魔法使い黎明期

魔法使い黎明期

虎走かけるの小説『魔法使い黎明期』のコミカライズ作品。魔法学校の生徒であるセービルは、学校始まって以来の成績の悪さから学長のアルバスに特別実習を言い渡されることとなった。落ちこぼれ魔法使い見習いが、無事に卒業するため仲間たちと共に課題に挑む姿を描く、ファンタジー成長物語。「月刊少年シリウス」2019年9月号から連載の作品。

正式名称
魔法使い黎明期
ふりがな
まほうつかいれいめいき
原作者
虎走 かける
作者
ジャンル
バトル
 
ファンタジー
関連商品
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世界観

本作『魔法使い黎明期』の舞台は、虎走かけるの小説『ゼロから始める魔法の書』と同じくウェニアス王国で、時系列的には『ゼロから始める魔法の書』の数年後の物語となっている。『ゼロから始める魔法の書』の騒動によって社会情勢は大きく変化しており、当時に問題を起こしたゼロの書の魔法の力は、現在は魔法学校で管理され、正しく運用されるようになった。また、王国は対立していた教会とも和平を実現し、人々と魔女の距離は少しずつ縮まりを見せている。登場キャラクターは一部は続投しているが、主要人物はほぼ一新されており、変わり始めている世界の様を主人公のセービルの目を通して描いている。

あらすじ

第1巻

ウェニアス王立魔法学校に通うセービルは記憶喪失で、学校に通う前の記憶がまったくなかった。魔法学校で学ぶことしかなす術のないセービルだったが、その成績は学園始まって以来の落ちこぼれ。このままでは進級さえ危ぶまれたが、それを見かねた学長のアルバスがセービルに特別実習を提案する。退学を嫌ったセービルは流されるまま、その提案を受け入れる。そしてセービルは優等生のホルト、引率を担当するロー・クリスタスと共に、特別実習が行われる村へと旅立つ。しかし道中、別行動していた生徒のクドーが、暴虐に襲われているという知らせが届く。ローはクドーの助けに向かい、それを見送ったセービルとホルトだったが、セービルはホルトの言葉を受けて、二人でローのあとを追う。セービルはローを見つけるも、実はホルトが暴虐の手先だった話を聞き動揺。そして暴虐の手によって人質となり、ローを窮地に陥らせてしまう。しかし、ホルト自身も裏切ったことに葛藤しており、土壇場で暴虐に反撃する。混乱する状況の中、セービルはホルトを助けるためローの持つルーデンスの魔杖に触り、その秘められた力を解放する。そして杖の力で暴虐を退け、一行は窮地を脱することに成功。その後、ローから説教を受けたセービルとクドー、ホルトは反省し、一行は改めて村へと向かうのだった。

原作小説

本作『魔法使い黎明期』は、虎走かけるの小説『魔法使い黎明期』を原作としている。原作小説は、同じく虎走かけるの小説『ゼロから始める魔法の書』の第二部で、一部に引き続き登場するキャラクターもいるが、物語としては完全に独立している。原作の内容は基本的に本作と同じで、落ちこぼれの魔法使い、セービルが、特別実習を通じて仲間たちと絆を深めて成長していく姿を描いている。また虎走かけるは、本作に登場するロー・クリスタスを主人公とした短編小説『黎明の魔女』を「小説家になろう」に掲載している。こちらは時系列としては本作の過去にあたり、ローと「詠月の魔女」の関係について掘り下げられている。

登場人物・キャラクター

セービル

ウェニアス王立魔法学校に通う3年生の男子。黒髪の冴えない風貌をした青年で、感情の起伏に乏しく、いつも無表情でいる。「セブ君」の愛称で呼ばれる。努力しても魔法がほとんど使えない、魔法学校始まって以来の落ちこぼれ。使える魔法は極々一部で、ほとんどが初級の簡単な魔法のみとなっている。記憶喪失で学校に入学する前の記憶がなく、3年前は字も読めなかったほど一般的な常識がない。魔法使いになりたいわけではないが、記憶喪失の自分にはそれしかすがるものがないとも考えている。そのため勉強に対する姿勢は勤勉で、実技はだめながら魔法の知識はきちんと習得している。しかし、それでも成績は学年最下位で退学間近だったため、アルバスの提案によって、特別実習を受けることとなる。世間知らずだが、その反面根っこの部分は純朴で、獣堕ちだからと偏見で見ることはなく、その人の本質をとらえる鋭い目を持つ。そんなところが、ホルトからも好ましい気質として気に入られている。実はルーデンスの魔杖ですら吸いきれない莫大な魔力を宿しており、その魔力総量は「無限」とも評されている。セービルが魔法を使えないのも、強大な魔力の制御が極めて困難なため。魔力は他者に受け渡し可能なため、セービルから魔力供給を受けた者は、延々と魔法を撃ち続けることが可能となる。また、無意識に魔力を放出しているため、セービルが近くにいるだけで魔法の精度は格段に上昇する。

ロー・クリスタス

「黎明の魔女」の異名を持つ魔女。10代前半の幼い少女のような外見をしているが、齢300歳を超える高名な魔女で、一人称は「我」。語尾に「じゃ」を付ける年寄りじみた話し方をする。周囲からは「ロス」の愛称で呼ばれている。小柄な体型で、蜂蜜色の髪を足に届くまで長く伸ばした、自他共に認める美少女。「ルーデンスの魔杖」と呼ばれる、自分の身長より大きな杖をつねに持ち歩いており、契約を交わしたルーデンスの魔杖とは一心同体の関係で、杖を破壊しない限り死ぬことはない。また飲食睡眠は不要で、杖の魔力が存在し続ける限り不老の存在へとなっている。一方、ルーデンスと契約の際に、自分の魔力をすべてルーデンスに譲り渡したため、魔法を使うことはできない。飲食や睡眠、生殖と人間のすべての欲から解き放たれているため、娯楽というものを重要視する。現在はアルバスの保有する禁書「ゼロの書」に執心しており、それを読ませるようにアルバスに要求しては彼女を困らせている。ウェニアス王立魔法学校の教師ではないが、ゼロの書の著書に引き合わせる約束を強引にアルバスからもぎ取り、特別実習でセービルたちの引率を引き受ける。

ホルト

ウェニアス王立魔法学校に通う5年生の女子。学校一の秀才と評判の優等生。少しウェーブの入った赤毛の髪をショートボブに整えている。人懐っこくいつもニコニコとチャーミングな笑顔を浮かべているが、子供の頃は苦労しており、この笑顔は彼女なりの処世術の一環である。かつてはホルト自身も笑顔くらいしか取り柄がないと思っていたが、学校で魔法の勉強を始めて、魔法の楽しさにのめり込んでいく。自分に魔法の才能があることを実感して自分を肯定できるようになり、現在では笑顔も他人を元気づける技として前向きに受け入れている。人当りはいいが、人の好き嫌いは激しく、嫌いなタイプの人間には辛辣な態度を取る。また、そんな裏表のあるところを自分でも性格が悪いと認識している。実は獣堕ちで、生まれつき鹿のような2本の角が頭から生えている。幼い頃は獣堕ちの知識がなかったため、両親から教会に預けられ「悪魔の子」として育てられる。教会に入った際に角は切り落とされ、現在は伸びた角を自分で削って落とし、ふだんは帽子をかぶって隠している。魔法学校に入学したのも教会からの指示で、偵察要員として生徒に溶け込むが、学校での生活は本当に楽しく、次第に迷いを抱くようになる。特別実習に参加したのも卒業までの時間を稼ぐためのものだったが、女神の浄火と遭遇したことで、己の迷いに答えを見出す。

クドー

ウェニアス王立魔法学校に通う3年生の男子。人型の体にトカゲの特徴を色濃く持つ獣堕ちで、体は翡翠色のウロコで覆われている。幼い頃はその特異な外見により見世物として扱われており、それらの経緯から集団行動が苦手で、なんでも一人で解決しようとする気質を持つ。他者の助けを拒絶する粗野な言動が多いが、悪気はなく、根は仲間思いで正義感が強い。かつていじめに遭っていたセービルも、クドーに助けられたことがあるため、彼からもその人間性を信頼されている。人を守るため、教魔兵団に入るのを目標としている。トカゲ由来の高い再生能力を持ち、ちょっとした切り傷程度ならすぐに塞がり、尻尾程度なら切れても再生することができる。また、感情の変化でウロコの色が変化する体質であるため、ウソがつけないという弱点がある。特別実習を受けるも、当初はロー・クリスタスの引率を厭い、ほかの班員二人を引き連れて別行動を取っていた。しかし旅の途中、女神の浄火と遭遇。仲間を助けるため、たった一人で敵を引き付けて姿をくらます。この時、悪態をついてほかの班員を追い払ったため、班員たちからは一人だけ逃げ出したと思われていたが、話を聞いて真意を察したローに助けられる。その後はセービルたちに合流し、行動を共にするようになる。

ルーデンスの魔杖 (るーでんすのまじょう)

ロー・クリスタスの持つ杖。杖の姿をしているが、その正体は悪魔。400年前、ローの師匠の魔女が悪魔の力を宿した杖を作ろうとしてうっかり悪魔自身を杖に宿して誕生した。当初、魔女たちは杖を破壊して悪魔を解放しようとしたが、自衛本能で悪魔が無意識に反撃。これにより数々の魔女を屠ったため、「魔女喰い」と呼ばれるようになった。触れた者の魔力をすべて吸い取るという、魔女や魔法使いにとって天敵ともいえる能力を持つ。杖の姿では身動きできないため、そのまま放置されていたが、月日が経つうちに文字を覚え、意思疎通の手段を手に入れる。その後、ローと出会って自分を運んでもらう代わりに彼女の旅をサポートする契約を交わしている。ふだんは黒い真球がはまった大きな杖の姿をしており、黒い真球部分はローの意思に従ってさまざまな姿に変える。刃物の形になって武器になるほか、鍋などの旅のサポート用品になってローの旅の手助けをしている。また意思疎通する際には、真球の一部を手の形や文字にして行うため、杖の姿に反して意外と感情表現は豊か。ローからはかなり便利に使われているが、一方でかわいがられてもおり、満更でもない様子で彼女の旅をサポートする。ローからは名前に「ちゃん」付けで呼ばれており、ローとおそろいのリボンを付けている。

アルバス

ウェニアス王立魔法学校の学長を務める魔女。一人称は「僕」で、金髪をストレートロングに整えた少女の姿をしている。「詠月の魔女」と呼ばれた高名な魔女の孫娘で、その異名を受け継いでいる。かつて、心ならずも国家を揺るがす大騒動を巻き起こしたが、現在は改心して国のために働いている。学長であるのと同時に、ウェニアス王国における魔法使いの指導者で、国内における魔法を取り仕切っている。学内の生徒たちは彼女と契約を交わしており、彼女の許しなく魔法を使うことはできない。ただし、ロー・クリスタスたち古の魔女や魔法使いは彼女の力で縛れないため、奔放な彼女たちの行動には頭を痛めている。王国南部の魔女や魔法使いへの差別意識を改善すべく融和政策を模索しており、その一環として特別実習を考案する。成績が振るわないセービルにも退学の猶予期間となる特別実習を提案した。

暴虐 (ぼうぎゃく)

女神の浄火の裁定官を務めていた男性。本名は不明で、「暴虐」の異名で呼ばれる。厳つい顔つきのたくましい体格で、女神の浄火の紋章が施されたマントを羽織っている。残虐な性格をした戦士で、たった一人の魔女を殺すために、村人を皆殺しにしたといわれている。大金槌を武器として振り回すパワーファイターだが、もとは罠師だったため、手先が器用で対象を罠に誘い込んで無効化するからめ手も得意とする。女神の浄火は現在は解体されているが、未だに活動を続けており、獣堕ちや魔女を狩っている。

高位の魔女。低級の魔女に追われていた獣の傭兵を助けた。銀色の髪に青紫の瞳の、美しい少女だが、体型はかなりスレンダー。ゼロと呼ばれているが、本名は不明。長いこと穴ぐらと呼ばれる弓月の森の鍾乳洞に暮らして... 関連ページ:ゼロ

集団・組織

女神の浄火 (であ いぐにす)

教会にかつて存在した魔女狩り専門の戦闘集団。魔女の脅威から人々を守るために組織されたが、その実態は死刑囚を集めて作られた捨て駒で、構成員には命令の拒否権がない。そのため、魔女を殺して生き残るために手段を選ばない残虐非道な集団となっている。組織の紋章は燃え盛る炎に杭を象ったもので、魔法使いや魔女たちのあいだでは恐怖の権化として扱われている。魔女の数が減った近代まで抑止力として残り続けていたが、6年前の和平をきっかけにして正式に解体された。しかし、構成員は実質的に野放しの状態となっており、一部の構成員は反魔女派と結託し、未だに魔女狩りを行っている。

場所

ウェニアス王国 (うぇにあすおうこく)

魔女と人が共存する王国。かつては教会と対立関係にあったが、数年前に、とある魔女が起こした災厄をきっかけに和平が成立した。しかし、王国北部には災厄の残滓が未だに残って人々を脅かし続けているほか、大陸南部では和平に反対する反魔女派が活動を続けており、予断を許さぬ状況となっている。

その他キーワード

ゼロの書 (ぜろのしょ)

ゼロの記した魔法の指南書。もともとは人の世の発展に寄与するために記されたものだが、かつてゼロの書が盗まれたことにより魔法の技術が拡散し、多くの騒動を巻き起こすこととなった。現在は回収され、アルバスが禁書として厳重に管理している。ウェニアス王立魔法学校では、ゼロの書の内容を簡略化したものを教本として採用しているが、過去の騒動の反省から、アルバスの許可がなければ魔法を使えないという安全策を施行している。

特別実習 (とくべつじっしゅう)

ウェニアス王立魔法学校で行われる特別な実習。アルバスが考案し、セービルたちに提案した。課題の内容は大陸南部の魔女が滞在する村で生活し、なんでもいいから魔法を使って、村に貢献することとなっている。通常では進級・卒業が難しい訳ありの生徒を対象として行われる実習で、明確な期限や目的がない分、通常よりも卒業に時間がかかるものの、実質的に退学の猶予期間として扱われている。また、生徒たちに広い世界を体験させることで見分を広げさせ、魔法以外の選択肢を見せるという目的もある。ちなみに、魔女や魔法使いへの差別意識が強い大陸南部で社会貢献を果たすのは、同地区の差別意識を改善するという側面も存在する。実習を受けない、もしくは失敗と判断された場合は退学となるが、その場合は魔法と魔法に関する記憶が封じられる決まりとなっている。

獣堕ち (けものおち)

体に獣の特徴を持つ半人半獣の者たち。その起源は1000年以上前に、力を求める王のために魔女が生み出した「獣の戦士」で、死んだ獣の戦士の魂は魔女へと宿り、その血脈に受け継がれていく。現在の獣堕ちは知らずに魔女の血を受け継いだ者たちに、獣の魂が発現したものとなっている。血と同じく受け継がれる魂も代を重ねるごとに薄くなっており、気づいていないだけで、獣の魂を受け継いでいるものは多く存在する。しかし、獣堕ちの特異な見た目と魔女への差別意識から、獣堕ちは未だに「堕落の象徴」「凶暴で危険な存在」「悪魔の子」と一部の地域では迫害の対象になっている。また獣堕ちの体は魔法の触媒となるため、素材として狩られる場合もある。ウェニアス王立魔法学校では、これらの差別や危険は無知から生まれると認識しており、正しい教育によって認識を変える必要があると考えている。

災厄の残滓 (さいやくのざんし)

大陸北部に存在する数々の災厄。6年前にとある魔女がおびただしい数の悪魔を召喚して災厄をもたらしたが、魔女が死んだ現在でも、召喚した悪魔の残した「化け物」は依然と残ったままとなっている。通常の生物と違い、災厄の残滓は悪魔が生き物を殺戮するためだけに生み出した化け物であるため、それらが残った大陸北部はふつうの人間では生き残れない危険地帯と化している。災厄の残滓をもたらしたのは魔女であるが、同時にそれらを解決し、今も人を救い続けているのもまた魔女や魔法使いであるため、大陸北部では魔女と人々の距離感が近く、寛容な者が多い。

魔術 (まじゅつ)

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魔術や魔法を用いる者。女性は魔女、男性は魔術師と呼ばれることが多い。魔術の研究分野や行動の指針の違いによって、泥闇(どろやみ)や詠月(よみつき)といったいくつかの系統に分かれる。教会からは異端とされて... 関連ページ:魔女

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クレジット

原作

虎走 かける

キャラクター原案

関連

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