あらすじ
任命編
王政国家レベリス王国の片田舎で剣術道場を営んでいるベリル・ガーデナントは、父親から結婚相手もいない現状に苦言を呈されていた。そんな中、ベリルの道場にかつての教え子であるアリューシア・シトラスが訪れる。アリューシアは現在王国最強と名高い「レベリオ騎士団」で騎士団長を務めていた。アリューシアの成長ぶりを喜ぶベリルだったが、アリューシアはベリルを自らのレベリオ騎士団の特別指南役に任命する国王の礼状を持参していた。有無を言わさずに首都・バルトレーンに連行されたベリルは、最強の冒険者となった教え子のスレナ・リサンデラとも再会する。弟子たちの成長ぶりに驚きながらも、弟子のおかげで出世することに引け目を感じ、分不相応な立場となったと考えるベリルは、一度自宅に戻って今後の身の振り方を思案しようとする。しかし帰宅したベリルに対し、ベリルの父親は「嫁を見つけるまで帰ってくるな」とベリルを追い出してしまう。
就任編
本来の予定を繰り上げてレベリオ騎士団の特別指南役に就任することになったベリル・ガーデナントだったが、大多数の騎士たちからは歓迎されていないことを実感し、ますます特別指南役就任に戸惑いを感じていた。そんな中、副団長を務めるヘンブリッツ・ドラウトから手合わせを願い出られたベリルは、アリューシア・シトラスに推挙されるまま、騎士たちの前で模擬戦を演じることになってしまう。王国屈指の剣士と知られるヘンブリッツに対し、せめて不格好な負け方をしないようにと覚悟を決めたベリルは、その自己評価の低さとは裏腹に、勝利を重ねていく。模擬戦であるために気合いが入らないと考えたヘンブリッツは、アリューシアでも初見では見切れなかった「回転斬り」でベリルに一矢報いようと考える。
対魔法戦編
無事にレベリオ騎士団の特別指南役に就任したベリル・ガーデナントは、弟子の一人であるクルニの市街巡回に付き添う中で、かつての弟子の一人であり、現在は魔法師団のエースとして活躍しているフィッセルと再会した。剣士になっているとばかり思っていたフィッセルの思いがけない魔術師としての姿と、剣に魔法を乗せて強化する「剣魔法」に感心したベリルは、その礎となった自分の剣も捨てたものではないのではないかと思い始める。そんな中、突然炎魔法で作られた人形に襲われたベリルは、老成した口調で話す少女が襲撃犯であることを突き止める。その少女がフィッセルの持っていたブレスレットを手にしていたことから、ベリルは本気で少女との戦いに挑む。
冒険者ギルド助太刀編
レベリオ騎士団の駐屯庁舎にポーションの納品に来ていたフィッセルを、アリューシア・シトラスのいる応接室へ案内したベリル・ガーデナントは、そこでスレナ・リサンデラ、ルーシー・ダイアモンドと遭遇する。同席を求められたベリルが話を聞くと、新人冒険者のパーティーに依頼された、ダンジョン攻略クエストにベリルも同行してほしいという。本来であれば同行者はスレナ一人で十分なはずだったが、ダンジョンの近辺に未知のモンスターが出没する可能性があるとの情報を得たため、万全を期して二名での随伴が決定されたらしい。さらに魔法師団にも、この未知のモンスターについて調査するように依頼が来ていると知り、ベリルは快く助太刀を承諾する。しかし、冒険者ギルドに出向いたベリルの実力に、ギルドマスター補佐・メイゲンは懐疑的な目を向ける。
関連作品
小説
本作は、佐賀崎しげるが「小説家になろう」に投稿した小説『片田舎のおっさん、剣聖になる ~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~』を原作としている。原作小説はスクウェア・エニックス「SQEXノベル」から刊行され、イラストは鍋島テツヒロが担当している。
登場人物・キャラクター
ベリル・ガーデナント
「片田舎の剣聖」と呼ばれている中年の男性。茶髪のベリーショートヘアで、前髪の一部のみ白髪となっており、顎ひげを蓄えている。弟子の一人であるアリューシア・シトラスの推薦で、レベリオ騎士団の特別指南役に就任した。相手の呼吸、視線、足運びなどをつぶさに観察し、針の穴にも満たないわずかなスキを捉えることのできる目と、それを有効に活用できるだけの人間の域を超越した剣の腕を持っている。しかし自己評価が異常に低く、レベリオ騎士団の特別指南役を任命された際にも、分不相応な出世だと思い悩んでいる。
アリューシア・シトラス
レベリオ騎士団の騎士団長を務めている女性で、ベリル・ガーデナントの弟子。背中まである長い銀髪の左側のみ三つ編みにしている。道場で修行していた頃からベリルに恋しており、今でもベリルの結婚相手に名乗り出ようと考えている。レベリオ騎士団の入団試験の際、試験官でさえベリルと比較にならないほど弱いことを実感し、ベリルを表舞台に引き出す計画を立て始めた。その後、最年少で騎士団長に任命され、指南役も打診されたが、ベリルを推薦している。酒豪でベリルが宴席にいると特に上機嫌になる。スレナ・リサンデラとは犬猿の仲。
スレナ・リサンデラ
最強の冒険者と知られており、ベリル・ガーデナントの弟子に当たる女性。ハネ癖のある長い赤髪をポニーテールにしている。20年ほど前、川を流れていた際に身寄りのない孤児としてベリルに保護されていた。その後、養子に出るまでの3年間をベリルの弟子として過ごしている。冒険者ギルドでの最高位「ブラックランク」を保有している。新人冒険者のパーティーに依頼されたダンジョン攻略のクエストにおいて、ダンジョン近辺で未知のモンスターが出没する可能性があるという情報を得たため、ベリルに新人冒険者パーティーの付き添いを依頼した。アリューシア・シトラスとは犬猿の仲。不死の竜の牙から作られた二振りの剣を持っていることから、「竜双剣」の二つ名を持っている。
ヘンブリッツ・ドラウト
レベリオ騎士団の副団長を務めている男性。褐色の肌を持ち、金髪をショートヘアにしている。怪力の持ち主で、木の棒一振りで暴れ牛をも仕留める実力を誇り、「轟剣」の二つ名で知られている。ベリルを初めて目にした際、あまりの覇気のなさに、アリューシア・シトラスに無理強いして特別指南役に収まったのではないかと疑いの目を向け、手合わせを願い出た。その手合わせで手も足も出なかったことから、その後はベリルを信奉するようになる。酒を飲むと饒舌になる。
クルニ
レベリオ騎士団に所属している騎士の女性で、ベリル・ガーデナントの弟子。金髪をミディアムボブヘアにしており、頭頂部に大きなリボンを付けている。ヘンブリッツ・ドラウトほどではないものの怪力の持ち主で、自分よりも体格のいい成人男性を軽々と担ぎ上げて運ぶことができる。フィッセルと仲がいい。
フィッセル
魔法師団でエースを務めている女性で、ベリル・ガーデナントの弟子。セミロングの黒髪にローブを羽織り、時計の針を模した髪飾りをつけている。寡黙だが人付き合いが苦手というわけでもなく、クルニとは所属組織を超えてなかよくしている。魔法が込められた装飾品・魔装具の解析も行っており、簡単なものであれば、呪いがかかっているかどうかを瞬時に判断することができる。剣戟(けんげき)に魔法を乗せて強化する「剣魔法」の使い手。
ルーシー・ダイアモンド
魔法師団で師団長を務めている女性。ウエーブがかった金髪ロングヘアで、少女の姿をしている。魔法で若返っているために子供にしか見えないが、年齢不詳。しかし、ベリル・ガーデナントより年上であることを匂わせている。一人称は「わし」で、語尾に「~じゃ」を付けて話すなど、老成した口調でしゃべる。フィッセルからベリルの話を聞いた時からベリルに対して興味を抱き、ベリルの本気の実力を確認するため、あえて名乗らないままベリルに戦闘を仕掛けた。大陸にあるあらゆる魔術に精通しており、ルーシー・ダイアモンド自身が魔法兵器として国に管理されているほどの実力を誇る。
集団・組織
レベリオ騎士団 (れべりおきしだん)
王政国家レベリス王国で、王国最強と名高い騎士団。アリューシア・シトラスが騎士団長、ヘンブリッツ・ドラウトが副団長を務めている。王国中の腕自慢から一握りの精鋭が選ばれ、非常に厳しい訓練を積むことで知られている。そのため、レベリオ騎士団に所属する騎士一人が、他国の騎士10人に相当する戦力を持つとされている。アリューシアの推薦で、ベリル・ガーデナントが特別指南役として就任した。
魔法師団 (まほうしだん)
世界的にも希少な、魔術師たちで構成された組織。ルーシー・ダイアモンドが師団長を務めており、フィッセルがエースとして活躍している。レベリオ騎士団と並んで、王政国家レベリス王国における主力機関となっている。
クレジット
- 原作
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佐賀崎しげる , 鍋島テツヒロ
書誌情報
片田舎のおっさん、剣聖になる ~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~ 6巻 秋田書店〈ヤングチャンピオン・コミックス〉
第1巻
(2022-02-18発行、 978-4253306911)
第2巻
(2022-06-20発行、 978-4253306928)
第3巻
(2023-03-20発行、 978-4253306935)
第4巻
(2023-08-24発行、 978-4253306942)
第5巻
(2024-01-26発行、 978-4253306959)
第6巻
(2024-08-06発行、 978-4253306966)