いぐのべる

いぐのべる

イグ・ノーベル賞を目指し、エロい研究を進める純粋研究バカの猪瀬双六と、そんな彼に触発された京都中央大学の松竹研所属のメンバーたち。「モテること」を科学する研究者の卵たちの日常を描く、サイエンスコメディ。「別冊少年マガジン」2018年12月号から2019年9月号にかけて掲載された作品。なお、連載中はタイトルが『いぐのべる ~モテるための1000の科学~』だったが、コミックス刊行にあたって各巻でサブタイトルが異なり、第1巻は『いぐのべる ブラジャーはガスマスクになるんですか?』、第2巻は『いぐのべる 猫は液体かもしれないって本当ですか?』になっている。これらのタイトルはいずれも実際にイグ・ノーベル賞を受賞した研究に関連しているが、各巻に収録されたエピソードの内容とは関係がない。

正式名称
いぐのべる
ふりがな
いぐのべる
原作者
biki
漫画
ジャンル
ギャグ・コメディ
 
教育・学習
関連商品
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あらすじ

京都中央大学4回生の猪瀬双六は、所属する松竹研の教授である松竹梅吉の私宅で行われたバーベキュー大会で、梅吉からアスパラガスを食べると尿が臭くなるという話を聞く。強く興味を引かれた双六は、さっそくその効果を試してみるべくトイレへと向かうが、自分では匂いの変化を感じ取ることはできなかった。そんな中、トイレの中に一つの壺を見つけた双六は、これに尿を入れて持ち帰り、みんなに匂いを確認してもらおうと思い立つ。だが、尿を入れた壺を抱えて喜び勇んで走っていた双六は、なぜか結ばれていた地面の草に躓(つまず)いて転倒し、持っていた壺を割ってしまう。梅吉から、その壺は実は国宝級の代物で、日本円にして一億二千万円の価値があると聞いた双六は青ざめ、自分にできることならなんでもすると土下座。そんな彼に対して梅吉は、イグ・ノーベル賞を取るための研究を命じる。実はこれは、松竹研の風物詩ともなっている、「人間は極度の心的ストレスに見舞われた時、どのくらい非現実的な要求まで受け入れてしまうのかを確かめるための人間行動学のおふざけ実験」というドッキリだった。松竹研の先輩である滝蓮太大多和四郎はドッキリがうまくいったことを喜び、双六に種明かしをしようとするが、そこで彼らがトイレに仕掛けておいた壺が、本当に一億二千万円の価値のある壺だったことが発覚する。後日、研究室で双六は梅吉に対し、イグ・ノーベル賞を取るために「エロい研究」を進めると告げる。その言葉を聞いた松竹研のメンバーは、自分たちが壺を割る原因を作ってしまったという後ろめたさもあり、双六に協力を申し出る。(第1話「バカと動機づけ)

京都中央大学記念館では、大学の学部3回生に向けた研究室見学会が行われていた。松竹研も例に漏れず、イグ・ノーベル賞を狙った研究を行っていることを前面に出したブースを構えていたが、学生は一向にやって来ない。そんな中、松竹研のメンバーは、となりの研究室のブースでしつこく質問攻めしては嫌がられている一人の女子学生を発見する。あまりのしつこさにブースの学生に逃げられてしまった彼女は、続いて松竹研のブースを訪れ、「なぜイグ・ノーベル賞を狙っているのか?」「なぜエロい研究をしているのか?」と、矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。応対した双六と蓮太は、彼女の質問攻勢の前に撃沈。だが、そこに姿を現した梅吉は、「名瀬みな子」と名乗ったその女子学生に対し、明日一日、蓮太に付いて松竹研を見学するように誘い、それによってみな子の頭の中にあるさまざまな疑問が解決するかもしれないと語る。その話を聞いた蓮太は難色を示すが、そんな彼に梅吉は現在松竹研が置かれている厳しい立場を説明し、どうしても新規メンバーを加える必要があると告げるのだった。迎えた翌日、蓮太はみな子を連れて松竹研へ向かい、一人ずつメンバーを紹介しながら、それぞれが行っている研究を紹介していく。そこでもみな子の質問癖がさく裂し、研究室内に波乱を巻き起こすが、昼食の休憩時に蓮太は、みな子の行動の真意を知る。そして蓮太は、最後に双六と四郎の紹介をするにあたり、みな子に多くを質問することは我慢して、ただ一つだけ、「なぜその研究をしているのか」を尋ねてほしいと告げる。(第7話「疑問と答え」)

登場人物・キャラクター

猪瀬 双六 (いのせ すごろく)

京都中央大学4回生の男子で、松竹梅吉教授の松竹研に所属している。年齢は21歳で、身長174センチ、体重65キロ。ショートヘアを逆立て、額に大きなほくろがある。童貞で、キスの経験もない。外見は草食系男子に見せかけて、中身は肉食という「ロールキャベツ男子」がモテるという話を聞いて、毎日三食、120日間もロールキャベツを食べ続けたという逸話を持つほどのバカで、女性にモテたいという欲求が非常に強い。ちなみに女性の趣味は「G(ゴリラ系)専」で、松竹研の先輩で同じく童貞の滝蓮太や大多和四郎らからは、仮に猪瀬双六に先を越されたとしても特にショックを受けることもないと、ある意味で安心感を抱かれている。また女性の心情にも疎く、紅葉螢のあからさまなアピールを受けても、彼女の気持ちにまったく気づいていない。一方で好奇心が旺盛で、興味を持ったことには「イグ・ノーベル賞を狙ったあざとさ」など度外視し、純粋に実直にどこまでも突き詰めていくところがある。梅吉には、これこそが研究者として優れた資質であると絶賛されており、梅吉が考えるイグ・ノーベル賞受賞に必要な六つのチカラのうち、「馬鹿」のチカラを持つと評されている。研究室の風物詩ともなっているドッキリ「人間は極度の心的ストレスに見舞われた時、どのくらい非現実的な要求まで受け入れてしまうのかを確かめるための人間行動学のおふざけ実験」をきっかけに、梅吉にイグ・ノーベル賞を狙った研究を行うように指示され、「エロい研究」でイグ・ノーベル賞受賞を目指すようになる。のちに、研究室のメンバーたちと協力して「童貞を遺伝子レベルで非童貞に変える」という研究を進め、序盤の成果である論文を梅吉の推薦のもと国際科学誌に寄稿するが、査読委員には「議論に値しない」「こんなバカげた研究は見たことがない」と「REJECT(完全却下)」されてしまう。これにより、研究室のメンバーたちが研究を完全に否定されたと肩を落とす中、イグ・ノーベル賞を目指すならこれはむしろ最高の評価だと一人喜びを爆発させ、仲間たちを盛り立てる。その後も数々の研究を重ねた結果、12年後に本物のノーベル賞を受賞することとなる。計算が異常に速いという特技を持つ。

松竹 梅吉 (しょうちく うめきち)

京都中央大学理工学部生命科学科の教授を務める初老の男性で、松竹研を構えている。白髪でうっすらとあご髭を生やした人物で、落ち着いて見えて非常に計算高い。イグ・ノーベル賞に強い興味を持ち、受賞を目指して研究を重ねていたが、結果どうしても研究に「イグ・ノーベル賞を狙ったあざとさ」が生じてしまうため、逆に受賞が遠のくというジレンマに陥って計画を断念。純粋バカである猪瀬双六の研究者としての素質を高く買っており、研究室メンバーが双六に仕掛けた研究室の風物詩ともなっているドッキリ「人間は極度の心的ストレスに見舞われた時、どのくらい非現実的な要求まで受け入れてしまうのかを確かめるための人間行動学のおふざけ実験」に便乗して、双六だけでなく、ほかのメンバーも含めてイグ・ノーベル賞を狙った研究を行うよう仕向ける。のちに、新たな配属希望者が一人もいなかった場合、研究予算を半分に減らすと大学側から通達を受けているとウソをつき、滝蓮太に名瀬みな子を松竹研に勧誘させる。これは、松竹梅吉自信が考えるイグ・ノーベル賞受賞に必要な六つのチカラのうち、これまでに松竹研に欠けていた「疑問」の力を、みな子が持つと考えてのことだった。

滝 蓮太 (たき れんた)

京都中央大学修士1回生の男子で、松竹梅吉教授の松竹研に所属している。年齢は22歳で、身長178センチ、体重62キロ。ショートヘアのイケメンだが彼女はおらず、女性にモテたいという欲求が非常に強い。実は嵐山の豪邸に住んでいる金持ちで、大学へも運転手付きの車で送り迎えされている。研究室メンバーが猪瀬双六に仕掛けた研究室の風物詩ともなっているドッキリ「人間は極度の心的ストレスに見舞われた時、どのくらい非現実的な要求まで受け入れてしまうのかを確かめるための人間行動学のおふざけ実験」を梅吉にうまく利用され、双六と共にイグ・ノーベル賞を狙った研究を行うことになった。当初は無関係を貫こうとしていたが、ドッキリの首謀者ということもあって双六の研究の監督役を務めることとなり、以降、双六からは「カントク」と呼ばれるようになる。梅吉には、彼が考えるイグ・ノーベル賞受賞に必要な六つのチカラのうち、「根性」のチカラを持つと評されている。

紅葉 螢 (くれは けい)

京都中央大学4回生の女子で、松竹梅吉教授の松竹研に所属している。ロングヘアで胸が大きく、一見すると清楚な美少女。実は猪瀬双六に思いを寄せており、双六の下宿の屋根裏に3年にわたって週6で通い、ストーキングしている。また、研究のために彼が出した尿を人知れず回収しようとしたり、その思いはすでに変態の域にまで達している。その割に、双六のことを想像しただけですぐに鼻血を吹いたりと、恋愛に関しては初心で未だ処女。一方でSっ気が強く、興味のないことや人に対しては極端にそっけなく厳しい。研究室メンバーが双六に仕掛けた研究室の風物詩ともなっているドッキリ「人間は極度の心的ストレスに見舞われた時、どのくらい非現実的な要求まで受け入れてしまうのかを確かめるための人間行動学のおふざけ実験」を梅吉にうまく利用され、双六と共にイグ・ノーベル賞を狙った研究を行うことになる。この時、「エロい研究をしたい」という双六の言葉に反応し、彼に力を貸すことに同意した。梅吉には、彼が考えるイグ・ノーベル賞受賞に必要な六つのチカラのうち、「観察」のチカラを持つと評されている。

大多和 四郎 (おおたわ しろう)

京都中央大学博士3回生の男子で、松竹梅吉教授の松竹研に所属している。年齢は31歳で、身長166センチ、体重55キロ。きれいに整えたマッシュルームヘアで、フレームの太い眼鏡を掛けている。先輩ながら、滝蓮太からは「たわし」のニックネームや、呼び捨てで呼ばれている。極度のロリコンということもあってか、31歳にして未だ童貞で、女性にモテたいという欲求が非常に強い。研究室メンバーが猪瀬双六に仕掛けた研究室の風物詩ともなっているドッキリ「人間は極度の心的ストレスに見舞われた時、どのくらい非現実的な要求まで受け入れてしまうのかを確かめるための人間行動学のおふざけ実験」を梅吉にうまく利用され、双六と共にイグ・ノーベル賞を狙った研究を行うことになる。この時、「エロい研究をしたい」という双六の言葉にいち早く反応し、彼に力を貸すことに同意した。その性的嗜好から、同じ研究室メンバーの松竹舞に執着が強い。ちなみに、現役ですべり止めには合格していたもののなんとなく入学を見送り、京都中央大学には4浪して入学している。これは、二度目の受験を迎えた際に、新入学生の多くが自分より一つ年下という事実に気づいたことが発端で、浪人を重ねれば重ねるほど、もっと若い女の子と同級生になれると考えたことに起因している。梅吉には、彼が考えるイグ・ノーベル賞受賞に必要な六つのチカラのうち、「妄想」のチカラを持つと評されている。ちなみに学部時代は数学科にいたこともあり、ゲーム理論や統計学にも造詣が深い。

松竹 舞 (しょうちく まい)

京都中央大学修士2回生の女子で、松竹梅吉教授の松竹研に所属している。梅吉の実の娘でもある。黒髪ロングヘアを後ろで一つに縛り、20歳過ぎながら非常に小柄で凹凸のない、少女のようなスレンダーな体型をしている。変態気質の強い研究室メンバーの中では、冷静な常識人ポジションでツッコミ役を担っているが、松竹舞も、世間ずれしておらずどこかピントのずれているところがある。また、研究室メンバーに対するツッコミは、何かと暴力を伴うことが多い。研究室メンバーが猪瀬双六に研究室の風物詩ともなっているドッキリ「人間は極度の心的ストレスに見舞われた時、どのくらい非現実的な要求まで受け入れてしまうのかを確かめるための人間行動学のおふざけ実験」を仕掛けた際、自身は計画にかかわっていなかったが、「エロい研究をしたい」という双六の言葉になぜか反応し、彼に力を貸すことに同意した。実は処女だが、その事実をたやすく口外するなど、舞自身はそのことについて特に何も思っていない。梅吉には、彼が考えるイグ・ノーベル賞受賞に必要な六つのチカラのうち、「論理」のチカラを持つと評されている。

名瀬 みな子 (なぜ みなこ)

京都中央大学3回生の女子。髪を二本のおさげにして、眼鏡を掛けている。疑問に思ったことはどんなに些細なことでも「なぜ?」「なぜ?」と納得するまで質問を繰り返す。名瀬みな子自身がもともと科学の知識に精通していることもあって、中には非常に高度なものもあり、深い専門知識を有する者でないと回答することが難しい。高度な知識を有する人を相手にした際は、いつまでもしつこく質疑応答が続くので、相手を怒らせることも多い。また、質問形式で相手の心をえぐるようなことも平気で口にする。みな子自身も自分が何か失礼なことをしているという自覚だけはあり、なんとか改善しようと考えてはいるものの、疑問があるとどうしても自分を抑えられなくなってしまう。興味は幅広く、やりたいと思っている研究はいろいろあるものの、なぜその研究をやりたいのかを考え出すと永遠に自分の中で問いかけが止まらず、最終的には、そもそもなぜその研究をやりたいと思ったのかがわからなくなるという状態に陥り、研究室への配属希望もなかなか出せずにいた。松竹研を見学に訪れ、人相からエロさを測定する「エロ・スカ○ター」の開発研究をしていた猪瀬双六と大多和四郎に、なぜそんな研究をするのかと尋ねた際、研究するのが楽しいからだという単純明快な彼らの回答に感銘を受け、松竹研への参加を決断する。松竹梅吉には、彼が考えるイグ・ノーベル賞受賞に必要な六つのチカラのうち、「疑問」のチカラを持つと評されている。

場所

松竹研 (しょうちくけん)

京都中央大学に松竹梅吉教授が構える研究室。「松竹梅吉研究室」の略で、正式名称は「京都中央大学理工学部生命科学科神経心理学研究室」。神経細胞(ミクロ)レベルから脳や神経系(マクロ)レベルまで、幅広く生物の「心理」を研究する由緒ある研究室だが、学生からは壊滅的に人気がなく、メンバーは猪瀬双六、滝蓮太、紅葉螢、大多和四郎、松竹舞の五人のみ。研究室をあげてイグ・ノーベル賞を狙った研究をするようになってからは不人気にさらに拍車がかかっていたが、のちに名瀬みな子を新たに加え、メンバーが六人になる。

クレジット

原作

biki

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