出禁のモグラ

出禁のモグラ

『鬼灯の冷徹』の作者・江口夏実が、同作の連載終了から、約1年3か月後に開始した長編連載。現代日本の都内某所が舞台。「あの世から出禁をくらっている」という、自称仙人の百暗桃弓木(モグラ)が主人公。ひょんなことからモグラと知り合った大学生二人が、不可思議な現象に出合う姿を描いた怪奇譚。幽霊や憑依といったオカルト現象が、シュールなコメディタッチで描かれているのが特徴。講談社「モーニング」2021年19号より連載を開始。

正式名称
出禁のモグラ
ふりがな
できんのもぐら
作者
ジャンル
お化け・妖怪
 
ギャグ・コメディ
レーベル
モーニング KC(講談社)
巻数
既刊6巻
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モグラが現世で受けている刑罰

人間は死んだ後「鬼火」に導かれてあの世へと行く。しかし百暗桃弓木(モグラ)は、魂にあった鬼火を何者かに剝奪されている。つまりモグラは、幽霊になってもあの世に行けないため、この世で生き続けるという「刑」を受けている。モグラが無事あの世に行くには、幽霊が出す鬼火のカス火を溜めてカンテラをいっぱいにし、あの世への灯にしなければならない。一方でモグラは、カンテラに溜めている灯が持つ、病気や怪我(けが)を治す力で体調を維持する必要がある。そんなわけで灯はなかなか溜まらず、モグラはがんじがらめの状態で生き続けている。そもそもモグラは何者なのか。何をして誰から罰を受けているのか。物語が進むにつれ、徐々にモグラの正体が明らかになっていく。

「幽霊」という存在と「お祓い屋」

モグラによると、幽霊というのは死んでいる「人間」あるいは「動物」。不気味だから敵というわけではないという。普通の霊ならモグラでも対処可能で、大声を上げながらカンテラを振り回せば、立ち去っていく。しかし中にはストーカーのような粘着質な性格の霊がいる。また、誰とも話すことができず、一人でずっと恨みなどを抱え続けた結果、拗(こじ)らせて凶悪になる「凶霊」と呼ばれるものもいる。そういう霊を相手にするのが猫附家の当主、藤史郎や梗史郎といった「お祓(はら)い屋」。化け猫憑(つ)きの家系で、化け猫を利用して除霊を行う。コメディ要素が強い本作だが、「凶霊」の描写などはホラー色が強く、人間の持つ「闇」が存分に描かれている。

モグラをめぐる人間関係

モグラはかつて戦地に赴いている。そこで同じ部隊にいた八重子の曽祖父、雄八を、カンテラの灯の力で救っていた。雄八が死んでいれば、八重子はこの世に存在していない。また、その現場には藤史郎の祖父、猫附桜史郎もいた。桜史郎は、化け猫憑きの猫附家の当主が代々短命であるため、一族を助けてくれれば何でもすると約束した。戦後、国に帰ったモグラは桜史郎との約束を実行。そういうわけでモグラは、猫附家の命の恩人となり、藤史郎や梗史郎はモグラの頼みを断れなくなった。モグラは他人を見捨てることが出来ず、戦争で多くの人を助けカンテラの灯がいったん空になったという。ちなみに真木とその弟も、小さい頃モグラと出会っていたことも判明しており、なんの関係もなかったように見えた登場人物たちが、じつは繋(つな)がりを持っていたことがわかる。

登場人物・キャラクター

百暗 桃弓木 (もぐら ももゆき)

あの世から出禁をくらい、この世で生き続けることを強いられている不死身の仙人。外見はボサボサ頭の青年で、青い甚平を着ている。都内某所の「抽斗(ひきだし)通り」にある銭湯を経営する。モグラの願いは早くあの世に逝くことであり、あの世へ導く「灯」とするために、亡者から出る火の玉(魂のカス灯)をカンテラに集めている。ただし、定期的にカンテラに溜めた魂のカス灯を摂取しないと、この世で生活できないため、なかなかカンテラを満たすことができないでいる。霊を祓うことはできないが、「お祓い屋」の猫附家と強力なコネがあり、無理を言える立場にある。

真木 栗顕 (まぎ くりあき)

八目大学文芸学科文学専攻のオタク大学生の男性。小柄でボサボサ頭とメガネ、あごひげが特徴。年齢は21歳で、児童文学ゼミのゼミ長を務めている。心霊系の話が大の苦手だが、百暗桃弓木と出会ったことから、この世のものではないものが見えるようになってしまう。FPS(一人称視点のコンピュータシューティングゲーム)が趣味。バイト先の100円ショップに霊が出て、除霊が行なわれた際、レッサーパンダの霊に取り憑(つ)かれ、一緒に行動するようになる。

桐原 八重子 (きりはら やえこ)

八目大学文芸学科文学専攻の大学生の女性。真木栗顕と同じ児童文学ゼミの友人で、小柄で金髪のボブヘアーが特徴。胸が小さいことにコンプレックスを抱いている。喫茶店でアルバイトをしている。曽祖父の雄八が、戦地でモグラに命を助けられたという縁を持つ。人魚様を鎮めるための奇祭を行う、とある島の出身。レッサーパンダが好きで、グッズをたくさん所有。真木にレッサーパンダの霊が取り憑いたことで、真木を推しとして崇拝する。

猫附 梗史郎 (ねこづく きょうしろう)

高校3年生の男子。ツンツン頭、鋭い目つき、目の下のくまが特徴で、「お祓い屋」の修行中。父は猫附家の当主、猫附藤史郎。ナベシマという名の大きな化け猫に憑かれている。猫じゃらしのような道具を使ってナベシマを操り、猫パンチで霊を祓う。モグラからは「梗ちゃん」と呼ばれている。

猫附 藤史郎 (ねこづく とうしろう)

猫附梗史郎の父。短髪と鋭い目つきが特徴で、化け猫憑きの家系で「お祓い屋」猫附家の当主。真木栗顕が通う八目大学の幻想文学論の教授。小説家でもあり、自身の体験や曽祖父から聞いた実話を幻想小説に仕立てて発表している。イケブクロという名の巨大な白猫を操り除霊する。

書誌情報

出禁のモグラ 6巻 講談社〈モーニング KC〉

第1巻

(2021-09-22発行、 978-4065238813)

第2巻

(2022-03-23発行、 978-4065271520)

第3巻

(2022-09-22発行、 978-4065290415)

第4巻

(2023-03-23発行、 978-4065311233)

第5巻

(2023-08-23発行、 978-4065325438)

第6巻

(2024-01-23発行、 978-4065343548)

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