レイリ

レイリ

『秋津』の室井大資が構成及び作画、『寄生獣』の岩明均が原作を担当した作品。4年前の長篠の戦いで家族を失い、孤児となった少女レイリが、武田軍の家臣の岡部丹波守に育てられ、武田信玄の孫である武田信勝の影武者として暗躍する姿を描いた戦国活劇。秋田書店「別冊少年チャンピオン」2015年12月号から2019年1月号まで連載。第3回「さいとう・たかを賞」受賞作品。

正式名称
レイリ
ふりがな
れいり
原作者
岩明 均
漫画
ジャンル
戦国
関連商品
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概要・あらすじ

天正7年。4年前の長篠の戦いで大敗して傾きつつある武田家。その武田軍の前線基地である小山城を任された岡部丹波守のもとで、集まった雑兵の男たちが毎日のように剣術の稽古をしていた。そんなある日、稽古で皆を打ち負かして得意気な顔をしていた権蔵は、ともに稽古をしていた者たちに押しやられるようにして、洗濯物を干している最中のレイリに勝負を申し込む。

この申し込みを快く承諾したレイリは、あっという間に権蔵を打ち負かしてしまう。そこへ屋敷の主である丹波が帰宅。レイリは自分が雑兵たちの誰よりも剣術の腕に優れていることをアピールし、早く戦に連れて行って欲しいと懇願するが、丹波は難色を示す。そんなある日、小山城に同じく武田家の家臣である土屋惣三が訪れ、丹波に武田軍の拠点の1つである高天神城に守将として入城し、攻めてくる織田軍と徳川軍から高天神城を守って欲しいと要請する。

武田軍にとって負けられない大戦が、いよいよ始まろうとしていた。

登場人物・キャラクター

レイリ

黒い長髪を後頭部で1つに束ねてポニーテールにし、前髪を目の上で切りそろえた少女。かつては百姓の両親と弟の平太とともに山村で暮らしていたが、4年前の長篠の戦いに勝利した織田・徳川連合軍の雑兵に家を襲われ、家族を皆殺しにされてしまう。自身も命の危険に晒されたが、間一髪のところで武田軍の武将である岡部丹波守に助けられ、以来、丹波に育てられることになる。 それからは丹波が住む武田軍の前線基地である小山城で、家事以外にも男たちに混ざって剣術の稽古をして育ち、今では屋敷内の誰よりも腕が立つ。しかし、いざ稽古試合を始めると興奮してしまい、打ち負かした相手が抵抗できなくなってもなお打ち込み続けるため、試合が終わるたびに観戦していた者たちが総出で止めに入っている。 そのため、剣術の試合では周囲から恐れられてはいるが、根は温和で優しい性格。自身を助けてくれた丹波を慕っており、1日でも早く戦に出て敵を斬り倒し、最後には丹波の盾になって死ぬことを願っている。武田信玄の孫の武田信勝に外見が酷似していることから、土屋惣三に信勝の影武者として連れて行かれることになる。 「レイリ」という名前は「零里」の意味で、赤ん坊の頃から目を離すとすぐにどこかにいなくなる困った子だったため、遠くに行かないようにという願いを込めて父親から名付けられた。

武田 信勝 (たけだ のぶかつ)

武田信玄の孫。黒い長髪を後頭部で1つに束ね、前髪を中分けにして目の上で切りそろえた少年。祖父の信玄をも凌ぐ類稀なる才覚を持つと自負している自信家で「天才」を自称し、初めて出会った自身と瓜二つの顔を持つレイリにもまったく人見知りをせず、思うがままにしゃべり続けて終始圧倒していた。そんなマイペースで勝手気ままな性格をしているが、武田家の家臣土屋惣三からは武田家の希望と将来を託されている。 すでに和助と孫次という2人の影武者がいたが、さらに3人目の影武者としてレイリを迎え入れることとなる。実在の人物、武田信勝がモデル。

岡部丹波守 (おかべたんばのかみ)

武田家の家臣の男性。黒髪で髷を結っており、鼻の下にひげを生やしている。もともとは今川義元の家臣で、15年前の桶狭間の戦いで大敗し、総大将だった義元の首を取られて慌てふためく御家来衆の中、たった1人で敵の織田軍へと赴き、義元の首を取り返して無事に帰還した。敵がどんなに強くても一歩も退かずに筋を通すその姿勢と、雑兵たちにも優しく声をかける気さくな人柄で、周囲から尊敬され、また親しまれている。 現在は武田勝頼が当主となった武田家に仕え、武田軍の前線基地である小山城を任されている。長篠の戦いでは武田軍の武将として織田・徳川の連合軍と戦って大敗するが、数人の部下とともに生き延びた。敗走している道中で世話になった百姓の家の娘であるレイリが敵の雑兵に襲われているところを助け、家族を失ったレイリを引き取り育てることとなる。 実在の人物、岡部元信がモデル。

土屋 惣三 (つちや そうぞう)

武田家の家臣の男性。黒髪の長髪をひっつめて頭頂部で1つに束ねている。剣も槍も武田家一の使い手と言われる武将で、小山城下の雑兵たちが手も足も出ない腕を持つレイリを、まるで子供を扱うかのように片手で簡単にいなしてしまう力量の持ち主。丹波の屋敷に趣いた際に、レイリが武田信勝に見間違えるほどによく似ていることから、レイリを信勝の影武者にするために召し出す。 武田家の家臣の中でも特に武勇の誉れが高い岡部丹波守のことを尊敬している。実在の人物、土屋昌恒がモデル。

真田 昌幸 (さなだ まさゆき)

武田家の家臣の男性。痩せ型の体型で、黒髪で丁髷を結っている。武田家に長く仕えており、西曲輪に用があって、武田信勝の住む屋敷に顔を出した。その際、ちょうど小菅五郎兵衛を実験台にして信勝の影武者たちの力量を試していた場面に遭遇。それと知らないまま信勝に扮したレイリと会話を交わしたが、彼女が影武者であると気づくことはなかった。 実在の人物、真田昌幸がモデル。

小菅 五郎兵衛 (こすげ ごろうひょうえ)

武田家の家臣の男性。黒髪で丁髷を結い、顎の周りにひげを蓄えており、目の下に傷跡がある。武田家に長く仕えており、武田信玄が当主の頃から戦場一筋で戦線に立ち続けてきた老将。武田信勝の屋敷に招かれ、信勝に成り代わった影武者たちがどれだけ本物そっくりに振る舞えるか、その力量を試すための実験台にされる。実在の人物、小菅五郎兵衛がモデル。

武田 信玄 (たけだ しんげん)

武田家の元当主の男性。黒髪の長髪で、額から頭頂部にかけての髪はないが、眉毛が太く、鼻の下と顎にひげを蓄えている。甲斐を本拠地として広大な土地を支配する名将として名高い。巷では「戦国の雄」と呼ばれ、家臣からは「お屋形さま」の呼称で敬われていた。しかし、宿敵の織田信長との決戦を前に、家臣たちが見守る中、病でこの世を去る。 いまわの際に、武田家の世継ぎを息子の武田勝頼ではなく、当時7歳の孫の武田信勝にすると言い遺した。実在の人物、武田信玄がモデル。

武田 勝頼 (たけだかつより)

武田家の現当主の男性。中肉中背で団子鼻、黒髪で丁髷を結い、鼻の下にひげを生やしている。父親で前当主の武田信玄が、後継者に息子の自分ではなく孫の武田信勝を指名したことが気に食わず、「信玄の遺言に従うべき」という家臣からの意見を制し、遺言に背いて武田家の当主になった。しかし、その2年後の長篠の戦いにおいて武田軍を大惨敗させてしまう。 攻め入る織田軍をはじめとする敵の軍勢から武田軍を守るために、土屋惣三に岡部丹波守宛の書状を持たせて小山城に向かわせた。実在の人物、武田勝頼がモデル。

織田 信長 (おだ のぶなが)

織田家の現当主の男性。黒髪で丁髷を結い、鼻の下と顎にひげを生やしている。長篠の戦いで武田軍に対して大勝、現在では武田軍の6倍もの戦力を有し、最も天下人に近い存在となっている。生前の武田信玄からは、「細かな戦の上手下手を超越した天才」と評価されていた。長篠の戦いから4年経ち、武田軍に止めを刺すため、信頼の置ける者に手を打つよう指図している。 実在の人物、織田信長がモデル。

和助 (わすけ)

武田信勝の影武者の少年。黒髪の長髪で前髪を中分けにし、後頭部で1つに束ねてポニーテールにしている。もともとは貧しい百姓の生まれ。瓜二つの顔と声を持つレイリには敵わないが、孫次に比べると和助の方が信勝に顔立ちが似ていたため、レイリが来るまでは信勝からは影武者として特に有望視されていた。しかし、気が優しくて大人しいうえ孫次より落ち着きがない。 武田家の家臣たちの前で信勝に成りすまして影武者の力量を試す実験を行った際も緊張してしどろもどろになってしまい、あっという間に小菅五郎兵衛に影武者だと見抜かれてしまう。

孫次 (まごじ)

武田信勝の影武者の少年。黒髪の長髪で前髪を中分けにし、後頭部で1つに束ねてポニーテールにしている。信勝の影武者の中では顔立ちは最も似ていない。気が優しくて大人しく、落ち着いた性格。気の弱い和助と違って剣術の稽古にも精力的だが、いつもレイリに打ち負かされてしまっている。武田家の家臣たちの前で信勝に成りすまして影武者の力量を試す実験では、レイリが見事に武田家の家臣たちを欺いたため、孫次に出番が回ることはなかった。

レイリの父親 (れいりのちちおや)

妻と娘のレイリと息子の平太とともに山村で百姓をしていた男性。黒髪で前髪が短く、伸びた後ろ髪を頭頂部で1つに束ねている。長篠の戦いで大敗して敗走中だった武田軍の岡部丹波守を家に匿い、食事を振る舞ったことがきっかけで敗走兵を追う織田・徳川の連合軍の雑兵に家を襲われ、身を呈して家族を守った末に斬殺されてしまう。 15年前、20歳だった頃に桶狭間の戦いに今川義元率いる今川軍の雑兵として出兵し、その時に丹波が隊長を務める部隊に配属された過去がある。敵がどんなに強くても一歩も退かない丹波の人柄に惚れ、それ以来、彼のことをずっと尊敬してきた。

レイリの母親 (れいりのははおや)

夫と娘のレイリと息子の平太とともに山村で百姓をしていた女性。長い黒髪で、頭に頭巾をかぶっている。長篠の戦いで大敗して敗走中だった武田軍の岡部丹波守を家に匿い、食事を振る舞ったことがきっかけで敗走兵を追う織田・徳川の連合軍の雑兵に家を襲われてしまう。レイリと平太を家から外へ出させ、身を呈して子供たちを守った末に斬殺される。

平太 (へいた)

両親と姉のレイリとともに山村で百姓をしていた少年。黒髪の短髪で、前髪を眉毛の上で切りそろえている。かつて桶狭間の戦いに今川軍の雑兵として出兵したレイリの父親から岡部丹波守の話を聞いており、将来は丹波の家来になりたいと強く願っていた。長篠の戦いで大敗して敗走中だった武田軍の岡部丹波守を家に匿い、食事を振る舞ったことがきっかけで敗走兵を追う織田・徳川の連合軍の雑兵に家を襲われてしまう。 この時、両親に逃がされた後にレイリを守るため1人で雑兵に立向かった末に斬殺される。

権蔵 (ごんぞう)

岡部丹波守に仕えている雑兵で、定期的に丹波の屋敷内にて剣術の稽古を行っている。黒髪をひっつめて頭頂部で1つにまとめている。雑兵の中では最も腕が立ち、実際の戦であげた手柄も数知れず。自分の剣術の腕前に自信を持っているが、レイリには試合で一度も勝ったことがない。普段は勝気な性格だが、レイリに対しては恐れのような感情を抱いている。

集団・組織

武田家 (たけだけ)

甲斐の国に本拠を構える武家。当主は武田信玄の息子である武田勝頼。天正3年に起きた長篠の戦いで織田・徳川の連合軍に大敗して大きく戦力を失ったが、広大な領土を保ち続けている。しかし、現在も織田軍に領地に攻め込まれ続け、追い込まれた状況が続いている。

場所

高天神城 (たかてんじんじょう)

武田家の最前線基地である高天神にある城。武田家にとって最も重要な拠点で、守りの要となっている。現在は横田甚五郎が守将を務めているが、優秀ではあるものの若すぎるために部下の兵がなかなか言うことを聞かず、統率がとれていない。そのため、歴戦の勇将として名高い岡部丹波守が守将の上に立つ主将として入城することになった。 織田軍をはじめとする敵の軍勢に周囲を取り囲まれてはいるが、「不落の要害」「天下の堅塁」と呼び声の高い城である。

その他キーワード

長篠の戦い (ながしののたたかい)

天正3年に起こった、武田軍と織田・徳川の連合軍の合戦。武田軍は武田信玄の息子の武田勝頼が1万5千の兵を率い、織田・徳川の連合軍は織田信長が3万5千の兵を率いて戦った。結果は多数の鉄砲を効果的に使用した織田・徳川の連合軍の勝利に終わった。

クレジット

原作

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