「至る」とはいわばカロリーのオーバードーズ
OLの望月美琴は、食べることが大好き。とはいえ、のべつ幕なしに食べているわけではなく、極限までおなかがすいて低血糖になったところで、2000キロカロリーを軽く超える量のハイカロリー飯を一気にドカ食いするという、極端な食生活を送っている。こうして満腹感と血糖値の急上昇による酩酊感を覚えることを、望月自身は「至る」と称しており、この至りを得るために日々を生きているようなところがある。
欲望のままに食べまくるカタルシス
本作では、望月がものを食べる際、その食べ物の摂取カロリーも同時に表記されるという特徴がある。おなかをすかせた低血糖状態の望月がフラフラの状態から、女性の一日分の平均摂取カロリー以上のものをわずか一食でドカ食いして「至る」姿からは、ある種の爽快感を感じることができる。一方で物語中には、健康診断の前日をはじめ、時に食べたくても食べられない状況が発生することもある。「至る」ことに向かいそうな甘えた自分と、それに抗う自分の、脳内におけるハチャメチャな葛藤ぶりが、まるでハイテンションなギャグマンガのようなノリで楽しめる。
登場人物・キャラクター
望月 美琴 (もちづき みこと)
とある会社で営業事務として働く女性。年齢は21歳。ショートボブヘアで、少しぽっちゃり体型のおっとりした性格だが、こと「食」に関しては非常に貪欲。おなかがすくと血糖値の低下から言動および思考自体がおかしくなり、いっさいの我慢が効かなくなってドカ食いしてしまう。その摂取カロリーは、一食あたり軽く2000キロカロリーを超えるほど。そんな中、翌日に健康診断を控え、21時以降は絶食しなければならないところ、我慢できずにドカ食いしてしまい、さまざまな項目で異常な数値を叩き出して医師に怒られたこともある。望月美琴自身は、ドカ食いして一気に血糖値を上げ、酩酊状態になることに一種の快感を覚えて半ば中毒状態になっており、どうしてもドカ食いをやめられずにいる。
倉橋 達也 (くらはし たつや)
望月美琴と同じ会社で営業として働く男性。年齢は25歳。望月の先輩にあたる、黒髪ショートヘアの地味な青年。仕事でつねに忙しそうにしており、取引先の都合で深夜残業を余儀なくされることも多い。食事は時間帯を問わず、もっぱら栄養ドリンクと菓子パンなどで済ませている。自分と対照的な望月の大食いぶりを感心しながらも気に掛けている。一方で、彼女がダイエットのために食事量を減らすと、それはそれで不安を覚えるなど、心配性なところがある。