「気づき」により得られる能力「ワンネス」
本作に登場する「ワンネス」とは、触れることなく物質を手の中に持ってきたり、逆に手の中のものを遠くの対象物と融合させたりすることができる超能力である。これを使えば、ビルの支柱を少しずつ抜き取って倒壊させたり、遠くの人間の頭に石を融合させて殺したりすることが可能になる。しかし「ワンネス」は、本来人間も自然も地球も宇宙もすべてのものが一つであるという「気づき」であり、物体を転移する力は「気づき」の副産物に過ぎない。したがって「ワンネス」を応用すれば、瞬時に場所を移動したり、壁を抜けたりすることも可能になる。また、力を持つ者からの儀式により「気づき」を得られれば、「ワンネス」に目覚めることもある。本作は、「ワンネス」を得た二人の高校生の戦いが、やがて人類の命運をも左右するさまを描いた破壊と再生の物語である。
怒りを抱えた、二人の若者の革命が始まる
田中真(マコト)は、会社倒産による父の自殺、母の失踪、中学時代のいじめなど、様々な経験を経たのち、ある老人との出会いにより「ワンネス」という強大な力を得た。しかし、自分を囲む社会は変わらず醜いもので、ときには歪んだ社会をバラバラにしたい衝動に駆られることもあった。そんなマコトの前に現れたのが、首藤悠生(ユウキ)である。ユウキは現代社会に絶望しており、世の中を破壊するテロリストになるという。マコトと違い、ユウキは一線を越えることを躊躇(ためら)わない人間である。マコトは、テロはダメだと思いつつ、ユウキこそが自分の力「ワンネス」を持つにふさわしく、歪んだ世界をバラバラにしてくれる存在なのではとも考える。そしてある日、マコトが「ワンネス」の力をユウキに打ち明けたことから、二人はテロ組織「問う者」として、破壊活動を開始することになる。
テロ組織「問う者」
ユウキはマコトには黙って、大槻純一郎、工藤陽子の二人を「問う者」に加えた。革命は二人だけのものだと思っていたマコトは裏切られた気持ちになるが、ユウキに従い活動を続ける。しかし、犠牲者を厭(いと)わない強いテロを行うと宣言するユウキに、マコトはついていけなくなり、「問う者」のメンバーから外れることになった。その後、テロの実行部隊になったのは、マコトからの儀式で「ワンネス」の力を得た大槻だった。そして大槻は、次第に自分の力に酔いしれ、勝手な行動をするようになる。ユウキとマコトのすれ違い、大槻の暴走で「問う者」はバラバラになっていく。
登場人物・キャラクター
田中 真 (たなか まこと)
高校を2年留年している、地味で目立たない男子高校生。年齢は18歳。小学校の時に父が経営していた工場が倒産して父は自殺、母は失踪した。生活保護を受けている祖母に預けられるが、後に祖母も亡くなり、天涯孤独となる。中学時代に受けた激しいいじめが原因で不登校になり、フリースクールと精神科を行き来する生活を送る。その際、診療所で出会った不思議な老人により「気づき」を得て、「ワンネス」という、物質を壊したり空間を移動したりできる力を得る。歪んだ世の中を破壊するという同級生のユウキと出会い、ワンネスの力を使うことを決意。ユウキがリーダーを務めるテロ組織「問う者」に参加するが、のちに「ワンネス」の力を得たユウキのやり方についていけず、次第に対立していくことになる。
首藤 悠生 (すどう ゆうき)
マコトと同じく高校を2年留年している同級生の男子。年齢は18歳。長髪が特徴のイケメンで、「教師をディベートで退職に追いやった」「校内の女子何十人とセックスをした」など数々の伝説を持つ有名人。実家は裕福で何不自由なく育ったが、母親は他界し、父親とは反りが合わず一人暮らしをしている。現代社会の矛盾や歪みに絶望しており、テロリストになることを決意している。なぜかマコトに惹(ひ)かれ、一緒に行動するうちに、マコトが物質を壊したり空間を移動したりできる「ワンネス」という力を持つことを知る。それからはマコトと共にテロ組織「問う者」を名乗り、破壊活動を行っていたが、のちに自身も「ワンネス」の力を得て、次第にマコトと対立していくことになる。
書誌情報
デストロイ アンド レボリューション 全9巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉
第1巻
(2011-04-28発行、 978-4088791357)
第9巻
(2017-01-19発行、 978-4088906522)