あらすじ
第1巻
高校1年生の来堂は、となりの席の阿波連れいなに話し掛けても返事がなく、嫌われているのかと距離を感じていた。そんなある日、来堂はれいなに教科書を忘れたので貸してほしいと頼まれる。それに応じる来堂だったが、それ以降れいなは極端に距離が近くなり、突然いっしょにお昼ご飯を食べようと言ったり、放課後遊びに誘って来たりするようになる。戸惑いつつも付き合う来堂だったが、翌日になるとれいなの態度は冷たいものに戻っており、さらに混乱する。それでも来堂がめげずに話し掛けると、驚きの事実が発覚する。れいなは人と接するのが苦手で、少しでも親切にされると懐いてしまうため、却って嫌がられる事をこれまで繰り返していたのだ。そのため、高校に入ってからは改めようと、誰とも親しくしていなかった。しかし、来堂が親切にしてくれたのが嬉しかったので、ついまた悪い癖が出てしまったのだという。嫌われているわけではないと安堵した来堂は、今後も少しくらい距離感を間違えても構わないと伝える。こうして二人の、不思議な関係が始まった。
第2巻
来堂は、となりの席の阿波連れいなと友人になったが、またも距離を感じていた。今朝登校して以来、れいなはまったく目を合わせてくれないのである。来堂は、もしかするとれいなは転校が決まっており、別れを辛くしないために自分を避けているのかと思い込む。しかし実際は、れいなは首を寝違えたために動かせず、来堂の方を見たくても見られないだけだった。そこで来堂は、保健の先生に頼んでれいなの首を治してもらうが、翌日、反対方向に首を寝違えたれいなは、今度は一日中、ずっと来堂の方を見て過ごす事になる。来堂は、これはこれで困ると感じるのだった。それからしばらく経ったある朝、れいながひどい寝癖で登校して来る。このままでは生活指導の先生に怒られてしまうと考えた来堂がヘアセットしようとするがうまくいかず、いつも自分達を監視しているれいなの幼なじみの大城に頼む。大城は実家が床屋であるため自身もヘアカットがうまく、れいなの髪はアレンジされて綺麗になり、来堂もついでにカットしてもらう。これまで大城は来堂を敵視していたが、来堂といっしょにいるれいなはいつも楽しそうなので、考えを改めて心を開いたのだ。こうして来堂の髪の毛もすっきりし、三人は以前より少しなかよくなる。
第3巻
来堂と阿波連れいなが公園で休んでいると、れいなは小学生のあっくん達に声を掛けられる。以前来堂は、れいなにハンドスピナーを貸した事があるが、そこで素晴らしい才能を発揮したれいなは、彼らに「阿覇王さま」と呼ばれて慕われるようになっていたのだった。しかし、あっくんの幼なじみのふたばはこれを気に入らず、れいなにあっくんを取られたと逆恨みしていた。そこでふたばは、れいなにリバーシで勝負を挑む。れいなはわざと負けてこの場を収めようとするが、あっくんがこれを見抜いた事で事態はこじれ、ふたばは泣き出してしまう。しかし、このままではいけないと考えたれいなは、あっくんを注意して彼は反省し、問題は解決する。この一部始終を見ていた来堂は、確かにれいなには「王」と呼ばれるだけの風格があると感じるのだった。それから少し経ったある日、テストに備えて、来堂とれいなはいっしょに勉強する事になる。来堂は学年200人中150位程度であまり成績がよくないため、主にれいなに教わる形になるが、ふだん来堂に頼ってばかりのれいなは、今回自分が役に立てる事を嬉しく思う。そしてテストは終了し、二人は見事に学年100位以内の目標を達成するのだった。
第4巻
来堂は、雑誌で手相占いを覚えたのをきっかけに、いくつもの占いを的中させる。そこで阿波連れいなも占ってみたところ、れいなが今日死んでしまう事に気づいてしまう。なんとしてもこれを阻止したい来堂は、今日一日、れいなを守り切る事で未来を変えようとするが、れいなの飼い犬とぶつかったショックで気を失い、守り切れずにその日を終えてしまう。もうれいなと会う事はできないと落ち込む来堂だったが、翌日れいなはふつうに登校し、一度は的中させたはずの占いも、長い目で見ると外れていた事が発覚。来堂はこれに安堵し、占いなんてそうそう当たるものではないと思うのだった。それから少し経ったある日、来堂とれいなはひどい花粉に見舞われ、一日中涙が止まらなくなってしまう。特にれいなは重症で、その日れいなとかかわった人達全員が、自分のせいでれいなを泣かせてしまったのではないかと思うほどだった。しかし翌日、来堂はマスクをすれば花粉を避けられる事に気づく。れいなも同じ事を考えるものの、なぜか彼女は目と鼻を露出したレスラーマスクをかぶって現れる。
第5巻
阿波連れいなは、あっくんのためにお弁当を作りたいというふたばに、料理を教える事になった。そして、来堂もこれに付き合い、料理が苦手だったふたばも協力して、三人はおいしいお弁当を完成させる。しかし、喜んだふたばは賞味期限を気にせず、この日作ったお弁当を翌日そのままあっくんに渡してしまう。結果、お弁当自体はいい出来だったものの、あっくんは賞味期限切れのものを食べたせいでお腹を壊してしまうのだった。それから少し経った夏のある日、来堂は、れいな、大城、石川、佐藤ハナコの五人でお祭りと花火大会に出掛ける。れいなは初めて出かけるお祭りに大はしゃぎで、五人は楽しい時間を過ごすが、花火が始まる直前、来堂は一人はぐれ、同じく父親とはぐれてしまったふたばに出会う。ふたばを案じた来堂は、花火大会までに合流するのをあきらめて、お祭り本部でいっしょにふたばの父親を待つが、れいなは意外にもその近くにおり、来堂はれいなと、ふたばは父親と無事合流する。そして花火大会が始まり、来堂は小柄なれいなのために、れいなをおんぶして花火を見せる。れいなはこれに感動し、来堂への思いを深めるのだった。
第6巻
来堂は石川の提案で、阿波連れいな、大城、佐藤ハナコも交えた五人でキャンプに行く事になった。当日、アウトドアが大好きなれいなのはしゃぐ姿を見て来堂は微笑ましく思うが、準備中、れいなが夕飯の材料を忘れてきてしまった事が発覚する。そこで来堂はキャンプ場の許可を得て、場内で食べられるキノコや山菜を収穫。この来堂のフォローに、れいなは感激する。その夜、来堂達は先に眠ってしまった大城を残して四人で散策に出掛ける。ここで石川は、来堂とれいなを二人きりにする事を思いつくが、これを自分達二人だけが遭難したのかもしれないと勘違いした来堂は、ひとまずその場でれいなと星を見て待つ事にする。この時れいなは来堂になにかを言いかけるが、そこで忘れ物を持って追いかけて来たれいなの飼い犬が現れる。話は途中のまま来堂達は石川達と合流し、就寝時間となってしまう。しかし眠れなくなってしまった来堂は、一人夜食を食べていた。そこへれいなが、先ほどの話の続きをするためにやって来る。そして来堂は、夜空の下でれいなにキスをされる。
テレビアニメ
登場人物・キャラクター
来堂 (らいどう)
高校1年生の男子。前髪を眉が見えるようにM字に切った黒の短髪にしている。ふたばからは「弟子」と呼ばれている。穏やかで落ち着いた性格だが、無表情で感情が読み取りにくい。そのために周囲からは怖い、とっつきにくいと思われてしまう事がある。高校入学時、友達を100人作る夢を抱くが、となりの席になった阿波連れいなが話し掛けても反応せず、あまりにも素っ気ない事に傷つく。これを嫌われているのかもしれないと受け止めて距離を感じていたが、れいなが落とした消しゴムを拾ってあげたのがきっかけで、今度は必要以上にべったりと懐かれるようになってしまう。これによってれいなの、人との距離感を測るのが苦手な人柄を知り、彼女の突飛な行動に日々ツッコミを入れつつも、友人として接していく事になる。しかし心配性なのが災いし、れいなの何気ない行動を深読みしては深刻に捉えたり、完全に勘違いして的外れな行動を取ってしまったりする事がある。特技はリバーシ。成績は学年200人中150位程度で、あまりよくない。
阿波連 れいな (あはれん れいな)
高校1年生の女子。来堂の友人。前髪を目の上で切り、胸の高さまで伸ばした銀色のストレートロングヘアにしている。小柄な体型で痩せている。心優しい性格ながら、人との距離感を測るのが苦手で、少し親切にされただけでべったり懐いてしまったり、頼まれてもいないのにお弁当を作ってしまったりと、相手を困惑させてしまう事が多い。さらに声が極端に小さいため、阿波連れいなとしてはふつうに会話しているつもりでも、相手にはまったく聞こえず、コミュニケーションが成立しない事が多い。そのため、高校生になってからは人と深くかかわらないようにしていた。しかし、来堂に消しゴムを拾ってもらった事がきっかけで、親しくなりたいと望むようになる。そこでまたも距離感を見誤ってしまうが、来堂に優しく受け入れられた事により、友人として付き合うようになる。食べるのが好きで、非常に大食い。特技はクレーンゲームとリバーシ。身体が非常に柔らかいうえに骨が鳴りやすい体質で、少しストレッチをするだけでボキボキと大きな音が鳴る。高いところは苦手。ハンドスピナーの高い技術を持つ事から、あっくんをはじめとする周辺の小学生達に尊敬され、「阿覇王さま」あるいは「王」と呼ばれている。
大城 (おおしろ)
高校1年生の女子。阿波連れいなの幼なじみ。前髪を目の上で切り、顎の高さまで伸ばした、淡い茶色のふんわりとしたボブヘアにしている。背が高く胸が非常に大きい。小学生の頃は眼鏡をかけていた。引っ込み思案の恥ずかしがり屋な性格だが、敵とみなした者には容赦がない。れいなとは小学生の頃に同じクラスで、席がとなりになった事で親しくなった。しかし、れいながあまりにも美少女で、さらに自分の容姿をれいなに褒められた事で、これ以上いっしょにいては自分がれいなを強く意識している事がばれてしまうと考え、彼女と距離を置くようになった。しかし、その後もれいなの事はつねに気にかけており、高校生になっても遠くから監視していた。そんな中、れいなが来堂と親しくなった事を知り、最初はれいなが来堂に騙されているのではないかと思い込んでいたが、れいな自身からそうではないと教えられた事と、離れて監視を続けるうちに来堂の人柄を理解した事で警戒を解く。これによって、一度はあきらめていたれいなとの関係も少しずつ修復されていく。実家が床屋で、大城自身もヘアカットやヘアアレンジが得意。スポーツ全般が得意で、趣味で水泳とボクササイズをやっている。水泳や筋トレなど、人にものを教えるのが非常にうまい。
石川 (いしかわ)
高校1年生の男子。来堂の友人。佐藤ハナコの幼なじみでもある。前髪を目の上で切った、亜麻色のふんわりとした短髪にしている。中性的な雰囲気を漂わせ、おおらかで落ち着いた性格の持ち主。そのため来堂や阿波連れいなの、奇想天外な行動を目にしてもまったく動じない。ハナコとは親しく、昔は「ハナちゃん」と呼んでいたが、今は周囲の目を気にして「佐藤さん」と呼んでいる。
佐藤 ハナコ (さとう はなこ)
高校1年生の女子。来堂の友人。石川の幼なじみでもある。前髪を目の上で切り、肩より少し上の高さで切った、焦げ茶色のボブヘアにしている。まじめな性格で、自分をごく一般的な女子高生だと認識している。しかし、来堂や阿波連れいな、大城といった個性豊かな友人に囲まれているために、自分は無個性なのかもしれないと落ち込む事がある。石川に密かに思いを寄せているが、まったく気づかれていない。
宮平 (みやひら)
来堂達の高校に勤める若い女性教師。体育を担当している。来堂達のクラスの担任も務めている。前髪を目の上で切り、胸の下まで伸ばしたロングウェーブヘアにしている。たれ目で眼鏡をかけており、胸が非常に大きい。穏やかでおっとりとした性格をしている。桃原とは親しく、なにかと体調を崩しやすい桃原に料理を作るなど、つねに気にかけている。
桃原 (とうばる)
来堂達の高校に勤める若い女性教師。古典を担当している。前髪を目の上で切り揃え、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしている。釣り目で少し目つきが悪く、下まつげが長い。眼鏡をかけており、いつもスーツを身につけている。宮平とは親しく「桃ちゃん」と呼ばれている。近寄りがたい雰囲気を漂わせているが、実は恋愛系の古典作品が大好きで、男女二人を見ているだけで勝手にその関係を妄想しては一人盛り上がり、鼻血を出してしまう特異体質。ある日、来堂と阿波連れいなの仲睦まじい様子を見て感動し、二人を密かにお気に入りのコンビに認定して注目するようになる。以来、来堂達がいっしょにいるところを目撃しては鼻血を流し、二人がいないところでも、二人がなかよくしている妄想をしてはやはり鼻血を出している。
来堂の妹 (らいどうのいもうと)
中学生の女子。来堂の妹。前髪を眉が見えるようにM字に切り、顎の高さまで伸ばしたボブヘアにしている。来堂に対しては素っ気ない態度を取っているが、なんだかんだで仲が非常にいい。
阿波連 れん (あはれん れん)
小学生の男子。阿波連れいなの弟。前髪を目の上で切り、胸の高さまで伸ばした銀色のストレートロングヘアにしている。小柄な体型で痩せている。容姿がれいなにそっくりで、一見すると見分けがつかない。明るく人懐っこい性格で、れいなの事が大好き。そのため、よくれいなの服を勝手に着て出掛けているため、れいなと間違われる事がある。ある日、一人でゲームセンターで遊んでいたところ、来堂にれいなと間違えられた事で知り合った。姉とは違ってクレーンゲームはあまり得意ではなく、小食。
あっくん
来堂達の高校の周辺に住む小学生の男子。阿波連れいなの知人。前髪を眉上で短く切った短髪で、キャップをかぶっている事が多い。明るく元気いっぱいな性格で、ある日れいなが類まれなるハンドスピナーの技術を持つ事を知り、「阿覇王さま」「王」と呼んで慕うようになる。そこで、街で出会っては、れいなにハンドスピナーの腕を見せるようにせがんでいる。同級生のふたばに思いを寄せられているが、まったく気づいていない。
ふたば
来堂達の高校の周辺に住む小学生の女子。阿波連れいなの知人。前髪を目の上で切って右寄りの位置で斜めに分け、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしている。頭にリボンカチューシャを付けている。気が強い性格で、素直になれないところがある。同級生のあっくんに思いを寄せているが、あっくんが阿波連れいなを慕っている事を知り、あっくんを取られたような気持ちになる。そこである日、公園で出会ったれいなにリバーシで勝負を挑んで勝つが、わざとれいなが負けてくれた事をあっくんに指摘され、泣いてしまう。しかしれいなの気遣いにより、あっくんとは無事に仲直りした。その後もれいなと遭遇しては張り合っているが、いつもれいなが自分を気遣ってくれている事は理解している。来堂の事は、れいながハンドスピナーの「阿覇王さま」「王」と呼ばれている関係から、れいなの「弟子」と認識している。
その他キーワード
HOKKEMON KO (ほっけもん こう)
モンスター捕獲育成ゲーム「HOKKEMON」のスマートフォン版。通称「ホケ行」。かわいらしいモンスターが多数登場する事で大人気で、1年ほど前に爆発的に流行した。現実のGPSとリンクしており、たとえば鳥取砂丘など、地域限定で出現するモンスターもいる。来堂も以前プレイした事があり「ヤンキラス」というモンスターがお気に入り。また、あっくんもこのヤンキラスが好き。阿波連れいなは若干流行から遅れてプレイし始め「シロリン」というモンスターを連れている。
書誌情報
阿波連さんははかれない 17巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2017-08-04発行、 978-4088810904)
第2巻
(2017-12-04発行、 978-4088813011)
第3巻
(2018-04-04発行、 978-4088813967)
第4巻
(2018-07-04発行、 978-4088815251)
第5巻
(2018-11-02発行、 978-4088816357)
第6巻
(2019-04-04発行、 978-4088818054)
第7巻
(2019-08-02発行、 978-4088820231)
第8巻
(2020-01-04発行、 978-4088821818)
第9巻
(2020-05-13発行、 978-4088822877)
第10巻
(2020-10-02発行、 978-4088824345)
第11巻
(2021-03-04発行、 978-4088825632)
第12巻
(2021-08-04発行、 978-4088827377)
第13巻
(2022-04-04発行、 978-4088830759)
第14巻
(2022-06-03発行、 978-4088831244)
第15巻
(2022-10-04発行、 978-4088832760)
第16巻
(2023-04-04発行、 978-4088834665)
第17巻
(2023-08-04発行、 978-4088836119)