概要・あらすじ
蒸気船咸臨丸を日本人だけで操り、日本人初の太平洋横断を成し遂げた勝海舟。晩年を迎え体調が思わしくない勝は、共に咸臨丸で旅をした中浜万次郎と昔話に花を咲かせている最中、軽い脳溢血で倒れてしまう。勝は夢うつつの中で、咸臨丸での旅や江戸無血開城など、波瀾万丈だった己の人生を振り返るのだった。
登場人物・キャラクター
勝 海舟 (かつ かいしゅう)
江戸幕府の海軍教練機関である幕府軍艦操練所の教授方であり、蒸気軍艦咸臨丸の実質的な艦長として、日本人初の太平洋横断を成し遂げる。気っ風の良い生粋の江戸っ子で、目上の者に対しても歯に衣を着せぬ率直な物言いをする、反骨精神の持ち主だった。歴史上の実在の人物、勝海舟がモデル。
中浜 万次郎 (なかはま まんじろう)
元は土佐の漁師だったが、14歳の時に遭難した際、アメリカの捕鯨船に救助され、そのままアメリカに在住していた男性。アメリカで航海士となった後に帰国し、勝海舟が艦長を務める咸臨丸の太平洋横断航海に、通訳として参加した。年老いてからも勝を慕い、家を訪ね話し相手になっていた。 歴史上の実在の人物、中浜万次郎がモデル。
木村 摂津守 喜毅 (きむら せっつのかみ よしたけ)
軍艦に関する事業の統括を行う軍艦奉行で、蒸気軍艦咸臨丸の提督格を務めた男性。提督格という立場は、咸臨丸の艦長を務めた勝海舟よりも上だったが、船酔いで苛立つ勝をなだめつつ、乗組員をまとめるなど、縁の下の力持ちのような存在だった。歴史上の実在の人物、木村喜毅がモデル。
福沢 諭吉 (ふくざわ ゆきち)
木村摂津守喜毅の従者として、勝海舟が艦長を務める咸臨丸の太平洋横断航海に参加した、若き武士。ひどい船酔いで部屋に引き籠もっていた勝に対し、指揮官ならば皆の先頭に立って号令を下すのが筋だと意見する。短気な勝とはそりが合わず、後年に記した『福翁自伝』で、勝が咸臨丸の旅で船酔いに苦しんでいたことを暴露した。 歴史上の実在の人物、福沢諭吉がモデル。
小野 友五郎 (おの ともごろう)
勝海舟と同じく、江戸幕府が長崎に初めて設けた海軍の教練機関・海軍伝習所の第1期生だった男性。勝と共に咸臨丸の太平洋横断航海に参加し、正確な天文観測技術で咸臨丸の航海を支えた。歴史上の実在の人物、小野友五郎がモデル。
ブルック
アメリカ海軍大尉。蒸気船咸臨丸の提督役木村摂津守喜毅の要請を受け、10人の部下と共に、勝海舟が艦長を務める蒸気軍艦咸臨丸に同乗する。江戸幕府の海軍教練機関・海軍伝習所が出来てからたった5年で、日本人が立派に蒸気船を操れたことに驚きと敬意を表した、気持ちの良い人物で、勝も好感を持っていた。 歴史上の実在の人物、ジョン・ブルックがモデル。
坂本 龍馬 (さかもと りょうま)
勝海舟が、蒸気軍艦咸臨丸で太平洋往復を成し遂げ帰国した数年後に出会った、維新志士。当初坂本龍馬は、開国を唱える勝を殺そうとして自宅を訪ねたのだが、堂々とした態度で、自分の言う事が間違っていたら殺せばいいと言い放った勝に感服し、弟子入りをする。歴史上の実在の人物、坂本龍馬がモデル。
西郷 隆盛 (さいごう たかもり)
1868年に起きた戊辰戦争で、新政府東征大総督府下参謀を務めた旧薩摩藩士。旧幕府陸軍総裁であった勝海舟と交渉し、停戦の合意を果たし、無血で江戸城明け渡しを成功させた。勝は西郷隆盛を話の分かる人物だと高く評価していた。歴史上の実在の人物、西郷隆盛がモデル。
集団・組織
幕府海軍 (ばくふかいぐん)
『勝海舟』に登場する、江戸幕府の機関。先進技術を有し巨大な軍艦で日本近海を訪れる諸外国に対抗するために作られた。そのきっかけは、勝海舟が海軍の創設と軍艦購入を訴えた『海防意見書』ともいわれている。
軍艦操練所 (ぐんかんそうれんじょ)
『勝海舟』に登場する、軍艦の操縦技術を学ぶ教練機関。1857年に東京・築地に設けられ、勝海舟や、長崎の海軍伝習所で勝と同期だった小野友五郎が、教授方を務めていた。
海軍伝習所 (かいぐんでんしゅうじょ)
『勝海舟』に登場する、江戸幕府初の海軍教練機関。1855年に長崎に開設され、幕臣だけでなく、諸国から人材を集め、洋式軍艦の操作術などを学ばせていた。勝海舟と小野友五郎は海軍伝習所の第1期生であり、後に2人とも軍艦操練所の教授方となっている。
イベント・出来事
江戸城無血開城 (えどじょうむけつかいじょう)
『勝海舟』で描かれた、歴史上の出来事。1868年に勃発した戊辰戦争の際、旧幕府軍が戦わずして江戸城を新政府軍に明け渡したことから、江戸城無血開城と呼ばれる。この平和的解決は、旧幕府軍の交渉人に立った勝海舟と、新政府東征大総督府下参謀西郷隆盛の尽力によるものだった。
その他キーワード
咸臨丸 (かんりんまる)
『勝海舟』に登場する、江戸幕府が初めてオランダに注文・購入した蒸気軍艦。1857年に完成し、勝海舟や小野友五郎がいた海軍の教練機関・海軍伝習所の練習艦として活躍する。1860年には、勝が艦長となり、日米修好通商条約調印式に参加する幕府の公式使節団を乗せ、初の太平洋横断に成功する。
軍艦奉行 (ぐんかんぶぎょう)
『勝海舟』に登場する、江戸幕府で用いられていた役職。職務内容は、軍艦の建造、購入、海軍伝習所や軍艦操練所の統括で、勝海舟が蒸気軍艦咸臨丸で太平洋横断をした時点では、木村摂津守喜毅がその役に就いていた。