公立高校2年4組の青春群像劇
本作は、とある公立高校の2年4組を舞台に、一癖も二癖もある生徒たちが繰り広げる青春コメディ。物語は祐樹と幼なじみの百々瀬奏を中心に展開されるが、次第にほかのクラスメイトにもスポットライトが当たり、多彩な視点で描かれる群像劇へと発展していく。2年4組には生徒たちが形成するいくつかの友人グループが存在し、例えば祐樹の周りには「水」をはじめとする四元素の名を持つ男子が集まっている。グループ内の息の合ったやり取りはもちろん、グループの垣根を越えた意外な交流も大きな見どころとなっている。
個性あふれる生徒たちの愛おしい会話劇
本作の大きな魅力は、作者の阿部共実が得意とする独特な台詞回しにある。2年4組の生徒たちが繰り広げるテンポのよい会話劇を通じて、それぞれの人物像や関係性が巧みに描き出されている。会話のテーマは「サンタクロースの存在」や「体の好きな部位」など、思春期ならではのどこかくだらなく、とりとめのないものばかり。そんな他愛のない話題を、大真面目に、あるいは不器用さと勢いを交えて語り合う彼らの生き生きとした姿が、読者の心に愛おしさと懐かしさを呼び起こしてくれる。
雑談から始まる2年4組の日常
2年4組の祐樹を中心とした男子グループは、「女性の体のどの部位が好きか」という話題で盛り上がっていた。当初は男子だけの会話だったが、いつの間にか祐樹の幼なじみである奏やほかの女子たちも巻き込まれていく。数日後、体育の自由時間に、奏は友人の五十嵐から、自分と祐樹が以前から付き合っているという身に覚えのない噂が広まっていることを知らされる。奏はその噂を否定したが、話題はいつの間にかクラスの男子たちのことへと移っていった。そして奏、五十嵐、一万田の三人は、放課後に女子とほとんど交流のない火川の行動を観察することにする。
登場人物・キャラクター
水木 祐樹 (みずき ゆうき)
とある高校の2年4組に在籍する男子。年齢は17歳。クラスメイトの火川、風越、土上とは仲が良い。女子にはあまり慣れていないが、幼稚園からの幼なじみである奏とは親密で、付き合っているのではないかと噂されるほどで、家族ぐるみの付き合いも長い。弟が二人おり、奏の弟妹と共にかわいがっている。誰に対しても素直で気配りができるため、一部の女子からは人気がある。高台の団地に住み、スーパーでアルバイトをしている。となりの部屋には、なぜか職業を隠しているミステリアスな女性漫画家が住んでいる。
百々瀬 奏 (ももせ かなで)
祐樹のクラスメイトであり、幼なじみの女子。水玉模様の髪留めでまとめた二つのおさげ髪にしている。ふだんはクラスメイトの五十嵐や一万田と仲がよく、周囲の雑談に巻き込まれると、持ち前の鋭いツッコミを炸裂させている。祐樹とは家族ぐるみの付き合いがあり、周囲からは恋仲と噂されるほど親しいが、本人は彼のことを「マヌケ面」と呼び、関係をきっぱりと否定している。その口の悪さとは裏腹に、弟が二人と妹が一人おり、面倒見がよくしっかり者。
書誌情報
潮が舞い子が舞い 全10巻 秋田書店〈少年チャンピオン・コミックス〉
第1巻
(2019-09-06発行、978-4253252386)
第8巻
(2022-06-08発行、978-4253252508)
第9巻
(2023-02-08発行、978-4253252577)
第10巻
(2023-08-08発行、978-4253253000)







