概要・あらすじ
佐藤敦士は最初のデートで山王みちるから言われた一言が、胸に残って離れずにいた。2か月ぶりにみちると再会した演劇祭でも、妄想シミュレーションはバッチリだったが、まるで独り相撲をとっているかのように、置いてきぼりを食らわされた気分になる。勝負と挑んだ3回目のデートでも自分の下心はひらりとかわされてしまうが、みちるが時折みせる自然な様子に、敦士は不思議と心が静かになっていくことを感じるのだった。
自分にとってみちるは何か、みちるにとって自分はどんな存在なのか。答えが出ないまま、敦士はまた、みちるに会う日を心待ちにする。
登場人物・キャラクター
佐藤 敦士 (さとう あつし)
有名男子校の開明高校に通う高校生。日本一の大学、日本一の法学部、日本一の裁判官という目標を己に課し、エリートコースを歩んでいる。頭脳明晰なだけに、恋愛に関しても頭で考えがち。見栄っ張りなところはあるが素直な性格で、山王みちるに振り回されながらも、初めての感情に向き合い、この感情は何なのかを追求していく。みちるには「さとくん」と呼ばれている。
山王 みちる (さんのう みちる)
県立川中高校に通う女子で、演劇部に所属している。佐藤敦士とは一度デートした仲だが、友達なのか恋人なのかの関係をまったく突き詰めず、あくまで自然体に振る舞う風変りな少女。携帯を持っていないため、敦士との連絡手段はいつも手紙。周りの空気を読むより自分の好みを尊重する。
佐々貫 リカ (ささぬき りか)
県立川中高校に通う女子で、山王みちると同じく演劇部に所属している。美人でモテるが、言いたいことははっきりいう性格。折に触れてはみちるに佐藤敦士との関係を尋ねるが、あくまでなんとなく聞いているだけで特に強い関心を持っているわけではない。見かけからは想像できないが、カッパを探している。
永田 (ながた)
有名男子高の開明高校に通う高校生。見た目は遊び人風の容姿をしている。佐藤敦士とは中学からの寮仲間。敦士の友人たちが催した、お互いの彼女を連れて遊びに行くという企画で山王みちるに初めて出会う。みちるに対する敦士の態度から、受験の邪魔になる恋愛はやめた方がいいのではないかと秘かに危惧している。
西中川 友美 (にしなかがわ ともみ)
声楽部に所属する女子高生。佐藤敦士の友人の1人である服部と付き合い始めて1か月になる。敦士の友人たちが催した、お互いの彼女を連れて遊びに行くという企画で山王みちると出会う。おとなしく周りの空気を読むタイプのため楽しめていないように思われがちだが、みちるにリクエストされて山口百恵の歌を歌ったことで、場を盛り上げることに一役買う。
服部 (はっとり)
有名男子高の開明高校に通う高校生。西中川友美と付き合い始めて1か月になるが、なかなか付き合いが進展しないため、見かねた開明高校の友人たちがお互いの彼女を連れて遊びに行くという企画をたてた。おとなしく口下手で、友美とも会話が弾まない。
井上 (いのうえ)
有名男子高の開明高校に通う高校生で、写真部に所属している。大阪弁を話す、陽気で自然体な男の子。佐藤敦士の不機嫌な顔や変顔を撮ろうと、常にシャッターチャンスを狙っている。敦士に、なぜ俺を撮るのかと詰問された際には、「惹かれるねんな」とストレートに答える好青年。