トンネル奇譚

トンネル奇譚

次々と人々を呼び込み死に追いやる、忌まわしいトンネルにまつわる表題エピソード「トンネル奇譚」のほか、異様に長い夢に悩まされる男を描く「長い夢」など、世にも恐ろしく悲しい物語たち。「ネムキ」1997年1月号(VOL.35)~9月号(VOL.39)に掲載された5つのエピソードをまとめたオムニバス短編集。

概要・あらすじ

五郎は、20数年ぶりに故郷を訪れ、古いトンネルへ向かっていた。そこは、かつて母が吸い寄せられるように入って汽車に轢かれて死に、妹も自分の意思に反して何度も呼び込まれ、妹を探して入り込んだ父は行方知れずとなり、ついには妹までをも奪った忌まわしいトンネルだった。(エピソード「トンネル奇譚」)

登場人物・キャラクター

向田 哲郎

エピソード「長い夢」に登場する。夢の中で過ごす時間が日に日に長くなっていくことに苦しみ、黒田の脳神経外科を訪れた男性。最初は一晩の夢が現実の2、3日の長さに感じられるものだったが、日を追うごとに長くなり、苦しんでいる。入院後も夢の長さは加速度的に長くなっていき、やがては顔つきや風貌までが人間離れしたものに変貌していく。

五郎

エピソード「トンネル奇譚」に登場する。故郷の忌まわしいトンネルに母、父、妹を奪われた青年。家族を失ったあとは東京にいる叔母に引き取られ、成人したが心の苦しみは癒えることはなく、最近は原因不明の疲れやだるさに苦しみ、社会生活が送れず家に引きこもる暮らしが続いていた。叔母も他界し、家族を奪った忌まわしいトンネルを20数年ぶりに訪れる。

園部

エピソード「銅像」に登場する。前市長の妻で太った醜いオバサン。夫が作った公園に夫の銅像が設置されているのだが、その隣に自分の銅像も置かれている。その像は若く美しい女性で、園部自身は若い頃の自分にそっくりだと言っているが、公園を利用する主婦たちは信じておらず、陰でバカにしている。園部は銅像に仕掛けた盗聴マイクと隠しカメラを通してそのことを知っており、自分を侮辱した主婦たちを自宅に招いて殺害する。

亮一

エピソード「浮遊物」に登場する。雅男の友人で、杏子の彼氏。最近学校に来なくなった雅男が、夜中に虫獲り網でなにかを追いかけまわしているのを目撃していた。その後、雅男の声でしゃべる不思議な毛玉を発見する。

古畑

エピソード「白砂村血譚」に登場する。無医村だった白砂村(しろすなむら)に都会からやってきた医師。村人がみな青白くて生気がなく、血液型がAB型の村人が異様に多いことを奇妙に感じながらも、白砂村診療所にて診察を始める。突然全身から出血するという村人たちの異常な症状を目にし、真相を解明しようとする。

麻美

エピソード「長い夢」に登場する。黒田が勤務する脳神経外科に入院する女性。感受性が鋭く、自分が死ぬことを異常なほどに恐れている。夜に病院内を徘徊する向田哲郎の姿を見たらしく、死神が自分を迎えに来たと恐れをなしている。

黒田

エピソード「長い夢」に登場する。向田哲郎と麻美を担当している脳神経外科医。見る夢がどんどん長くなっていくという向田の話を半信半疑だったが、実験を通して真実であると確信し、治療を続けているが打つ手がない。

土谷

エピソード「銅像」に登場する。地元で土谷美術鋳物を営む老人で、公園に飾られている銅像の作者。彫刻家であり鋳物師。園部から天才彫刻家と敬愛されており、彼女の頼みであればどんなことでも引き受ける。

雅男

エピソード「浮遊物」に登場する。亮一の友人。ある日、口から吐き出した唾液の中に混ざっていた小さな粒が、黒い毛が生えて成長し、宙を舞いながら自分の声で本音をしゃべり出したため、部屋に閉じこもり困り果てている。杏子に好意を抱いており、そのことを毛玉のせいで周囲の人間に知られてしまう。毛玉がしゃべることは自分の本音ではないと否定を続け、杏子本人から問われた時も嘘だと答えてしまい、失意ののちに命を絶つ。

杏子

エピソード「浮遊物」に登場する。亮一の彼女。亮一と付き合ってはいるものの、実は雅男に惹かれていた。しかし毛玉騒動の一件で雅男が自殺し、悲しみに暮れる。

和也

エピソード「浮遊物」に登場する。亮一や雅男のクラスメイト。他人の本音が聞ける毛玉を集めて楽しむ悪趣味な男子。他人の秘密が聞ける毛玉の収集に憑りつかれ、部屋に大量の毛玉を集めている。つまらない独白しかしない毛玉は燃やし、その際に叫ぶ断末魔の苦しみを聞くことも楽しんでいる。

砂神 リヨ

エピソード「白砂村血譚」に登場する。白砂村(しろすなむら)で暮らす少女。妹が全身から出血して診療所を訪れ、そこで古畑と出会う。それ以来、毎日通院してくる。初めて古畑に会った時は彼女も全身からの出血直後で青白く痩せ細っていたが、回復して顔色が良くなると美しい顔をしている。しかし、彼女自身は青白い自分のほうがキレイで好きだと考えている。 好意を抱く古畑と結ばれることを願い、夜中に村の神社を訪れ、願掛けのため手首を切って血を捧げる。

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