概要・あらすじ
ある日、突然若返って、急激に死に至る病逆行症候群が世界に広まりつつある近未来。逆行症候群を発症しているりなは、進行スピードは遅いものの、14歳なのに9歳の体に退行していた。双児の妹もなと遠い親戚の忍の3人で暮らしていたが、そこへ、昔、りなたちと暮らしていたデーモンのミカがやってくる。母の才を受け継いだもなは、デーモンを捕え、支配できる存在だとミカは言う。
もなが鎖で高位のデーモンを捕まえれば、双児であるりなに影響が出て時間の逆流がおこり、りなを助けることができるかもしれないというのだ。ミカは自分を囮に、高位のデーモン黙示録の獣を呼びだすことに成功。そのデーモンをもなに捕らえさせ、もなはそのデーモンにK2という名前を与える。
登場人物・キャラクター
りな
もなと双児の姉で14歳だが、逆行症候群のため、9歳の体に退行している。体は小さいが、しっかりしており、立ち居振る舞いはお姉ちゃんぽく、また、人を気遣うとても優しい子。6月10日生まれ。長い髪をツインテールにしている。母親がりなたちを身ごもっている時にデーモンに接触したことから、この世で唯一の胎内接触者。 りなが逆行症候群を発症したのは12歳の時だが、とても特殊なケースのため、通常よりかなりゆっくり進行している。父親と母親が死去しており、りなともなが頼れるのは親戚の忍だけである。カナダの田舎道をもなと2人で歩いていたところを保護され、忍に引き取られる。カナダで見つかるまでの10年間のことはほとんど記憶がなく、忍が大学院を卒業するまでの1年間をアメリカの小学校で過ごすが、日本に帰ってきて逆行症候群を発症してからは、周りにバレないようにするため学校に行けていない。 カナダで育ったため、英語と日本語が話せる。意外にもゴッドハンドと呼んでもいいくらいゲームが上手い。
もな
りなと双児の妹で14歳。6月10日生まれ。とても元気な女の子だが、朝が弱い。母親がもなたちを身ごもっている時にデーモンに接触したことから、りな同様この世で唯一の胎内接触者。母の才を受け継ぎ、デーモンを鎖でつなぎ、従わせることができる存在。そのため逆行症候群を発症しない。 光星女学院という中学校に通っている。ミカの鎖であり、K2の鎖でもあるが、後にK2の聖典と判明する。カナダの田舎道をもなと2人で歩いていたところを保護されて忍に引き取られ、カナダで見つかるまでの10年間のことはほとんど記憶がない。カナダで育ったため、英語と日本語が話せる帰国子女。 日本語は話せたが軽いイジメにあい、無視されるようになった頃、閨人のDVDを見てファンになり、それをきっかけに友達が出来たため、閨人を恩人のように思っている。その閨人のポスターを破られたことに腹を立て、殴ろうとして黙示録の獣を触ったため、閨人の姿をしたK2が誕生してしまった。K2と過ごしていくうちに、いつのまにかK2の事を好きになっていく。
小井草 忍 (こいぐさ しのぶ)
21歳で長めの髪のメガネのイケメンで、結構モテるが、朝が苦手。ウェザーヘッド総合研究開発機構暮海研究所の特務研究室のメンバーで、後にSMICのプロジェクトに研究員として参加することになる。超エリートで天才。スキップにスキップを重ねてハーバードメディカルスクール(ハーバード大学大学院)を18歳で卒業後、超多国籍企業のウェザーヘッド財団のシンクタンクに即引き抜かれる。 ハーバードにいた頃は、アイスドールというアダ名で呼ばれていた。りなともなが11歳、忍が18歳で大学院生のときに、カナダで保護された2人を引き取る。最初の頃は、他人と暮らすことを煩わしく思い、また、拒食気味であった。 今は、りなのお陰で食事もとれるようになり、彼女達は何より大事な存在になっている。実は、ヘルムートとゾフィの異母兄妹で、リンデルツ家の血を引いている。4歳のころ母親が亡くなり、施設にいたところを、リンデルツ家に引き取られるが、ヘルムートに壮絶なイジメを受け、引き取られてから一年間の記憶を無くしていた。 そのせいか、ヘルムートの側にいることが背筋が凍るほど嫌だったが、彼を憎むことはできなかった。後に、ヘルムートになった赤龍の鎖であることが判明する。
ミカ
瞳はグリーンで、髪が銀色の白人。24歳で夭逝したフィンランドの美貌の天才音楽家ミカ・ヴァラツカにそっくりのデーモン。元はユニコーン。向こうの世界では恐怖の対象で、陰険を絵に描いたような奴だったため、デーモン達には妖怪と呼ばれているが、デーモン界のインテリである。 底辺に近い低位に生まれながら、赤龍に次ぐ長い年月を存在し続けており、優しいが何を考えているのかわからないところがある。りなともなの母親である礼奈が聖典で、ミカは赤龍に見つからないよう霊力でシールドを張り、別次元で4人で暮らしていた。総てを捨てて礼奈に尽くし、礼奈に2人を守るよう言われたため、礼奈の死後ももなを鎖としてこの地に残る。 礼奈と出会って、狩りをやめるように言われてから15年間霊力を取っていなかったため死にかけるが、人のいいK2に霊力を分けてもらって復活し、何百億分の一の賭けである礼奈の転生を待つことにする。
K2 (けいつー)
元は黙示録の獣という赤龍の次に高位のデーモンで、最強無敵の、望めばこの星の支配すら可能な力を持っている。鎖であるもなが、閨人のポスターを破られたことに怒ったまま黙示録の獣に触ったため、閨人の姿をしており、名前の由来は「閨人2」を略したもの。もなに支配された時から、彼女の持っている知識(言語を含む)をもらったため、英語も理解できる。 意外と素直で犬のような面があり、また、思った事をそのまま口にしてしまう。人間時の体には、黙示録の獣の模様のタトゥーが入っている。食事は食べても栄養が取れないので意味がないが、K2は味が好きで、スナック菓子やケーキなどをよく食べる。人間界で言うと子供にあたり、5千年ほどしか存在していないが、眠る度に大人になっていき、後に成人し、もなが自分の聖典であることがわかった。 地球の海の中で生まれ、純粋なデーモンではなく、半分は赤龍、半分は地球の生命体で出来ているため、永遠に死ねない高位霊体とは違い、寿命がある。
ヘルムート・リンデルツ (へるむーとりんでるつ)
霊体学の権威で天才学者。SMICの創設者でカリスマ性を持つ。忍とゾフィの腹違いの兄。ヘルムートが11歳の時、家にやってきた4歳の忍をひどくいじめていた。11歳の子供とはおもえないほど大人びた少年で、金色の髪と、青い瞳を持ち、宗教画の天使のように綺麗だった。いわゆる天才で、11歳なのに既に高等部までのカリキュラムを終えており、ハーバード大の特待生として週3回通っていたが、人によって態度が全く違い、使用人達からも好かれてはいなかった。 また、その頃、動物の死体が転がっていない日はなく、最終的に領地内の湖にヘルムートの友達だった少年の水死体があがる。ヘルムートの奇行が年々ひどくなっていったところへ、使用人の前で父親に叱責されたことで、ヘルムートは父親に復讐するため、忍の目の前で自殺する。 しかし、なぜかヘルムートは死んだことにはなってはいず、スイスに旅立っていた。忍が記憶を無くして以降、忍の知るヘルムートは慈愛に満ちており、頭脳、容姿、人格、家柄、総てを兼ね備えた神童と呼ばれる少年になっており、スイスから帰ったヘルムートはまさしく皆が望んでいたままの人間になっていた。
藤名 閨人 (ふじな けいと)
日本人の70%が知っている超有名人で、歌手でもあり俳優でもある大スター。本名は藤川詮熙。13歳でいきなり映画の主役に大抜擢されて以来、ずっと大スターの道を歩んでいる。ワイルド&セクシーのイメージ戦略を打っているが、子役の時からスターになった割に、ストイックで真面目な好青年。根がクソマジメで、表面上は穏やかで我をおさえることができる強い人だが、激しい気性も持っている。 小さい頃から芝居が好きだったが、自分が思っていなかった方向に進んでいくため、だんだんわからなくなり、顔がこわばり笑顔が張り付くようになっていた。両親は、閨人がプレゼントしたヨーロッパ旅行の宿泊したホテルにて、逆行症候群で死んでいる。 両親の敵をとるため、スケジュールを全キャンセルし、SMICのAユニットに志願するが、大人の汚い目論見に翻弄されていく。後に、自分にけじめをつけるため、SMICの企みを暴露する。
ゾフィ
忍とヘルムートの腹違いの妹で、米5大財閥であるリンデルツ家の者。大学を休学して、SMICのプロジェクトに参加し、初仕事が日本のアジアB区だった。赤毛の大柄なゲルマン系美女で、気が強く行動力があり、自分を、美貌、体力、知力、財力4拍子そろった女だと思っている。何故か日に3度も着替える。 人格的には大いに問題があるが、精神のバランスのとれた人間。東洋系の男の子と獣に弱く、K2が好きで、ヘルムートの目につかないようにしていた。上昇志向ムンムンでヘルムートに取り入り忠誠ヅラしているエットーレが気にいらず、仕草なども嫌なため、エットーレの責任問題を大きくしたいと思っているが、彼の手腕は認めている。 鎖の中の聖典という存在があるという情報を提供したおかげでゾフィの組織における地位は高まったが、結局失脚してしまい、SMICから追い出される。
赤龍 (れっどどらごん)
『デーモン聖典』に登場する最高位のデーモン。霊体波検知システムがパンクしてしまうほどの凄まじいパワーを持つ。ミカとは200億年くらい前に会っており、同種がキライで、何を考えているのかわからない。忍を聖典とし、ヘルムートの形になっていたが、誰にもわからないよう巧妙に隠していた。存在してから何千億年たっている主で、聖典である忍を見つけたため、主の座を譲るためにミカを呼んだが、結局忍は恍惚の死を与えてくれず、K2に倒された。
鎖 (くさり)
『デーモン聖典』に登場する、霊的存在を従える事ができる特殊能力を持った人間。発生率は約5千人に1人。現在SMICが確認している鎖の数は全世界で29人で、可能性のある者は50~60人である。北欧A区とアジアB区に集中して鎖が発生し、そのせいか、霊的存在の出現率もズバ抜けて高い。ローティーンに鎖が多く出、似たような境遇の、愛される事に無縁の不幸な子供達が多い。 また、鎖は、先に支配したデーモンより高位の者なら、何匹でも支配できる。鎖は、聖典となる可能性のある者であり、鎖の中からある条件を満たした者が聖典となるが、その条件は個体で違うらしく、誰も説明できない。
デーモン
『デーモン聖典』に登場する存在。地球外生物でもなく、未知の生物でもない、生物というカテゴリーからははずれており、我々人間とは全く違う別次元の存在で、デーモンと呼んでいる。デーモンは、人間の「永遠」に近い時間存在する別次元の別の種のため、人間とデーモンが出会って触れた時、人間側の時間が狂い逆流して消滅してしまうが、何十万人か何百万人に一人、デーモンを捕らえ、支配できる鎖と呼ばれる人がいる。 高位のデーモンは下位のデーモンを喰らうが、同じ「主」を持つ場合は喰うことはできない。鎖となる物がデーモンに触った瞬間、最も心に強くある「者」の形になり、名前をつけられると完全に鎖のものになる。人間の食事は栄養がとれないため食べても意味がなく、下位のデーモンを狩り、それらの霊力を食し、出来る限り上質の霊力を食べ続ければ位は少しずつ上がっていく。 自分の意志とは関係なく、こっちの世界にくると本能的に鎖を探してしまう。デーモンの死には3通りの選択肢があり、ひとつめは同種に喰われて死ぬ「屈辱の死」で、大部分のデーモンはこの死を得る。 ふたつめは、幸運にも鎖または聖典を見出し、彼らを守るため、もしくは彼らの意志に従ったために迎える「無念の死」。3つめは、聖典が与えてくれる総てのデーモンが憧れる死で、至上の幸福感につつまれ、恍惚として消滅を迎える恍惚の死である。
集団・組織
SMIC (すみっく)
『デーモン聖典』に登場する組織。創設者はリンデルツ博士で、米5大財閥であるリンデルツ家のパイプを最大限に利用している。デーモン駆除のためのプロジェクトを立ち上げており、本部はウイーン。本部には、霊的存在の本体が保存されている。極東支部や欧州支部、中央アメリカSMIC支部などがある。 SMICの目的は、鎖を持つデーモンに、同種であるデーモンを抹殺させる事で、そのために鎖を集めている。最終目的は15年前のレベルまでデーモンの数を減らすことで、そうすれば逆行症候群の死者は交通事故死よりも少なくなる。鎖を送ってもらえなければ滅亡してしまうため、SMICに逆らえる国家はないほど、巨大な権力を持つようになったが、デーモン駆除から方向転換をし、逆行症候群を発展途上国で起きている人口爆発の人口抑制に使おうと目論む。
その他キーワード
聖典 (さくりーど)
『デーモン聖典』に登場する、デーモンの聖なる掟。デーモンにとって絶対的存在で、デーモンは自分の存在をかけ、誓い従うが、めぐり逢うには奇跡を待つしかない。鎖の中からある条件を満たしたものが聖典となり、一度聖典を得た者は、2度と異なる聖典を得ることは無いため、恍惚の死を手に入れられなかった場合、果てない時間の海をただひとり、この世のすべてが終わる日まで存在し続けるしかない。 聖典がデーモンを唯一無二のものとして愛した時、そして、その口で言葉として想いを伝えた時に、デーモンは恍惚の死を迎えることができる。恍惚の死を与えた聖典は鎖としての資質も消える。
逆行症候群 (りたーん・しんどろーむ)
『デーモン聖典』に登場する病。世界中で蔓延しており、ある日突然若返って死に至るという病気。その進行スピードがあまりに早く一瞬で消滅したように見えるので、最初は事件扱いされていた。りなは特殊なケースなため、ゆっくり進行している。最初にその現象が起きたのは、りなともなの両親が参加したフィンランドでのオーロラ見学ツアーにおいてで、礼奈以外は全員消滅している。 原因は霊的存在(インテリジェンス)との接触により起こるということは、極一部の人達しか知らない。逆行症候群の発症数は今年に入ってすでに100万人で、半年で大都市がひとつ消えた計算になる。原因不明の病でウィルスのように伝染ると思われているため、家族が逆行症候群だとわかると、近所の目を気にし、引っ越しせざるをえない雰囲気であった。 逆行症候群の大量発症時、生存者は必ず「化け物を見た」と言うため、彼らはSMICで事情聴取された後、記憶を消され社会に戻されていた。