メロドラマ

メロドラマ

舞台は第二次世界大戦前夜のパリ。フランス駐在員として派遣された日本人の青年とパリの伯爵令嬢が、時代に翻弄されつつも愛を貫いていく姿を描いた恋物語。実在の人物のエピソードなども挟みつつ展開される、時代浪漫ストーリー。「モーニング」1996年49号から1998年38号にかけて不定期に連載された作品。

正式名称
メロドラマ
ふりがな
めろどらま
作者
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概要・あらすじ

1925年、フランス駐在員に任命された都筑慎太郎はパリへと渡った。そして舞踏会で伯爵令嬢のソフィと出会い、互いに相手へ恋心を抱く。ソフィが家庭に悩みを抱えていたことを理由に、2人は出会ってすぐに駆け落ちし、パリの下町で暮らすようになる。下町での暮らしやお互いへの愛を通して、人間的にも成長していく2人だったが、そんな折、第二次世界大戦が勃発。

国籍問題をはじめとした時代の波が襲いかかる中、2人は懸命に愛を貫き、混沌たる時代へと立ち向かっていく。

登場人物・キャラクター

都筑 慎太郎 (つづき しんたろう)

大日本帝国従軍大尉フランス駐在員の男性。パリ在住で、年齢は29歳。母親は元芸者で、現在は新橋の花街で置屋を営んでいる。母親譲りの美貌の持ち主であり、西洋人からは「東洋的で神秘的」と賞賛されている。語学にも優れ、フランス語も堪能。真面目で実直な性格で、礼節もきちんと弁えている。一方で、不当な目に遭った時には、相手が外国人であろうと怖じ気づくことなく、滔々と自身の主張を述べることのできる強さを持つ。 ただし酒に弱く、酔うと女性に襲いかかったり、つまらないことで喧嘩を吹っ掛けたりしてしまう。この酒乱がきっかけでソフィと知り合い、一夜の内に恋をして、駆け落ちをすることになる。

ソフィ

レオ伯爵の19歳になる娘。義理の兄で実業家のジャンピエールが、自身の家を建て直していくのを見て憧れの気持ちを抱く。罪悪感を覚えつつも、姉の妊娠中に義兄と不倫をするようになる。ある日、舞踏会で出会った都筑慎太郎の神秘的な美貌に魅了されて、好感を持つ。その後、彼がレオ伯爵と正々堂々と決闘する様子を見て、好感は愛に変わっていく。 決闘があった日に、不倫が明るみに出てしまい、自殺しようとしていた。そこに慎太郎が現れ、愛を告げられる。その後、慎太郎の提案を受けて駆け落ちし、下町で庶民的な暮らしをするようになる。これまでとは違う生活を楽しみながら、裁縫の才能を活かしてお針子をしている。

レオ伯爵 (れおはくしゃく)

パリの上層階級に属する伯爵の男性。ソフィの父親。現在、やや家運が傾き始めている状態にある。18歳までインドシナの植民地で育ち、そこで東洋人に多くのトラウマを植え付けられた。そのため東洋人が大嫌いで、特に、東洋人特有の無表情さを嫌悪している。東洋人はみな召し使いだという先入観から、舞踏会に来ていた都筑慎太郎をボーイと勘違いをして横柄な態度をとった。 その際に慎太郎から、流暢なフランス語で非難をされ、場を収めるために謝罪をしたものの、心の中では屈辱を感じていた。その後、酔っ払って我を忘れている慎太郎が、親交のある貴婦人であるマダム・フローレンスを辱めているのを見て決闘を申し込んだ。しかし、いざ慎太郎と決闘をしてみると、誇りを懸けて戦う彼に「騎士道精神」に似たものを感じ、彼を認めて好感を抱くようになる。

マダム・フローレンス (まだむふろーれんす)

パリの上層階級の女性。毛色の変わった男性を誘惑することを好み、舞踏会で出会った都筑慎太郎を一目で気に入っていた。彼がレオ伯爵から、東洋人であるという理由で不当な扱いを受けた際、毅然とした態度を取ったので、より一層慎太郎に惚れ込むようになる。慎太郎の酒乱癖を知らずに酒を無理強いしたところ、豹変した慎太郎に大勢の前で胸に嚙み付かれた。 このことがきっかけとなり、慎太郎がレオ伯爵と決闘をすることになった。

ジャンピエール

会社をいくつも経営するやり手の実業家の男性。名門伯爵家の肩書きを求めており、経済的苦境から脱却したいと考えるレオ伯爵と利害が一致して、彼の長女と結婚した。結婚後は、伯爵家のネームバリューを活用して、より一層の活躍を見せている。また、レオ伯爵家の建て直しにも尽力している。自身に憧れの気持ちを持っている義理の妹のソフィと不倫関係にあり、これが彼女が駆け落ちをする原因の1つとなった。

今 広美 (こん ひろみ)

パリの絵描きの男性。年齢は29歳。都筑慎太郎とはかつて同じ中学に通っていた親友であり、「ヒロちゃん」とあだ名で呼ばれるほどに仲が良い。当時、その美貌ゆえに同性から襲われることもあった慎太郎を、よく助けていた。貴族院議員の父親を持つ金持ちで、父親からは帝大を出て議員になることを求められていた。しかし、父親の敷いたレールに乗ることを嫌がり、中学を中退してパリへと旅立ち、絵描きを目指した。 そのため、パリでの生活はすでに十数年に及んでいる。慎太郎が駐在員としてパリへやって来ると、早速交友を復活させる。そして親友として、パリの裏風俗から上流階級の情勢まで、さまざまなことを教えた。慎太郎がソフィと駆け落ちをした時には、2人の住まいを用意してやるなど、慎太郎の生活を温かな友情で支えている。

天野 和彦 (あまの かずひこ)

絵描きの男性。今広見がパリに来たての頃、空腹と金欠で苦しんでいたところを、同じ日本人として手を差しのべて助けた。しかし、それから10年が経過した現在も、絵が認められずに貧困に苦しんでいる。万引きをしようとしていたところで広見と再会し、絵の具と少しの金を貸してもらった。それ以来、何かと広見にたかるようになって、嫌悪されている。 絵の締め切りに追われて苛立っていた広見が、金を貸すのを拒んだ結果、未完ながら素晴らしい絵画を一点だけ残して死亡する。この絵画がきっかけで、のちに大きな事件が勃発することとなる。

天野 小夜子 (あまの さよこ)

天野和彦の25歳年下の元妻。和彦がパリで客死したと知り、遺骨だけでも持ち帰ろうと、単身で渡仏した。大使館の書記官と言い争っていたところ、その場に居合わせた都筑慎太郎に救ってもらい、知り合いとなる。妖婦じみたところがあり、お金や名誉のために男性を操縦することを得意とする。慎太郎の母親に似た容姿の持ち主。 慎太郎ともどこか顔立ちが似ているので、パリでは、慎太郎の妹で通している。

ロレンツァ・プエンテ (ろれんつぁぷえんて)

パリ大学の女子学生。スペインのマドリード出身。美貌の持ち主でパリ大学のマドンナ的存在。白人男性を好まず、ギニアやインドシナといった変わった国の留学生との恋愛を好む。都筑慎太郎と大学で出会い、彼の美貌と、フランス語に堪能で知識もある点に魅了される。日本に対する知識も豊富で、日本画を愛している。 慎太郎に振られても諦めず、彼がソフィといるところへ平気でやって来たりするので、慎太郎からはやや迷惑に思われている。

マダム・ルゴン (まだむるごん)

パリの下町に住む老婆。いつも真っ黒の時代遅れのドレスを着ている。ケチで偏屈と評判で、下町の中で嫌われている。お針子となったものの、なかなか客がつかずに困っていたソフィに、自身のドレスを作るように命じた。ソフィが作ったドレスがきっかけとなり、過去の痼(しこ)りから解放され、性格が明るくなる。その後は、ソフィの良き広告塔となり、彼女が針子として活躍するのを婉曲的に後押ししている。 また、のちに彼女自身の生き方が、ソフィと都筑慎太郎の人生の選択に影響を与えることとなる。

ゴールドバーグ

パリに住む米国の財界人の男性。フランス商人たちの手を介して、ソ連へ武器を輸出する計画を立てている。その極秘の計画は敵国の日本に知られていて、スパイとして都筑慎太郎が送り込まれている。慎太郎と出会って、すぐに彼がスパイであることに気づくが、彼の実直さに惹かれて、「サムライ」だと言って褒めそやし、危険を承知で友情を築く。 お互いの肩書きや国籍を気にせずに、慎太郎と世界情勢を忌憚なく話し合うこともある。

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