勇者を推すためにすべてを懸ける魔王
幼い頃から知力と魔力に秀でていたレイノルズ・ドラクロスは、ある日母親から半ば強制的に魔王に指名される。しかし、魔王としての仕事はレイノルズにとって望ましいものではなく、鬱屈した日々を余儀なくされている。そんなストレスを抱える中、魔王打倒を目指す勇者・エリーがレイノルズの前に現れる。これまでレイノルズは、富や名誉のために自らに挑んできた勇者を返り討ちにしてきたが、エリーはそんな勇者たちとは違い、最後まであきらめない信念と他者を思いやる優しさを持っていた。レイノルズはエリーの真っすぐな気持ちに尊さを感じ、やがて彼女を全力で応援するようになる。
勇者の名声を利用する悪徳プロデューサー
人間界には、勇者の名声を利用して金儲けを企む小悪党が存在する。中でも敏腕プロデューサーを自称するスペクター・ノウルズは、人類最強の戦士・ゴズリングや、勇者のみで結成されたパーティー「Y4(勇者4)」、演技力だけは一流のダメ勇者・アヤーシーなど、さまざまな勇者ビジネスを展開しており、自らもその恩恵にあずかってきた。そんなスペクターが新たに目を付けたのは、奇しくもレイノルズが応援しているエリーだった。エリーに無限の可能性を見いだしたスペクターは、彼女をアイドルにしようと画策する。そんな中、エリーの行動を陰から見守っていたレイノルズは、スペクターがエリーに悪影響を与えないように注視し、事実上のライバルとなる。一方のスペクターも、かつてエリーがあこがれていた勇者・レベッカと親密な関係で、現在も大切に思っていることが明かされるなど、ただの悪人ではないことがのちに判明する。
勇者の師匠となった魔王
勇者・エリーの推し活に励んでいたレイノルズは、スペクターが売り出したエリーのファングッズを入手するため、魔法で変装して人間界を訪れる。そして誰よりも早く限定Tシャツを購入したことで、ほかのファンから注目されるようになる。スペクターのプロモーションによってアイドルとしてスターダムを駆け上がろうとしているエリーだったが、自らの存在意義を見いだすことができずにいた。さらに勇者・スカーレットの活躍を目の当たりにして、自分は勇者にふさわしくないのではないかと思い悩む。彼女の苦悩を察したレイノルズは、人間の「マオ」としてエリーの前に現れ、自分に正直に生きるようにうながす。この言葉で、エリーは当初の目的だった魔王討伐を再度決意し、レイノルズのことを人間に変装した魔王だと知らないまま、彼に弟子入りを志願する。そして、レイノルズとエリーは1週間のあいだ師弟関係を結び、彼女が劇的に成長するきっかけとなる。
登場人物・キャラクター
レイノルズ・ドラクロス
ドラクロスの三男で、魔王としての役割を課せられた青年。魔法の達人で、強力な闇の波動を発射する「暗黒大魔法(マルゴト・ケシトバース)」や、遠い場所に瞬時に扉を召喚する「地獄門(ア・ラ・ワール)」、遠くにある物を近くに転送する「転送魔法(ココニ・ハコーブ)」といった移動呪文を使いこなす。また、額にある「魔眼」と呼ばれる眼を使うことで、人間界の様子を見ることができる。穏やかな優しい性格で、部下に対しても気配りを欠かさない。また、魔王でありながら争い事を嫌悪し、次々に自分の命を狙って現れる勇者に辟易している。母親から人間を滅ぼせ、結婚して繁殖しろと口うるさく言われ続けているため、魔王という仕事が自分に向いていないと感じており、ストレスを抱えている。そんな中、自分に挑んできた勇者・エリーのひたむきな態度に惹かれ、やがて彼女の推し活を始める。それからはエリーを応援したい気持ちと、部下を思いやる気持ちの板挟みに苦しんでいるが、結局彼女に対する情熱を止められず、やがて「マオ」という偽名を使ってエリーのファンクラブに加入する。
エリー
魔王討伐を志す勇者の少女。戦士のモルンガ、魔法使いのポポスとパーティーを組んでいる。何事も一生懸命に取り組む生真面目な性格で、仲間たちにも頼りにされている。一方で自己肯定感が低く、勇者としての自分に自信が持てずにいる。魔王として君臨するレイノルズ・ドラクロスを倒すべき敵と認識しており、レイノルズから思いを寄せられていることは知らない。レイノルズに何度も挑み続けたことが評価され、マール王国から「ファルナーク」と呼ばれる聖剣を授かり、勇者としての名声を着実に高めていく。しかし、その純粋な心と前向きな姿勢が勇者ビジネスを企むスペクター・ノウルズの目に留まり、彼の悪巧みに巻き込まれてしまう。
クレジット
- 原作
書誌情報
魔王がずっと見ている 5巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2022-07-12発行、 978-4098613137)
第2巻
(2022-11-10発行、 978-4098614523)
第3巻
(2023-03-10発行、 978-4098615797)
第4巻
(2023-07-12発行、 978-4098617357)
第5巻
(2023-11-10発行、 978-4098625925)