概要・あらすじ
ハインリヒ・ファウスト博士を地獄へ落とせるかという賭を神と交わした悪魔メフィストフェレスは、「好奇心を満足させることができたら地獄へ落ちてもよい」というハインリヒ・ファウストのために、まず、若返りの薬を飲ませて青年にする。神に遣わされた天使の生まれ代わり、王女マルガレーテを見初めたハインリヒ・ファウストは、メフィストフェレスの助けを借りて大僧正として城に乗り込むが、彼に対して王は次々に無理難題を持ちかけ、王子のワレンチンは彼を魔法使いとして敵視する。
ワレンチンがメフィストフェレスによって殺害されると王は軍をハインリヒ・ファウストを差し向けるが、メフィストフェレスの魔法によって逆にハインリヒ・ファウストに国を奪われてしまう。
次第にわがままになっていくハインリヒ・ファウストはマルガレーテを乳母とともに殺害してしまい、いよいよ地獄へ落とされようとするが、天使となったマルガレーテに救われてともに天上界へ昇っていくのだった。
登場人物・キャラクター
メフィストフェレス
神から、「ハインリヒ・ファウストという大学者を魔法の力で地獄へ落とせるか」と問われて下界へ赴く。「好奇心を満足させることができたら地獄へ落ちてもよい」というハインリヒ・ファウストのために、黒犬の姿となって、ハインリヒ・ファウストを様々な場所へ導く。
ハインリヒ・ファウスト
人々から尊敬される学者であり、ありとあらゆる学問を修めてなお、満たされない好奇心に悩み、悪魔メフィストフェレスと「自分を満足させてくれたら地獄に落ちてもよい」と約束する。
ワグネル
ハインリヒ・ファウストの弟子。黒犬に変身したメフィストフェレスの魔法にだまされる。
天使 (てんし)
メフィストフェレスと争った末、下界に落とされてしまい、神によって人間に生まれ代わらせられメフィストフェレスを悪魔から守るように命じられる。
ワレンチン
マルガレーテ姫の兄王子。近衛兵を率いる。剣に変身したメフィストフェレスと戦って死ぬ。
マルガレーテ
天使の生まれ代わりの王女。大僧正となってお城に入ったハインリヒ・ファウストと恋に落ちるが、メフィストフェレスとハインリヒ・ファウストに国を奪われ正気を失い、乳母とともに殺されてしまう。
大蔵大臣
マルガレーテ王女との結婚を狙っている。メフィストフェレスとハインリヒ・ファウストに国が滅ばされようとすると、宝物を持って逃げ出す。
王 (おう)
マルガレーテ姫、ワレンチン王子の父。ファルツ領の王。欲深で浅はかな王。娘を大蔵大臣と政略結婚させようとする。大僧正となってお城にはいったハインリヒ・ファウストに無理難題を持ちかける。メフィストフェレスとハインリヒ・ファウストに国を奪われる。
ヒロン
半人半馬の馬の精。ヤミヤミの野でヘレネに仕えている。主人が乗らないときは火の馬になっている。メフィストフェレスとハインリヒ・ファウストがヘレネを連れ出す手助けをする。
ヘレネ
ヤミヤミの野に住む美しい女神。メフィストフェレスとハインリヒ・ファウストの計略でヤミヤミの野を出てファルツ領へ身を寄せるが、言い寄られてヒロンとともに逃げ出す。
ホアルキス
一つの目と歯を、3人で使うみにくい魔物。ハインリヒ・ファウストとメフィストフェレスは、目と歯を奪い、彼女たちに変装してヘレネに近づく。
あばれ男 (あばれおとこ)
けんかなら誰にも負けない腕っぷしの強い男。王の軍隊を向こうに回して戦おうというハインリヒ・ファウストに惚れて、かすめ男、おさえ男とともにハインリヒ・ファウストの家来となり、王の兵隊たちと一人で渡り合う。
かすめ男 (かすめおとこ)
ものをかすめ取ることが得意な男。王の軍隊を向こうに回して戦おうというハインリヒ・ファウストに惚れて、あばれ男、おさえ男とともにハインリヒ・ファウストの家来となる。大砲の弾をかすめとり、さらに王が乗っていた馬まで盗んでしまう。
おさえ男 (おさえおとこ)
いったん押さえ込んだものは、雷が鳴っても離さないという男。王の軍隊を向こうに回して戦おうというハインリヒ・ファウストに惚れて、あばれ男、かすめ男とともにハインリヒ・ファウストの家来となり、かすめ男が盗んできた王国軍の大砲の弾を押さえ込む。
場所
ハルツ山 (はるつさん)
年に一度、ワルプルギスの夜に、世界中の魔物が集まる山。一年中大嵐で、風に乗って焼け石が飛んでくる。ハインリヒ・ファウストとメフィストフェレスが、世界一美しい女神ヘレネの居場所を探るためにやってくる。
その他キーワード
若返り薬 (わかがえりぐすり)
『ファウスト』に登場する薬。メフィストフェレスの乳母が作った薬。薬とはいえ、それは燃える火であり、服用するにはその火を飲まなければならない。ハインリヒ・ファウストは、メフィストフェレスに伴われ、まずこの薬の力で若返って、不思議な旅を始める。