あらすじ
第1巻
強固な警備とセキュリティを誇る、南波刑務所内にある13舎13房。そこには問題児の囚人として多くの看守を悩ませているジューゴを中心とする、ウノ、ロック、ニコの四人組が収容されている。彼らは看守をいじめたり、鍛錬をさせられたり、脱走を繰り返したりしながら、ドタバタな囚人ライフを送っていた。そんな中、南波刑務所の看守長を務める百式百子が、13舎主任を任されている双六一を呼び出しジューゴら四人の様子を尋ねる。「極悪脱獄囚」のレッテルを貼られている四人の過去が、一によって明かされる。
第2巻
クリスマスが終わり新年を迎えた南波刑務所では、「新年大会」こと「新年南波一心共闘大会」が開宴される事になった。「優勝チームはご褒美として欲しいものが貰える」と知ったジューゴら四人は、13舎の代表チームとして参加する事になった。彼らは双六一と共に「カルタ対決」や「餅つき」など、正月にちなんださまざまな競技をこなし、自分の欲しいもののために優勝を目指す。やがて迎えた第4種目の「巨大独楽回し」では、ゲーム機を欲しがるニコと一が、悟空猿門のチームに勝利。その頃、強力な看守を連れた4舎主任看守部長の四桜犬士郎は、三葉キジに圧勝をおさめていた。
第3巻
激闘が続く南波刑務所の「新年南波一心共闘大会」では、ついに決勝戦で13舎と4舎の対戦が行われる事になった。最後の種目である「鏡開き」に、13舎からは今まで一種目も出番がなかったジューゴと、双六一が出場する事になる。一方4舎からは、百式百子への忠誠心に燃える四桜犬士郎と、4舎囚人のムサシが出場。その勝負の最中、ジューゴは因縁あるムサシの言葉に逆上して身体に異変を生じさせ、暴走を始めてしまう。
第4巻
「新年南波一心共闘大会」で大暴れしたジューゴは、重大な違反を犯した囚人が収容される、13舎の地下牢に移されていた。四桜犬士郎の提案で、ジューゴとムサシを会話させる事にした双六一は、地下牢に行きジューゴへの尋問を開始。トランシーバーを通して会話するジューゴとムサシは、共通の敵である「傷の男」に関する情報を互いに引き出そうとする。そしてその会話の中で、ムサシは「傷の男」を追う理由と、周囲に「化物」扱いされてきた自分の過去を語り出す。
第5巻
南波刑務所地下牢で双六一に「欲のないつまらない人間だ」と指摘されたジューゴは、自分が「傷の男」を追う事で何を求めているのかを改めて考える。仲間と過ごした日々を思い出しながら新しい決意を胸にしたジューゴは、仲間のもとへ戻り、新年会で暴走してしまった事、そして長らく秘密を持っていた事を謝罪するのだった。
後日、いつものドタバタな日常に戻った13舎に、新しい看守として一の弟・双六仁志がやって来る。少女のような容姿の仁志が、本当にいかつい一の弟なのかと疑うジューゴたちは、仁志の運動神経を確かめるために「13房恒例鬼ごっこ」を始める。
第6巻
新年大会で優勝したジューゴたちは、看守から約束のご褒美をもらえる事となった。ジューゴたちはほかの囚人と看守たちを巻き込みながら、ゲーム機や石釜で焼いた料理など、それぞれのご褒美を楽しんでいた。
そんな中、九十九は面会に来た八鳥半蔵と久々に再会する。かつて九十九のマネージャーをしていた八鳥は、彼を再び芸能界に戻そうと説得を始める。しかし九十九は彼の言う事を聞くつもりはなく、かつて自分が忍の里にいた幼い日々の事を思い出す。
登場人物・キャラクター
ジューゴ
南波刑務所囚人番号15番の青年。日本人で、年齢は16歳。「極悪脱獄囚」の一人。角度によって鮮やかに色が変化する、虹色に輝く不思議な眼を持っている。嫌いなものは視力検査。趣味は脱獄、特技も脱獄の天才脱獄囚であり、「永遠の脱獄囚」と呼ばれる謎の囚人の息子でもある。もともとは窃盗容疑で逮捕され、少年院に収容されていた。 ピッキングや手錠外しなど脱獄に必要な技術全般を得意とするが、昔いた刑務所で寝ているあいだに「傷の男」によって「黒い枷」を首と片手首に付けられ、その枷だけは今でも外せずにいる。また、この枷の影響で自身の両腕を刃物に変える事ができるようになった。その後は「傷の男」を見つるために脱走を繰り返しながら、アメリカを始め世界中の刑務所を転々としていた。 のちに移った南波刑務所13舎13房の居心地のよさに慣れてしまい、わざと刑期を延ばして居座るために、定期的に脱走を繰り返している。
ウノ
南波刑務所囚人番号11の青年。イギリス人で、年齢は18歳。「極悪脱獄囚」の一人。好きなものは女とギャンブルで、イカサマも得意。裏カジノに出入りしていたところを逮捕され、中等少年院に収容されていたが、女友達とデートするために脱走する。ピッキングが得意で、別の刑務所や南波刑務所に移ったあとも、デートのたびに脱走している。 ジューゴとは南波刑務所13舎13房に来る前からの知り合いで、アメリカで彼と再会した際はイカサマで怒らせたアメリカンギャングに追われていた。ギャンブルとおしゃれに強いこだわりを持ち、刑務所内でも朝の身支度には時間をかけている。
ロック
南波刑務所囚人番号69の青年。アメリカ人で、年齢は19歳。「極悪脱獄囚」の一人。好きなものはケンカとドーナツ。ジューゴとニコとは、南波刑務所に来る前からの知り合いで、ニコとは特に仲がいい。強面でケンカ好きだが食い意地が張っており、食事の献立表を渡しておくとおとなしくなる。街中でギャングと暴動を起こし、中等少年院に収容されていた。 しかし「飯がまずい」という理由で脱走を続け、南波刑務所13舎13房に移ってからはそこの食事を気に入りほとんど脱走せずにいる。食べる事には強いこだわりを持ち、新年大会のご褒美として石釜を貰い、石釜で焼いた料理を堪能していた。
ニコ
南波刑務所囚人番号25の少年。アメリカ人で、年齢は16歳。「極悪脱獄囚」の一人で、ロックとジューゴとは、南波刑務所に来る前からの知り合い。好きなものは日本のアニメや漫画で、ゲームにも強い関心を持っている。明るく陽気で、子供っぽい性格だが、スラムでドラッグのバイヤーをしていたところを逮捕・保護された過去を持つ。 ただし体に薬物に関する異常は見られず、代わりに食物アレルギーや、未知の病気を多数持っている。これらの治療のために医療少年院に収容されていたが、注射と薬が嫌という理由で脱走し、のちに南波刑務所13舎13房に移る。現在でも週に一度のペースで、御十義翁の治療を受けている。
双六 一 (すごろく はじめ)
南波刑務所の看守の男性で、双六仁志の兄。ジューゴたちが収容されている13舎の主任を務める。趣味は将棋、特技は柔道と書道。「九(くー)」という黒猫をこっそり飼っている。問題児揃いのジューゴら四人組に振り回されては胃を痛めている苦労人だが、彼らの話相手や遊び相手になる事も多い。トランプやチェスなどのイカサマを得意としており、同じくイカサマを得意とするウノを一方的に打ち負かすほどの実力を誇る。 また南波刑務所の看守の中では最強クラスの戦闘力と耐久力を持ち、新年大会中に暴走したジューゴを素早く捕縛するなど、身体能力の高さを見せた。
百式 百子 (ひゃくしき ももこ)
南波刑務所の看守長を務めている女性。普段は厳格でクールな看守長らしい態度で振舞っているが、密かに部下の双六一に好意を抱いている。また一の声を聞いたり名字を呼ばれたりするだけでときめくなど、ピュアで女性らしい一面を持つ。しかしそのような態度は一本人やほかの部下には極力出さないようにしているため、一からは怖い上司というイメージを抱かれており、その思いはまったく気づかれていない。 好物はみたらし団子。
七夕 星太郎 (たなばた せいたろう)
南波刑務所の看守を務めている青年。13舎看守の中では一番の下っ端で、双六一の後輩でもある。趣味は裁縫。また記憶力にも自信を持っており、暗算やカルタなども得意。気が弱い性格で、よくジューゴたちにいじめられており、そのたびに一に泣きついている。一にアドバイスをもらいジューゴたちの扱いに慣れ、いじめられなくなったが、実際はパシりをさせられているだけだった。
五代 大和 (ごだい やまと)
南波刑務所の看守を務めている青年。13舎看守の副主任でもあり、双六一が休んでいた時は代理をしていた。体を鍛えるのが好きな日本男児で、囚人たちにも鍛練を押し付ける事があるため、ジューゴたちからは避けられている。極度の方向音痴で、職場内でもよく迷子になっている。
九十九 (つくも)
南波刑務所囚人番号99番の青年。新しく13舎にやって来た新入り囚人で、見た目も口調も忍者そのもののため、忍者に憧れるウノたちを驚かせた。忍の里で生まれ隠密行動を日常としていたが、修行中に不審者不法侵入の疑いで捕まってしまう。隠れ身の術をバレてから使ったり、まきびしを自分の周りに撒いたりなど、忍者としては未熟。 運動が得意なため、鍛練を趣味とする五代大和とは意気投合している。実は元人気俳優。
シロ
南波刑務所の食堂に勤務している、フランス人の男性。ジューゴら囚人の食事も担当しており、食に強いこだわりを持つロックとは特に仲がいい。顔に大きな傷跡がある大柄な元囚人で、当時の囚人番号は456番。「オヤジ」と呼ばれる食堂の料理長のもとで、料理の修行や研究をしている。目つきが鋭く非常に寡黙な性格ながら実は動物好きで、「ハク」という白い猫をこっそり飼っている。
悟空 猿門 (ごくう さもん)
南波刑務所5舎主任看守部長を務めている青年。中国人で、如意棒に似た武器で戦う。猿のように荒々しい性格で、双六一とは仲が悪く、彼を一方的にライバル視している。このため何かと一につっかかる事が多いが、彼によくケンカを売っては、すぐに返り討ちに遭っている。好きな食べ物はソーダ味のアイス。
四桜 犬士郎 (よざくら けんしろう)
南波刑務所4舎主任看守部長を務めている青年。無口でクール、生真面目な性格をしている。上司である百式百子には、自身の一生を懸けるほどの強い忠誠心を抱いており、彼女の事になると冷静さを失う時もある。また彼女から恋心を寄せられている双六一に嫉妬し、一方的にライバル視している。正義感が強く仕事熱心でもあり、非道な人体実験にかかわる「傷の男」について解明しようとしている。
三葉 キジ (みつば きじ)
南波刑務所3舎主任看守部長を務めている男性。女性的な容姿をしており、趣味もメイクや買い物と女性的。美しいものを愛するオカマだが、周りから「オカマ」と呼ばれる事を嫌っている。彼の担当する3舎には美形の囚人が多く、本人曰く「美の周りには美が集まる」。囚人やほかの看守に対して面倒見がいい。
一声 三鶴 (ひとこえ みつる)
南波刑務所放送局部部長を務めている男性。新年大会では実況解説を担当した。つねにハイテンションに喋るうえに、非常に大きな声のため「南波の騒音問題」と評されている。離れた相手の話声を聞き取れるほどの地獄耳。双六一とは古くからの腐れ縁であり、ソウルメイトでもある。
ムサシ
南波刑務所囚人番号634の青年。盲目で、目には黒帯を巻いている。生まれつき持っている人体発火現象と関係する特異体質により、身体から炎を出す事ができる。またこのような体質から周囲に気味悪がられ、化物呼ばわりされていた。ジューゴとは、昔同じ刑務所で知り合った因縁の仲で、新年大会で4舎代表として出場した際に再会した。 大学生時代に「傷の男」に人体実験の被検体にされ、片目を傷つけられた過去を持つ。このため「傷の男」の事を激しく恨んでいる。
傷の男 (きずのおとこ)
昔のジューゴに「黒い枷」を付けた、謎の男性。首の後ろに大きな傷跡がある。ジューゴが昔いた刑務所の看守だが、現在はどこにいるか不明。またムサシとも因縁があり、エルフという男と組んで、囚人を利用した人体実験を行っていた。
双六 仁志 (すごろく ひとし)
双六一の弟。女装癖があり甘ロリ系の衣装を着ている、少女のような見た目をした少年。時々兄の一に会うために南波刑務所に遊びに来ていたが、のちに新人看守として着任する。走るのは遅いが、刑務所内の頑丈な壁にぶつかっても傷一つ負わないほどの、非常に頑丈な肉体を持つ。
御十義 翁 (おとぎ おきな)
南波刑務所のドクターをしてる男性で、御十義飾の夫。ナースのアンドロイド「神八」と共に、囚人たちの怪我や病気を治療する。また、ニコの検査や投薬も担当している。妻の飾とはよくケンカしている。
御十義 飾 (おとぎ かざり)
南波刑務所の科学者の女性で、総合科学部長を務めている。御十義翁の妻。南波刑務所の機械や設備の開発などを担当している。また新年会優勝のご褒美として、ニコにゲームコーナーと彼専用のゲーム機を提供した。夫の翁とはよくケンカしている。
リャン
南波刑務所囚人番号2の青年。中国人で、カンフーが得意。よく一人で筋トレなどの鍛練をしている、ストイックな性格。怒りっぽい一面があり、すぐに手が出てしまう。新年大会で対決したロックに敗北して以来、鍛練ばかりしていたが、ロックが提供した石釜料理を食べ、食事の楽しさに目覚めた。
ウパ
南波刑務所囚人番号58の少年。中国人で、体格は小柄だが強力な気功使いでもある。基本的にクールな性格だが、毒舌家で負けず嫌いな一面がある。新年大会でニコと対決して以来、アニメや漫画に出るような技を使う事から彼に気に入られ、「師匠」と呼ばれている。
八鳥半蔵 (はっとり はんぞう)
俳優時代の九十九の、マネージャーをしていた男性。かつて女性監督と共に忍者の里に行き、幼い九十九をスカウトし芸能界に引き入れた。優れた俳優の才能を持つ九十九の事を、「最高の役者」と高く評価している。新年大会のあと、九十九を芸能界に戻すために、面会に南波刑務所を訪れ、彼を説得する。
場所
南波刑務所 (なんばけいむしょ)
本作の主な舞台となる巨大な刑務所。百式百子が看守長を務めている。大きな壁に囲まれ、最強のセキュリティと最強の警備を誇る、日本最大の刑務所。かつては脱獄に成功した囚人がいないといわれていたが、脱獄を得意とするジューゴによってその記録は破られてしまう。また「傷の男」を追って刑務所を転々としていたジューゴにとっては、彼を見つけるという目的を果たすための「最終地点」となっている。