元祖天才バカボン

元祖天才バカボン

赤塚不二夫の『天才バカボン』を原作とし、フジオプロの長谷邦夫による代筆で執筆された1話完結型のコメディ。バカボンのパパやバカボンらが引き起こすトラブルやドタバタな日常を描く。「月刊テレビマガジン」1971年12月号から1991年1月号にかけて連載された。

正式名称
元祖天才バカボン
ふりがな
がんそてんさいばかぼん
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

いつもおかしなことをしてはトラブルを招くバカボンのパパは、ちょっとできの悪い息子バカボン、美人な妻バカボンのママ、天才児ハジメちゃんといっしょに楽しく暮らしている。ある日、犬を飼いたくなったバカボンのパパは、ウナギのような姿をした不思議な動物ウナギイヌに遭遇する。ウナギイヌをどうしても飼いたいバカボンのパパはママにせがむも断られてしまい、本官さんにウナギイヌを自分たちへのプレゼントとしてくれるよう依頼する。友人に贈られたプレゼントだからと、ママを無理やり説得してウナギイヌを飼えることになったバカボンのパパは、ウナギイヌと散歩に出かけたりして楽しく過ごすのだった。後日、バカボンのパパは珍しくカゼを引くが、病院に行くのが嫌だからとやせ我慢を続け、カゼを悪化させてしまう。見かねたバカボンたちによって病院に連れて行かれ入院することになったバカボンのパパだが、ウナギイヌがいないと薬を飲めないし、寝られないと駄々をこねる。バカボンはウナギイヌを連れて病院に入るも受付で断られてしまい、ウナギイヌを病室まで連れて行けない。バカボンの提案でウナギイヌを人間に変装させるが、病院に向かう途中で車に尻尾を轢かれ、尻尾が隠せないほど巨大化してしまう。(エピソード「ウナギイヌ登場の巻」。ほか、21エピソード収録)

第2巻

いつでも元気いっぱいのバカボンのパパは、バカボンウナギイヌをはじめとする周囲の人々を巻き込んで町中に大混乱をもたらしていた。そんなある日、バカボンは道端に落ちていた謎の鏡を拾う。鏡を探る途中で背が高く乱暴な女子に遭遇したバカボンは、その鏡には光を反射させることで人や物を小さくさせる、不思議な超能力が宿っていることを知る。さっそく鏡の光を当てて乱暴な女子を小さくしたバカボンだったが、小さくできる時間はわずか1分間だけだったため、油断したバカボンは返り討ちにされひどい目に遭ってしまう。便利だが危険な鏡だと身をもって知ったバカボンは、帰宅してバカボンのパパに鏡のことを話す。不思議な鏡をもっと有効に使おうと考えたバカボンのパパは、さっそく鏡を持って町へ出かける。ゴミや魚を小さくして鏡の力をうまく使いこなしたバカボンのパパは、今度は本官さんにイタズラをしようと交番へ向かう。(エピソード「へんな鏡の巻」。ほか、13エピソード収録)

第3巻

ある日、バカボンのパパは、ハジメちゃんに「泥棒」という声に反応して走る車付きの靴を作ってほしいと頼む。奇妙に思いながらもハジメちゃんはバカボンのパパの言う通り、走る靴を発明。完成したのは、声を受信して反応する受信機とモーターが付いたブーツ状の靴だった。バカボンのパパは、さっそくその靴を履いて町に出かける。その頃、ここ最近一人も悪人を逮捕できずピストルを撃てずにいた本官さんは、ストレスを感じていた。交番に到着したバカボンのパパは、本官さんに走る靴を履かせて「泥棒」と呼び靴を発進させる。本官さんが履いたまま暴走する靴は止まらず、町中で騒ぎを巻き起こす。バカボンのパパは「逮捕」の一声で靴を止めるものの、怒った本官さんに殴られて顔がボコボコになってしまう。走る靴が嫌になったバカボンのパパは出前をしていた蕎麦屋に靴を譲り、蕎麦屋は走る靴を履いて楽しそうに出前に向かう。しかし蕎麦屋が「泥棒」を連呼するため、本官さんは疲れ果ててしまう。(エピソード「くつのパトカーの巻」。ほか、11エピソード収録)

第4巻

バカボンに片思いするイジ子が、バカボンに会うためにバカボンのパパを訪ねて来た。バカボンのパパは陰湿で意地悪なイジ子を警戒するが、彼女はバカボンに会うためにあらゆる手段でつきまとってくる。バカボンのパパはそんなイジ子に対し、バカボンの居場所を教える代わりに、ほかの人に意地悪をするよう命じる。イジ子は言われた通りに本官さんレレレのおじさんに意地悪をするが、バカボンのパパは約束を守らずバカボンのアルバムを見せるだけだった。そんな中、バカボンへの思いをあきらめないイジ子は、今日がバカボンの誕生日だと知り、誕生日パーティーに参加しようとする。しかし、バカボンのパパに参加を断られてしまったイジ子は、怒って悪巧みを始める。イジ子はパーティーに向かうバカボンの友人を次々と罠にはめ、自分だけがパーティーに参加できるよう仕向けようとする。一方、イジ子の罠にはまり電話ボックスに閉じ込められたウナギイヌは、バカボンたちに助けを求めるため、ある場所へ電話をかける。(エピソード「いじわるイジ子の巻」。ほか、11エピソード収録)

関連作品

本作『元祖天才バカボン』の原作として、赤塚不二夫の『天才バカボン』がある。バカボンバカボンのパパが織り成すドタバタな日常や、彼らの起こす騒動やイタズラを描くギャグ漫画で、赤塚不二夫の代表作となっている。本作と同様に1話完結型のショートストーリーで、シュールギャグやナンセンスギャグを中心としたギャグ・コメディ描写が多い。連載初期はバカボンが主人公だったが、途中からはバカボンのパパが主人公に変わっている。

登場人物・キャラクター

バカボンのパパ

バカボンとハジメちゃんの父親で、いつもハチマキと腹巻きを着用した中年の男性。バカ田大学出身。基本的には無職だが、時おり臨時でさまざまな職に就いている。語尾に「~なのだ」を付けて話し、挨拶は「コニャニャチワ」。「これでいいのだ」が口癖で、息子のバカボンをはじめとする家族と共に楽しく気ままに生きている。明るく楽天的な性格で、子供っぽく非常識な言動が多く、後先を考えずに思いつきで行動する。このため、家族や周囲の人をよくトラブルに巻き込んでおり、時には町中を巻き込む大騒動に発展することがある。支離滅裂な行動から周囲を困らせることが多いものの、金に困っていた原始人に助言・協力して金集めを成功させたりと、思いつきの行動やアイディアが偶然にも人助けや思わぬ成功につながることがある。また、泥棒や強盗といった悪人をこらしめたり、ズルをしようとする後輩を叱ったりと、気まぐれに良識的な行動を取ることもある。バカ田大学の同級生や後輩、恩師を中心に知人・友人が多く、時おり彼らが訪ねて来たり、彼らに助けを求められたりしている。何事にも興味を持ち、大学時代はさまざまな研究会に入会していた。病院は苦手で、カゼや虫歯になっても我慢して悪化させることがある。好きな食べ物はレバニラ炒めやおでんのタコ。

バカボン

バカボンのパパの息子で、小学生。うずまき模様が描かれた緑色の着物を着用し、ほほにはうずまきのような模様がある。顔や性格は父親似で、弟のハジメちゃんよりも頭はよくないが、のんびり屋で家族思いの少年。バカボンのパパといっしょになって悪巧みをすることが多いが、彼の起こすトラブルに巻き込まれたり、自分が起こしたトラブルや厄介事に巻き込んだりしている。負けず嫌いな一面もあり、特にバカボンのパパに対しては対抗心を燃やして、仲のいい親子であると同時にライバルのような関係。どこか抜けたところがあり、なにをしてもワンテンポずれているため、周囲から「間抜け」呼ばわりされることがある。腹黒くわがままなところもある一方で、バカボンのパパに比べれば良識的なしっかり者であり、いつもトラブルを起こす非常識なバカボンのパパを叱ったり、ツッコミ役になったりすることもある。ハジメちゃんとは仲がよく、困った時や悩んだ時にはアドバイスをもらうことも多い。照れ屋で純情な一面がありガールフレンドを大切にしているが、陰湿なイジ子のことは大の苦手。

バカボンのママ

バカボンのパパの妻で、バカボンとハジメちゃんの母親。優しく美人な良妻賢母で、バカボンのパパにとっても自慢のママ。トンチンカンな家族に振り回されつつも、大きな愛情でみんなを見守っている。そつなく家事をこなし、いつもバカボンのパパとバカボンのわがままや騒動に巻き込まれては呆れている苦労人でもある。ふだんは穏やかでおとなしいが、二人の悪ふざけが過ぎる時はきつく叱っている。

ハジメちゃん

バカボンのパパの息子で、頭頂部に巻き毛状のアホ毛がある。バカボンのママ似の愛らしい見た目でまだ幼い男児だが、生まれた時からの天才児で、ピタゴラスの定理やケプラーの法則までスラスラと解説できる。研究や発明も得意で、デカパン博士の優秀な助手として、時おり彼の研究所に赴いては共同で機械や薬を発明している。また、家族の頼みで便利な道具やロボットを一人で発明している。兄のバカボンやバカボンのパパが困っている時は親身になってアドバイスを送り、家族の知恵袋として活躍することも多い。

レレレのおじさん

バカボンのパパの近所に住んでいる陽気な中年男性。山吹色の浴衣に下駄を履き、つねにホウキを持ち歩いている。「お出かけですか」や「レレレのレ~」が口癖で、語尾に「~れす」を付けて歌うように話す。いつもあちこちを掃き掃除しながらバカボンやバカボンのパパに絡んでいる。時には彼らの起こすトラブルに巻き込まれたり、大量のゴミを押し付けられたりしている。ふだんは明るく飄々としているが、掃除を邪魔する者には容赦がない。一見独身に見えるが、実は見た目から性格までそっくりな息子がたくさんおり、アフリカをはじめ世界のあちこちに息子たちがいる。

本官さん (ほんかんさん)

警察官の中年男性で、バカボンのパパが住む町の交番に勤務している。白目部分がつながった両目に、下の歯が出っ歯で、ピストルと警俸を携えている。幼なじみでもあるバカボンのパパとは、腐れ縁のような関係。交番での仕事やパトロールをする中で、バカボンのパパのイタズラの被害に遭ったり、彼やバカボンの起こすトラブルにいつも巻き込まれている。かなり短気な性格で、怒ったり怪しい人を見つけたりすると「タイホする!」「死刑だ!」などと叫びながらピストルを無駄に乱射する癖がある。このため、交番勤務でありながらほかの警官の100倍は銃弾を消費している。「交番のピストル音がうるさい」という理由でほかの町に引っ越す住民もおり、同様の理由でバカボンのガールフレンドも引っ越したため、バカボンを怒らせたことがある。生真面目で仕事熱心な一面もあり、ハワイに行った時も木の交番を建てておまわりさんをしていた。食欲や金欲だけでなく、出世願望からモテたい願望まであらゆる煩悩に悩まされている。プライベートでも愛用のピストルを手放さず、寝坊しないように目覚まし時計にピストルを仕掛けている。好きな食べ物はラーメン。

ウナギイヌ

バカボンのパパとバカボンが見つけた黒いオス犬で、犬とウナギが混ざったような姿をしている。語尾に「ワン」を付けた丁寧語で話し、「ワンワン」と鳴くこともある。ウナギと犬を両親に持つハーフで、異種結婚した夫婦のあいだに生まれた奇跡の珍獣。ウナギイヌの母とウナギイヌの父も言葉を話すことができ、時おり家族でバカボン一家と交流している。バカボンのパパには非常にかわいがられているが、時おり彼の起こすトラブルに巻き込まれている。当初はバカボンのパパに気に入られ彼の家で飼われるようになったが、ほとんど野良犬として町を散歩しながら自由に過ごしていることが多い。実家は川にある細長い犬小屋で、小屋の後ろ半分は川に沈んでいる。基本的には礼儀正しく良識的だが、本官さんのピストルの部品を盗んでゆすったりと、ずる賢くしたたかな行動に出ることもある。また要領もよく、ピンチの際にはニョロニョロとした柔軟な体を巧みに活かして回避する。

ウナギイヌの母 (うなぎいぬのはは)

ウナギイヌの母親で、言葉を話せるメスのウナギ。お団子状に髪をまとめて簪を刺している。家族思いの穏やかな優しい性格で、夫のウナギイヌの父とは魚屋で出会った。ふだんは川に住んでいるが、外出する時は水を入れたツボや洗面器に入って息子に運んでもらっている。東京タワーに行きたがったりコーヒーを飲もうとしたりと、人間の暮らしや文化に興味を持つ。息子の紹介でバカボンのパパと知り合うが、彼に遭遇してはトラブルに巻き込まれており、人に食べられそうになったことが何度もある。

ウナギイヌの父 (うなぎいぬのちち)

ウナギイヌの父親で、言葉を話せる小さな犬。元は町で盗みを働く泥棒犬だったが、魚屋でウナギイヌの母と運命的に出会い、周囲の反対を押し切って彼女と異種結婚した。ふだんは半分が川に沈んだ犬小屋に家族と住んでいる。家族思いの明るく大らかな性格をしている。息子の紹介でバカボンのパパの家に招かれ、時おりバカボン一家と交流している。

ニャロメ

言葉を話し二足歩行で歩く不思議な野良猫で、語尾に「~ニャ」や「ニャロメ」を付けて話す。町を放浪してはバカボンのパパやバカボンに遭遇し、彼らのトラブルに巻き込まれたり巻き込んだりしている。元気で明るい性格で、単純でイタズラ好き。いつか人間の女性と結婚するのが夢。

ノラウマ

町のあちこちを放浪しては、その日暮らしをしている野良犬のような馬。尻尾が短く体がボロボロのみすぼらしい見た目で「ヒヒヒーン」と鳴くが、まれに言葉を話すことがある。丁寧な言葉遣いで一見礼儀正しいが、本官さんの弁当を盗んだり立小便をしたりと、素行が悪い。人にだまされやすく、怒った時や嫌いな相手に出会った時には大きな蹄や馬糞で攻撃する。馬でありながら野良犬のような生活をしているのを気にしており、友達になったバカボンのパパの家にしばらく住んでいた。しかし、図々しく行儀の悪い振る舞いからすぐに追い出され、再び野良生活に戻った。時おり町に馬糞を落として人を困らせるが、馬糞を出しすぎると痩せてガリガリになる。

原始人 (げんしじん)

バカボンのパパの家のとなりに引っ越して来た中年男性。ふつうの現代日本人だが、原始人のような格好をしているため、バカボンからは過去から来た原始人だと勘違いされている。土地を買って財産がなくなり、買った土地に家を建てられないまま貧乏生活をしていた。バカボンのパパの提案で着ぐるみショーをして資金を貯め、木の上に小さな小屋を建てて暮らすようになる。

デカパン博士 (でかぱんはかせ)

いつもパンツ一丁で過ごしている、のんびりとした動物好きの中年男性。発明家でもあり、「デカパン研究所」で奇妙な機械や薬を、助手のハジメちゃんと共に研究・開発している。

背高先生 (せたかせんせい)

バカ田大学の教授を務める中年男性で、バカボンのパパの恩師の一人。バカ田大学で一番背が低い小柄な体型だが、給料は一番高い。昔から低身長がコンプレックスで、小さいとバカにされがちなことを悩んでいる。大学内に自分の研究室を持ち、時おりおかしな薬を発明している。

イジ子 (いじこ)

「ウキキ」と奇妙な笑い声を上げながら、いつも意地悪や悪巧みをしている少女。バカボンに片思いしており、彼を独り占めするためなら他人を容赦なく罠にはめたり利用したりする。卑劣で歪んだ愛情表現が多いためバカボンからは嫌がられ、バカボンのパパからも警戒されている。陰湿だがとても執念深いうえにずる賢く、目的のためなら手段を選ばないため、バカボンのパパを容易に出し抜くことが多い。

カメラ小僧 (かめらこぞう)

鼻水を垂らして、生臭い風に乗り高速回転しながら出現する男性で、事件写真専門のカメラマンをしている。一見短パンを履いた少年に見えるが、実はれっきとした大人。スクープやスキャンダルが大好きで決定的瞬間の撮影をいつも狙っており、カメラを首にさげ町に突然現れては、有名人や事件現場の写真を撮っている。時おり写真を通してイタズラをしては、バカボンのパパやバカボンを巻き込んで騒ぎを起こしている。

虫田 (むした)

バカボンのパパの後輩で、バカ田大学の「虫の声研究会」に所属する男性。虫が大好きであらゆる虫の声を研究しており、「ムシシ」と笑う。「虫のアルバイト」と称してさまざまな虫に変装して虫のふりをしたり、虫のように跳ねる車を作ったりしている。

尾世冶 (おせじ)

バカボンのパパの後輩の男性。誰に対しても「ごりっぱ」と大げさなお世辞を言って、無理やり褒めてくる変わり者。ふだんは相手の容姿や持ち物を褒める発言をするが、寝言では無自覚に真逆の発言をして相手の悪口ばかり言うようになる。本官さんのことだけはなぜか褒めようとしないが、これは裏でギャングの下っ端をしているためであり、本官さんを含め警察関係者にはかかわらないようにしている。また、ギャングのボスをお世辞で褒めて機嫌取りをすることで大金を得ている。

場所

バカ田大学 (ばかだだいがく)

バカボンのパパが通っていた大学で、略称は「バカ大」。今でも先輩や後輩がバカボンのパパを訪ねて来たり、思わぬトラブルを持ち込んだりすることがある。学生は何らかの部活や研究会に所属しているが、「虫の声研究会」や「太平洋泳いで横断研究会」など、珍妙な研究会が多い。

クレジット

制作プロダクション

フジオプロ

ベース

天才バカボン (てんさいばかぼん)

常識や理屈がまったく通用しないバカボンのパパが、周囲の個性的なキャラクターたちとメチャクチャなやりとりを繰り広げる。シュールで無意味なギャグ漫画の金字塔。赤塚不二夫の代表作の一つ。第18回文藝春秋漫画... 関連ページ:天才バカボン

関連

深夜!天才バカボン (しんや てんさいばかぼん)

2018年7月から9月まで放映された、テレビアニメ『深夜!天才バカボン』のコミカライズ作品。バカボン一家、ウナギイヌ、本官さん、レレレのおじさんなど、おなじみのメンバーが繰り広げるシュールなギャグ漫画... 関連ページ:深夜!天才バカボン

SHARE
EC
Amazon
logo