気がつくと殺人現場にいた主人公
記憶喪失の主人公・武羽流星は、気がつくと廃屋に突っ立っていた。目の前では、女子高生がスーツの男にナイフを突き立てていたが、「顔は覚えた」という言葉を残し、その場を立ち去ってしまう。所持していた学生証から自分の姓名・住所を知った武羽はとりあえず帰宅する。部屋で拳銃を見つけたため、自分には裏の顔があると推測し、記憶喪失を隠すことにした。アルバムや携帯のメール記録など、あらゆる情報を使って自分のことを調べ上げたうえで登校した武羽だったが、いきなり大きな誤算が生じる。廃屋の女子高生が、翔寺束というクラスメートだったのだ。正面から翔寺と向き合い、手がかりを得ようとする武羽だったが、じつは彼女も廃屋以降の記憶しかないことが判明する。こうして出会った二人は、協力して不可解な謎を解き、自分たちの正体を探ることにする。
文月事変と正義の庭
武羽は熊角というギャルの殺し屋に命を狙われるが、翔寺の協力もあって難を逃れた。熊角は自ら命を絶ち、武羽はある紋章が描かれたコインを手に入れる。それは「正義の庭」というテロリストグループの紋章だった。彼らは4年前の7月1日に起こった戦後最大のクーデター未遂事件「文月事変」の首謀者である。文月事変は、国政に不満を持った市民たちによる、ネットを媒介とした革命で、終息まで半年を要し、5万人の死傷者を出す大惨事となった。それほどの大事件にもかかわらず、「正義の庭」の主導メンバーの大半が捕まっていないのが現状である。武羽はそんな「正義の庭」となんらかの関係があり、そして命を狙われる存在であることが判明していく。
刺客たちと繰り広げる心理戦
「正義の庭」は、武羽の命を狙い、次々と刺客を差し向けてくる。彼らは、それぞれ特殊な殺人スキルを持った手練れである。例えば、爆弾魔「bakugeki5」は、計画的な手口と残虐性を兼ね備えた知能犯である。4年前の都庁舎爆破事件では、関係のない女子中学生のカバンに爆弾を忍ばせる手法を取った。また、毒使いの「しろ」は、毒のスペシャリスト。3年前、名門私立中学の給食に遅行性の毒物を混入し、100人以上の死者を出した。武羽は、何度も窮地に陥りながら現状を正確に分析し、刺客たちの計画を予測する。また、誘導尋問やブラフなど、さまざまな駆け引きで状況を有利にしようと試みる。武羽と刺客たちとのはらはらする心理戦が本作の大きな魅力である。
登場人物・キャラクター
武羽 流星 (たけば りゅうせい)
生化高校普通科に通う男子高校生。気がつくと翔寺束がスーツの男を刺している現場に居合わせていた。自分が誰かもわからない記憶喪失だが、パニックになることもなく冷静に事態に対処する。また、観察力、推理力に優れ、窮地を切り抜ける能力に長けている。「正義の庭」というテロ集団に命を狙われながら、同じく記憶喪失の翔寺と協力して、自分の正体を探っていく。
翔寺 束 (かけるじ たばね)
生化高校普通科に通う女子高校生。武羽流星のクラスメートで、黒のロングヘアーが特徴。柔道部に所属しており、ずば抜けた身体能力を持つ。つかみ所がない性格で、しれっと嘘をついたり、ギャグをかましたりする。武羽とほぼ同じタイミングで記憶をなくしており、気がついた時は廃屋でスーツの男に刃物を突き立てていた。武羽と協力して不可解な謎を追う。
クレジット
- 原作
書誌情報
名無しは一体誰でしょう? 全5巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2013-11-18発行、 978-4091245076)
第5巻
(2015-06-18発行、 978-4091258601)