ひと夏だけの恋人ごっこから始まる物語
過去のトラウマを抱えた星川雫と、彼女に興味を持つクラスの人気者、朝香夏織の恋愛模様を描いたピュアな百合ラブストーリー。自らが執筆する小説に思いの丈をぶつけていた雫だったが、ひょんなことからクラスメイトの朝香夏織に小説を読まれてしまう。夏織は雫の次回作を読みたいとねだるものの雫からは一度は断られるが、夏織は作品のネタにして構わないからと、夏休みの期間だけ恋人同士になろうと提案する。自分の殻に閉じこもっていた雫が、夏織との出会いを通して成長する姿が、雫の心情を交えて丁寧に描かれる。
不器用ながらも前向きな気持ち
星川雫は自分の心の叫びを文章にした私小説を書き終えたら、自分自身の存在を消したいと願っている。他人と距離を置いている雫だが、一方で人とかかわりたい気持ちも持ち合わせていた。そんな中、自分の小説を朝香夏織に見られ、意外にも感動したと感想を伝えられた際には、嬉しさのあまりその場で涙を流した。夏織から夏休みの期間だけ恋人同士になろうと提案され、デートに誘われたり、服をプレゼントされた際には素直に身につけている。人を拒む気持ちと受け入れたい心の揺らぎがあったが、夏織と時間を共有することで、葛藤を抱えながらも救われていく。
朝香夏織が星川雫に近づいた目的
星川雫は、自分と正反対の性格でクラスの人気者の朝香夏織に対して苦手意識を抱いていた。一方の夏織は、クラスで浮いた存在の雫に対して積極的に声をかけている。夏織は雫の小説を読んだことをきっかけに、「夏休み期間だけ恋人ごっこをしよう」と提案したり、突然自宅におしかけたりと、強引に距離を縮めていく。雫から何度拒絶されても、夏織はまったく気にする様子を見せない。しかし夏織が雫に執着するのは、小説の次回作が読みたいという理由だけでなく、ストーリーが進むにつれて複雑な事情が明らかになる。
登場人物・キャラクター
星川 雫 (ほしかわ しずく)
朝香夏織と同じ高校に通う女子高校生。夏織のとなりの席で、同じクラスに在籍している。人間関係のトラウマを抱えており、一方的に周囲とのかかわりを拒絶している。自分に対してなぜか積極的に声をかけてくる夏織に対して、自分とは住む世界が違うと苦手意識を抱いていた。しかし、星川雫自身の小説を読まれたことをきっかけに、夏織から夏休みの期間だけ恋人同士になろうと提案され、渋々受け入れる。最初は夏織と距離を置いていたものの、次第に彼女のペースに巻き込まれ、少しずつ心を開いていく。
朝香 夏織 (あさか かおり)
星川雫と同じ高校に通う女子高校生。雫のとなりの席で、同じクラスに在籍している。雫は授業中に小説を執筆しているため、教師からの質問を聞いていなかった時は、さりげなくフォローしている。一方で雫からは苦手意識を抱かれており、朝香夏織自身も薄々勘づいているものの、まったく気にしていない。そんなある日、雫が誰にも見せずに執筆していた小説を読んで感動する。次回作を読みたいと願う夏織は、雫の創作する作品のネタ作りのため、雫に夏休みの期間だけ恋人同士になろうと提案し、半ば強引に彼女と距離を縮めていく。明るい性格で、クラスの中心的な存在。顔立ちも整っており、雫が見惚(みほ)れるほどの美少女でもある。