裏世界「ヒガン」で行われる超常バトル「墨占魂」
高校入学をきっかけに、祖父がいる京都の寺に引っ越した道利月道は、街で迷子になってしまう。路地の突き当たりに大きな木の扉を見つけた月道が扉を開けると、中は「ヒガン」という現世の「裏」世界で、「イレズミ」を実体化した「墨獣」を使役する「墨占魂」というバトルが行われていた。そこで月道は、流れ弾に当たって致命傷を負うが、バトルに参加していた仙嶽葉佩によって命を救われる。墨獣のイレズミを人間に彫れば、人間と共生関係を保とうして多少の怪我では死ななくなるため、葉佩は自身のイレズミ「蜂虎」を、月道に移したのだ。こうしてイレズミの持ち主となった月道は、葉佩の妹・仙嶽ひよりや、イレズミを持つ高校の先輩らが結成した「天神墨闘会」に入部させられ、墨占魂のバトルに巻き込まれることになる。
イレズミを実体化させて闘う特殊なバトル
京都では毎年、墨占魂の大会が行われており、優勝者は大変な名誉を得て街の「守り人」になる。守り人はヒガンと現世のバランスを正す活動をしており、墨獣の管理組織「洛隠寮」に属する。月道は大会に出るのを嫌がるが、イレズミを葉佩に返せば、傷が再発して命を失うかもしれないため、しぶしぶエントリーする。大会の参加者は54人。6人ごと9つのグループに分け、総当たり戦で一位を競うことになる。換環というリングを目に当て、イレズミを墨獣として実体化させ、墨獣を駆使して闘うのが墨占魂であり、その他の武器や卑怯な手段は禁止となっている。墨獣にはさまざまな種類があり、動植物に似たものが多い。例えば月道の「蜂虎」は、足が虎のように強化され、高い跳躍力や強烈な蹴りが武器となる。ひよりの「桜繚烏」は、鋭利な羽根を扇状の武器にしたり、飛び道具にしたりできる。ほかにもヘビや植物、トカゲのような多様な墨獣があり、それぞれ特殊な能力を持っている。なお勝敗は、戦闘不能か降参で決まり、時間制限も存在する。
現世に魑魅魍魎を解き放とうとする革命集団
恒例の墨占魂大会が行われる中、墨獣のイレズミ持ちが襲われる「イレズミ狩り」が頻発する。犯人は墨獣を解放しようとする「革命戦士B・O・P」という連中である。そもそもヒガンができたのは、1200年前。京都に跋扈(ばっこ)していた魑魅魍魎とそれらから出る「禍墨」をヒガンという檻に封じたのが始まりである。そして、ヒガンを安定させるために、京の五地点に5つの墨獣の力で、現世とヒガンを釘づけたのだ。B・O・Pの狙いは、「鍵(キー)」となる5つの墨獣である。これらの墨獣を使えば、ヒガンを完全に破壊することができ、封じられていた墨獣を檻から解き放つことができるのだ。そんなことになれば、現世に大災厄が起きてしまう。月道と「天神墨闘会」の仲間たちは、京都を救うため、B・O・Pの前に立ちはだかる。
登場人物・キャラクター
道利 月道 (どうり つきみち)
天神第一高校の1年生で15歳の男子。金髪とそばかすが特徴。「逃げる」ことが得意で、「必死」や「熱い青春」を嫌い、適当にだらだら過ごす日常を何よりも愛する。高校入学をきっかけに、東京から京都市に引っ越し、祖父が住職を務めるお寺で暮らす。ある日、マンガ喫茶を探して歩いていた際に「ヒガン」という不思議な世界に迷い込み、イレズミを生命として使役する「墨占魂(ぼくせんこん)」というバトルに巻き込まれてしまう。仙嶽葉佩(せんがくはばき)からイレズミを移され、墨獣(ぼくじゅう)九級の「蜂虎」を使役し、足を強化した特殊能力で闘う。仙嶽ひよりや、イレズミを持つ高校の先輩らが結成した「天神墨闘会」に所属。毎年恒例の「墨占魂(ぼくせんこん)」の大会にも参加することになる。何かにつけすぐに逃げようとすることから、ひよりからは「逃道」と呼ばれている。
仙嶽 ひより (せんがく ひより)
天神第一高校の1年生で15歳の女子。道利月道の同級生で、仙嶽葉佩(せんがくはばき)の妹。学校以外では着物姿で、日舞を習っている。「墨占魂(ぼくせんこん)」で、代々上位に立って伝統を守る立場である「仙嶽家」に生まれたことにプライドを持っている。背中にイレズミがあり、鋭利な羽根で扇子攻撃や遠隔攻撃ができる、墨獣(ぼくじゅう)二級の「桜繚烏(おうりょうがらす)」を使役する。イレズミを持つ高校の先輩らが結成した「天神墨闘会」に所属。何かにつけてすぐに逃げようとする月道を「逃道(ニゲミチ)」と呼んで挑発する。
書誌情報
レトロポリス・スクラッチ 3巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2022-12-09発行、 978-4065300510)
第2巻
(2023-05-09発行、 978-4065312643)
第3巻
(2023-10-06発行、 978-4065331538)