概要・あらすじ
詐欺師のみをターゲットにする詐欺師「クロサギ」の青年・黒崎は、銀行で「振り込め詐欺」に引っかかり三百万を騙し取られた女性と出会う。彼女から詐欺師の情報を聞き出した黒崎は、逆に詐欺師たちを罠に嵌めて彼女に金を取り戻す。その経緯を知った黒崎の「飼い主」である桂木敏夫は、「自分以外のネタ元から拾い食いをするな、と言ったはずだ」と黒崎に釘をさす。
登場人物・キャラクター
黒崎 高志郎 (くろさき こうしろう)
21歳の青年。黒髪の童顔で、丈の長い黒いコートを着ている。詐欺師のみをターゲットにする詐欺師・「クロサギ」。詐欺師の元締め桂木敏夫から情報をもらって活動している。表の顔はアパートの大家で、住人たちの面倒を見ることも。住人の一人でもある吉川氷柱には、表向き冷たい態度を取っているが、親愛の情を抱くようになっている。 幼い頃、父親がチェーン店開業詐欺にかかって一家心中を図り、黒崎のみ生き残ったという過去を持つ。そのチェーン店開業詐欺を行った御木本、さらにその仕組みを考えた宝条兼人を敵として付け狙う。甘いものが好き。黒猫の「クロ」を飼っているが、仕事柄留守がちなため、吉川氷柱に世話を丸投げしていることが多い。下の名前は『新クロサギ 完結編』で初めて登場する。
吉川 氷柱 (よしかわ つらら)
政和大学法学部3年生の女子。検事志望。黒崎が経営するアパートの店子で、黒崎の飼い猫「クロ」の面倒を見ている。黒崎に好意を抱いており、仕事内容も理解している。しかし、検事志望で法を学ぶ人間として、彼のような存在をどう捉えるべきか葛藤し続けている。家庭環境に恵まれず、コーヒー店でのアルバイトで生活費と学費を賄っている。
桂木 敏夫 (かつらぎ としお)
御徒町にあるスナック「桂」の店主。太った初老の男で、顔に二本の傷痕がある。裏の顔は詐欺師の大元締めとも言えるフィクサーで、詐欺師相手に情報や詐欺のための道具を提供し、彼らのアガリから収益を得ている。黒崎の育ての親とも言える立場で、黒崎も「親爺」と呼んでいるが、ふたりの間にあるのは信頼関係ではなく、利害の一致のみである模様。 表向き詐欺師ではない宝条兼人とも取引関係があり、宝条も桂木の指示は守るようにしている。
早瀬 (はやせ)
坊主頭でいつもサングラスをかけている青年。桂木敏夫直属の部下で、主にボディガードをしている。普段はスナック「桂」の出入り口に立っているが、桂木の命令によっては黒崎と行動を共にすることもある。中国名を持つなど、謎の多い人物。
神志名 将 (かしな まさる)
26歳の青年。警察庁のキャリア官僚だが、現場で働きたいという意志を持ち、上野東署知能犯係の警部補として配属されていた。刑事局長秋元耕蔵に呼び戻され、一時霞ヶ関に戻るが、再び上野東署に戻る。本来は「野添」という苗字だったが、叔父が詐欺で実刑判決を受けたことから、叔父との関係を抹消するため、偽の死亡届を出した後、遠縁の「神志名」家で出生届を出されたため、この名字となった。 戸籍と実年齢が異なる。政和大学法学部出身で鷹宮輝は大学のゼミの先輩にあたる。様々な犯罪の中でも特に詐欺を憎み、黒崎に強い敵意と執着を持つ。
白石 陽一 (しらいし よういち)
42歳の男性。不正を行っている大企業をターゲットに、社会的地位の失墜などを目的とした詐欺を行う詐欺師。時間をかけて組織内に潜り込み、信用を得て情報を掴むなど、大掛かりな詐欺を行うことが多い。個人を詐欺の対象にする黒崎とは、作戦の途中に行き会うことがしばしばあり、情報の共有を行うなど、協力しあうこともある。
御木本 (みきもと)
大物詐欺師。痩せ型の中年男性。黒崎の父親を詐欺に嵌めた張本人。桂木敏夫の詐欺グループに属していた。前作『クロサギ』で黒崎に追い詰められるが、桂木が命じた工作によってこれを逃れる。以降上海に拠点を置き、中国の新興マフィアに借金して環境投資詐欺などを仕組んでいた。それを察した黒崎と、上海での自分の面子を潰されたと判断した桂木により、再び追い詰められる。
宝条 兼人 (ほうじょう かねと)
業界最大手銀行「ひまわり銀行」本店の管理部門次長。40歳そこそこの男性で、常に底知れない笑みを浮かべている。大卒で入行後、大型支店の主要ポストを渡り歩いたスーパーエリート。しかし裏では桂木敏夫とつながり、法の裏をかいた悪辣な詐欺システムを作り出してきた。黒崎の父親を破滅させた詐欺の大元に当たる人物でもある。
鷹宮 輝 (たかみや ひかる)
政和大学法学部助教授。好青年然とした佇まいで、生徒たちからの信頼も厚い。法の正義に重きを置く学者タイプで、弱者や個人の犠牲には関心を抱かない。宝条兼人の甥であり、彼に頼まれてレポートの作成などを行っている。
小柴 康 (こしば やすし)
情報屋兼ブローカーの中年男性。黒崎の依頼を受け、様々な人間の情報を提供する。宝条兼人の情報を探り、そのバックにいるのが桂木敏夫であることを黒崎に伝えた。
榎木 (えのき)
ジャーナリストの端くれを名乗る男性。悪徳企業を狙う詐欺師の白石陽一と組んで活動をしている。
桃山 (ももやま)
上野東署知能犯係の警部補。髪をオールバックにしている中年男性。神志名将とコンビを組んでいることが多い。黒崎の父親から詐欺被害の相談を受け、被害届を書いた担当でもあったことから、「クロサギ」となった黒崎には複雑な感情を抱いている。
秋元 耕蔵 (あきもと こうぞう)
警察庁刑事局長を務める男性。同じ政和大学出身である神志名将に目をかけており、彼の過去を知っているが、それでもなおキャリアとしての道を歩むべき人材であると諭す。
三島 ゆかり
政和大学文学部3年生の青年。吉川氷柱の友人。人のよさからちょくちょく詐欺に引っかかってしまい、氷柱経由で黒崎へと相談を持ちかけている。物怖じしない明るい性格。
クレジット
- 原案
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夏原 武