概要・あらすじ
ありとあらゆる犯罪者を収容する「監獄街」。一度入れば二度と外に出られないといわれており、この地で家庭を持つ収容者もいる。そのため人口は増え続け、収容人数は50万人にも及ぶという。この街で生まれ育った少女のクロエは、部屋を出たことがなかった。殺人、強盗が日常茶飯事のこの街では、子どもが外を出歩くことはできなかったのだ。一緒に暮らす、まだ赤ん坊の弟、ロックの世話だけが彼女の生きがいであった。クロエの部屋の隣には、一夜で中隊を壊滅させた伝説の男、ロス・サントベルク大佐と、その部下二人が暮らしていた。「赤ん坊の泣き声を聞くと国に残してきた息子を思い出す」そんな理由で、ロスは隣人に、いつも食べ物を差し入れていた。ただし、ロスは隣人の顔も知らず、いつも扉の外にそっと食料を置くだけだった。監獄街の壊れた外壁の修理にこき使われていたロスたちは、その状況を利用して脱獄を計画していた。条件が揃い、いよいよ計画を実行する夜、ロスは扉の前に置かれた手紙に気がつく。それはクロエからのお礼の手紙だった。それを見たロスは、隣人が子供と赤ん坊の二人だけで生活していたことを知る。自分が脱獄すれば、子供二人は餓死するだろう。脱獄を迷うロスだったが、部下の二人に説得され、予定通り計画を実行することを決意する。隣の部屋では、ロスたちの口論をクロエがじっと聞いていた。吹雪の中、外壁に仕込んでおいたロープを摑んで一人ずつ脱出するロスたち。最後の一人、ロスが外壁を登り終えた時、何者かが下からロープを引っ張った。まさかと思いながら、ロープを引っ張り上げた先には、赤ん坊を背負った少女がいた。クロエである。力の限界からロープを離しそうになったクロエの襟を、ロスが摑んだ。その時、壁の一部が崩れて、ロボット看守のイエスマンに見つかってしまう。イエスマンの銃撃を受け、左腕を撃たれながらも、弟のロックを話さなかったクロエだが、ロックを包んだ布が破れてしまい、弟は監獄街の中に落ちてしまった。泣き叫ぶクロエを抱え、ロスは監獄街の外へと脱出。狂ったように外壁をかきむしり、中に戻ろうとするクロエを見たロスは、いつか弟を迎えにいけるぐらい強く育てることを約束する。数年後、ロスから凄(すさま)じい鍛錬を受けたクロエは、弟を探して再び監獄街へと舞い戻った。
登場人物・キャラクター
クロエ
監獄街で生まれ育った少女。歌と踊りが大好き。両親がアパートを出ていってから半年間は、赤ん坊の弟、ロックと二人きりで暮らす。隣人のロス・サントベルク大佐の脱走計画を知り、彼の後について監獄街を抜け出すが、その際ロックと生き別れになってしまう。数年間、ロスに格闘術を学んだ後、ロックを探し求めて監獄街へ戻る。穏やかでどちらかというと臆病な性格だが、弟のためなら、無双の強さを誇る殺人者に変貌。暗闇の中、ナイフを武器に踊るように敵を倒す。
ロック
クロエの弟。初登場時は赤ん坊で、お腹にあざがある。クロエが監獄街に舞い戻った際は、10歳ぐらいの黒縁メガネをかけた少年。レオと名乗っている。クロエと生き別れになった際、塀から落下したため両足が悪い。育ての親であるヨシキという中年男性に英才教育を施されたため、高い知識と教養を持つ。監獄街脱出のための飛行船作りの中心メンバー。
ロス・サントベルク大佐 (ろす さんとべるくたいさ)
戦時中、一夜で中隊を壊滅させたという伝説の男。「解体屋」の異名を持つ。短髪と、右目をまたぐ大きな傷が特徴。監獄街では、クロエの隣に住んでいた。優しい性格で、赤ん坊の泣き声を聞きつけ、クロエたちに食料を差し入れていた。二人の部下、クロエとともに監獄街を脱走。生き別れになってしまった弟のロックを助けにいくというクロエのために、数年間かけて殺人術を仕込む。
ウーゴ・ナバロ
監獄街でクロエの隣に住んでいた三人組の一人。バンダナとひげ面が特徴の男性。敵国の兵士を恐怖に陥れていた、凄腕の殺し屋。ロス・サントベルク大佐の部下となり、監獄街を脱走する。
ハチ・ベアーマン
監獄街でクロエの隣に住んでいた三人組の一人。巨体と熊の被(かぶ)り物が特徴。戦争時は腕の良い傭兵(ようへい)として活躍していた。ロス・サントベルク大佐の部下となり、監獄街を脱走する。