孤独な看護師、悪徳ビジネスの罠
看護師の彩音は、ストーカーの被害に悩まされ、引っ越しを考えるものの、保証人がいないために物件を借りることができず、途方に暮れていた。心労から仕事に集中できず、周囲から孤立してしまう中、同僚の看護師、田島から優しい言葉をかけられ、次第に彼に惹かれていく。そんな折、田島から自らが所有するシェアハウスへの入居を提案され、彩音はそれを受け入れる。しかし、田島は彩音をマルチ商法のための道具として利用しようとしており、ストーカー行為も彼女を追い込むための芝居だった。こうして、彩音は田島の悪意に気づかないまま、シェアハウスで新しい生活を始めることになる。
悪意に支配されたシェアハウス
田島に紹介されたシェアハウスに入居した彩音は、田島の友人を名乗る井川響子や、知的で冷静沈着な古賀、ファッション業界を目指す雫石エイジなど、住人たちから温かく迎えられる。しかし、彼らのほとんどは田島の意向に従って行動しており、彩音を歓迎したのも、実はシェアハウスに依存させるための田島の策略だった。もともと田島に好意を抱き、長いあいだ孤独を感じていた彩音は、彼らの優しさに心地よさを感じ、次第に田島にとって都合のいい存在へと変わっていく。一方で、シェアハウスの住人たちは必ずしも田島に従順であるわけではなく、スキを見て彼を追い落とし、ビジネスの主導権を握ろうと狙っている者もいる。
シェアハウスで繰り広げられる謀略
彩音がシェアハウスに入居してしばらく経った頃、田島のビジネスパートナーである宍戸の娘、リリが新たに入居することになった。リリは、父親が関与していた悪徳ビジネスの影響で破滅した人々を目の当たりにしており、さらにかつての恋人、江ノ島がマルチ商法に手を染めて変わってしまった不幸な過去を抱えていた。そのため、リリは人々を不幸にして金を稼ぐ父親や田島を強く嫌悪していた。そこで、リリは田島の弱みを握ることで悪徳ビジネスから手を引かせ、シェアハウスで同居する彩音を田島の洗脳から解放しようと決意する。リリは、彩音の生き別れの兄、国見賢人に協力を求め、田島を陥れようと画策する古賀や、田島に騙された雫石を利用しながら、着々と田島への逆襲の準備を進めていく。
登場人物・キャラクター
今河 彩音 (いまがわ あやね)
看護師の女性。年齢は25歳。幼少期から両親が離婚しており、母親と二人暮らししていた。しかし、9歳の時に母親を亡くし、施設での生活を余儀なくされる。母親からは父親や兄の国見の存在について何も知らされておらず、彩音自身は天涯孤独だと信じ込んでいる。内気な性格で自己評価が低く、要領が悪いため、周囲との関係をうまく築くことができず、そのことに対してコンプレックスと孤独感を抱いていた。さらに、最近はストーキングの被害にも遭い、精神的に疲弊してしまう。そんな中、同僚の田島から優しい言葉をかけられ、彼がストーカーであることを知らずに好意を抱くようになる。田島に誘われてシェアハウスに入居することになり、その後は彼の思いどおりにあやつられる日々を送っている。彩音自身はそのことにまったく気づいておらず、幸せな日々を過ごしながら、知らず知らずのうちにマルチ商法の罠に嵌(はま)っていく。
田島 宗 (たじま しゅう)
彩音と同じ病院で働く看護師の男性。表向きは温和で人当たりがよく、周囲から慕われている。しかし、実際には虚栄心と上昇志向が強く、他者を欺くことに抵抗がない狡猾な性格の持ち主。医者の家系に生まれながら、看護師という立場に甘んじている自分自身と、専業主婦の母親を見下している父親と姉に対して強い憎しみを抱いている。一方で、家族の中で唯一親身になってくれる母親に対しては深い敬愛の念を抱いており、悪徳ビジネスに手を染めるのも、家庭に頼らずに財産を築き、母親を家族から遠ざけるためである。当初は彩音の洗脳をはじめ、計画は順調に進んでいたが、田島の恩師の娘、リリのシェアハウスへの入居や、シェアハウスの住民たちの暴走といった不確定要素に翻弄されることになる。
書誌情報
ハッピーマリオネット 6巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉
第1巻
(2023-11-17発行、978-4088930060)
第2巻
(2024-02-19発行、978-4088931180)
第3巻
(2024-05-17発行、978-4088932354)
第4巻
(2024-08-19発行、978-4088933504)
第5巻
(2024-11-19発行、978-4088934419)
第6巻
(2025-01-17発行、978-4088934938)







