概要・あらすじ
人魚の昴は満月の夜、海で溺れていた男性を救助する。彼に暗いものを感じつつ、その後の暮らしを確認するため昴は陸に上がるが、助けた人物巽紀は恋人の露子と芳しくない生活を送っていた。巽紀が心配になった昴は、彼の元気な姿を見届けるまで陸で暮らすことを決意する。
登場人物・キャラクター
昴 (すばる)
海に住む人魚。満月の夜、海に映る満月を通じて現れた巽紀を救助して以来、彼のその後が気になり人間となって陸へ訪れる。柔和で穏やかな雰囲気の中性的な存在で、理不尽な扱いを受けても落ち着いている強さがある。容姿から露子には女性と認識されるが、タイトルからは男性と考えられ、明確に性別を確認できる場面はない。
巽紀 (たつき)
昴が人魚の海で発見した人間の男性。2か月ほど前に海で溺れていたところを昴に救出された。スラムに等しい街で料理屋を営んでいるが、生活のため身体を売ることもありあまり良い暮らしはできていない。そのため恋人の露子とはもめ事が絶えず、お互いに疲弊してきている。海に溺れた原因として、自殺未遂の疑いがある。
露子 (つゆこ)
巽紀の恋人。巽紀とは高校時代からの付き合いで、現在も同じ店で働き、一緒に暮らしている。元は良家のお嬢様で一点の汚れもないような女性だったが、家よりも巽紀を選び彼の元に押し掛けた現在は昔とはまるで違う人物になっており、売春をはじめとする善くない行いを繰り返している。昴を巽紀の好みのタイプと見抜き、一方的に昴を敵視する。
楷 (かい)
昴を心配して陸にやってきた人魚。昴に人間の足を与えた魔法使いから情報を得て、巽紀の店を突き止める。昴の行いが献身的すぎる人魚にありがちなものと考え、無理やり人魚の海へ連れ戻そうとする。
その他キーワード
人魚 (にんぎょ)
満月の日にできる入り口を介して人間の住む陸へ訪れる、上半身が人間、下半身が魚の生き物のこと。魔女の力を借りて陸に上がり、人間として活動することもできる。しかしその間は口を利くことができず、人間の足は使い慣れていないため上手く動かすのも難しい。こぼした涙は質の高い真珠に変わり、換金すると非常に高い額になる。水気のある場所を好むため、就寝場所にはベッドや布団よりもお風呂場を好むこともある。 種族全体の特徴として惚れっぽく情が深いため、人間にすぐに恋をしてしまい利用されることも多い。
海に映る満月 (うみにうつるまんげつ)
人間界から人魚の海へとつながる回廊の入り口のこと。満月の夜には陸から人魚の海へさまざまなものが流れ着く。基本的には用途不明のガラクタや船の破片などだが、時に人間の死体が流れ込むこともある。空に満月が出ている間は行き来ができるが、雨が降る等で月が隠れてしまうと戻ることはできない。さらに満月以外の月では入り口として機能しないため、一度機会を逃すと最低でも次の満月の日まで人魚の海に帰ることはできなくなってしまう。