥。紅い羽毛に包まれ、見上げるほどの大きな体軀を誇る。人間なら二、三人乗っても平気な大きさだが、気位が高いため、主以外のものは乗せようとしない。ミラが不在だった30年のあいだに新しい使い方が模索されており、ガルーダに特注のワゴンを運搬させる方法が編み出されている。あまり重いワゴンを運ばせることはできないが、ワゴンをちょっとした部屋に改装してガルーダに運ばせることで、過酷な空の旅の負担を大幅に軽減することができる。ミラはクレオスがワゴンを使っているのを見て、自分用のワゴンを発注しているが、あまりに注文を盛りすぎたため、完成に時間がかかっている。
トゥインクルパム
ミラと契約している精霊。流れるような金色の髪を長く伸ばした幼女の姿をしており、無邪気で舌足らずなしゃべり方をする。「虹精霊」と呼ばれる特殊な存在で、太古の昔から知識を継承したまま転生を繰り返している。そのため無邪気な幼女の姿に反して、知識量は随一。ミラに懐いているため、召喚されると彼女にべったり甘える。
ダークナイト
ミラと契約している武具精霊。ホーリーナイトと合わせて召喚術の基本となる精霊で、黒い鎧をまとった騎士然とした姿をしている。古戦場で朽ちた武具に魂が寄り集まって生まれた「人工精霊」で、ダークナイトは戦うことを信条とした武具に宿る。ホーリーナイトに比べて攻撃寄りの能力を持ち、剣を使った戦いを得意とする。また複数召喚したり、強化して召喚したりすることも可能で、応用能力も高い。召喚術の中では下位に位置するが使い勝手のよさから、そのポテンシャルは応用次第で上級召喚術に匹敵するほど。ミラは異世界で、ダークナイトの腕や剣のみ召喚して攻撃するという「部分召喚」という技術も編み出している。召喚術の「属性偏移」と呼ばれる技能によって、武具精霊は触媒を用いた強化が可能。ミラが悪魔の持っていたデモンズクリスタルを触媒にしてダークナイトを召喚した際には、巨大な鎧をまとった獣のような姿となった。ミラはその姿のダークナイトを「ダークビースト」と名づけた。ダークビーストは通常のダークナイトが比較にならないほど強力だが、ほとんど暴走状態で「行け」と「止まれ」の命令しか聞かなくなっている。
ホーリーナイト
ミラと契約している武具精霊。ダークナイトと合わせて召喚術の基本となる精霊で、白い鎧をまとった騎士然とした姿をしている。古戦場で朽ちた武具に、魂が寄り集まって生まれた「人工精霊」で、ホーリーナイトは守ることを信条とした武具に宿る。ダークナイトに比べて防御寄りの能力を持ち、盾を使った戦いを得意とする。また複数召喚したり、強化して召喚したりすることも可能で応用能力も高い。召喚術の中では下位に位置するが、防御に徹すれば上級召喚術にせまる使い勝手のよさを見せる。
半魔族の男 (はんまぞくのおとこ)
悪魔と人間のハーフである半魔族の男性で、名前は不明。悪魔の力を持つゆえに人間とは相いれず、人間の心を持つために悪魔になりきれない孤独な存在で、ゲーム中ではダンブルフ・ガンダドアに倒された。当時のダンブルフは今に比べて未熟だったため、倒すのには相当苦戦した。ミラの異世界転移後、アンデッドモンスターとして復活し、カラナックで死霊術によるゾンビを生み出し、騒動を引き起こしていた。当初はゾンビは徘徊するだけだったが、復活に伴って凶暴化していった。街中で混乱を巻き起こしていたが、ミラに召喚されたヴァルキリー・シスターズの合体技で消滅した。
カイロス・ベルラン
アルカイト学園の魔術科に通う男子生徒。公爵家の長男で、実家は魔術士の名家として知られている。成績優秀ながら非常に傲慢な性格で、誰彼構わず他者を見下す言動を取っている。これは貴族からくる自尊心だが、その魔術の腕前も見栄えだけ取り繕った派手さを重視したもので、ミラからは非効率的で実戦向きではないと辛らつな評価を下されている。召喚術科を見下していたが、審査会でミラが高評価を叩き出したことに憤慨し、召喚術科が不正をしていると異議申し立てをした。現代の魔術士の意識改革をしたいと考えていた学園長は、この決闘を利用してカイロス・ベルランの鼻っ柱を叩き折ることをとっさに思いつき、ミラとカイロスの決闘を許可する。決闘では汚い手段を用いてミラたちを貶めるつもりだったが、何もする間もなく敗北。観衆の前で完敗する姿をさらしたため、ミラへ強い恨みの感情を抱くようになる。
黒衣の男 (こくいのおとこ)
キメラクローゼンに所属する男性で、名前は不明。黒いマスクとマントをした若い戦士で、酷薄な目つきをしている。精霊を襲う任務を主に担当しており、戦闘能力は非常に高い。さまざまな術への対抗策を用意し、ブルーとの戦いでは陰陽術に適切に対処して彼をあと一歩まで追い詰めた。不利になったらすぐに撤退するのを組織の基本方針としているため、今まで五十鈴連盟と戦った際も尻尾をつかませなかった。しかしミラの見た目に油断し、彼女の召喚術に警戒するあまり仙術に意識が向いていなかったため、不意を突かれて終始戦いの主導権をミラに握られてしまう。切り札の「雷精痺痛(らいせいひつう)の小瓶」で自分もろとも周囲の人間を麻痺させる強力な攻撃を放つが、ミラにはまったく通用せず、そのまま彼女に捕らえられてしまう。その後、情報を引き出すために五十鈴連盟に引き渡された。
集団・組織
キメラクローゼン
各地で暗躍する秘密結社。大陸各地で精霊を乱獲し、各地の環境に多大な悪影響をもたらしている。精霊のいなくなった土地はマナの循環が滞り、魔物や魔獣の被害が増えたり、空間の歪みが起きたりする。9年ほど前から各地で暗躍しているようだが、その活動規模に反して隠密性が高く、組織の内情はほとんど判明していない。キメラクローゼンの構成員は精霊を捕えるだけあって戦闘能力が高いが、基本的に隠密活動を徹底しているのもあり、不利を悟るとすぐに撤退するのを基本方針としている。
五十鈴連盟 (いすずれんめい)
キメラクローゼンと敵対する組織。表向きは環境保護団体だが、裏では精霊の保護やキメラクローゼンとの対決を行っている。キメラクローゼンに対抗するため、武装して各地で諜報活動を行っているが、それが国家に敵対行動と見られるのを恐れて裏での活動はいっさい秘密にしている。そのため裏の構成員は本名ではなく、コードネームで呼ばれている。五十鈴連盟の裏側は、最も人数の多い実働部隊「マルチカラーズ隊」、情報を統括する部隊、戦闘特化の部隊「ベレロフォン隊」、能力が特出した者を集めた「ヒドゥン」と呼ばれる部隊の四つで主に構成されている。
場所
アルカイト王国 (あるかいとおうこく)
ソロモンと「九賢者」が建国したプレイヤーによる国。首都は「ルナティックレイク」で、その名のとおり三日月形の湖の中心に王城がある。ゲーム中ではプレイヤーが作った国家としてそれなりに知名度があった。始まりの日を迎えて30年以降、激動の時代を生き抜いて戦火から復興したため、ゲーム中とは大きく様変わりしている。またソロモンと九賢者はアルカイト王国に住む人間にとって英雄のような存在となり、彼らを題材にした物語や劇も民間に行き渡っている。また九賢者の影響で、術士の国として発展し、他国への侵略は行わずに魔術の研究および交流を国の方針としている。ゲーム中に存在していたNPCは、現実となったことで一つの存在として確立しており、自らがゲームのキャラクターだったことも彼らは覚えている。限定不戦条約の期限切れ間近だが、内政は10年前の戦争の復興に注力したために防衛力は心もとない。九賢者もルミナリア以外は不在の状態なために戦力不足で、他国とは侵略目的の小競り合いが頻繁に起きている。そのため、ソロモンは最後に異世界に転移したミラを即座に確保し、彼女にほかのメンバーの確保を頼んでいる。
シルバーホーン
アルカイト王国に存在する都市。街の中心にはゲーム内で「九賢者」たち各術士のエルダーが集った「銀の連塔」が存在し、国内における術士の交流、術の研究の要として機能した。そのため「天魔都市」の名でも呼ばれる。かつては軍事拠点として使われていたが、大戦後は復興に伴って観光地と化しており、銀の連塔はその荘厳な見た目から人気の観光スポットとなっている。一方で銀の連塔の入場は厳しく制限され、入れるのは一部のスゴ腕の魔術士や一流の研究者のみとなっているため、術士のあこがれの地となっている。銀の連塔はきれいに円を描くように九つ並び、正面から時計回りに「魔術の塔」「聖術の塔」「陰陽術の塔」「退魔術の塔」「召喚術の塔」「死霊術の塔」「仙術の塔」「降魔術の塔」「無形術の塔」の順で並んでいる。
アルカイト学園 (あるかいとがくえん)
アルカイト王国に存在する学園。首都「ルナティックレイク」東地区の、術具系の店がひしめく「マギカストリート」の突き当たりにある。さまざまな術の教育や研究をしており、「魔術科」「死霊術科」「聖術科」「陰陽術科」など術に応じて学科が存在する。術士同士の交流と競争のため、月に一度「審査会」を開催し、各術科がその成果を発表する。本来は順位を競うものではなかったが、審査会では点数をつけ、その点数に応じて予算や施設の利用の優先権が割り振られるため、自然と順位が付く風潮が生まれてしまっている。審査会は術の成果を審査するものであるため、学園外の者でも代表者の推薦があれば参加すること自体は認められている。ただしクレオスのようなエルダー代行は、過去に参加した際に、ほかの学科も全員高名な術士を代理にして、結果的に学校でするにはあまりに高度な内容過ぎてまともに審査ができなくなったため、銀の連塔の術士は対象外に指定されている。ミラの場合、ミラがそのルールを知らなかったことや、ヒナタがミラの正体を知らなかったため、知らずに審査会に代理として参加した。近代では術の精度や練度より、スポンサーの意見を反映して見栄えを重視する傾向にあり、審査会も見世物扱いされている傾向がある。このため一部の関係者は、術の実用性が失われつつあることに危機感を抱いている。
カラナック
アルカイト王国にある都市。街の中心には過去の大戦で散った英雄たちを鎮める石碑があるため、「鎮魂都市」とも呼ばれる。近郊には古代神殿・ネブラポリスをはじめとするいくつものダンジョンが存在するため、それらを目的とした冒険者で栄える街となっている。
ネブラポリス
C級ダンジョン。カラナックから歩いて1時間の距離にあるダンジョンで、全体的に朽ちた神殿のような作りをしているため「古代神殿」とも呼ばれる。現れるモンスターは主にスケルトンやゾンビといったアンデッドモンスターで、ここのモンスターは「魔動石」を動力源として動くため、倒せばこの魔動石を得ることができる。魔動石は需要が多いため、ゲームではここで魔動石を乱獲するプレイヤーが多く、その行為は「墓参り」の俗称で呼ばれていた。異世界では現実になった弊害で、アンデッドモンスターが狭い場所に押し込められているため、悪臭漂うダンジョンとなっている。その臭いがあまりにひどいため、カラナックには嗅覚を一時的に麻痺する「臭抗薬」と呼ばれる薬が売られており、ここを訪れる冒険者たちの必需品となっている。5階層には暗丞の鏡が飾られた「暗丞の間」があり、死者と話すためにここを訪れる者もいる。6階層には巨大な地底湖と荘厳な巨城があるが、その荘厳な見た目とは裏腹にモンスターも、財宝も「何もない」ことで有名で、冒険者たちからは見向きもされていない。九賢者の一人、ソウルハウルはゲームをしていた頃からこの場所がお気に入りで、自らの「聖地」と称しており、異世界では神殿を自らの拠点としている。
大陸鉄道 (たいりくてつどう)
大陸を一周する巨大鉄道。SL蒸気機関車のような列車が走るが、列車の全高はちょっとしたビルレベルで、内部にはホテルや娯楽施設、デパートのような商業施設まで存在し、そのさまはさながら動く街のようになっている。アルカイト王国では「シルバーサイト」と呼ばれる街が大陸鉄道の駅となっており、ここから乗車することができる。乗車チケットにはファーストクラス、プレミアムクラス、エコノミークラスが存在する。
プライマルフォレスト
「天魔迷宮」と呼ばれる特殊な分類のダンジョンの一つ。アルカイト王国の南西地域に存在する森に存在する。天魔迷宮は通常のダンジョンにはいない魔物の亜種が徘徊し、魔物の強さが一段階上となっている高難易度のダンジョンの総称となっている。また「天魔」の名を冠するアイテムが手に入るのが特徴。「ダンジョン」は時間さえ許せばいくらでもアイテムを手に入れることができるが、異世界が現実となったことで無限に湧き続けるアイテムをめぐって問題が多発した。そのため、高難易度のダンジョンで貴重なものが排出されるプライマルフォレストも「禁域指定」され、立ち入りが著しく制限されている。プライマルフォレストには「祈り子の森」と呼ばれる霊域が存在し、この場所の中心には樹齢3000年を超える巨大なご神木が存在する。祈り子の森は巨大なご神木のある深い森であるため、昼間でも太陽が差し込まない暗い森だが、ご神木からあふれるマナで草木が光り、幻想的な光景を醸し出している。また、祈り子の森には多くの野生動物や魔物がいるため、狩人に人気の場所となっている。
愚者の脅威の部屋 (ふーる ざ ゔんだーかんまー)
アルカイト王国に存在する高難易度ダンジョン。はるか昔に大地を愛し、生涯を大地の研究に捧げた「三日月の愚者」と呼ばれた人物の遺産が眠る場所で、このダンジョンには彼が収集した大量の研究資料やコレクションが眠っている。ゲーム中でのアルカイト王国建国にもかかわった場所で、当時ソロモンと九賢者はアルカイト王国建国の条件であった「ルナティックレイクの化け物を御する方法」を愚者の脅威の部屋で調べた。ゲーム中では2階層までしかなかったが、異世界となってからダンジョンが変化し、3階層などが新たに追加されている。3階層に行くためには「蛍燃光石(けいねんこうせき)」と呼ばれる特殊な鉱石が必要だが、蛍燃光石が採れるラゲット銅鉱山はルナティックレイクより片道5時間以上掛かる上に、蛍燃光石は採取して半日で使えなくなるため、ダンジョンに入るのは非常に難しい。また3階層以降には大量の資料が保存されており、自由に閲覧はできるが、本棚からある程度離れると防犯装置が起動し、侵入者を追い出そうとする。また魔術で本は保存されており、ある程度離れると本は本棚に戻るため、本の持ち出しは不可能となっている。
グリムダート帝国 (ぐりむだーとていこく)
「三神国」の一つ。アース大陸の北に位置する「正義の神」を祀る国で、「騎士の国」とも呼ばれている。アルカイト王国の5倍以上の国土を誇る広大な国で、国土の北部分は大樹海に覆われている。そのため精霊も数多く生息していたが、9年前を境に精霊たちがほとんど姿を消してしまっている。原因は不明ながら、調査の結果、キメラクローゼンがかかわっていると目されている。
天上廃都 (てんじょうはいと)
アリスファリウス聖国にあるダンジョン。アリスファリウス聖国の都市「ホーリーゲート」の北の大山脈の中心にある盆地に存在する。山脈は一番低い山でも標高5500メートルを超えるため、生身の人間が空路で向かった場合は高山病となる。このため陸路で向かう必要があるが、天上廃都に向かうためには、その手前にあるダンジョン「空への階段」を通る必要がある。天上廃都には大量の白い結晶がそこかしこに見て取れるが、これは「日天水晶」と呼ばれる水晶の名残で、かつてここにはこの水晶から漏れ出る光で都を照らし、栄えた都があった。その光は闇だけではなく、邪悪なるものを祓う効果があったため「光の都」とも呼ばれていたが、何らかの原因で滅び去り、今は見る影もない廃墟となっている。都には「結晶神殿」と呼ばれる場所が存在し、ここでは今も「黒水晶」と呼ばれる脆い水晶を、どんな宝石よりも頑丈な「白水晶」へと変換することができる。しかし、それには神殿の水晶から漏れ出る光を黒水晶に当てる必要がある。白水晶は光を当てて数分で元の黒水晶に戻ってしまうため、神殿から持ち出すことは不可能。神命光輝の聖杯を作るためには、この白水晶でご神木を加工する必要があるため、ソウルハウルは天上廃都を訪れたとされる。
その他キーワード
アーク・アース オンライン
ミラたちがプレイしていたVRMMOゲーム。4年前、突如現れたマイナーなファンタジー系の冒険RPGで、プレイヤーは冒険者となってゲームの中の世界を冒険することができる。VRゲームであるため、プレイヤーの意識はゲームのアバターと同化して遊ぶこととなる。プレイヤーは操者の腕輪と呼ばれるデバイスを与えられ、この腕輪を使ってユーザーインターフェースをあやつり、メニューを操作する。深夜のCMにアクセス用のコードが表示されるだけという、非常にニッチな広告戦略を取っている。当初は知る人ぞ知るゲームだったが、口コミで広がって自然とプレイ人数を増やすこととなった。プレイヤーからも運営方針は謎が多いと思われており、ゲームに関しては前述のCMくらいしか運営はかかわっておらず、ゲームの公式サイトすら存在せず、スタッフの名前すら誰も知らない。アップデートも4年間のあいだに二回しかしておらず、ほとんどアップデートをしない放任主義の運営としてもプレイヤーからは有名だった。反面、アップデートがないのも納得できるほど作り込まれており、ゲーム内ではプレイヤーの工夫次第であらゆるものを作り出すことができる。独自の技や魔術を作り出すのはもちろん、建国すら可能で、ゲーム内には国王となったプレイヤーも存在する。始まりの日を境にゲームにログインしていたプレイヤーは、このゲームそっくりな異世界に転移することとなる。異世界はゲームそっくりだが、ゲームであった制限がなくなったことから、当時になかったものがプレイヤーに発見されたりしている。
化粧箱 (けしょうばこ)
VRMMO「アーク・アース オンライン」の課金アイテム。単価は500円で、プレイヤーが使用すると自分のアバターの再設定を行うことができる。また課金アイテムということで、ゲーム開始時のアバター設定よりも選べるパーツが多いのが特徴で、多くのプレイヤーに愛用されていた。異世界でも化粧箱は使うことができるが、課金項目が消え去ったために新たに手に入れることは不可能で、プレイヤーが使わずに所持しているものしか存在しない。また異世界で仕様変更され、受け渡し不可能となったためにミラは自らのアバターの再設定ができなくなっている。
三神国防衛線 (さんしんこくぼうえいせん)
10年前に起きた大戦争。「三神国」はゲーム「アーク・アース オンライン」のプレイヤーが最初に所属することとなる三国で、初心者プレイヤーを保護するために強力なNPCが多数所属していた。強力な国家であるため、プレイヤーから侵略されることもなく、また三神国自体も侵略することもなかった。そのためゲーム中では「不動王」と呼ばれていたが、ゲームが現実となったことでその枷から外され、10年前に起きた悪魔の大侵攻をきっかけに三神国による大戦が勃発する。主に戦ったのは三神国だが、その戦いの余波で小国は壊滅し、その戦火は大陸全土に及んだ。戦争終結後、生き残った国家は復興に国力を注力するため、10年間、戦争に関連するあらゆる行動を禁止する「限定不戦条約」を締結した。
始まりの日 (はじまりのひ)
VRMMO「アーク・アース オンライン」が現実となった日。現実時間で2116年9月14日で、異世界に転移したプレイヤーの共通点は、この日にログインしていたことだとされている。しかし、転移したプレイヤーの年代に大きなズレがあるなど謎が多い。この日を境にゲームの設定やNPCは大きく変化し、もう一つの世界へと変化している。プレイヤーもゲームにあった制限はほとんどなくなり、嗅覚や味覚、触覚がダイレクトに感じられるようになり、一つの現実としてプレイヤーに異世界を実感させている。またログアウトは不可能で、プレイヤーは異世界から脱出する方法はない。異世界でも操者の腕輪で「フレンドリスト」を見れば、知人のログイン状況を見ることはできる。一部の人間はログアウト状態となることもあるが、ソロモンによればそれが本当に異世界からログアウトしたのか確認する術はなく、もしかしたらそのまま死んだのかもしれないと語っている。
神命光輝の聖杯 (しんめいこうきのせいはい)
「伝説のレアアイテム」ともいわれる究極の回復アイテム。効果はあらゆる状態異常を治療し、傷を癒やす聖杯で、死すらはねのけるという伝説を持つ。ゲームでは戦闘不能時に発生するデスペナルティすら無効化する効果があるとされたが、VRMMO「アーク・アース オンライン」では情報が出回らず、手に入れた者の噂もなかったため、次第に「データだけの未実装アイテム」といわれていた。ソウルハウルは悪魔の祝福を受けた女性を救うため、さまざまな治療アイテムを試したが不発。最後の手段として神命光輝の聖杯の伝説にすがり、その作成のために各地を旅している。神命光輝の聖杯の盃部分は「樹齢3000年を超えるご神木の根」でできているらしく、ソウルハウルは祈り子の森のご神木から材料を採集している。また、ご神木の加工やほかの材料のためにソウルハウルは各地を転々としており、ミラはその軌跡を追っている。
九賢者 (きゅうけんじゃ)
ソロモンと共にアルカイト王国を建国した九人のプレイヤーを指す称号。それぞれが術式を極めた者に送られる「エルダー」の称号と、得意とする戦闘スタイルに応じた異名を持つ。ゲーム中はプレイヤー間で非常に有名だったが、ゲームが現実となったことで、NPCだった者たちにも彼らの知名度が高まることとなった。当時を知るNPCだった者たちは、彼らの存在を伝説的なものと思っており、異世界の住人たちには御伽噺や劇という形で九賢者の活躍が伝わっている。九賢者はゲーム中では銀の連塔を拠点としていたが、現在、ルミナリア以外の九賢者は不在であるため、アルカイト王国は各エルダーの代行を立てている。
操者の腕輪 (そうしゃのうでわ)
VRMMO「アーク・アース オンライン」のプレイヤーが腕に着けている装身具。ゲームメニューを呼び出し、さまざまな操作をするための端末で、登録した人の状態を確認する「フレンドリスト」や、アイテムの収納ができる「アイテムボックス」などの機能がある。異世界でも操者の腕輪は機能しているが、操作方法は一部変わっていたため、ミラは当初使いこなせずにソロモンから使い方を教えてもらった。また「課金」や「ログアウト」など一部の機能はなくなっている。異世界ではプレイヤーの操者の腕輪を模した劣化品が作られており、一部の冒険者は所持している。劣化品でも操者の腕輪を持てるのはC級冒険者以上であるため、操者の腕輪は異世界では「上級冒険者の証」と見られている。なおプレイヤーのものはアイテムボックスに収納した物の時間を止め、自然劣化を防ぐが、劣化品の操者の腕輪にはこの機能がない。
暗丞の鏡 (あんじょうのかがみ)
死者と話すことができる不思議な鏡。死者と縁が深ければ話すことができ、死別した家族であれば高確率で話すことができる。逆に会ったことがない人物であれば、その人物と縁が深いアイテムが必要となる。ただアイテムを持っていく場合は、死者の霊は必ずしも出てくるとは限らず、会えないことも多い。暗丞の鏡はネブラポリス5階層の、暗丞の間に安置されている。
賢者ローブ (けんじゃろーぶ)
ダンブルフ・ガンダドアのまとっている白いローブ。見た目も性能もいいため、ミラとなったあとも愛用していたが、周囲がかわいい服を着せようとするため、なかなか着るチャンスがない。実は異世界ではダンブルフのアイテムとしてグッズ化しており、レプリカが大量に売られている。のちに、セロがミラにレプリカ品をプレゼントしてミラを喜ばせるが、実はサイズ的な問題で子供のコスプレ用だったために複雑な思いを抱かせている。また、ほかの九賢者のグッズに比べて売り上げが微妙らしく、ミラは少しそのことを気にしている。
精錬 (せいれん)
宝石を加工することで魔法のアイテムを作る技術。VRMMO「アーク・アース オンライン」ではあらゆるものを作ることができ、工夫次第では新しい系統の魔術も作り出すことができた。精錬に関する技術もプレイヤーによって新たに開発された魔術で、ゲーム中でダンブルフ・ガンダドアが発見、開発した。宝石から魔力をストックするための入れ物となる「精錬石」を精錬する。そしてほかの装備を精錬して魔力を抽出し、その魔力を精錬石に注入する。装備から抽出する魔力は「力強化」や「体力強化」などさまざまな種類があり、精錬はそれらの魔力を効率よく抽出し、精錬石に保存、凝縮する技術となっている。魔力が保存された精錬石は「魔封石」と呼ばれ、これらは装備の作成に珍重される。魔封石に込められた魔力を装飾品に定着させることで、比較的誰でも簡単に扱えるエンチャント装備を作り出すことができる。また、魔封石には攻撃に特化した性能のものも存在する。ダンブルフは召喚術が最初は最も敷居が高いこともあり、術が使えない状況を想定して、爆発の力を込めた「魔封爆石」というものも開発している。始まりの日以降、精錬技術の第一人者だったダンブルフが30年にわたって不在となったため、失われた技術となっている。アルカイト王国では手探りで精錬技術の再現を行っているが、辛うじて小さな精錬石を作るのがやっとで、しかも莫大な時間が必要となる。アルカイト王国で新たに開発されている「魔導工学」は魔封石を使うが、現在は過去の備蓄を切り詰めて使っており、精錬技術の復興は急務となっていた。このため、ミラの帰還によって精錬技術が復活して以降、魔導工学の研究は急ピッチで進んでいる。
召喚術 (しょうかんじゅつ)
魔術の一種。契約した精霊や幻獣を呼び出して、その力を借り受ける魔術で、契約した「召喚体」の能力によって非常に多彩な活躍ができるのが特徴。召喚術もただ単に呼び出すだけではなく、召喚体を強化したり、複数の召喚体を同時に召喚したりと応用が可能で、召喚体の力を引き出すのが術士の腕の見せどころにもなっている。また、召喚体はさまざまな技能に優れていたり、長い年月を生きて博識だったりするため、戦闘にとらわれず幅広い分野に応用が利くのが特徴となっている。召喚術の行程は基本的に召喚する場を選択し、次に召喚する召喚体を選択。その次に召喚体に魔力を注ぐことで、召喚体を召喚可能となる。召喚したあとは、召喚体の制御と指示が必要となる。通常であればこのように「場の選択」からいくつもの行程を挟むこととなるが、ミラは手順の簡略化と圧縮を行ってワンアクションで済むように工夫している。基本的に召喚術士が最初に契約する召喚体は使いやすく、ポテンシャルが高い人工精霊のダークナイトかホーリーナイトとなるが、これらは主としての実力を示さなければならない。術士が魔術なしで戦うのは当然ながら難易度が高く、このため召喚術は「初めての召喚体」を得るまでが最大の障害となる。ダンブルフ・ガンダドアはゲーム中でさまざまなノウハウをため込み、精錬技術によってその欠点を補っていた。しかしダンブルフが不在となり、ノウハウ不足と敷居の高さからアルカイト王国では、召喚術は30年のあいだにすっかり下火となり、一般的に「マイナー魔術」「絶滅寸前」と散々な評価を下されている。
無形術 (むけいじゅつ)
魔術の一種。魔術はどの種類も基本的に専門の術士でなければ発動できないが、無形術のみは魔力があり、条件さえ満たせば専門の術士でなくても使うことができる。そのため魔術の中でも特別な分類をされており、アルカイト学園でも無形術はどの術士でも扱えることから、つねに一定の研究費が割かれ、審査会でも審査対象外となっている。またゲームが現実となって以降、無形術から「無形秘術」と呼ばれる新たな術が派生している。発見されたばかりの無形秘術は未だに謎が多い魔術で、習得条件が無形術以上に複雑でほとんど判明していない。このため、無形秘術の使い手は非常に希少となっている。
死霊術 (しりょうじゅつ)
魔術の一種。仮初の魂を生み出し、死体や無機物に魂を吹き込んであやつることができる。ゾンビなども生み出すことができるが、死霊術のゾンビはアンデッドモンスターの野生のゾンビと違い、性質的にゴーレムに近く、陽の光を浴びても平気などの特徴がある。アルカイト学園では死霊術は研究されているものの、人の倫理観に触れる内容が多いため、審査会では無難な内容になりがちで、見た目は非常に地味になっている。
精霊 (せいれい)
霊的な存在。もともと自然界に存在し、火や水といった自然現象を司る「原初精霊」と、人の思いが積み重なって生まれる「人工精霊」の主に二種類が存在する。原初精霊は基本的に温和で、近くにいるだけで環境は安定し、人々もさまざまな恩恵を受けることができる。原初精霊は非常に強いが、基本的に温和であるため、故意に怒らせない限り敵対することはない。しかし一度怒らせると手が付けられない災害をもたらすうえに、倒しても何の恩恵もない。そのため、VRMMO「アーク・アース オンライン」のプレイヤーは敵対するだけ損だと思っている。人工精霊は剣や鎧といった武具に人の思いが宿って生まれる存在で、もともと人に使われていたため、原初精霊に比べて扱いやすく、人に懐きやすいという特徴がある。力自体は原初精霊の方が強いことが多いが、扱いやすいために人工精霊は使い方と成長次第で、原初精霊にせまるポテンシャルを秘める。そのため、召喚術では最初に人工精霊と契約することが基本となっている。
悪魔 (あくま)
異形の姿をした邪悪な存在。世界各地で暗躍しており、10年前には大軍を率いて人類に襲い掛かり、のちに「三神国防衛線」と呼ばれる大戦争のきっかけとなった。現在は大戦争でほとんど討伐され、姿を見かけることはなくなり、一般的には絶滅扱いされている。ミラはネブラポリスで上位悪魔を倒しているが、現在ではほとんど目撃例のない悪魔の討伐であったため、それを報告して以降、ちょっとした騒動となっている。また悪魔の体は素材としても有益だが、現在はほとんど悪魔の素材は手に入らないため、貴重となっている。
魔獣 (まじゅう)
野生の獣が魔に染まった存在。自然発生に近い「魔物(モンスター)」とは明確に違うものとして扱われており、野生の獣が突然変異したような存在であるため、生息数は少ないとされる。身体能力が高いため、基本的に討伐の難易度は高い。キメラクローゼンの精霊の乱獲によって、魔獣の発生率は上がっているようで、各国で問題視されている。
妖精の加護 (ようせいのかご)
妖精族の特殊能力。妖精族が生涯を捧げると決意した相手に与える加護で、一度加護を与えると、双方に断ち切ることができない特殊なつながりが生まれる。妖精の加護は生涯でただ一人しか選べず、一度加護を与えた場合は、そのつながりはいかなる手段をもってしても破棄することはできない。その性質から妖精族にとって婚姻にも近しいものとなっている。加護の内容は個々人によって違い、マリアナの場合は状態異常の無効化となっている。妖精の加護は非常に強力で、マリアナの加護も下手な装備品より使い勝手がいい。しかし加護は時間制限があり、加護を受けて3日で効果を失う。一度、加護を受けた者であれば、妖精に加護を掛け直してもらい更新すれば再び加護の効果を得ることができる。
天渡草 (てんとぐさ)
薬草の一種。大きなつぼみを付けた薬草で、雨の日に薬草が雨粒をつぼみに蓄え、つぼみが実ることで収穫時期を迎える。天を渡ってきた雨によって収穫可能となるため、「天渡草」の名を持つ。天渡草は捨てる場所がないほど薬効が高い薬草で、花弁には解毒作用、葉には傷を癒やす作用と、部位ごとに異なった薬効がある。中でも特筆すべきはつぼみに蓄えられた雨水で、天渡草の花粉と雨水が混ざることで高い薬効を発揮する。雨水はそのまま飲んでも薬効があるが、ほかの素材や薬の薬効を増幅する効果があり、これを使って薬品を作れば高品質なものを作り出すことができる。ただし雨水は保存が難しく、採取したばかりの天渡草を適切に加工しなければ、天渡草は次第に萎(しお)れ、雨水も乾燥して失われていく。このためセロは天渡草の薬効を最大限に生かすべく、ハンナに薬学を学ぶように勧め、彼女と協力して天渡草の傷薬を完成させた。その後、セロが商人と交渉して販路を開拓したため、傷薬は新しい村の特産品となっている。
レイニーゴブリン
モンスターの一種。体表が湿ったゴブリンで、体表が乾くのを嫌がり、ふだんは洞窟の奥にある水場を住処としている。雨の日にのみ、洞窟を出て活動範囲を広げて遭遇率が大幅に上がるため、「レイニーゴブリン」と呼ばれている。一体一体の戦闘能力は高くないが、群れているうえに武装しているため、非常に危険。雨の日は地面がぬかるんだり、視界も悪くなったりと劣悪な環境になることもあり、非常に戦いづらくなるが、足は速くないために大人の足なら逃亡は可能。ハンナの住む村の近辺に数年前から住み着いて村人を襲っていたが、セロの活躍によって数を減らしていった。
大地喰い (あーすいーたー)
各地で起きている謎の現象。初めて確認されたのは25年前のグリムダート帝国で、グリムダート帝国の北部にある大森林の一角が一夜のうちに直径500メートルにわたって消滅した。大地喰いはその後も大陸各地で起きているが、未だ原因は判明しておらず、一説では異世界からの侵略や精霊の暴走とも噂されている。また、ギルベルトはグリムダートの大地喰いはあくまで確認できている中で最も古いものなだけで、確認できていないだけでそれ以前にも大地喰いがあったのではないかと推測している。
クレジット
- 原作
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りゅうせん ひろつぐ
- キャラクター原案
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藤ちょこ
書誌情報
賢者の弟子を名乗る賢者 THE COMIC 12巻 マイクロマガジン社〈ライドコミックス〉
第1巻
(2017-03-31発行、 978-4896376203)
第10巻
(2022-10-31発行、 978-4867163504)
第11巻
(2023-07-28発行、 978-4867164488)
第12巻
(2024-03-28発行、 978-4867165492)