あらすじ
第1巻
15歳になったノワ=デンゼルが、魔法学校で目覚めの書を使って己の魔法適性を調べるも、その結果は魔法が使えないという事実だった。将来の道が閉ざされ、悲嘆に暮れるノワだったが、レイティの励ましで勇気づけられ前向きになろうと決意する。しかしその直後、レイティは悪性変異種に襲われ死亡してしまう。レイティの死に絶望するノワ、そしてそれに呼応するように、奇妙なしゃべる仔ヤギが現れる。ノワは仔ヤギに唆(そそのか)されるまま禁断魔法に手を出し、レイティをモータルブライドとして復活させる。しかしレイティの復活は不完全で、さらに禁断魔法に手を出したノワは魔法警察によって拘束されてしまう。一時は処刑寸前まで追い詰めれたが、ノワはその人格をサイファ=エインズワースに認められ、インサニア部隊に配属されることとなる。ノワはレイティを完全に復活させるためにも、インサニア部隊として戦うことを決意。そして先輩であるエリーの指導のもと、ノワは着々と成果を積み重ね、仲間たちとも信頼を育む。しかしある日、ノワは仲間の一人が裏切り行為をしているのを目撃してしまう。
登場人物・キャラクター
ノワ=デンゼル
インサニアの力に目覚めた黒髪の少年。年齢は15歳。素直で実直な性格をした努力家で、魔法士警官になるという夢を叶えるために勉学に励んできた。しかし魔法学校に入学し、目覚めの書の洗礼を受けたところ、魔力がないと言い渡され絶望する。レイティに励まされて前向きになったが、その直後、目の前で悪性変異種にレイティを殺されてしまう。自らも殺されそうになるが、謎のしゃべる仔ヤギに唆されて、インサニアの魔法を発動。レイティをモータルブライドとして蘇生する。インサニアの魔法は禁断魔法であるため、魔法警察局に身柄を拘束されたが、彼らの出したテストに合格して、インサニア部隊に所属するのと引き換えに釈放される。そしてレイティを復活させるためにも、自ら悪性変異種と戦う日々に身を投じる。戦闘の際にはレイティを剣の形に変化させて戦う。
レイティ
魔法学校に通う少女。年齢は15歳。薄紫色の髪を長く伸ばし、黒い髪飾りを付けている。ノワ=デンゼルが魔法を使えないのを知り、落ち込んでいるところを励ました。しかしその直後、悪性変異種の襲撃を受けて死亡してしまう。ノワがインサニアの魔法を発動することで、モータルブライドとして復活する。復活したばかりのためにしゃべることも、触れることもできない幽霊のような状態となり、ノワのそばにつねに漂い続けている。非常に珍しい光属性の素質を持ち、悪性変異種を狩って人に戻りつつあるのをきっかけにして、その力も少しずつ開花し始めている。
サイファ=エインズワース
インサニア部隊で特別管理官を務める青年。魔法士警局の悪性対策部執行第一課に所属する。涼し気な風貌をした容姿端麗な人物で、冷静沈着な性格をしている。いつもやさし気な笑みを浮かべて、人当たりもよいが、同時に必要であればどこまでも冷徹になれるリアリスト。ノワ=デンゼルを捕まえた際も、彼の人間性を確かめるため、敢えて厳しい物言いで彼を精神的に追い詰めた。魔法の属性は通常一人につき一つだが、サイファ=エインズワースはたった一人で複数の属性をあやつることができるなど、その能力には謎が多い。
ハイネ
インサニア部隊に所属する男性。中性的な容姿をした白髪の少年。無口で無表情のクールな性格をしている。モータルブライドはディーノで、戦闘時には大剣へと変化したディーノを振るって戦う。見た目に反してかなりの大食漢で、ヒマさえあればひたすらお菓子やご飯を食べ続けている。あまり感情表現を表に出さないが、内心ではディーノの復活にかなり焦っており、ディーノの復活を早めるためにひそかに暗躍を始めている。
ディーノ
ハイネのモータルブライドである男性。白いスーツを着た赤毛の青年。社交的な性格で、人間関係に無関心なハイネの代わりに周囲とコミュニケーションを取っている。しかしノリが軽薄で、ノワ=デンゼルをからかったり、女性陣に対してセクハラまがいのことを行ったりしているため、時にはぞんざいに扱われることもある。実はハイネと共に、ディーノ自身の復活のため暗躍を始めている。
エリー
インサニア部隊に所属する女性。勝気な性格で、長い髪をアップテールにセットしている。周囲からは怒りっぽいと言われているが、部隊の中では一番の常識人で、マイペースなほかの隊員に対してツッコミ役に回ることが多い。ノワ=デンゼルとは初めての任務でいっしょになり、厳しい物言いながら彼を先輩として導いた。また、ノワのミスのせいで大ケガを負った際も、彼が気負わないように気丈に振る舞っており、根は仲間思いな性格をしている。モータルブライドはミアで、戦闘の際には槍へと変化したミアを振るって戦う。
ミア
エリーのモータルブライドである女性。穏和な性格で、儚げな風貌をしている。感情豊かなエリーのことをかわいいと思っており、いつも楽しそうに彼女の周りに漂っている。ふだんは穏やか様子で過ごしているが、エリーに危機が迫った際には取り乱し、彼女を傷つける者には深い怒りを見せる。ノワ=デンゼルとも当初はうまくやっていたが、ノワのミスのせいでエリーが大ケガを負った際には、怒らないエリーの代わりに弾劾している。また死んだ自分にエリーが縛られて危険に冒しているのに対しては強い罪悪感を感じている。
集団・組織
インサニア部隊 (いんさにあぶたい)
魔法警察局の悪性対策部執行第一課に存在する部隊。インサニアの属性に目覚めた者と、そのモータルブライドを集めて構成された部隊で、その特異性から部隊の詳細は機密扱いとなっている。ノワ=デンゼルが所属した時点で10人の隊員と、彼らを統率するサイファ=エインズワースが所属している。インサニアの魔法を持つ者を監視する意味もあるため、構成員の年齢は関係なく、若い者が多い。職務は主に悪性変異種を狩るのが仕事で、魔法警察局に予測されたポイントに向かい、モータルブライドを使って悪性変異種を倒している。またインサニアの魔法書を与える仔ヤギの探索や、目覚めたばかりのインサニアの素質を持つ者の確保も行っている。
その他キーワード
目覚めの書 (めざめのしょ)
魔法の属性を判別するアイテム。「目覚めの書」の名の通り、書物の形をしている。ノワ=デンゼルの住む国では、国民全員がなんらかの魔法を使うことができるため、15歳になると国民は魔法学校に入学し、この書を使って属性を調べる。魔法使いにとって特別な出来事であるため、目覚めの書で属性を調べる行事は特別視されている。書を手に持って開くと、魔法の属性に応じて魔法式の光があふれだす。金色は「雷属性(ウィス・エレクトリカ)」、瑠璃色は「水属性(アクアニクス)」、翡翠色は「木属性(ヘルパ)」という風に細かく分類されており、「光属性」などの珍しい属性にもきちんと対応している。一般的にはすべての属性に反応し、目覚めの書が反応しないのは、極々稀に現れる魔力を持っていない人間のみだと思われている。だが実は禁断魔法と呼ばれる「インサニア」の属性には反応しないようになっており、このことを知るのは一部の人間のみとなっている。
魔法 (まほう)
魔力(アニムス)を用いて超常現象を引き起こす技術。点と線が複雑に絡み合った魔法式に魔力を注ぎ込むことによって、魔法を発動させることができる。魔法には属性が存在し、魔法式の色によって属性を判断する。基本的に発現する属性は一人につき一つで、複数の属性を一人で使うことはできない。魔法の中でも強力で危険なものは社会に混乱をもたらすものとして「禁断魔法」に指定されており、それらに手を出す者は「異端者(ウィキッド)」と呼ばれ、罪に問われることとなる。
光属性 (るーきす)
魔法の属性の一つ。魔法式の色は白。「光属性」といわれているが、正確には肉体と精神を司る属性で、光をあやつることはできず、あくまで光属性という名前はイメージから名づけられたものとなっている。使い手が少ない非常に稀少な能力で、能力の特異性も相まって、一般的にその能力の詳細を知る者は少ない。精神に作用する力を持つため、光属性を持つ者は悪性変異種の精神に干渉し、彼らの生前の記憶や声を聞くことができる。またインサニア部隊の者たちは、魔法警察に所属する光属性の者によって追跡用の魔法を掛けられ、つねに監視されている。
インサニア
魔法の属性の一つ。「忘れられた属性」ともいわれる謎多き属性で、目覚めの書にも反応せず、一般的にはその存在はまったく知られていない。空間と時間を司る属性で、死者の蘇生すら可能とされる。ただし、あまりに強すぎることからその力は法律で禁じられ、インサニアの魔法は禁断魔法に指定されている。インサニアの魔法は魔法学校でもまったく知られておらず、ふつうでは習得不可能。しかし、インサニアの素質を持つ者の前には、しゃべる奇妙な仔ヤギが現れ、彼らにインサニアの魔法を使うための魔法書を与えてまわっている。なお、仔ヤギも形ばかりの警告はしているが、危機的な状況に現れることが多いため、ノワ=デンゼルたちは禁忌と知りつつもその力を利用している。
モータルブライド
インサニアの魔法で蘇生させられた者の総称。死に瀕した人間の魂を、空間と時間に干渉して固定することで死を免れることができる。魔法を発動させる際に、発動者と対象者が魂の深い部分で結ばれる様が婚姻に例えられるため、魔法で復活した者は「死すべき花嫁」、魔法を発動させた者を「花婿」とも呼ぶ。また花嫁という呼び方はあくまで呼び方の一つであるため、モータルブライドには男性もふつうにいる。復活直後のモータルブライドは幽霊に近く、生前のようにしゃべったり、物に触ったりすることはできない。完全に人間として復活するためには、モータルブライドと共に悪性変異種を狩らなければならない。そのためモータルブライドには契約者をサポートするため武器に変身したり、体を動かすのを手伝ったりと、戦いをサポートするさまざまな能力が備わっている。悪性変異種を倒せば倒すほど生前の状態に近づくが、未だに完全復活させられた者は存在しない。またこの特性は、悪性変異種の持つ「共食い」の習性に近く、謎が多い。
魔法士警官 (びぶりおおふぃさー)
魔法を使って治安維持活動を行う職業。魔法士警官は魔法士警局(ビブリオフォース)の所属となり、仕事内容によってさまざまな課に所属することとなる。事故や事件の捜査といった通常業務のほか、突発的に現れる悪性変異種を退治したり、禁断魔法に手を出した異端者(ウィキッド)を捕まえたりするため、一般市民からは正義のヒーローという認識を持たれている。
悪性変異種 (あくせいへんいしゅ)
突如街中に現れる怪物。姿形は個々によって違うが、ほぼ共通してガラス管に入った骸骨のような頭部を持つ。なんの前触れもなく街中に現れ、人を襲い始めるため、人々からは災害の一種として恐れられている。弱点は頭部で、頭を破壊すると消滅する。その正体は未練や後悔を多く残して死んだ人間の魔力が変異したもので、人間の魂そのものが悪性化したものともいえる。なお、時には「もっといっしょにいたい」という素朴な願いから発生することもあるが、魔法警察はそれを把握しながらも、市民がパニックになるのを恐れて事実を秘密にしている。人の死が引き金になって引き起こされる現象であるため、魔法警察ではあらかじめ巨大なデータベースを作り、それを光属性の特殊な魔法機械(マシン)を用いて悪性変異種の出現を予測している。しかしそれも完全ではなく、特に突発的な事故、災害、自殺による死は予測できずにいる。また事故や災害で大量の犠牲者が出ると、そこから複数の悪性変異種が生まれ、それらが「共食い」をすることがある。この共食いの果てに生まれた悪性変異種は、通常よりもはるかに強力な個体となる。