あらすじ
スーパー絵師たちとの出会い
将来は絵師となることを夢見る女子高校生・岡倉てんこりんは、いつもと同様に絵の練習もせず、代わりに美術館巡りをして絵の勉強をした気になっていた。そんな彼女の前に、雷神と風神が姿を現す。そして彼らは、スーパー絵師として知られる尾形光琳を召喚。呼び出された尾形光琳はてんこりんに対し、自らの人生をベースに、絵画の腕は才能ではなく、努力で身につけるものだと諭す。後日、同様に召喚された高橋由一に、師について絵画を学ぶように勧められたてんこりんは、自らが通う大井町高校の美術部を訪れ、入部を願い出る。こうして狩野カノンをはじめとした部員たちと知り合ったてんこりんは、その後も雷神が呼び出すスーパー絵師の指導を受けながら、少しずつ変わっていく。
デッサン甲子園
高校美術界で最高峰のコンクールである「デッサン甲子園」の開催が近づく中、スーパー絵師たちのアドバイスを受け、まじめに絵に向き合うようになった岡倉てんこりんは、腕試しにさまざまなコンクールに作品を送っていた。だが、手ごたえを感じたコンクールにことごとく落選したことで自信を失ってしまう。一方、いい絵とは写実的で狂いのない上手な絵であるべきとかたくなに信じていた狩野カノンは、岸田劉生の「麗子微笑」、上村松園の「焔」などの作品に触れると同時に、突如現れた風神に二人を紹介され、彼らがそれぞれの絵を描いた理由を知るとともに、自分の価値観が揺らぎ始めるのを感じていた。やがて迎えたデッサン甲子園の開催当日、カノンは「美術部を辞める」と言い残して部屋に引きこもっている、てんこりんのもとを訪れる。するとてんこりんは、自信を失って落ち込みながらも、好きな絵を一心不乱に描き続けていた。その姿を見たカノンは、自分がコンクールから逃げていたことを自覚し、当初は出るつもりのなかったデッサン甲子園への出場を決意。同時にてんこりんの絵を「なんかすごくいい」と認め、彼女にもデッサン甲子園への参加をうながすのだった。こうして二人は、制限時間が残り二時間を切ったところで、ようやくデッサン甲子園の会場へとたどり着く。
メディアミックス
ネット配信アニメ
2021年3月から、本作『夢をかなえる 爆笑! 日本美術マンガ おしえて北斎!』のネット配信アニメ『おしえて北斎! -THE ANIMATION-』が、ABEMA、U-NEXT、dTVほかで配信された。全10話。監督は作者のいわきりなおとが務めている。キャストは、岡倉てんこりんを和氣あず未、雷神を小西克幸、狩野カノンを若井友希が演じている。
登場人物・キャラクター
岡倉 てんこりん (おかくら てんこりん)
大井町高校に通う1年生の女子。将来は絵師になることを夢見ているが、努力することが嫌いで基本的にやる気がなく、何かと理由を付けては代替行為に逃げて自分を納得させる、意識高い系クズ。だがこれは、幼い頃から母親に彼女の理想とする生き方を押し付けられ、自分の好きなことをあきらめ続けてきたことが大きく起因している。凡人が夢をかなえることを手助けするのが得意な雷神や、歴史上に名を遺したスーパー絵師たちとの出会いを経て、大井町高校の美術部に入部する。狩野カノンをはじめとした部員たちと触れ合ううちに、少しずつ自分の思いと向き合うようになり、ついには母親に自分の本当の気持ちを打ち明け、高校美術界における最高峰のコンクール「デッサン甲子園」での成果によっては、絵画の道に進むことを認めてほしいと願い出る。絵画を描く際の必殺技は、「萌え上がれ小宇宙! いけ右手!」の掛け声とともに繰り出す「炎のペン」。デッサン甲子園では、カノンと長谷川等子の戦いに触発されて雪舟の魂をその身に宿し、同時にこれまで忘れていた、自分が絵師を目指すようになった幼い日のことをすべて思い出す。実は幼い頃、天才デッサン少女としてテレビに出ていたカノンの姿を見て彼女にあこがれたことが、絵画の道を志すきっかけであった。また本来は左利きだが、幼い頃に母親に右利きに矯正された過去がある。
雷神
天界で暮らす神の一人。風神とコンビを組んでいる。尾形光琳の「風神雷神図屏風」に描かれた雷神と姿は同じだが、小柄で圧倒的にコミカル。凡人の夢をかなえるのが得意で、これまで自分たちの絵を描いて名を上げた多くのスーパー絵師たちも、もとは凡人であり、雷神と風神の世話によって一流に育て上げたと自負している。岡倉てんこりんが、凡人なだけでなくまったくやる気がないクズであることを知って動揺しつつも、新たなる挑戦と前向きにとらえて奔走している。風神のサポートを受けながら、歴史上に名を遺したスーパー絵師たちを呼び出しててんこりんに会わせ、彼女にアドバイスを送るとともに少しずつ意識を改革していく。
風神
天界で暮らす神の一人。雷神とコンビを組んでいる。尾形光琳の「風神雷神図屏風」に描かれた風神と姿は同じだが、小柄で圧倒的にコミカル。凡人の夢をかなえるのが得意で、これまで自分たちの絵を描いて名を上げた多くのスーパー絵師たちも、もとは凡人であり、雷神と風神の世話によって一流に育て上げたと自負している。ただし、岡倉てんこりんが凡人なだけでなくまったくやる気がないクズであることを知るや否や、即座に戦線離脱。あくまで雷神のサポート役として、なるべく自分はかかわらないスタンスを取る。のちに狩野カノンの前に現れ、てんこりんに対する雷神と同じように、絵について悩むカノンのためにアドバイスを送るようになる。
狩野 カノン
大井町高校に通う1年生の女子。美術部に所属している。少々高飛車で自他ともに厳しく、近寄りがたい印象を与える。幼い頃からさまざまなコンクールを総なめしてきたデッサンの天才で、日本中に広くその名を知られている存在。だが、中学生になってからはコンクールで勝てなくなり、以降、自分より下手なはずの絵に負けることに納得がいかず、コンクールにはいっさい参加しなくなった。「絵は上手さがすべて」と考えており、これまでの経緯もあって、デッサンやパースが狂っているのに「なんかいい」「味がある」と評価される絵を忌み嫌っている。当初は新入部員として美術部にやって来た、絵の下手な岡倉てんこりんのことを見下していたが、風神や歴史上に名を遺したスーパー絵師たちとの出会いを経て、「なんかいい」絵の魅力に開眼。同時にてんこりんの絵に懸ける情熱に触れ、彼女のことを認めるようになった。中学生以降、めきめき頭角を現してきた長谷川等子とはライバル関係にあるが、どちらかというと等子の方から一方的に突っかかられている傾向がある。高校美術における最高峰のコンクール「デッサン甲子園」では、狩野永徳の魂をその身に宿らせ、同じく長谷川等伯の魂を身に宿らせた等子と「芸術の向こう側」の激しいバトルを繰り広げる。絵画を描く際の必殺技は、「いけ! 左手!」の掛け声とともに、パブロ・ピカソのフルネームを叫びながら繰り出す「神の左手」。
長谷川 等子
高校美術における最高峰のコンクール「デッサン甲子園」で優勝候補と目される、高校1年生の女子。子供の頃はコンクールで毎回、狩野カノンの後塵を拝して悔しい思いをしていたが、中学生になったあたりから立場が逆転。その後、カノンがコンクールに参加しなくなったこともあり、彼女のことを見下してきた。周囲にはカノンを励ましているように装いながら、実際は悪しざまにこき下ろすなど、外面はいいが非常に性格が悪い。デッサン甲子園では、長谷川等伯の魂をその身に宿らせ、同じく狩野永徳の魂を身に宿らせたカノンと「芸術の向こう側」の激しいバトルを繰り広げる。絵画を描く際の必殺技は、「無理無理無理無理無理無理無リィィィ!」の叫びとともに繰り出す「悪魔の右手」。
その他キーワード
デッサン甲子園
高校美術における最高峰のコンクール。会場には石膏像、静物、人物モデルなどさまざまなデッサンモチーフが用意されており、参加者はその中から一つを選んで、6時間の制限時間のあいだにデッサン画を描き上げる。審査員は美術史学者から現代美術家までさまざまなジャンルから六名が選出されており、彼らが「技術力」「感性」「表現力」の三つの審査項目に付けた総合得点によって評価が下される。この得点が最多の者が優勝、上位八名までが入賞となる。なお、デッサン甲子園の模様は、全国にリアルタイムでネット配信されている。