概要・あらすじ
日本人男性の「僕」は海外での仕事帰りに一人でパリに滞在し、美術館巡りをしようとする。しかし長旅の疲れか風邪をこじらせ寝込んでしまう。何とか回復した「僕」は予定通りルーブル美術館へと出向く。しかし来場客の多さに気圧され、体調不良がぶり返してしまう。人の少ない場所で休息していたところ、「僕」の前に現代離れした格好の謎の女性が現われ、声をかけてくる。
登場人物・キャラクター
僕 (ぼく)
日本人の男性。海外での仕事帰りに一人でパリに滞在し、美術館巡りをする予定だった。風邪をこじらせて寝込んだ後にルーヴル美術館など名所を訪れるが、風邪の後遺症か、美術を巡る様々な幻視体験を味わうことになる。作中に名前は出てこない。
ルーヴル宮の守り人 (るーぶるきゅうのもりびと)
主人公の「僕」の前に姿を現わす謎の女性。現代離れした古めかしい衣装を身にまとっている。「ルーヴル宮の守り人」を自称し、収蔵の美術品を何百年も守り続けていると言う。「僕」を美術史を巡る夢幻の旅へと導く存在。「僕」に名前を問われた際に、ギリシャ文明の彫像で現在ルーヴル美術館所蔵の「サモトラケのニケ」であると答えた。
浅井 忠 (あさい ちゅう)
明治時代に実在した日本人の画家。政府が初めて創設した美術学校で洋画を学ぶ。パリへの留学経験もあり、本場の西洋美術に影響を受けた作品を制作した。主人公の「僕」はフランス人画家コローの絵をルーヴル美術館で眺めながら思索にふけるうち、時空を超えて彼と出会い、会話を交わした。
ゴッホ
19世紀に実在したオランダ人の画家。晩年はパリ郊外のオーヴェル・シュル・オワーズに暮らし、その地で拳銃自殺を遂げた。死後に評価が上がり、現在では世界的に有名な画家。主人公の「僕」はその地を訪れゴッホに思いを馳せるうち、時空を超えて彼と出会う。
ジャック・ジョジャール (じゃっくじょじゃーる)
フランス国立美術館副局長。1939年、ナチスの侵攻からルーヴル美術館の所蔵品を守るため、強い意志をもって美術品の移送を指揮した。彼の行動力によって多くの美術品が略奪・破壊をまぬがれた。主人公の「僕」はルーヴル宮の守り人との会話で彼の存在を知らされる。