15年の眠りから目覚めた高校生が直面する歪んだ世界
2010年。高校生の優太郎は、亡き父の言葉を胸に「正しい大人になる」ことを目指していた。しかし、車道に飛び出した猫を助けようとして事故に遭い、意識不明の重体に陥る。15年後、長い眠りから目覚めた優太郎を待っていたのは、すっかり変わり果てた世界だった。彼が眠っているあいだに、母親は入院費を賄うためクラウドファンディングを行い、事故現場で優太郎を助けた黒田勇は、政党「セーブザキャッ党」の党首にまで上り詰め、時の人となっていた。さらに、優太郎自身もその象徴として英雄に祭り上げられていたのだ。黒田との再会を経て、優太郎はかつて自ら記した「大人憲法」と名付けたノートが、国家SNS「ガーデン」の理念となり、国民に義務化されていることを知る。治安は向上したと聞かされるが、その実態は国が弱者いじめを公認する非情なシステムだった。自分の理想が歪められた現実に疑問を抱いた優太郎は、同じくシステムの闇を追う記者、犬飼しのぶと出会い、共に「ガーデン」の真実を暴くために立ち上がる。
SNS「ガーデン」による階級社会の実態
2025年の日本では、「大人」という概念が国家資格として導入され、その取得のために全国民がSNS「ガーデン」の利用を義務付けられている。ガーデンには1等から12等までの階級が設けられ、初期登録時は10等からスタートする。8等以上に昇格すると、年齢に関係なく「大人」として認められる仕組みだ。等級は国民の投票によって上下し、信頼を失うと等級が下がるだけでなく、周囲からの非難や冷たい視線を浴びることになる。特に11等以下は、初期の10等よりも低い階級であることから「低階級」と呼ばれ忌み嫌われている。しかし、一方で失うものがないために開き直る者も少なくない。このガーデンのシステムは、かつて優太郎が自らを戒めるために記した「大人憲法」を原案としている。しかし優太郎は、自分の意図とは大きく異なる形で運用されている現状に無念さを抱いている。
優太郎を巡る二大組織の対立
当時高校生だった優太郎の献身的な行動は、二人の人物の心に深く響き、世界を大きく変えるきっかけとなった。優太郎が車にはねられた現場に居合わせた黒田は、優太郎が自らを戒めるために記していた「大人憲法」のノートに感銘を受ける。黒田は「セーブザキャッ党」を結成し、「ガーデン」と呼ばれるシステムを構築し、「大人」に関するまったく新しい法律を制定した。一方、幼い頃に浦島の活躍をテレビで見た乙姫ミサトは、優太郎への信仰心を募らせていく。彼女は黒田が優太郎を政治的に利用していると考え、怒りをあらわにする。そして、黒田が築いた「ガーデン」と「セーブザキャッ党」を否定するため、仲間たちと共に反ガーデンを掲げる宗教団体「サプライズタートルニンジャ教」を立ち上げる。対立する二つの組織は、いずれも優太郎を尊重しているように振る舞うが、優太郎自身はどちらの組織も歪んだ目的で動いていると感じ、強い反発を示している。
登場人物・キャラクター
浦島 優太郎 (うらしま ゆうたろう)
東京在住の男性。年齢は30歳。曲がったことを何よりも嫌い、強い責任感を持つ、真っ直ぐで少し青臭いほどの生まじめな性格で、「どんな相手でも対話を重ねれば理解し合える」と信じている。中学生時代は面子(めんつ)にこだわる不良だったが、父親に諭されて改心し、「正しい大人」になることを目指すようになる。さらに、自分を律するために「大人憲法」と名付けたノートを作り、その項目を厳守する生活を送っていた。しかし、高校生の時に事故に遭い、15年間ものあいだ、昏睡状態に陥ってしまう。そのあいだに、「大人憲法」のノートを拾った黒田によって、国家SNS「ガーデン」の理念的支柱として利用されてしまう。世間からはシステムの基盤を築いた存在として注目されているが、優太郎自身は「ガーデン」に潜む選民思想に疑念を抱いている。自らの理想が歪められたことに無念さを感じながらも、同じ疑問を持つしのぶと協力し、優太郎は自らの理想を歪めたシステムの巨大な野望に立ち向かう。
犬飼 しのぶ (いぬかい しのぶ)
ゴシップ雑誌「コンテンツスプリング」の記者を務める男性。大胆不敵な性格で、真実を追求するためには自らの危険も厭(いと)わない。その胡散臭い雰囲気から優太郎に警戒されているが、しのぶ自身は優太郎の真っ直ぐな姿勢をからかいながらも高く評価している。日本政府が「ガーデン」を導入して治安が向上したことは認めつつも、その裏で非情な「淘汰」が密かに行われていることを確信している。尊敬する先輩記者が「ガーデン」の謎を追ううちに行方不明になった過去があり、それ以来、システムの闇を暴くことを自らの使命としている。現在は、あえて低評価を受けて「低階級」に身を置き、その立場を利用して陰から優太郎の活動を支えている。
クレジット
- 原作
-
かっぴー







