人間失格

人間失格

太宰治の代表作の一つ『人間失格』を伊藤潤二がコミカライズした作品。舞台は、大正から昭和初期の日本。世間との距離がうまく取れない主人公、大葉葉蔵が、道化に徹して死ぬ思いで生きていく姿を描いた純文学的ホラー漫画。小学館「ビッグコミックオリジナル」2017年10号から2018年9号まで連載。

正式名称
人間失格
ふりがな
にんげんしっかく
原作者
太宰 治
作者
ジャンル
ホラー
 
ヒューマンドラマ
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊3巻
関連商品
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ホラーマンガの第一人者による独自の解釈

文豪、太宰治の代表作の一つ『人間失格』をコミカライズしたのは、現代ホラーコミックの第一人者、伊藤潤二である。隣人に恐怖を覚える葉蔵が、道化を演じながら生きるという、原作の大筋をおさえながら、トップホラー作家らしい独自の解釈と恐怖描写が本作の大きな特徴である。例えば、葉蔵の本性を見抜く同級生の竹一の凄惨な自殺シーンは、本作のオリジナルである。また、竹一をはじめ、葉蔵のせいで不幸な死を遂げる女性たちの亡霊に悩まされ続ける描写もホラー作家ならでは。さらに、太宰本人も作品に登場するという大胆なアレンジも魅力の一つである。

本作の制作経緯

2018年7月21日掲載「好書好日」の作者インタビューによれば、本作執筆のきっかけは、担当編集者から、新境地として文学ものをやらないかと提案されたことだという。いくつか読んだ太宰作品のうち、作者が一番しっくりきたのが『人間失格』。「思春期の時期が特にひどくて、自分を明るく見せようとよく冗談を言ったりしていました」という作者は、本心を隠して道化を演じる主人公、葉蔵の性格に共感したのだ。また、凄惨な殺人や亡霊の恐怖といった要素は、怪談の名人、三遊亭円朝(1839~1900)の落語を参考に、「基本的には原作の人間ドラマを膨らませて、ホラーな要素を加えていった」という。こうして、原作のテーマを大事にしながら、ホラーテイストに溢れた本作が誕生した。

登場人物・キャラクター

大庭 葉蔵 (おおば ようぞう)

東北地方の大地主、大庭家の末息子。女性が自然によってくるほどの美男子で幼少時から家の下男や女中から性加害を受けて育つ。自分の幸福の概念が、世の人たちと食い違っているのでは、という不安に苛まれ、隣人に恐怖を覚えている。そのため、道化を演じることで本心を隠し日々を送る。父の意向で高等学校進学のために上京した後は、数々の女性と問題を起こし、次第に精神を病んでいく。小さい頃から絵が得意で、上司幾太のペンネームで漫画を描いて暮らす。

竹一 (たけいち)

葉蔵の中学時代のクラスメイトの男子。顔が青ぶくれしており、身体もクラスで最も貧弱。学課も体操もまったくできず、誰からも蔑まれている。葉蔵が道化を演じていることを見抜き、葉蔵の脅威となる。また、葉蔵が「女に惚れられる」「偉い絵描きになる」という予言をする。

クレジット

原作

太宰 治

書誌情報

人間失格 3巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2017-10-30発行、978-4091897183)

第2巻

(2018-03-30発行、978-4091898265)

第3巻

(2018-07-30発行、978-4098600564)

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