あらすじ
第1巻
高校1年生の反町徹也は、クラスメイトの男子、鳥井カオルになぜか気に入られており、毎日待ち伏せされ、トイレまでもつけ回されている。ついにはホモではないかと噂されるが、当の鳥井は、イケメンの徹也になぜ彼女がいないのか疑問に思っていたのだ。そして鳥井と、鳥井に気がある女子生徒の金沢は徹也の彼女探しに乗り出す。年上の麻美という彼女がいるらしい事を突きとめた二人は、麻美を待ち伏せして真相を究明しようとするが、そこで徹也がふられるシーンに遭遇してしまう。鳥井は、ふられた徹也を励ますためにいっしょにバイクで海まで飛ばすが、これにより、やはり二人は付き合っているという噂が蔓延する事になってしまう。(Part.1「うわさの反町くん」)
土曜日、徹也はバイクで一晩中走っていた。日曜日の朝に家に帰って寝ようとすると、徹也のベッドに嫁にいった姉の木下澪里が勝手に寝ていた。眠いうえに空腹の徹也に、澪里はメシを作れと命令する。結局出前でラーメンを二人分取る事にするが、ちょうど買い物から帰って来た反町の母親が出前のカネを払ったため、ラーメンは反町の母親と澪里の二人に食べられてしまう。仕方なく寝る事にした徹也だったが、反町の母親と澪里が大声で話しながらテレビを見ているために、まったく眠れない。家にいられなくて公園のベンチで寝ていると、散歩中の鳥井と出会う。(Part.2「月曜日の反町くん」)
高校1年生のユーレイは、前髪を長く伸ばして素顔を見えなくしている。また学校ではしゃべらずにおとなしくしているため、みんなから「ユーレイ」と呼ばれ、誰も彼の本名を知らない。しかし、ゲームの腕はピカイチで放課後キャップをかぶって顔を出し、ゲームセンターに行くと彼の時間が始まる。ある日、ゲームを楽しんでいると同じクラスでユーレイがあこがれている栗田京子が現れる。ユーレイのゲームの腕前に関心した京子と初めて言葉を交わし、名前を聞かれたユーレイは自分をユーレイではなく「トシくん」だと名乗る。しかし、京子は同じクラスのユーレイと同一人物だとは気づかなかった。(Part.3「シューティング・スター」)
高校1年生の剣人は、登校途中にゴミ捨て場の段ボール箱からカリカリと音がしているのに気づいた。開けてみると子犬が入っており、仕方なく学校へ子犬を連れていく。クラスで子犬を飼ってくれそうな生徒を探すが、誰もが興味はあるが飼えないと断られる。そんな中、摂津がもらうと言い出すが、摂津は小学生時代に子猫を川に投げ捨てた過去があった。(Part.4「ナマちゃん」)
徹也は学校の廊下で突然、フミタケから「金を出せ」と言われる。貸す金はないと答える徹也だが、フミタケは徹也に1万円をネコババされたと言いだした。フミタケの話によると、中学の卒業式で担任の教師から餞別として1万円もらったはずだという。身に覚えのない徹也はフミタケの言い掛かりを無視するが、フミタケは金に関して執念深い性格だった。中学時代の仲間を集め、執拗に徹也に1万円を要求するフミタケに、鳥井が徹也を助けるために自分の1万円を差し出したのだった。(Part.5「1万円フレンズ」)
反町勲と反町の母が旅行に出かけたため、徹也は一人留守番をする事になった。そこで一人になった徹也の世話をするために、義理の兄の木下智樹が泊まりに来る。徹也は嬉々として家事をこなす智樹に感謝していたものの、智樹は風呂で徹也の背中を流そうとしたり、徹也のベッドに潜り込んできたりと奇行が目立つようになり、徐々に恐怖を覚え始める。また智樹は徹也が餌をやっている野良猫にも、水をかけて追い出してしまう。(Part.6「ザ・ナイト・オブ・スマイリン'ヘッド」)
中学3年の摂津は、母親に反抗し高校へて進学しないと決めていた。しかし、同級生の朱堂が高校へいっしょへ行こうと誘うので、高校へ行く事にした。それを母親に報告すると一瞬喜んだものの、朱堂の名前を出すと途端に不機嫌になってしまう。朱堂はよくない子だから付き合うなと言われて、摂津はますます母親に反発するようになる。(Part.7「2年前のセッちゃん」)
高校の入試を朱堂と共に終えた摂津は、合格発表を明日に控えていた。そこへ朱堂から電話があり、ヒマなら来いと家に誘うと、行くと返事をした朱堂だったが、結局摂津の家に来る事はなかった。翌朝の合格発表にも朱堂は顔を出さず、摂津は一人で合格発表を見てから中学へ登校すると、そこで昨夜事故で朱堂が亡くなった事を知らされる。(Part.8「笑うセッちゃん」)
第2巻
男子ハンドボール部の部長、湧田は、顧問の若月から何の相談もなく廃部を知らされた。若月は女子ハンドボール部ばかり贔屓しており、男子ハンドボール部をわざと廃部にしたのだ。湧田は仕方なく名ばかりの副部長、摂津と共に3年生の高柳や、1年生の反町徹也などの部員を集めて廃部の報告をしていると、そこに暴力的で煩(うるさ)いOBの志水が偶然部室を訪れた。志水は廃部になった事に怒り狂い、湧田を殴りつける。(Part.9「FAREWELL」)
高校1年生の川又一郎はごく普通の少年で、ごく普通にクラスの杉野ヨリに恋をしていた。しかし、ヨリとよく話をしているとなりのクラスの徹也が気になっている。さらに徹也が鳥井カオルと同性愛の関係なのではないかという噂を聞いてからは、徹也に対する気持ちだどんどん盛りあがり、ついには廊下でヨリと話していた徹也に付き合ってくれと告白してしまう。しかしその場にいたヨリが、自分に言われたと勘違いして交際を承諾してしまう。(Part.10「What's matter」)
徹也への思いを断ち切れない一郎は、女に生まれたら徹也と付き合えたのではないかと考えて女装をしてみたところ、意外にも似合ってしまい、そのまま町へ出かけた。ナンパ男に絡まれているところを偶然にも徹也に助けられる。しかし、声を出すと男とだとばれてしまうため筆談によって話をするが、一郎はつい好きだと告白してしまう。(Part.11「What's matter2」)
思わず告白してしまった一郎だったが、なんと徹也が告白に「俺も好きだ」と答えてしまう。一郎は、あくまで勢いで口走っただけであり、ほかに付き合っている人がいるからと必死に断るが、それがまさかヨリだとは言えずにいるうちに、時間は夜7時を過ぎていた。女装したままの姿を家族に見られる訳にいかず、帰宅する事ができなくなった一郎は、思わず徹也に泊めてほしいと申し出るが、徹也が連れて行ったのは、徹也のとなりのヨリの家だった。仕方なく女装のままヨリの家に泊まる事になった一郎だったが、さすがに付き合っている彼女だけあって、ヨリは一郎の正体に気づいてしまう。(Part.12「No matter」)
ある夜、反町勲は昔を懐かしんでいた。30年前に家を建ててから、随分街並みも変わったなどと考えながらコンビニへ出かける。コンビニの前では若者がたむろしていたが、そんな彼らを見ているうちに、夜中にふらっと出かける徹也の事が急に心配になってきた。長女の木下澪里は嫁にいき、長男の反町慎は就職して家を出ている。そのため残る次男の徹也には、家を守ってもらわねばと考え始めるのだった。(Part.13「ホームドラマ希望」)
藤先靖憲は、いつも一人で弁当を食べている間を、いっしょに食べようと屋上へと誘った。屋上は摂津と剣人も弁当を食べる場所であり、自然に彼らと話しながらの食事となったが、間は偏差値の高い狸沼高校に入学したかった事から、同級生をバカにしていた。しかし、藤崎が狸沼高校をやめて、この高校へ来た事を知り、藤崎への見方が変わる。(Part.14「弁当の時間Ⅱ」)
ある日、徹也は偶然麻美に声を掛けられた。徹也が麻美と話していると、突然現れた松岡直子が麻美をお姉ちゃんと呼ぶ。麻美は直子をまったく知らなかったが、直子は徹也の中学時代の同級生の松岡信乃の妹だった。徹也は中学の卒業式で信乃に告白した過去があり、そもそも麻美を好きになったのも、信乃に似ているからだったのだ。直子の話では信乃が家出してしまったらしい。こうして直子に頼まれ、信乃とそっくりな麻美が代わりに松岡家に行く事になる。(Part.15「Noisy Rock'n Saturday Night」)
麻美が信乃に変装して松岡家を訪れた夜に、なんと本物の信乃が帰って来てしまう。二人の信乃に混乱する家族だったが、信乃は徹也達の協力で母親ときちんと話し合い、和解するのだった。(Part.16「Silent Night Sundey」)
第3巻
1年3組の教室で居眠りをしていた反町徹也が目を覚ますと、教室には鳥井カオルしかおらず、外は真っ暗だった。鳥井は「みんな死んでしまった」と言うので窓の外を見ると、暗闇に多数の十字架が建っていた。何かがおかしいと思った徹也は玄関から外へ出ようとするが、ドアを摑んだ瞬間、訳のわからぬイメージが脳に大量に流れ込んで来て、気を失いそうになったところを剣人に助けられた。無理してドアを開けようとするとそうなる、と語る剣人の目線の先には、摂津が倒れていた。とりあえず一度、教室に戻って生き残りを探し始める徹也達だったが、わずかな生存者も、少し目を離したスキに次々殺されていく。(Part.17「Nothing Special Volume1」)
幼稚園児の剣人は毎朝、元気に朝の歌を歌いながら幼稚園バスに乗る。この「朝のあいさつのおうた」の歌詞、「みんなさーんおはようございます」の「みんなさん」とは誰の事なのか、剣人は疑問に思っていた。この疑問をほかの園児にぶつけた事で、幼稚園中を巻き込む騒動となった。「みんな」の事じゃないかという男の子達に対し、剣人はわざわざ「さん」を付けるのだから「ミンナ」という人が別にいるのではないかと言い出した。これに対して女の子達は「みんなさん」ではなく「みなさん」と言っているのだという。対立する園児達だったが、ある園児が「ミンナさん」の絵を描いた事により信憑性が増し、さらには朝焼けと共に目撃したという情報まで飛び出す。この日から剣人は高校生になっても朝焼けの時間に起きて、ミンナさんを見ようと早起きしているのだった。(Part.18「おーかみしょうねん けんと」)
徹也が学校から帰宅すると、家の電話が鳴った。手が離せない母親の代わりに電話に出ると、相手は知らない女性の声でスズキと名乗る。どうやら兄の反町慎あての、男性美容サロンのセールスのようであった。最初は慎といっしょにサロンの説明会に来てくれと誘うスズキであったが、そのうち二人は身の上話などもする仲となり、徹也はスズキを「セールスのお姉さん」と呼び、彼女からの電話を楽しみにするようになった。彼氏と別れたと泣きながら電話をして来たスズキに、直接会おうかと持ち掛ける徹也だったが、彼女はもう仕事もやめて二度と徹也には電話しないと告げ、電話を切るのだった。後日、たまたまフミタケ達と出かけたコンビニで、フミタケが徹也の事を「反町」と呼ぶのを聞いた女性店員が、徹也に声を掛けて来る。(Part.19「お姉さんと電話」)
その日は朝は天気がよかったのに、下校時には土砂降りになった。1年3組の教室の一番後ろのカサ立てには、ずっと前から持ち主不明のカサが置いてある。クラスのみんなはそのカサを狙っていたが、授業が終わった途端、一番後ろの席の摂津がカサを取ってしまった。しかし、授業中から狙っていた女子生徒達の猛反発に合い、結局ジャンケンで決めようという話になる。そこへ担任の先生が現れ、そのカサは昔死んだ女子生徒のものだと語り始める。(Part.20「カサがある」)
ユーレイは学校では、いるのかいないのか解らないほど影の薄い存在だったが、ゲームセンターに行けば生き生きとしていた。そんな彼がある日、ゲームセンターでゲームをしていると、後ろに立った女子高校生三人組がやたらと体をベタベタ触ってくる。そのうちの一人が「この人サイフ持ってないみたい」と発言した事からスリである事が判明。店員に目をつけられた女子高校生のうち二人は、ゲームセンターから出て行ったが、残った一人のレーカは、ユーレイのプレイしている対戦台に乱入して来た。しかもレーカは、それをきっかけにユーレイにゲームを教えてくれと迫って来る。結局、またゲームセンターで会おうと約束し、レーカといい雰囲気になるユーレイだったが、その帰り道で偶然栗田京子に会ってしまう。京子はユーレイを「トシくん」と呼んで親しくしており、彼氏と別れたから電話をしてと電話番号を渡して来た。翌日、またゲームセンターでレーカに会ったユーレイは、レーカに好きだと告白される。しかし、その後ユーレイは、ほかの男とキスをしているレーカを目撃してしまう。(Part.21「たたかう2人 そのいち」)
ほかの男とキスしていたレーカを責めるユーレイだったが、レーカは相手は大嫌いな男なのだと言う。嫌いな男でも体が固まってしまい、まったく逆らえなくなるのだというのだ。最初は信じなかったユーレイだったが、ほかの男といるレーカが固まっているのを見て、声を出して嫌だと言えと励ます。ユーレイの声を聞いたレーカは必死になって叫び、そのうちに相手の男は気色の悪い女だと、レーカをあきらめて去って行く。(Part.22「たたかう2人 そのに」)
鳥井は、家で開かれる誕生会に、徹也や摂津、剣人、藤先靖憲を誘った。鳥井の描いた地図を持って鳥井の家へ向かう四人だったが、地図が間違っているのか、まったく鳥井の家に辿り着かない。そこで通りすがりの女性に道を聞くと、女性も誕生会に呼ばれていた鳥井のいとこである事がわかり、いっしょに行く事になった。しかし、そのいとこも鳥井の家に行くのが10年ぶりで道に迷ってしまう。途中で名前が似ている鳥沢の家に迷いこみ、摂津は画家だという鳥沢の絵のモデルをやる事になった。摂津以外のメンバーはどうにか鳥井の家に辿り着くが、誕生会は鳥井のものではなく、飼い猫のマリリンのものだった。(Part.23「鳥井くんちへ行こう」)
ある日、歩道橋を歩いていた剣人は、髪の長い少女にいきなり「シロウくん」と呼び止められる。人違いだと繰り返す剣人だったが、少女の力は思ったより強く、少女のマンションに連れて行かれてしまう。少女はシロウくんという名前の人形を大事にしており、剣人に見せる。人形は潰れたウサギのぬいぐるみだった。シロウがいなくなったから人形を代わりにしているが、人形は柔らかいからすぐに潰れてしまうと、少女は狂気の宿った目で語る。怖くなった剣人だったが、お茶とお菓子を用意され、つい長居してしまう。友情の印として、小さなクマのような人形を渡される剣人だったが、人形は徐々に大きくなり、逆に剣人は徐々に縮み始めた。(Part.24「剣人 危機一髪」)
第4巻
学校へ行くために駅まで行った摂津だったが、そこで中学時代の友達のクガに声を掛けられた。進学もせず働いてもいないクガは、ヒマなら付き合えと摂津を連れ出す。なんとなく座って話をしていると、クガは長生きしたくないから朱堂のように壮絶に死にたいと語り出す。朱堂の親友だった摂津は、自分に予知能力があればクガを家に呼んだのにと応酬するが、クガは彼女がいて結婚を迫られているので、今はまだ死にたくないと答える。クガと話しているうちに昼の鐘が鳴り響き、摂津はクガと別れ、学校へ向かう。摂津が学校の屋上へ行くと反町徹也や鳥井カオル、剣人が弁当を食べていた。(Part.25「歩くセッちゃん」)
フミタケと待ち合わせをしていた徹也は、突然小さな女の子を抱えて走って来た女性に、少しだけ預かってくれと、子供を手渡された。女の子は驚いて徹也の腕の中で泣き出したが、そこへ若い女性がソフトクリームを差し出し、女の子は泣きやむ。女性は秋子という名前で、徹也を若い父親だと勘違いしたのだ。結局、30分以上してから戻って来た母親と子供、秋子と徹也で喫茶店に入り、なぜそんな事をしたのか、理由を聞く事にする。(Part.26「お姉さんとお母さん」)
鳥井は畑野早苗から、友達になってくれと告白された。摂津や剣人は彼女ができたと囃したてたが、鳥井が好きな金沢は、早苗を怪しいと言い出す。結局、早苗が本当に好きなのは徹也で、徹也に直接言えないので友達の鳥井に近づく作戦であった。実は作戦を立てたのは鱚美で、おとなしい早苗は鱚美に逆らえなかったのだ。(Part.27「立つ鳥井」)
徹也、鳥井、早苗、鱚美の四人は映画を見に出かけていた。しかし何か違和感を感じた鳥井は、早苗を連れて二人だけで走り出す。本当の気持ちが知りたいと言う鳥井に、早苗は徹也が好きだった事を告白し、鳥井に謝罪。鳥井は、なんでもするからと泣く早苗に、もう一度四人で映画を見ようと答えるのだった。(Part.28「あとをにごさず」)
その日は、夜明け前から不気味なほど濃い霧が立ち込めていた。ユーレイが目覚めると、徹也になっていた。そして学校へ行くと、栗田京子にキスしてと迫られるが、京子の中身は川又一郎だった。その日は学校中が誰が誰だか解らない状態になっていたのだ。ユーレイと一郎は互いの中身が解らぬままいい雰囲気になっていく。一方、ユーレイの体の中に入っていたのは学校でも有名なナンパ男で、前髪を上げて顔をきちんと出していたため、ユーレイを見た事のない鱚美にはかっこいいと言われまくる。混乱を極めた一日だったが、霧が晴れると同時に全員が元に戻る。(Part.29「Nothing Special Volume2」)
1年4組の内藤は、同じクラスの富岡マリナが好きだった。マリナの隠し撮り写真を毎日眺め、出せないラブレターを書いては燃やすのを日課にしている。しかし、マリナは1年3組の摂津にあこがれており、摂津と同じクラスの女子生徒に摂津の隠し撮りを頼んでいた。内藤はマリナから手を引くようにと、摂津に脅迫状を書き、名前は「フロムN」とした。すぐに内藤だとばれるが、その手紙のせいで摂津からは「N」と呼ばれるようになる。摂津は内藤がマリナを好きだと知ると、あろう事かマリナに直接、内藤と付き合ってやれと言いに行く。摂津に頼まれて内藤との付き合いを承諾したマリナだったが、本当は内藤が好きな訳ではなく、しかも隠し撮りをしていた事を知って内藤に冷たく当たる。(Part.30「フロムN(イチ)」)
マリナに隠し撮りを気持ち悪いと言われた内藤は、マリナの写真をすべて庭で焼いた。自分ではマリナを幸せにできないと思った内藤は、摂津にマリナとデートしてくれるように頼むが、すげなく断られる。翌日からマリナは暗く沈み込み元気がなく、なんとか元気づけてやりたいが、自分に何ができるのかと考えあぐねた内藤は、ある決意をする。それはマリナにきちんと告白して、きちんとふられる事だった。(Part.31「フロムN(ニ)」)
徹也の家にはエサをもらいに来る野良猫がいる。徹夜は勝手口に野良猫のための残飯をいつも置いていたが、最近猫が来ないのを心配していた。反町の母に猫が来なかったかを尋ねると、動物嫌いの母親は死んだのだろうと答える。徹也は学校で猫を飼っている鳥井に、いなくなった猫は戻って来るのかと尋ねるが、摂津も死んだのだろうと答えた事で落ち込む。その頃、反町の母は、近所の猫好きのおばあさんが、徹也が面倒を見ていた猫に似た猫を連れている姿を見掛けていた。(Part.32「期待」)
第5巻
摂津が反町徹也、鳥井カオル、剣人と下校していたところ、突然別の学校の女子生徒である八神律が現れた。中学卒業以来会っていなかった律と、摂津は二度とかかわりたくないと思っていたが、律は無視する摂津ではなく徹也達に近づき、さらには摂津の母親にも会いに来る。摂津の母親は家柄がよく美人な律を気に入っており、「リッちゃん」と呼ぶくらい仲がよかった。なるべくかかわりたくない摂津だったが、律は徹也と二人きりで会うようになったりと、どんどん外堀が埋められていく。(Part.33「セッちゃんとリッちゃん」)
律は再び摂津を待ち伏せしていた。仕方なく律と話をする摂津だったが、律は自分が婚約した事を報告してきた。一方、鳥井と藤先靖憲は、摂津と律と同じ中学出身の麻美から、律が中学時代に妊娠して堕胎した事実を知る。その話を聞いた鳥井達は徹也と剣人も呼び出し、秘密を共有する。徹也は麻美の軽率な噓だと思いつつ麻美を問い詰めるが、麻美は本当だと断言する。(Part.34「ひみつのリッちゃん」)
律は摂津の子供がほしいと言い出した。律は黙っていれば解らないから、そのまま婚約者と結婚すると言う。摂津が早く了承すればするほど、厄介払いができるのだと律は言い、摂津は思い悩む。徹也は摂津に律と一体何が起こっているのか問い質し、摂津は律に子供がほしいと言われている事を告白する。徹也はなぜ律が婚約者を裏切るような真似をするのかがわからなかった。(Part.35「リッちゃんのキボウ」)
徹也は子供がほしいほど摂津が好きなら、婚約者との結婚をやめるべきだと律に告げる。しかし律は、婚約者は子供の頃から仲のいい従兄なので結婚はしたいと答える。徹也は子供の時から好きなのに、なぜ中学時代に興味本位で子供を作るような真似をしたのかとさらに問うと、律は興味本位などではなく、真剣に当時の彼氏を愛していたと言う。どうも律の考えや行動が理解できず、徹也は再び摂津に律の婚約者について尋ねると、律は10歳の誕生日にその従兄に犯されたため、親戚が無理やりまとめた縁談だと知る。徹也はそんな男はダメだと言うが、摂津は律の決めた事だからと取り合わない。(Part.36「あおざめるセッちゃん」)
律との思い出は同時に朱堂の死を思い出させ、摂津は学校へ行かなくなった。心配した徹也や剣人が彼の家を尋ねると、摂津はベッドに座り込んだままだった。徹也は律を心配し、律は摂津に電話を掛け続ける。遂に摂津は律と話をつけるべく、真夜中の公園に律を呼び出した。(Part.37「怒りのリッちゃん」)
真夜中の公園で、摂津と律は対峙していた。摂津はナイフを出すと、自分の胸に突きつける。摂津は律が子供がほしいという要求をあきらめればこのまま帰るが、あきらめないのなら死ぬと告げる。摂津が死ねば律の望みは永久に叶わない。二人はもみ合い、律は泣きながら摂津のナイフを取り上げた。そして律は自分がどれほど真剣に摂津を好きだったかを語り始める。中学時代、朱堂が死んだ事でショックを受けたのは律も同様だった。突然人が一人いなくなる恐怖に耐えかねて、摂津と子供を作れば一人減った分、一人増えるのだと安易に考えたのだ。結局、律は摂津の子供を作る事をあきらめたが、従兄との縁談も断ると約束する。病院で手当てを受けた摂津は迎えに来た徹也に、律が中学時代に真剣に好きで子供まで作った彼氏は自分だったと告白。そして摂津は翌日、久しぶりに学校へ行くのだった。(Part.38「リッちゃんとセッちゃん」)
鳥井が目を覚ますと、その日はいい天気だったので散歩に行く事にした。途中、アドベンチャーゲーム風に選択肢が現れ、そのあとの展開が変化していく。ちなみに、選択を間違えるとすぐにゲームオーバーになってしまう。(Part.39「Nothing Special Volume3」)
第6巻
その夜、剣人は体調が悪く、熱を計ると38度を超えていた。一向に治る様子がなく、剣人は救急車を呼ぼうと電話を掛けるものの、電話の途中で倒れてしまった。しばらくして家のチャイムで目覚めると、ドアの前には摂津が立っていた。熱に浮かされた剣人は摂津に電話を掛けていたのである。摂津の看病でようやく眠りについた剣人は、高校の入学式で摂津と再会した時の夢を見る。(Part.40「アップ アンド ダウン」)
1年3組の女子生徒達は恋愛話で盛り上がっていた。吉川りえは間と何度もデートしている事を話題にされるが、デートというほどではないと否定する。栗田京子はゲームセンターで知り合ったトシくん(実際は同じクラスのユーレイ)に自分の電話番号を渡したが、まだ連絡がないと友達にこぼす。さらに反町徹也と鳥井カオルが話しているのを見て、そういえばあの二人の怪しい噂はどうなったのかと話題が尽きない。そこに金沢がの二人はできていると話に割り込む。一方、1年2組の杉野ヨリにまで徹也と鳥井の噂を確認する者が現れ、ヨリは彼氏の川又一郎が徹也を好きな事を知っているため、徹也は男にもてると発言する。3組では男同士のカップルの話が加速し、摂津は性格が悪すぎるから女に敬遠され、剣人と付き合っていると、女子達の話は無限に広がっていく。(Part.41「1-3 ほうむRUMOR」)
1年3組のユーレイは、京子に自分の正体をバラすかどうか悩んでいた。トシくんと同一人物だったとわかると、京子に嫌われるのではないかという思いがあるからだった。だが、逆に好かれるパターンもあるかも知れないとも考えていた。ユーレイは、どちらも自分なのに、自分でも区別するようになってしまった、きっかけとなった中学時代を回想する。(Part.42「なやみごと」)
ユーレイは高校に入れば生活が変わると思っていたが、何も変わらない。そう思った矢先に京子に出会い、学校へ行くのが楽しみになった。今からでもすぐに「トシくん」に変わりたいが、ユーレイと同一人物だと知られると、やはりダメだとも思う。結局何もできぬまま、ゲームセンターに行くと、レーカが彼氏を連れて現れた。京子はおろかレーカまで失ってしまったユーレイは、落ち込みつつも家でゲームをしていた。そして、ゲームの事をもっと知りたくなったユーレイは、夜中にゲームセンターに向かった。同じ頃、一郎は女装用のかつらを眺めて徹也の事を思い浮かべていた。ヨリが好きなのに、女装をしている時の自分も忘れられなくなった一郎は、女装をして外に出てみる。(Part.43「ムーンリット・ナイト」)
ゲームセンターの前で、ユーレイと一郎は出会ったが、慣れないヒールを履いていた一郎が転んでしまい、その拍子にかつらが取れてしまった。驚いた一郎は、女装していた事がバレてしまうと慌てて逃げ出すが、靴まで脱げてしまう。ユーレイは落としたかつらと靴を拾って一郎を追いかける。行き止まりの路地まで追いつめられ、仕方なく立ち止まった一郎の前にかつらと靴を置き、ユーレイはそのまま帰ろうとするが、そこにはなぜか京子が立っていた。そして京子は、女装した一郎をユーレイの彼女と勘違いする。ユーレイは一郎と関係がない事を証言させようとするが、しゃべると声で男とバレてしまうため、一郎は無言のまま逃げ出す。このままでは京子に誤解されたままになってしまうと、ユーレイは逃げる一郎を再び追いかける。(Part.44「デイブレイク」)
一晩中オートバイで走っていた徹也は、朝になって家に戻り、そのまま眠りについた。夜中にゲームセンターに行ったため、寝不足のまま登校したユーレイは、昨日出会った不思議な少女(実際は一郎)と、京子の事を考えていた。京子は、家の近くでトシくん(実際はユーレイ)を見たという話をほかの女生徒にしており、ユーレイは知らぬあいだにトシくんが人気者になっていた事に複雑な気持ちになる。一方、藤先は律とのお茶会を計画したと摂津に声を掛け、勝手にメンバーに入れていた。その頃、昼近くなってようやく起きた徹也は反町の母親に弁当を渡され、学校へ向かうのだった。(Part.45「…アンダー・ザ・サン」)
幼い剣人は祖父の葬式に参列していた。棺桶の中を覗いた剣人は、祖父の死体が笑ったような気がして、驚いて火葬場を飛び出す。そして、建物の裏手で職員の男性がギターを弾いているのを見つけ、彼にせがんで一曲弾いてもらうのだった。その後、高校生になった剣人は、部員でもないのに頻繁にギタークラブを訪れては、友人がギターを弾く姿を眺めていた。(特別読み切り①「ロック・ザ・火葬場」)
1年3組に藤先が転校して来た。モヒカンで、無口な転校生を、みんな遠巻きにしていたが、剣人はいっしょに弁当を食べようと話し掛けた。弁当を食べながら、藤先は自分がいじめられっ子だった事、この髪型にしてからはいじめられなくなった事を話す。しかし、藤先は弁当を食べ終わると、ぴたりとしゃべるのをやめて去って行った。担任の先生にその事を報告すると、先生もほとんどどしゃべらない藤先を気にしており、翌日から先生もいっしょに弁当を食べる事になる。そうこうするうちに、弁当の時間だけ自分の事を話す藤先に興味を持ったクラスメイト達が、屋上に集まるようになり、剣人と摂津は教室で弁当を食べる事にした。すると藤先も教室に戻って来て、剣人と摂津にいっしょに食べてもいいかと尋ねるのだった。(特別読み切り②「弁当の時間」)
登場人物・キャラクター
反町 徹也 (そりまち てつや)
高校生の男子。1年3組に所属している。髪型はソフトリーゼントにしており、趣味はオートバイ。クラスメイトからは男女問わずに人気があるが、寡黙な性格な事から彼女はいない。また、鳥井カオルがあまりにも反町徹也に懐いているため、実は同性愛者なのではないかと噂を立てられている。普段は同じクラスの鳥井、摂津、剣人といっしょに行動する事が多い。 1年2組の杉野ヨリとは家が近所で幼なじみ。摂津に頼まれて、形だけハンドボール部に所属している。すでにふられているが、麻美という女性に思いを寄せている。同居する家族は反町勲、反町の母の二人。別居している家族に、結婚した姉の木下澪里、義兄の木下智樹、すでに就職して独立した兄の反町慎がいる。
鳥井 カオル (とりい かおる)
高校生の男子。1年3組に所属している。髪はストレートで真ん中分け、少し細身の体型をしている。いつも目を見開き、ニコニコとした表情を浮かべている。クラスメイトの反町徹也を気に入っており、いつも徹也より早く登校し、挨拶する事を日課にしている。
摂津 (せっつ)
高校生の男子。1年3組に所属している。留年しているため、ほかのクラスメイトよりも1歳年上。髪を赤っぽく染め、いつも眠そうに、目を半分しか開けておらず、覇気がない。かつて中学生の時のクラスメイトの朱堂といっしょに同じ高校を受験したが、合格発表前に朱堂を交通事故で亡くした過去がある。朱堂が事故死した夜、摂津はたまたま事故現場近くのコンビニで救急車を見かけていた事もあり、事故の事実を知ってからは、コンビニが苦手になった。 当時はクラスメイトだった八神律と付き合っていたが、中学を卒業してからは会わなくなっていた。だがある日、反町徹也、鳥居カオル、剣人との下校途中で偶然に律と再会し、律との過去と向き合う事になる。 ハンドボール部に所属しており、2年生で部長を務める湧田と親しい。
剣人 (けんと)
高校生の男子。1年3組に所属している。つねに左目に眼帯をしている。年上の無愛想な摂津にも物おじする事なく話し掛けるなど、明るい性格。普段は同じクラスの反町徹也、鳥井カオル、摂津といっしょに行動する事が多い。幼稚園時代、朝の挨拶の歌の「みなさんおはようございます」を「ミンナさんおはようございます」だと思っており、「ミンナさん」とはどんな人なのか、という論争を巻き起こすなど、どこか突拍子もない行動をするところがある。 この論争時、ミンナさんは朝焼けと共に現れると言う説が出たうえ、ほかの男の子が「ミンナさん」を目撃したと証言した事から、剣人は高校生になった今でも、「ミンナさん」を見るために朝の5時に起きる習慣がついている。 なお、眼帯は幼稚園の時からしているが、実際はキャラクター付けのためのものにすぎない。だが、作者の有川祐はそれでは夢がないという理由で、「実は重大はヒミツが隠されている」と語っており、コミックス第2巻の巻末では、読者からその「ヒミツ」のアイディアも募集していた。
麻実 (あさみ)
年若い女性。学校には行かずに、アルバイトをして遊びまわっている。派手な美人で、男友達が多く、反町徹也の顔を気に入って、何かとちょっかいをかけている。しかし、彼のまじめな性格は、付き合う相手として物足りなさを感じ、交際までは考えていない。摂津、朱堂、八神律とは同じ中学の出身で、三人の過去について詳しい。 特に律には中絶費用を貸した事があり、その経緯についても知っている。徹也と中学時代のクラスメイトだった松岡信乃に似ている。
金沢 (かなざわ)
高校生の女子。1年3組に所属している。ストレートの黒髪をボブカットにしている。中肉中背で、ごくごく平均的な女子高校生。鳥井カオルの事が好きだが、鳥井は反町徹也に夢中なので、面白くなく思っている。徹也に彼女がいれば、鳥井も徹也から離れるのではないかと考え、鳥井と徹也の彼女探しを始める。
ユーレイ
高校生の男子。1年3組に所属している。長い前髪で顔を半分隠しているため、ユーレイとあだ名されている。ゲーム好きで、いつか彼女といっしょに対戦をするのが夢で、同じクラスの栗田京子にずっとあこがれている。ある日、ゲームセンターに京子が現れるが、ユーレイはゲームセンターに行く時はキャップをかぶって顔を出しているため、京子には別人だと思われ、「トシくん」と名乗った。 それ以来「ゲームのうまいトシくん」として京子といい雰囲気になるが、京子が別れた彼氏とよりを戻した事で失恋する。その後、ゲーム好きのレーカと親しくなるが、レーカがほかの男とキスをしているのを見て、からかわれたのだと誤解してしまう。前髪を伸ばして顔を隠しているのは、中学時代にいじめを受けたせいで、学校に行かずにゲームばかりするようになった過去がある。 実は素顔はイケメン。
栗田 京子 (くりた きょうこ)
高校生の女子。1年3組に所属している。胸くらいまでのふんわりウェーブしたロングヘアで、目が大きく、かわいらしい顔立ち。私服も女の子らしいスカートスタイルが多く、髪はポニーテールにしたり、サイドの髪をゴムやバレッタで留めたりしてオシャレを楽しんでいる。彼氏とよくゲームセンターに行っていたが、彼氏と別れたあとも一人でゲームセンターに行って、ゲームのうまい「トシくん」ことユーレイとなかよくなる。 栗田京子は最後までトシくんとユーレイが同じ人物とは気づかなかった。
藤先 靖憲 (ふじさき やすのり)
高校生の男子。1年3組に所属している。モヒカンに大きめのメガネをかけている。摂津には「横ハゲ」と呼ばれている。転校生だが、すぐにクラスメイト達となじんだ。誘っていもいないのに、勝手に摂津や剣人達といっしょに昼食を食べ、いつも一人でいる間も強引に昼飯に誘うなど、きままなところがある。非常に成績がよく、進学校の狸沼高校に合格したが、親の言いなりになるのが嫌で、反町達の高校に転校した。 中学の時いじめに遭っていて、極端な髪型にしているのは、高校進学を機に、いじめられないようにするため牽制の意味があった。
間 (あいだ)
高校生の男子。1年3組に所属している。中肉中背で、眉毛が太く、厳しい顔つきをしている。進学校の狸沼高校に落ちたのがコンプレックスで、今の学校やクラスメイトの事を見下している。毎日一人で弁当を食べていたが、藤崎靖憲にいっしょに食べようと誘われ、屋上で食べるようになった。屋上では摂津、剣人もいっしょだったが、レベルが低い連中といっしょなのが嫌で仕方がなかった。 しかし、藤崎が実は狸沼高校に合格していた事を知り、驚く。ある日、天気のいい屋上で柵にのぼって景色を眺めていたら、剣人に、自殺しようとしていると勘違いされる。騒ぎが大きくなって生徒がたくさん集まる中、同じクラスの吉川りえが泣き出してしまう。もともと自殺するつもりではなかったので、柵の内側へ戻って慰めているうちに、いい雰囲気になる。
川又 一郎 (かわまた いちろう)
高校生の男子。1年3組に所属している。背は低いが、顔立ちは整っている。友達や同級生からは「マタイチロー」と呼ばれている。クラスメイトの杉野ヨリが好きだったが、反町徹也が鳥井カオルと噂を立てられてから、妙に徹也が気になる存在となる。徹也とヨリが話している時に、徹也に付き合ってくれと告白するが、そばにいたヨリにOKされてしまう。 もともとヨリが好きだったので、ヨリと付き合うが、徹也が気になるあまり女装をして出かけ、ナンパされて困っているところを徹也に助けられた。声を出すと男とバレるので、徹也と筆談するが、その際に名前を聞かれて、咄嗟に川又一郎の母親の名前である「ひとみ」と名乗った。交際を始めてからはヨリに「イチローくん」と呼ばれる。
杉野 ヨリ
高校生の女子。1年2組に所属している。ポニーテールの髪型で、目が大きく、はっきりした顔立ちの美人。さっぱりとした快活な性格の持ち主。1年3組の反町徹也とは幼なじみで、クラスは違うが、廊下などでよくしゃべる仲。川又一郎が徹也に告白した際、自分が告白されたものだと勘違いしてOKする。
フミタケ
高校生の男子。1年1組に所属している。やせた体型で、ぼさぼさの黒髪の後ろだけを少し伸ばして、しっぽのように結んでいる。目は大きくてやや垂れ目。制服は着崩していて、ワイシャツやネクタイは身につけず、Tシャツに上着だけを羽織っている。不良っぽく、お金にうるさい。反町徹也と同じ中学で、徹也を含め、今でも同じ中学出身の友達とよく遊んでいる。
木下 澪里 (きのした みおり)
胸が大きく、迫力のある美人。黒髪のショートカットの髪型で、性格はきつく、攻撃的。旧姓は反町で、木下智樹と結婚して木下性になった。既に実家を出ているが、反町の母とは仲がよく、頻繁に実家を訪れては、弟の反町徹也をからかっている。家族は、夫の智樹、父親の反町勲と母親の反町の母、弟の反町慎と徹也がいる。
反町 慎 (そりまち しん)
背が高くスタイルのいい若い男性。家を出てマンションで一人、羽振りのいい暮らしをしているが、何の仕事をしているかは不明。昔から謎多き人物で、父親の反町勲にも「隠し事が多い」と言われている。家族は、父親の勲と母親の反町の母、姉の木下澪里と弟の反町徹也がいる。
反町の母 (そりまちのはは)
ちりちりのパーマに小太りの中年女性。化粧っけはなく、エプロン姿のまま買い物に出かける。長女の木下澪里とは今も仲がよく、澪里が家に来るのを心待ちにしている。動物が嫌いだったが、徹也がかわいがっていた野良猫がいなくなったのを気にして、近所の野良猫を面倒みている女性から、似た猫をもらってきた。
反町 勲
眼鏡をかけたバーコードハゲの中年男性。やや中年太り。長女の木下澪里は嫁に行き、長男の反町慎は就職して家を出て行ったため、将来は次男の反町徹也に嫁を取らせ、いっしょに暮らせないかと期待している。徹也に彼女がいない様子なので、年頃になったら見合いさせようとも考えている。
木下 智樹 (きのした ともき)
人畜無害な雰囲気の若い男性。小柄でぽっちゃりしていて、いつもニコニコしている。眼鏡をかけている。一見、地味で優しそうに見えるが、妻の木下澪里の弟、反町徹也に異常に執着している。炊事掃除が得意で、徹也の両親が旅行のあいだは、反町家に寝泊まりしている。徹也のベッドに入ったり、風呂にいっしょに入ろうとしたりと行動が怪しい。 また徹也がいつも餌をやっている野良猫には、水をかけていじめている。
朱堂 (しゅどう)
摂津が中学時代まで親友だった男子。お調子者で成績が悪く、進学は無理だと言われていたが、高校受験を目指していた。摂津とは小学校、中学校が同じで、面倒だから進学しないという摂津に、同じ高校へ行こうと説得していた。高校の合格発表の前日に、摂津の家に遊びに行く途中で、トラックに撥ねられて死亡した。
湧田 (ゆうだ)
高校2年生の男子。中肉中背でまじめな性格。廃部が決まったハンドボール部の部長となり、部を立て直そうとしている。摂津が留年する前からの友人で、形だけだが、摂津を副部長にしている。廃部の報告をするために3年生の高柳や、1年生の摂津や反町徹也も交えて部室に集まったところ、卒業生の志水に、廃部の責任を取れと、竹刀で殴られてしまう。
高柳
高校3年生の男子。身長180センチで、精悍な雰囲気を漂わせている。バスケットボール部と、形だけハンドボール部に所属している。1年生の時からバスケットボール部に入るつもりだったが、当時3年生の志水に無理やりハンドボール部に入部させられ、しごかれた経緯がある。志水が卒業してからはバスケットボールに専念してキャプテンを務めている。 1年時はハンドボール部で一番小さくて、志水に最も殴られていた。志水が廃部を知って、部長の湧田を殴るのを止めに入る。
志水 (しみず)
ハンドボール部の卒業生。ひょろっとした痩せ形で、三白眼で目つきが悪い。作業着のような服を身につけている。既に働いているが、年に何度も母校のハンドボール部を訪れる。暴力的な性格で、ハンドボール部の後輩を竹刀で殴るのが趣味。在学時代は後輩を脅してハンドボール部に無理やり入部させ、ハンドボール部を存続させていた。ハンドボール部が廃部になった事を知り、現キャプテンである湧田を竹刀で打ちすえるが、高柳に止められる。
吉川 りえ (よしかわ りえ)
高校生の女子。1年3組に所属している。ショートカットの髪型で丸顔、地味な雰囲気の少女。間が屋上から飛び降りて自殺すると聞いて、ショックで泣き出してしまう。自殺をやめた間といっしょにお弁当を食べて、なんとなくいい雰囲気になる。この事件をきっかけに間とデートをする仲になるが、自分のような地味な女は間にふさわしくないのではないかと考えている。
畑野 早苗 (はたの さなえ)
高校生の女子。1年4組に所属している。三つ編みのおさげ髪の、地味なおとなしい感じの女の子。眼鏡をかけている。反町徹也に片思いしており、友達の鱚美に助言され、徹也と仲のいい鳥井カオルと友達になって、徹也に近づく計画を実行。しかし、金沢には、実は鳥井と親しくなりたいわけではない事を見破られ、嫌われてしまう。 引っ込み思案な性格のため、闊達な性格の鱚美の言いなりになっているところがある。
鱚美 (きすみ)
高校生の女子。1年4組に所属している。細身で背が高く、吊り目で、さっぱりした雰囲気の少女。闊達な性格で、おとなしい畑野早苗をつねにリードしている。早苗が反町徹也を好きだと知ると、徹也と親しい鳥井カオルとまず友達になって、徹也に近づく計画を立てる。
富岡 マリナ
高校生の女子。1年4組に所属している。スタイルがよく、眉が太く、目がぱっちりしている。黒髪にヘアバンドをした清楚な雰囲気の少女。中学時代のあこがれの先輩だった摂津が、高校で留年して同じ学年になった事に運命を感じている。3組の友人に頼んで摂津の写真を盗み撮りしてもらっているが、それを同じクラスの内藤に知られ、摂津への片思いがばれてしまう。
内藤 (ないとう)
高校生の男子。1年4組に所属している。小柄で、暗く地味な雰囲気の少年で、眼鏡をかけている。中学時代からあこがれていた富岡マリナと高校で同じクラスになり、さらにはとなりの席になって舞い上がっている。マリナが好き過ぎるあまり、中学時代から盗撮し、写真をコレクションしている。また毎日マリナ宛のラブレターを書いては燃やしている。 マリナが摂津に片思いしている事を知り、摂津に脅迫状を出すが、その際に「フロムN」と書いた事から、摂津に「N」と呼ばれるようになる。
八神 律 (やがみ りつ)
高校2年生の女子。黒髪ボブのストレートヘアで、非常に目立つ美人。中学時代は真っ直ぐのロングヘアに、前髪は眉毛の上で切りそろえていた。摂津と同じ中学出身で、元彼女だが、高校が違うために中学卒業以来一度も会っていなかった。摂津の学校の近くで、反町徹也、鳥井カオル、剣人といっしょにいた摂津と偶然に再会した。 摂津とは誕生日と血液型が同じ事で意気投合した。中2の時に、付き合っていた男性との子供を中絶した経験がある。家は資産家だが、急に大金を下ろすとばれてしまうので、麻美に手術代金を借りたため、麻美は事情を知っている。実は10歳の誕生日に、当時20歳だった従兄に公園で犯されたため、家族に強引に婚約させられた。摂津の母親や麻美からは「リッちゃん」と呼ばれている。
秋子 (あきこ)
すらっとした大人っぽい雰囲気の女性。きちんとメイクも決め、少し派手な洋服を身に着けている。離婚歴があり、娘は旦那に連れていかれてしまったので、小さな女の子が気になる。街角で小さな女の子を抱えて困っている反町徹也に声を掛け、その女の子の母親が見つかるように協力した。友人が木下澪里だった縁で、のちに徹也と再会する。
若月 (わかつき)
高校の教諭を務めている女性。長いウェーブのかかった黒髪に、太い眉と少し厚めの唇が特徴の美人。女子ハンドボール部と男子ハンドボール部の顧問教諭だが、強い女子ハンドボール部は贔屓しているが、成り行きで引き受けた男子ハンドボール部を廃部にしようとしている。強引な性格で、職員会議で廃部を訴え、認められる。男子ハンドボール部の部長を務めている湧田には何の相談もなく廃部を決め、あきらめるように告げた。
先生 (せんせい)
高校の教諭を務めている男性。1年3組の担任。M字ハゲに小太りの中年で、眼鏡をかけている。剣人が捨て犬を拾って来た時も、もっと大きな箱に入れて授業の邪魔にならないようにしろ言うなど、生徒に理解がある。しかし、大雨の日に忘れ物の傘をめぐって摂津や女生徒達が言い争いになった時は、その傘は昔死んだ女生徒のもので呪われていると噓をつき、まんまと自分のものにしたりと、調子のいいところもある。
松岡 直子 (まつおか なおこ)
女子中学生。セーラー服にショートカットの髪型で、清潔感のある少女。家出した姉の松岡信乃と間違えて、麻美を「お姉ちゃん」と呼びとめる。麻美といっしょにいた反町徹也が信乃の同級生だったため、事情を話し、麻美に変装させて家族を安心させようとする。
松岡 信乃 (まつおか しの)
女子高校生。中学時代は気まじめで、学級委員も務めていたが、男を作って家出した。外見は麻美によく似ている。妹の松岡直子いわく、カタブツで融通がきかない頑固な性格。直子が反町徹也といっしょにいた麻美を信乃と間違えた事により、麻美が信乃に変装する事になる。中学の卒業式で同級生の徹也に告白されて、驚いて逃げた過去がある。
スズキ
男性専用美容サロンのセールス電話の仕事をしている女性。肩ほどの明るめのシャギーの入った髪型で、優しい雰囲気のかわいらしい人物。年齢は28歳だが、声はもっと若く感じる。セールスの電話を掛けた際には「スズキ」と名乗る。社会人の反町慎と間違えて、彼の弟の反町徹也を勧誘してしまうが、徹也がよく話を聞いてくれるので、仕事とは関係ない電話を掛けるようになる。 彼氏にふられ、真夜中の2時に泣きながら電話して、徹也を心配させる。翌日、徹也に最後の電話を掛け、セールスの仕事もやめて電話も掛けないと宣言する。仕事をやめてコンビニで働いている時に、偶然店に入って来てフミタケに「反町」と呼ばれている徹也を見つけて話し掛けるが、徹也にはスズキと気づいてもらえなかった。 コンビニの同僚からは「イトウさん」と呼ばれていたが、本名は不明。徹也には「セールスのお姉さん」と呼ばれていた。
レーカ
女子高校生。綺麗な黒髪ロングヘアの美少女。女友達といっしょに、ゲームセンターでゲーマーから財布をすっている。ユーレイの財布をすろうとしたのをきっかけに、ユーレイに惹かれていき、いっしょにゲームをするようになる。ユーレイを好きになって友達になるが、好きでもない男でも無理やりキスされると体が固まって動けなくなる体質で、ユーレイにほかの男にキスされている姿を見られて、誤解されてしまう。
クガ
16歳の少年。目は吊り目で小さく、歯はギザギザしている。白に近い明るい長めの金髪で、肩が落ちた緩い服装を身につけ、全体的にだらしない雰囲気を漂わせている。高校には行かず、働きもしないでヒマを持て余している。中学で同級生だった摂津とは今も親しい。朱堂の事件も知っていて、長生きするより、ああいう壮絶な死を迎えたいと思っている。 19歳の彼女がいて、結婚や子供話をされていて面倒だと感じているが、彼女とは別れたくないと思っている。