概要・あらすじ
2010年、三十路を迎えた神崎良太は生まれ故郷の街を歩き、情熱のすべてをゲームに注いでいた「ピコピコ少年」であったころの日々を回想する。学業に身が入らず成績は超低空飛行、運動はこのうえなく不得手で、さらに女子ともまるで無縁という暗黒の少年期に、一筋の光明をもたらしたゲームという無数の「宝石」たち。心の奥底にしまい込んでいた宝箱から再び「宝石」を取り出した神崎は、自身の小学生から高校生にかけての辛くもあり楽しくもあった輝ける青春のエピソードの数々を、1つずつ丹念に綴っていく。
登場人物・キャラクター
神崎 良太 (かんざき りょうた)
勉学をすっかり放棄し、なおかつ運動はからっきし、という落ちこぼれの少年。無類のコンピュータゲーム好きで、風邪で学校を休んでいる時にファミコンが熱暴走するまでプレイを続けたり、料金の安いゲームセンターに友人と連れ立って遠征し、帰りの電車賃がなくなるまで遊んでしまうなど、常に本能と情熱のおもむくまま、後先を考えずに楽しくゲームをプレイする難儀な性格。 ゲームの他は釣りが数少ない趣味で、友人の多くからは「神ちゃん」というあだ名で親しまれている。異性への興味は人並みに持ちあわせているが、小学生時代から現実の女の子にはほとんど縁がなく、片思いも成就することはなかった。進学先となった粗暴な男ばかりがいる工業高校で、現実と理想の落差を思い知らされ、のちに二次元世界への傾倒を深めることとなる。 モデルは作者である押切蓮介。
古賀 (こが)
神崎良太の中学生時代の同級生の女の子。小学生のころから落ちこぼれの良太を蔑視しており、消しゴムを貸してとお願いした良太に消しカスを渡したり、水泳競争で自分の班をビリに追い込んだ良太を泣くまで責め立てるなど、相当にキツい性格の持ち主。その反面、笑顔はとても可愛らしく、良太は密かに彼女に恋心を抱くこととなる。
景山 (かげやま)
神崎良太の中学生時代の同級生。良太いわく「めまいがするくらいスケベ」であり、しかもお金と引き換えに良太にエロいパソコンゲーム誌を購入させるなど、自身の手は決して汚さない狡猾な男。また、情報誌を活用して彼女をゲットするなど、現実の女性に対してもかなり積極的である。良太自身は彼を人間らしい人物と評しており、高校生になっても友人として付き合っていた。
中村 (なかむら)
神崎良太の友人で、とくにギャルゲーに傾倒していたオタク少年。心の中にギャルゲー「センチメンタルグラフティ」のヒロインの1人「七瀬優」がおり、行動のすべてが彼女の目を意識したスタイリッシュなものとなっている。その独善的なコミュニケーション方法が他者との軋轢を生み出し、良太は彼に対し少しずつ不満を募らせていく。
内村 (うちむら)
神崎良太が中学生になったあとに、はじめてできた友人。ゲーム好きで当初は良太とウマがあったものの、実は感情の起伏が激しい気分屋であり、おまけにゲームの失敗を筐体にぶつけてしまうカンシャク持ち。器が小さいので、良太から「俺もモテないが、こいつはもっとモテない」と、心の中で突っ込みを入れられていた。
神崎の兄 (かんざきのあに)
神崎良太の6歳年上の兄。言葉遣いが乱暴で、なおかつ弟をパシりとして扱うなど、良太とはいまいちソリが会わない。しかし、良太の盗まれたファミコンソフト『カラテカ』を兄主導で取り戻したことがあり、そのおかげで兄弟のあいだに決定的な溝が生じることはなかった。
神崎の母 (かんざきのはは)
神崎良太の母親。小学生の時から学業ほったらかしでゲームに情熱を燃やす息子に気をもんでいる。良太への罰としてファミコンのアダプターを隠したり、ゲームに夢中になって帰宅が遅れた良太を家から締め出すなど、教育に関しては厳しい一面を見せる。
釣り堀屋の主 (つりぼりやのあるじ)
神崎良太が小学生時代にアーケードゲーム「ファイナルファイト」を目当てに足しげく通った釣り堀屋の店主。かなり気性が荒く、客に対して罵倒じみた剣幕で注意をしたり、ゲームをやらなかった良太の友達をすぐさま出入り禁止にしていた。
栗田 (くりた)
神崎良太のゲーム仲間。アルバイトをした金でWin95を購入することにした良太は、不要になったパソコンのPC-98とエロゲー「同級生」のセットを彼に譲渡。聖者のような良太の優しさに触れて思わず感涙した栗田は、良太の部屋から小銭を盗んだことを嗚咽しつつ告白する。
小出 (こいで)
神崎良太のゲーム仲間で不運な少年。わずかな期間に3度も不良に絡まれ、少なくない金を巻き上げられてしまう。ついには良太の前で壮絶なカンシャクを起こし、己の不運に対する嘆きの言葉を呪詛のように吐き出していた。
その他キーワード
キング・オブ・ザ・モンスターズ (きんぐおぶざもんすたーず)
1991年にSNKからアーケードゲームとして発売された、巨大モンスターが市街地でバトルを繰り広げる異色の格闘アクションゲーム。神崎良太はこのゲームを「極めに極めた」と自負しており、ヨーカドーに置かれた同ゲーム台のハイスコアランキングを自身のイニシャルである「RK」で埋め尽くしたほど。続編として1992年に「キング・オブ・ザ・モンスターズ2」が発売されており、ゲーム性は大幅に変わっているが、これもまた良太の「大好物」となった。
ぷよぷよ
1991年にコンパイルからパソコン用、および家庭用ゲームとして発売された、ブロックを並べて消していく落ち物パズルゲーム。メガドライブ版の発売を契機に大ヒットシリーズに成長し、以降アーケードを含むさまざまなゲーム機で展開される。神崎良太は1993年にス-パーファミコン用として発売された「す~ぱ~ぷよぷよ」を超がつくほど得意としており、夏祭りに友人宅で行われた対戦プレイの際は、古賀を相手に余裕綽々(しゃくしゃく)で5連勝していた。