マルチェロ物語

マルチェロ物語

女装モデルとして活躍するマルチェロ・マルロウは、恵まれない出自から突然華やかな世界に身を置く、恋も友情も知らない少年だった。優しく誠実な新人デザイナーのイアン・シェーデや、深い愛情を注ぐイアン・ポール・デルモネらと接するうちに、彼の心も少年から青年へと成長していく。マルチェロを取り巻く華やかなモードの世界を丁寧に描く。

正式名称
マルチェロ物語
ふりがな
まるちぇろすとーりあ
作者
ジャンル
モデル
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概要・あらすじ

一流デザイナーのイアン・ポール・デルモネとともに、フランスの田舎町にバカンスに訪れていたトップモデルのマルチェロ・マルロウは、ある日デザイン学生のイアン・シェーデと出会う。打算なしに町の案内を買って出るイアンの優しさと、彼の若々しくのびのびとしたデザインに、マルチェロは徐々に心惹かれていく。一方イアンもマルチェロの人柄とモデルとしての才能に惹かれ、彼のためにドレスを作ることを決意する。

登場人物・キャラクター

マルチェロ・マルロウ (まるちぇろまるろう)

女装モデルとして活躍する15歳の美少年。南イタリア出身。黒いストレートの髪に、青い瞳の中性的な美貌の持ち主。貧しい育ちでありながらも、12歳の時に超一流デザイナーであるイアン・ポール・デモルネに見出されて、一躍モード界の寵児となった。今まで心を許した友達はいなかったが、自分のことを特別扱いせず、普通の青年として接して来る誠実なイアン・シェーデと出会い、親友になる。 本名は「マルチェロ・レンツォーリ」で、父親はマルチェロ・マルロウが4歳の時にマルセイユで亡くなり、母親のフランカ・レンツォーリは、彼が9歳の時に恋人のローランと無理心中をしたという過去がある。

イアン・シェーデ (いあんしぇーで)

フランスのデザインスクールに通う19歳の若者。金髪にいつもバンダナを頭に巻いている。シンプルで機能的なデザインを得意とし、ドレッシィな服のデザインを苦手としている。同じイアンという名前なのに、イアン・ポール・デモルネとの才能の違いをぼやいている。マルチェロ・マルロウと偶然出会い、マルチェロをごく普通の少年として接したことがきっかけで親友になる。 誠実で心の強い人物で、マルチェロを陥れようとするヴァレリィ・エドワースに利用されたことも恨まず、すべてを許した。

イアン・ポール・デルモネ (いあんぽーるでるもね)

パリのモード界の帝王と呼ばれる一流デザイナー。貴族出身で、金髪に口髭をたくわえたダンディな男性。年齢は37歳。恋愛対象は男で、特に美少年を好むため、マルチェロ・マルロウにも恋をしている。かつてマダム・トゥランのもとでオートクチュールのデザイナーをしていたが、プレタポルテの世界に飛び込むため、自立した。 マルチェロに、初恋の相手でもあるテロリストの美少年・シャノワールの面影を見る。

ガブリエル・ルパージュ (がぶりえるるぱーじゅ)

イアン・ポール・デモルネの片腕と呼ばれる26歳の敏腕秘書。ゴージャスで知的な美人で、明るくウェーブのかかった長い髪をしている。最初はマルチェロ・マルロウを山猿と呼び、素行の悪さにいつも腹を立てていた。

マダム・トゥラン (まだむとぅらん)

パリのモード界の重鎮。イアン・ポール・デモルネの師匠。プレタポルテを軽視しており、オートクチュールにこだわるプライドの高い壮年女性。少し太めの体型で、頭にはいつもターバンのような帽子を被っている。デルモネが勝手に独立してからは、嫌がらせを続けているが、デルモネの才能を愛している。

ギィ・バターユ (ぎぃばたーゆ)

長身痩躯で、自他ともに認めるヤクザな男。過去にイアン・ポール・デモルネのもとで働いていたが、デザインを盗用しようとしてクビになった。その後はデザイン業界のつてを使って仕事をしている。デルモネの元師匠であるマダム・トゥランの要請で、マルチェロ・マルロウを誘拐したが失敗。のちにフリーモデルとなったマルチェロの専属マネージャーになる。

ジャン・テーネ (じゃんてーね)

イアン・ポール・デルモネが経営する会社のマネージャー権モデル部門の主任男性。肩までの髪をオールバックにして眼鏡をかけている。一人称は僕だが、仕草や言葉遣いは中性的で、女性のような言葉遣いをする。デモルネの若い時からの親友であるアルマンの弟でもあり、デルモネが独立後に、会社の敏腕マネージャーとなった。

イザベル

モデルのフランス人女性。閉店が決まったディスコのブラックユニコーンで行われる、若手デザイナーたちのファッションショーに参加した。美人でスタイルがいいが、モデルとしてはあまり仕事が取れず、タレントになる予定でいる。ショーではイアン・シェーデの衣装を中心に着ている。

フランカ・レンツォーリ (ふらんかれんつぉーり)

マルチェロ・マルロウの母親。イタリア人中年女性。黒髪の美女で、マルチェロに似ている。惚れっぽくて、ろくでもない男ばかり好きになる。マルチェロを振り回し続けたが、最後は恋人のローランと無理心中してしまう。

ローラン

服の行商人のフランス人男性。フランカ・レンツォーリの何人目かの恋人。酒が好きで、酔うとフランカに当り散らす。若い女性を好きになり、中年で子連れのフランカと別れるために、マルチェロ・マルロウを捨てなければフランカ自身を捨てると脅して、追い詰められたフランカに刺された。

ヴァレリィ・エドワース (ゔぁれりぃえどわーす)

19歳の新進気鋭のハリウッド女優。16歳の時にモデルを夢見てパリヘ渡ったアメリカ人。身長169センチと、モデルにしては小柄で可愛らしいタイプだった。そのため、マルチェロ・マルロウのデビューとともにボーイッシュが流行りだし、フェミニンなヴァレリイ・エドワースはまったく売れなかった。アメリカに帰国してからハリウッドで成功し、超大作映画「黒のファビエンヌ」の主演女優に抜擢された。 パリで売れなかったのはマルチェロのせいだ、と一方的に逆恨みし、マルチェロの親友であるイアン・シェーデに近づく。

ロバート・メジャーズ (ろばーとめじゃーず)

ハリウッドの巨匠と呼ばれる大物監督。サングラスをかけて口髭を蓄えた神経質そうな中年男性。大作映画「黒のファビエンヌ」のメガホンを取るが、ファビエンヌの配役に悩んでいた。しかし、パーティーでマルチェロ・マルロウこそがファビエンヌに相応しいと一目惚れし、マルチェロにファビエンヌ役を熱烈にオファーする。

ジョージ・ワグナー (じょーじわぐなー)

ミスター・アメリカと呼ばれるハリウッドの人気俳優。大作映画「黒のファビエンヌ」では将校のアロン役で、ヴァレリィ・エドワースと共演する。プレイボーイで、男性とわかっていながらマルチェロ・マルロウに、女より美しいと言い寄り、ロバート・メジャーズとともに、マルチェロのファビエンヌ役に賛成する。

パスカル・ファーン・デモルネ (ぱすかるふぁーんでもるね)

イアン・ポール・デルモネの21歳下の弟。マルチェロ・マルロウの1歳年上の少年。金髪に水色の目をした、絵に描いたような美少年。生まれつき心臓が弱くて学校に行けず、家庭教師に学んでいる。裕福な家庭で過保護に育てられたせいか世間知らずで、誰にでも慈悲深い天使のようなマルチェロを女性と勘違いし、兄の伴侶に相応しいと言い出す。 フィレンツェで一人旅をしている時に、マリネッタ・トリッキオに誘拐される。

ヴィクトール・マルトゥノン (ゔぃくとーるまるとぅのん)

新進カメラマン。眼鏡をかけ、癖っ毛の長髪を後ろで小さく結んでいる若い男性。マルチェロ・マルロウとパスカル・ファーン・デモルネを「黒髪の悪魔と金髪の天使」と表現し、無断で写真を撮った。それ以来ずっとマルチェロに執着していたが、売り込みに来たマリク・エーメをパスカルに似ていると感じ、気に入る。

アルマン

イアン・ポール・デルモネの若き頃の親友で、ジャン・テーネの兄。黒髪をオールバックにしていて、垂れ目の若い男性。まだマダム・トゥランの店にいた頃から、デルモネが同性愛者で美少年好きだと知っていた。マダム・トゥランのもとでオートクチュールを作ることをやめ、プレタポルテデザイナーになることを勧める。

シャノワール

南カスパ島解放同盟(SCLC)の戦闘員で、プラチナブロンドの美少年。穏健派リーダーだった兄のシャルルが北カスパのスパイに殺され、過激派のシュバルの右腕となる。当時19歳のイアン・ポール・デルモネに出会い、口説かれるが袖にした。しかし、その後警察に追われてからはデルモネを頼った。ちなみに「シャノワール」とは「黒猫」の意味を持つコードネームで、本名は「ミシェール」。

シュバル

南カスパ島解放同盟(SCLC)のリーダーで、過激派。黒髪で鋭い目つきをしている。年齢は30前後の男性。シャノワールを自身の右腕として活用し、カトレーヌ・ジェロの夫であるジェロ上院議員の暗殺を企てる。「シュバル」は「馬」の意味を持つコードネームで、本名は不明。

カトレーヌ・ジェロ (かとれーぬじぇろ)

マダム・トゥランの顧客で、黒髪の美人マダム。若いイアン・ポール・デルモネの美しさと彼のデザインに惚れこんで、マダム・トゥランを通さずに、デルモネ自身に初の注文をした。夫のジェロ上院議員が南カスパ島解放同盟(SCLC)の暗殺ターゲットになったせいで、シュバルとシャノワールに自宅を占拠される。

マリク・エーメ (まりくえーめ)

ブロンドに太い眉が特徴の16歳の田舎娘。モデルを目指してイアン・ポール・デルモネの会社を訪れたが、マルチェロ・マルロウとガブリエル・ルパージュに「165センチではモデルにはなれない」と突き放された。その後、マダム・ベロニカに声をかけられ、娼館で働かされそうになったところをマルチェロに助けられる。 それをきっかけにマルチェロの家に住み込み、モデルレッスンを受けることになる。イアン・シェーデの紹介でモデル事務所「ミル」で採用され、売り込みに行ったヴィクトール・マルトゥノンのフォトスタジオでは、パスカルに似ていると気に入られ、あっと言う間にデビューを飾る。

マダム・ベロニカ (まだむべろにか)

黒髪に黒いドレスの中年女性。パリのモデルクラブ「ベロニカ」の経営者と謳っているが、内実はマフィアの愛人で、高級娼館のマダム。若いマリク・エーメをモデルにしてやると騙して、娼館の新人として契約させようとする。

ルチアノ

総合美容サロンのオーナーの男性。眼鏡をかけ、体格がいいが、マルチェロ・マルロウを「愛しのナルシス」と呼び、女性のような言葉遣いで話す。マルチェロの頼みで、垢抜けないマリク・エーメをメイクやカットで変身させる。

ジュン・ホンダ (じゅんほんだ)

フランス語が堪能な黒髪の美女。カナダ生まれの日系アメリカ人。マリク・エーメが契約したモデル事務所「ミル」のモデルで、パリに来て2年になる。はっきりとした物おじしない性格で、マリクと親しくなる。マリクは「ホンダ」という名前から車メーカーと関係があると思っていたが、まったくの無関係。マリクの幼なじみのジュール・オルトリと親しくなる。 なお、漢字での表記は「本田純」。

ジュール・オルトリ (じゅーるおるとり)

マリク・エーメの幼なじみで、真面目で朴訥な田舎の青年。マリクに会いにパリにやって来て、マルチェロ・マルロウとマリクが同棲していると知って、すぐにでも結婚するように勧める。しかしジュン・ホンダにパリでの価値観の違いを教えられ、驚いてしまう。実家が小さなレストランを経営していて、将来はシェフになる予定なので、料理が上手い。 ジュンに心惹かれていく。

シルヴァーナ・ラトスキー (しるゔぁーならとすきー)

ぞっとするほど美しいと評されるトップモデルの女性。長く美しいプラチナブロンドに切れ長の瞳で、絶対的な存在感を放つ。マルチェロ・マルロウが断った「黒のファビエンヌ」のファビエンヌ役を演じた。女性が恋愛対象だが、最初は女性と思ったマルチェロに恋して振られた過去がある。今はマルチェロと良好な友人関係を築いている。

フィリアン・ドニ (ふぃりあんどに)

マルチェロ・マルロウに瓜二つの外見をした19歳の青年。ただし、髪と目の色はマルチェロと違い、茶色の髪に灰色の目をしている。売れない役者をやっていて、顔はもともとマルチェロに似ていたが、同郷のクレリー・パヴァンヌに言われて鼻と目を少し整形したら、マルチェロそっくりになってしまった。公園でマリク・エーメと出会って親しくなるが、フィリアン・ドニに好意を向けるジィンには、マリクと会うのを嫌がられる。

ジィン

フィリアン・ドニと同じ田舎出身の丸顔の少女。肩までのウェーブヘアにヘアバンドをしている。クレリー・パヴァンヌの妹で、フィリアンに好意を持っている。それだけにクレリーの策略や、フィリアンがマリク・エーメと接近することにいい感情を持っていない。

クレリー・パヴァンヌ (くれりーぱゔぁんぬ)

フィリアン・ドニの同郷で、ジィンの兄。フィリアンに整形をそそのかし、マリク・エーメが通う公園に行かせた。マルチェロそっくりなフィリアンを使って人儲けしようと画策している。フリーのライターだが、ジィンにはヤクザと一緒だと言われている。

オディール

ノルマンディの田舎町に住む艶っぽい美女。優秀な弟をパリ大学に通わせるために、町の顔役であるブノワの情婦となって暮らしている。弟が交通事故で亡くなってからは荒れている。弟に似ていると理由で、12歳のマルチェロ・マルロウを可愛がっている。

ギナール

ノルマンディの田舎町の不良グループの青年。兄のパトリックが町の顔役で権力者のブノワの子飼いであるため、町でも傍若無人に振る舞い、マルチェロ・マルロウを目の敵にしている。マルチェロの策略にはまり、警察に捕まった。

アニエス

マルチェロ・マルロウの父方の遠縁にあたるノルマンディの少女。2年間マルチェロと一緒に暮らし、マルチェロをいじめていたが、本当は好意を持っていた。いじめに耐え切れずに家出したマルチェロを執拗に追いかけ、連れ戻そうとする。

パトリック

ノルマンディの田舎町の顔役のブノワの屋敷の子飼いの若い男性。ギナールの兄。オディールに好意を寄せているため、マルチェロ・マルロウを快く思っていない。

マリネッタ・トリッキオ (まりねったとりっきお)

イタリアマフィアの幹部の中年女性。ストレートの黒髪で迫力のある女丈夫。マフィアの内部分裂により、裏切りの疑いを持たれ、ルイジ、スーゴ・ネッリエーロなど数人の部下とともに逃走している。アメリカへの逃走資金として銀行強盗をした際に、たまたま銀行に居合わせたパスカル・ファーン・デモルネを誘拐し、30億リラの身代金を要求する。

スーゴ・ネッリエーロ (すーごねっりえーろ)

マリネッタ・トリッキオの部下の青年。不良品の銃を仕入れるなど愚鈍なところがある。年齢は21歳だが、見た目はもっと幼く見える。スーゴ・ネッリエーロの仕入れた銃が不良品だったため銀行強盗に失敗し、急遽パスカル・ファーン・デモルネを誘拐する羽目になった。仲間からは、「バカでグズで卑屈」「自分より弱い者には高圧的に出る最低のチンピラ」と言われている。 最初は金持ちの坊ちゃんであるパスカルに反感を抱くが、パスカルがスーゴにまったく敵意を向けず、むしろ慈愛深く接したため、逆にパスカルに惹かれていく。

ルイジ

マリネッタ・トリッキオの右腕でもある中年男性。癖のある黒髪で、頬がこけている。マリネッタには忠実。アンテナのような鋭い勘があると自称しており、パスカル・ファーン・デモルネの誘拐は、アンテナが大揺れのためよくない仕事だと言い出す。

その他キーワード

黒のファビエンヌ (くろのふぁびえんぬ)

米仏合作の大作映画。フランス版『風と共に去りぬ』と呼ばれる。1930年代から20年間を描く大作ドラマで、フランス人少女のマルジェとアメリカ人将校のアロンの恋物語。アロンが生涯思い続ける印象的な女性・ファビエンヌが影の主人公である。ファビエンヌに相応しい女優が見つからず、映像化は無理だと言われていたが、監督のロバート・メジャーズがマルチェロ・マルロウこそ理想だとオファーを出した。 マルジェ役には因縁のある女優のヴァレリイ・エドワースが配役されている。

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