この恋を星には願わない

幼い頃から親友として育ってきた冬葵と瑛莉。ある日、家の近くに夏目京太郎が引っ越してきたことで、三人は強い絆で結ばれた幼なじみとなった。時が経ち、同じ大学に通うようになった三人は、穏やかな日々を送っていた。しかし、長年瑛莉に片思いしていた京太郎は意を決して告白し、二人は付き合い始める。一方、冬葵も京太郎と同じく密かに瑛莉に恋心を抱いていた。これまで瑛莉の恋愛を静かに見守ってきた冬葵だったが、今回の相手が幼なじみの京太郎だと知り、激しく動揺する。そんな中、冬葵は高校時代に心を許していた先輩の黒川妃咲と再会し、瑛莉と京太郎の関係から目をそらすように交際を始めるのだった。一つの恋をきっかけに、三人の幼なじみの友情と愛情が複雑に絡み合っていく。

冬葵は幼い頃から体が弱く内気な性格だったため、自己主張が強くつねにリードしてくれる瑛莉を深く慕っていた。瑛莉からの突然の呼び出しにも応じるなど、冬葵はこれまで彼女を最優先にして生きてきた。瑛莉から恋愛相談を受けるのは辛かったが、彼女のそばにいたい一心でその苦しさに耐え続けていた。しかし、瑛莉が京太郎と交際を始め、その事実を隠していたことに冬葵は大きなショックを受け、次第に二人から距離を置くようになる。一方の瑛莉は、物事をはっきり言う長所がある反面、場の空気を読むのが苦手で人間関係のトラブルを起こしがちだった。そんな自分をいつも受け入れてくれる冬葵は、瑛莉にとってかけがえのない存在であり、唯一無防備に甘えられる相手でもあった。瑛莉は初めて冬葵に強い執着心を抱くようになるが、その感情が恋なのか友情なのかわからず、思い悩んでいた。

冬葵と瑛莉の幼なじみである京太郎は、複雑な家庭環境で育った。小学生の頃、境遇を理解してくれた瑛莉に密かに恋心を抱くが、大切な関係を壊すことを恐れて、その思いを長年胸に秘めていた。大学生になってようやく瑛莉に告白し、恋人同士となるものの、彼女の心が完全に自分に向いていないことを感じていた。それでも京太郎は瑛莉のそばにいたいと願い、その事実を見て見ぬふりをして過ごしていた。一方、妃咲は冬葵の高校時代の先輩であり、冬葵が瑛莉への恋心を唯一打ち明けていた相手でもある。京太郎と瑛莉の交際を知った妃咲は、傷心した冬葵を慰めるために自分と付き合うことを提案する。彼女は冬葵を大切に思っている様子だが、本心を隠すような言動が多く、その存在はつかみどころがない。また、妃咲は瑛莉と折り合いが悪く、顔を合わせるたびに険悪な雰囲気になっている。京太郎と妃咲は、あえて瑛莉を刺激するような言動を繰り返し、冬葵と瑛莉の心を大きく揺さぶっていく。