概要・あらすじ
ブラジルの移民の村に、リオデジャネイロの学校を卒業した少年ムサシが戻ってくる。ムサシは天涯孤独の身ながら、優れた銃の腕前で村人達を悪人から守ってきたために人々から慕われていた。対して、悪党達からは厄介者として南米秘密結社に高額の賞金を懸けられており、命を狙う賞金稼ぎも後を絶たなかった。そんな中で村人笹川の息子陽介が、強力な護衛隊を率いる権力者ルンバの手下にさらわれてしまい、ムサシは単身救援に向かう。
苦難の末に無事陽介の保護に成功したムサシは、村人達からのお礼と生き別れた両親の情報を元に、日本へと向かう事になる。しかし目的の船を前にスパイ交換の秘密取引を行う大国間の騒動に巻き込まれ、何者かに襲撃されてしまう。
手当てを受けた船で出会った少女マリーのために、捕われたスパイネッドの受け渡しに協力する事を決意する。その後日本に辿り着いたムサシは奪われた麻薬を探していた鬼頭組に狙われる幼い少女マリを守るために悪人達と対決をする。
登場人物・キャラクター
ムサシ
10年前に両親と生き別れブラジルの日本人移民の村で育つ。麦わら帽子と将棋の玉将のペンダントを首から下げ、右手に巻いたスカーフがトレードマーク。腰のガンベルトには二挺の愛用銃二十六年式拳銃を収め、素早い抜き打ちが得意。弱い者を救うために凶悪な敵を相手にする正義感の強さを持ち、村人達からは守り神のように慕われているが、南米秘密結社を始めとする悪人達からは厄介者扱いされ、50万クルゼイロの賞金を懸けられており、命を狙う賞金稼ぎ達も後を絶たない。 村人から感謝のお礼に受け取った金を手に日本にいるという両親に会いに行く途中、たまたまスパイと顔立ちが似ていたために大国間で取り交わされた秘密の交換取引に巻き込まれてしまう。 その後なんとか日本に辿り着くものの、密入国による不法滞在のために警察を頼る事も出来ないまま、麻薬の在り処を探す鬼頭組に狙われてしまう。
マリー
日本に向かうヨコハマ丸に乗船するために港に向かったムサシが何者かに襲われ、手当てのために乗せられた船の中で看病をしてくれた少女。行方不明となった父ネッドを探している。
マリ
日本に渡ったムサシが、突然見ず知らずの男に押し付けられてしまった幼い少女。父親が盗んだ麻薬の在り処を示した紙切れを、マリが大事にしている熊のぬいぐるみの中に隠したため、鬼頭組から追われる事になる。ジローとの勝負で大怪我を負ったムサシを救うために雨の中を小柄な体で爪が剥がれるまで引きずっていくが、金の持ち合わせもないその姿を浮浪者と間違われてしまい、辿り着いた医院では次々と診察を拒否されてしまう。
賞金稼ぎの男 (しょうきんかせぎのおとこ)
ムサシを狙ってやって来た賞金稼ぎの男。しかし手配書を見ておらず、ムサシの顔がわからなかった。ムサシがさらわれた陽介を救うためにルンバの手下を追ってジャングルの中で野宿をしていた所へ、自動車が故障したと言って現れる。用心深い性格。体の至る所に銃を隠し持っていたが、ムサシに全て奪われてしまう。
村長 (そんちょう)
ムサシが暮らしていた日本人移民の村の村長。さらわれた息子ター坊をムサシに連れ帰してもらう。また、ムサシがルンバ一味から村人・笹川の子・陽介を救出したお礼として村人と共に10万円を渡す。さらにムサシがかねてから探し求めていた両親の所在を突き止め、日本に渡れるよう手配した。
悪田 (あくた)
ブラジルで悪事を重ねるギャング団のボス。死神ジョウを始めとする多くの部下と共に船で渡っていた所を単身乗り込んできたムサシに襲撃されてしまう。食料庫の樽の中に追いつめたムサシを煮立てた油を流し込み、飛び出した所を子分達の一斉射撃により葬り去ろうとした。
死神ジョウ (しにがみじょう)
悪田が雇った用心棒の黒人。消音器付のカービン銃を使用し、ブラジル一の銃の名手を自負する自信家。ムサシとはライバル関係で一対一の対決を挑んで苦しめる。切れ者で他の子分達が欺かれる中で、食料庫のパパイヤが海に捨てられていた事からいち早く忍び込んだムサシの隠れ場所を見抜いた。
悪田の腹心 (あくたのふくしん)
常に悪田の側にいて子分達に命令を下す。三つ揃いのスーツで葉巻を吸い鎖の付いたアクセサリーを持ち歩く洒落者。抜き打ちの腕には自信があるが、死神ジョウからは見下されているために、いつか鼻を明かしてやろうと思っている。悪田や子分達がムサシを撃ち殺したと安心する中、あまりのあっけなさから別な所に隠れているのではないかと疑いを抱く。
陽介 (ようすけ)
ムサシと同じ日本人移民の村で暮らす笹川の息子。ルンバの一味にさらわれ屋敷へと連れて行かれる。豪華な食事や玩具を与えられるが、閉じ込められた生活に満足できず父親の所へ帰して欲しいと泣く。
ルンバ
村人に貧しい生活を強いる事で自分は財産を手にしてきた地元の権力者。銃で武装した護衛隊を配備した豪華な屋敷で暮らす。笹川の父親で、自分の意思に背いて日本に渡ったものの成功せずブラジルに戻ってきた息子を今でも許せず、手下を使って笹川の子で、孫にあたる陽介を連れ去ろうとした。
所長 (しょちょう)
ルンバに捕えられたムサシが送られた収容所の所長。囚人達に鞭を打ち過酷な労働を強要する残虐な男。行き過ぎた拷問で次々と囚人を殺し労働力を減らしてしまった事でルンバの怒りを買い、叱責されるが、逆に部下達を率いて反乱を起こしルンバを殺害しようと企てる。
オームじいさん
収容所に捕えられている老人。激しい拷問により精神を犯され、訳も分からずに他人の言葉を真似て繰り返すため、周りからものまねのオームじいさんと呼ばれるようになった。
狙撃者 (そげきしゃ)
スパイ取引のためにA国が雇った殺し屋。リオデジャネイロの港でムサシを見つけ車の中から襲う。顔に傷がある。
船長 (せんちょう)
日本行きの船の船長。リオデジャネイロの港で撃たれたムサシを発見し、自分の船に乗せて手当をする。A国と対立するS国とのスパイ引き渡しの取引に関わり、身代わりとしてムサシを利用しようと目論む。杖に仕込んだ銃を武器として使う。
ムサシの両親 (むさしのりょうしん)
ムサシの両親。幼いムサシと生き別れになったまま消息が不明だったが、村長らの調べで日本に帰っていた事が明らかになる。10年ぶりの息子との再会を果たすためにブラジルから来る客船を迎えに行くが、ムサシが事件に巻き込まれたため、会うことができなかった。
鬼頭組組長 (きとうぐみくみちょう)
香港から麻薬を密輸する巨大な麻薬結社の下部組織となる愚連隊鬼頭組のボス。売りさばく予定だった麻薬をマリの父親に横取りされたために麻薬団から期日までに見つけ出さないと命を奪うと脅されている。弟ジローの勧めで麻薬団乗っ取りを企てる。
ジロー
鬼頭組組長の弟。ブラジルで拳銃の修業をしていた。しかしリオデジャネイロではムサシの活躍の陰に隠れて名を上げる事は出来なかったため、彼を一方的にライバル視をしてきた。特異体質で痛みを感じるのが遅く、一見銃で撃たれた直後も無傷のように思える事から不死身の男と呼ばれている。兄想いの性格。
草井 (くさい)
医師。雨の中を傷を負ったムサシを引きずりながら泣いていたマリを見つけ、二人の手当てをした。銃を所持し弾傷のあるムサシを怪しみ、マリが鬼頭組に誘拐されると警察に通報して助けを求めようとしたが、密入国者であるムサシにそれを止められ、彼の立場を理解し、黙って決闘に行かせる。