ダメ人間たちが暮らす格安アパートが舞台
本作の舞台は、海と山と菜園に囲まれた小さな碧江町。時おり、特別な役割を持つ天使が地上に舞い降りるというファンタジー要素が織り込まれている。海辺にひっそりと佇(たたず)む築70年のアパートは、風呂・洗面所・キッチン・トイレが共同で、家賃は驚きの5000円という安さ。このアパートに住む無職の優五と、彼のもとに降臨したドジっ子天使のムエルとの共同生活がコミカルに描かれる。「ダメ荘」と呼ばれるこのアパートには、ほかに居場所がなく、なんらかの欠点を抱えた住人たちが住んでいる。そんなダメ荘の住人たちの秘密や過去を掘り下げながら、落ちこぼれ天使であるハムエルが優五たちの人生にどのような影響を与えていくのかが見どころとなっている。また、水無月すうの代表作『そらのおとしもの』のキャラクターが登場するスターシステムも、本作の特徴の一つとなっている。
ダメ人間たちと天使の奇妙な同居生活
激安アパート「ダメ荘」で気楽な一人暮らしを送る優五は、ほぼ無職でつねに金欠というダメ人間。そんな彼の前に、だらしない生活を改めさせるために天界から遣わされた美少女天使のハムエルが現れる。なぜか仏壇から現れたハムエルは、腹肉が出入口に挟まるという醜態を晒し、説得力のなさも手伝って優五から軽くあしらわれる。就職をうながそうとするも、もっともらしい理屈を並べて無職を正当化する優五に言い返せなくなったハムエルは、一度天界へ戻って出直そうとする。しかし、このまま天界に帰ればほかの天使たちに馬鹿にされるという事情もあり、再び優五のもとに現れたハムエルは、彼からダメ荘に住んでいるのはダメ人間ばかりだから、天使が何もしなくても問題ないと諭される。こうして、優五の部屋に居候することを許されたハムエルは、彼と奇妙な共同生活を送りながら、なんらかの事情でダメ荘に暮らしている住人たちの事情を知ることになる。
明らかになっていくダメ人間たちの過去
物語の序盤は、優五の部屋や激安アパート「ダメ荘」を舞台にしたエピソードが展開される。しかし、中盤からは近隣の夏祭りやコスプレイベントなどに話が広がり、そこで起こるさまざまな騒動を通じて、優五やほかの住人たちの過去が徐々に明らかになっていく。優五が無職になった理由が垣間見える場面もあり、ダメ荘での生活に馴染むにつれてダメ天使化していくハムエルを見かねた天界から、強力な戦闘力を持つ天使が派遣され、平穏な日々を送っていた彼女に危機が訪れる。また、物語の冒頭では、優五が何らかの形でハムエルに救われることが示唆されており、過去に傷を抱える彼がどのように彼女とかかわり、救われていくのかも重要な見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
茶山 優五 (さやま ゆうご)
海と山と菜園に囲まれた碧江町にある激安アパート「ダメ荘」に住む青年。年齢は20歳。黒髪のショートヘアで、アンダーリムの眼鏡をかけている。高校を中退し、ほぼ無職の状態が続いているが、働く意欲はまったくない。のんびりとした日々を送る中で、ハムエルと出会い、彼女と同居することになる。隣人の善の娘、はるかの送り迎えをしているが、善から謝礼を渡されても、はるかが悲しむからという理由でそれを断っている。金欠で無職ながらも、どんな状況でも誠実さを貫いており、その人柄からダメ荘の住人たちから厚い信頼を寄せられている。
ハムエル
優五が住む「ダメ荘」に突然現れたポンコツ天使。桃色のロングヘアをお団子にまとめた美少女で、生真面目な性格の持ち主。なぜか仏壇から現れるものの、しばしば出入口に腹肉が挟まって動けなくなるなど、天使らしからぬドジっ子な一面を見せる。優五の堕落した生活を改めさせるために天界からやってきたものの、もっともらしい理屈を並べて正当化する彼の口車に乗せられ、適当にあしらわれることが多い。優五の部屋に居候することになり、ダメ荘の住人たちとも交流を深めていく。背中の羽は着脱可能で、時にはバーベキューの網代わりにされることもある。
書誌情報
優良物件もうダメ荘 ~風呂、トイレと天使は共同です~ 全5巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉
第1巻
(2023-06-26発行、978-4041138274)
第2巻
(2023-10-26発行、978-4041143582)
第3巻
(2024-03-26発行、978-4041148983)
第4巻
(2024-06-25発行、978-4041150528)
第5巻
(2024-10-25発行、978-4041156025)







