残念な偉人たちに容赦がないドS管理人
弥生時代から現代まで、あらゆる時代からやってきた偉人たちは、政府に捕獲された後、契約を交わしたうえで「国営偉人居住住宅(偉人館)」に入居している。なお、偉人館のフロアは、15階が戦国偉人フロア、19階が近代偉人フロアといったぐあいに、西暦の年代と関連している。偉人館の運営費は税金で賄われているが、家賃・光熱費以外の生活用品の費用は、番組出演や講演会といった、偉人営業のギャラでやりくりされる。しかし、クセが強すぎる偉人たちは、勝手に敷地外に出かけたり、営業を台無しにしたりする。本作は、そんな残念な偉人たちを、偉人館のドS管理人の四条椿(ツバキ)がビシビシ指導する姿を描いた、異色の歴史コメディである。
偉人本来の姿とのギャップが魅力
本作最大の魅力は、尊敬されるべき偉人本来の姿と、漫画で描かれる残念な姿のギャップである。魔王と恐れられたノブナガは、ツバキに飼いならされた情けない男として、戦国武将のアケチミツヒデは、ノブナガに異常愛を抱くメンヘラ美少年として描かれる。そして、文豪のダザイオサムは、心中用の人形トミエをはべらせ、隙あらば死のうとする快楽自殺主義者である。また、偉人のアレンジは大胆ではあるが、歴史的事実をベースにしており、例えば、“男の娘(こ)”ヤマトタケルとそのストーカー、クマソタケルは「女装して宴会に紛れ込みクマソを討った」という、ヤマトタケルのエピソードに由来している。
登場人物・キャラクター
四条 椿 (しじょう つばき)
「国営偉人居住住宅(偉人館)」の管理人の青年。25歳で目つきが鋭い。東京大学出身で未婚。性格はスーパーサディスティック。暴力と恐怖で偉人たちを支配しているが、傲慢で自己中心的なイカれた偉人たちに愛想を尽かした結果だという。TV出演や番組宣伝といった外部からの依頼に、最も適した偉人を選び派遣する業務も行う。
オダ ノブナガ
「国営偉人居住住宅(偉人館)」の住人の男性。小姓のランマルを従えている。現代に来たばかりのときは、自分こそが唯一のルールだと傲慢な態度を見せていたが、四条椿に記憶が飛ぶまで殴られて大人(おとな)しくなる。以後、完全に四条に飼いならされ、朝は「人間アラーム」として四条を起こし、朝刊と牛乳、水を届けるのを日課としている。同じく現代に現れた、ヤンデレの忠臣、アケチミツヒデが大の苦手。歴史上の実在人物、織田信長をモチーフにしている。
ダザイ オサム
「国営偉人居住住宅(偉人館)」の住人の男性。心中人形のトミエのほか、数体の人形を持っており、事あるごとに人形と心中しようとする快楽自殺主義者。「リストカットのパントマイム」と言いながら実際に手首を切る、鉄板の自決ネタを持つ。また、魅力的な心中のシチュエーションを綴った「心中美学帳(ですのおと)」を執筆した。オダノブナガと仲が良く、ノブナガの部屋の冷凍庫に潜んでいることもある。歴史上の実在人物、太宰治をモチーフにしている。
アケチ ミツヒデ
「国営偉人居住住宅(偉人館)」の住人の少年。オダノブナガに異常な愛と忠義心を持つ、重度のメンヘラ美少年。「敵にしたくない偉人」「住所を知られたくない偉人」など数々のランキングで1位にあげられている。何でもかんでもすぐに焼いてしまうクセがある。他の偉人より遅れて現代にやってきて、ノブナガに迫る。管理人の四条椿と敵対するが、ノブナガの隣の部屋にしてもらうことで納得し、偉人館の入居契約を結ぶ。歴史上の実在人物、明智光秀をモチーフにしている。
書誌情報
偉人住宅 ツバキヒルズ 全4巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2014-02-28発行、 978-4091858801)
第4巻
(2014-11-28発行、 978-4091865809)