あらすじ
第1巻
高名な演出家の土方善三が手掛ける舞台『ハムレット』の開演5時間前。土方のもとに、主演を務めるはずだった人気モデルの瓜出中(うりであたる)が、海外で麻薬に手を出し警察に捕まったとの情報がもたらされた。この舞台は、スポンサーに押し付けられた瓜出のためのものであり、彼がいないことには始まらない。さりとて今から中止にする選択もできず、追い詰められた土方は、「#RP(レインボウ・パラキート)」のハッシュタグで現れるという、代役専門役者の七色いんこに瓜出の代役を依頼。そして土方は、呼び出しに応じて現れた七色いんこの演技に、度肝を抜かれることとなる。迎えた開演時、ほとんどの客は瓜出目当てだったために会場はブーイングに包まれるが、舞台に上がった七色いんこは、不満顔の観客たちを一瞬で魅了。同時に自らの本業である窃盗・劇場あらしを成功させた七色いんこは、まずまずの実入りと共に、拍手喝さいの劇場から姿を消す。だが、七色いんこの盗品の中には彼が盗んだ覚えのない、劇団二十面相からの組織への招待状が紛れ込んでいた。(第1話「ハムレット」。ほか、2エピソード収録)
第2巻
劇団二十面相が起こした日本で最初の事件は、七色いんこと千里真里子の活躍により阻まれることとなった。だが事件の余波は大きく、世間は劇団二十面相を騙(かた)る模倣犯・愉快犯により大きな混乱をきたしていた。そんな中、七色いんこと真里子は、成り行きからタッグを組んで劇団二十面相の事件に当たることになった。そんな二人が七色いんこのなじみの純喫茶店「楽園」で打ち合わせをしていると、そこに劇団二十面相の幹部である「劇団員」のリュパンが姿を現す。そして彼は、劇団二十面相の現在の内情を赤裸々に明かしたうえで、画家の黒泡角人(こくほうかくひと)の国宝展から絵画を盗み出すと犯罪予告し、みごとに成功したらデートして欲しいと真里子にせまるのだった。それを聞いた七色いんこは、困惑する真里子をよそに、リュパンの申し出を勝手に快諾してしまう。(第4話「怪盗紳士リュパン・前」。ほか、3エピソード収録)
登場人物・キャラクター
七色いんこ (なないろいんこ)
代役専門の役者を生業とする青年。SNS上で「#RP(レインボウ・パラキート)」のハッシュタグを添えて依頼すれば、どこにでも現れる。特徴的な三角形の眼鏡をかけており、ひょうひょうとした態度で人を食った物言いをするため、何かと人を怒らせてしまう。一方で演技力は素晴らしく、高名だが気難しい演出家の土方善三が、一目見ただけで涙を流すほどで、演劇に興味のない客ですら一瞬で自らの世界に引き込む卓越した才能の持ち主。その正体は天才的な詐欺師にして泥棒で、代役の仕事を受ける際は、報酬はいっさい受け取らないが、代わりに開演中に何が起きても劇団側には無関係を貫くことを条件としている。これは、観客を演劇に夢中にさせて、そのあいだに七色いんこ自身が会場内で盗みを働くことを意味している。その手腕に興味を持った二十面相から劇団二十面相に誘われるが、殺人をいとわない彼のやり方に強く反発。同時に成り行きから、刑事の千里真里子と共に、劇団二十面相の大規模な劇場型窃盗犯罪を一つ阻止することに成功する。その後、警視庁公安部の伴俊作の依頼を受けて、犯罪コンサルタントとして真里子とタッグを組み、劇団二十面相に立ち向かうこととなる。荒事は苦手だとうそぶいているが、演技のために剣術なども一通り嗜んでいるため、高い戦闘能力を持つ。実は独自に過去のとある事件について調べており、公安部に協力するのも、その事件の情報を集めることが本当の目的である。
千里 真里子 (せんり まりこ)
警視庁捜査二課に所属する若き女性刑事。黒髪をショートボブにした、スポーティでスタイル抜群の美女。刑事としてはまだ未熟で、余裕がなく空回りしがちなところはあるが、仕事には全力で情熱をもって取り組んでいる。また、射撃・格闘共に非常に高い能力を誇り、拳銃で100メートル先の的に当てることができるほか、手錠で腕をつながれた状態でも、武器を持った複数人の男を素手で制圧してしまうほど。決め台詞は、「言っとくけどあたし、強いですから」。七色いんこに目の前でまんまと出し抜かれたことを機に彼に執着し、執拗に追い続けていたが、その結果成り行きで、七色いんこと共に劇団二十面相の大規模な劇場型窃盗犯罪を阻止することに成功。その後、警視庁公安部の伴俊作の命を受けて、犯罪コンサルタントとなった七色いんことタッグを組み、劇団二十面相に立ち向かうこととなる。
伴 俊作 (ばん しゅんさく)
警視庁公安部部長を務める男性。劇団二十面相関連事件の捜査の指揮を執っている。体格は小柄だが有無を言わせない迫力があり、その前には千里真里子すらもひるむほど。劇団二十面相が日本での活動を本格的に開始するにあたり、苦渋の決断として七色いんこに犯罪コンサルタントとして捜査に協力するよう依頼する。
間久部 緑郎 (まくべ ろくろう)
ICPO特別捜査官の青年。3年間、専任捜査官として犯罪組織、劇団二十面相を追ってきた。劇団二十面相が来日したことに伴い、対策のために日本に派遣された。対外的には気さくで明朗快活に装っているが、実際は非常に腹黒く、人の弱みを握ったり権力を笠に着たりと、相手に合わせた方法で、自分の意のままにさせることを得意としている。その本質を見抜いた七色いんこには「山師の類だ」と評されており、その能力を疑問視されている。自分のことを「ロック」と呼ばせたがる癖がある。
二十面相 (にじゅうめんそう)
国際的犯罪組織、劇団二十面相で「座長」を務める人物。黒髪でサングラスをかけた中年男性の姿をしているが、それが真の姿かどうかは不明。七色いんこの手腕に興味を持ち、劇団二十面相にスカウトするが、殺人もいとわないその方法に反発され、同時に彼と千里真里子により、日本で最初に仕掛けた大規模な劇場型窃盗犯罪を阻止される。これにより、七色いんことは完全に敵対することとなった。
リュパン
国際的犯罪組織、劇団二十面相の幹部クラスである「劇団員」の一人。眼鏡をかけた金髪のキザでナンパな優男で、七色いんこにはフランス人と見られている。犯行現場で見かけた千里真里子への好意を隠そうとせず、うまく盗めたら自分とデートして欲しいと、わざわざ犯行予告をするために、七色いんこと真里子の前に姿を現した。敵同士ではありながらも、その軽妙なノリから、同じタイプの七色いんこと何かと馬が合う。コードネームどおりの変装の達人で、劇団二十面相に所属している真の目的は、芸術作品の保護・保全のためである。日本オタクで、日舞をベースとしたとらえどころのない体術を得意とする。
土方 善三 (ひじかた ぜんぞう)
高名な舞台演出家の老人。スポンサーに押し付けられた有名モデルの瓜出中(うりであたる)を主役にした『ハムレット』の舞台の演出を手掛けていたが、瓜出が海外で麻薬売買にかかわり拘束されたことで、急きょ代役を七色いんこに依頼した。気難しいところがあり、人を食った態度の七色いんこに対し、当初はその実力を疑問視していたが、彼の演技を一目見ただけで涙を流すほど感動し、演劇界はなぜこれほどの才能を今まで放っておいたのかと、その実力を高く評価する。
目賀 手内 (めが でない)
画家を生業とする老人。リュパンが犯罪予告を出した黒泡角人(こくほうかくひと)の国宝展と同じ会場で、個展を開いていた。その実力は確かだが、かつて贋作で生計を立てていたこともあって日本国内では評判が悪く、まったく注目されていない。だが、そのようなしがらみのない海外では、近年ぐんぐんと評価が高まっている。
集団・組織
劇団二十面相 (げきだんにじゅうめんそう)
二十面相が率いる国際的犯罪組織。ICPO、CIA、MI6、SVRなど各国の機関が血眼になって追っているが、未だ尻尾をつかむに至っていない。世界の主だった国は例外なく被害に遭っており、その被害総額は明らかになったものだけで1000億円をくだらないといわれている。二十面相を「座長」に、幹部クラスが「劇団員」、一般メンバーが「準劇団員」、さらにその下に「研究生」という、その名のとおり劇団のような組織構成で、特に二十面相が仕掛ける窃盗事件は、同時に10種類の盗品搬送経路を用意するなど、非常に大規模で抜け目のないものとなっている。座長の二十面相をはじめ、劇団員のリュパン、五右衛門、黒蜥蜴など、主要メンバーはいずれもコードネームとして怪盗の名を名乗っている。
クレジット
- 原作
ベース
七色いんこ (なないろいんこ)
代役専門の天才役者だが、実は泥棒という主人公・七色いんこの活躍を描いた作品。1話完結で、毎回世界の名作戯曲をモチーフとした物語が展開される。登場する戯曲はシェイクスピア劇のような古典から、近年の作品ま... 関連ページ:七色いんこ